ZEGNIA(ゼニア)はナッツRVが製作する、フィアットデュカトをベース車にするバンコンキャンピングカー。
同社は福岡県遠賀郡に本拠を置くビルダーで、セミフルコンのボーダーバンクスから軽キャンパーまでラインアップする大手総合ビルダー。カムロードをベース車にするクレアシリーズとクレソンジャーニーシリーズには、2023年に標準トレッドを採用したジープニーシリーズが追加された。
更に、2022年にフィアットのデュカトが正式に輸入されることを受け、2023年にはL2H2ボディを採用したフォルトナシリーズを発表。2024年には、L3H2を採用したこのゼニアシリーズを投入した。
なお、東和モータース販売もスペランツァ600TM、600LM、600TIを発表したが、これはゼニアの姉妹車。スペランツァ600TMはゼニア TypeTと、スペランツァ600LMはゼニア
typeLと、スペランツァ600TIはゼニア TypeTLと同じレイアウトとインテリアを採用している。車名のみが異なる。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
日本に正式輸入されるフィアット デュカトをベース車にする国産バンコンモデル。輸入キャンピングカーと異なり、エントランスは左側にあるのがメリット。
デュカトL3H2の6m近い車体を使用し、TypeT、TypeL、TypeTLの3種類のレイアウトをラインアップする。各レイアウトは以下の通り。
・Zegnia TypeT:対座ダイネット+ツインベッド+多目的ルーム
・Zegnia TypeL:ソファダイネット+横置きダブルベッド+多目的ルーム
・Zegnia TypeTL:ソファダイネット+ツインベッド
Type TとType Lの多目的ルームにはトイレや温水シャワーを設置できる。各タイプには家庭用エアコンと400Ahのリチウムイオンバッテリーを標準装備、同社独自のエボライト急速充電システムを採用している。
アピールポイント
・デュカトL3H2を使用した余裕のある室内空間
・3種類のレイアウトを選択可能
・ツインベッドを設置(Type TとType TL)
・多目的ルームを廃した広い室内(Type TL)
・家庭用エアコンを標準装備
・400Ahのリチウムイオンバッテリーを標準装備
・エボライト急速充電システムを採用
ベース車とエクステリア
スペランツァ600TIのエクステリア
ベース車はフィアット デュカト L3H2。2023年に発表されたフォルトナはデュカトの最もコンパクトサイズのL2H2(全長5410mm)を採用しているが、ゼニアはそれより長い全長(5995mm)のボディを使用している。
エンジンは2184ccの直列4気筒マルチジェットディーゼルインタクーラー付きターボで、ミッションは9速AT。輸入されるベース車は全て最上位の180psバージョンとなっている。なお、デュカトには4WDは無く、2WDのみとなっている。
運転席周りの窓を除き、後部の窓は全てアクリル2重窓になっている。各窓には網戸とシェードが組み込まれている。
インテリア
ゼニア TypeTのインテリア
家具色は10色、ファブリックは16種類、天板は4種類から選択できる。照明はメイン照明と間接照明を組み合わせているが、Type TとType
TLのベッド間のステップの照明は印象的だ
ライトレール
左右にはライトレールが設置されており、スポットライトや充電用のUSBコネクタを自由な位置にスライドさせることができる。
レイアウト
前述したとおり、3種類のレイアウトが選択できる。ゼニアはツインベッドを採用するために長いL3H2を選択したと言っても過言ではなく、その意味ではType
TとType TLはゼニアらしいレイアウトだ。
対座ダイネットを採用し、2列目に前向きシートを持つType Tは、運転席、助手席も含め前向きに4名が乗車でき、4名が3点式シートベルトを着用できる。ベッドはツインだが、中央を埋めるとキングサイズ以上のベッドサイズになるので、例えば大人2名+子供2名のファミリーにも対応できる。
Type LとType TLはフロントシートの2名以外前向き乗車はできないので、二人旅に適している。(もちろんType Tも二人旅に適している)
ゼニア type Lのレイアウト
Type TとType Lは多目的ルームを配置している。クルマ旅の場合は、特に女性がいる場合は、トイレルームは設置しておきたいところだ。特にType
Lは最も効率の良いレイアウトだ。L字型のリビングスタイルのダイネットと合わせて、二人旅に適している。
Type Lは後部に横置きダブルベッドを採用しているが、フォルトナのようなセカンドダイネットの仕様も選択できるとのこと。電動昇降式の上段ダブルベッドもオプションで設置可能だ。
ゼニア Type TLのレイアウト
Type TLは多目的ルームを無くしたレイアウトだ。そのため室内が広々としている。前向きシートは運転席、助手席の2名のみなので、クルマ旅の場合は二人で使うことになるが、広さに関してはストレスはほぼないだろう。
ただ、二人旅ならType TやType Lでも十分広いので、やはりトイレルームを選択したい。Type TLはどのようなユーザーに適しているのかよく分からないが、とにかく広い空間を望むユーザー向けと言うところだろうか。
ダイネット
Type Tのダイネット
ゼニア Type Tが唯一対座ダイネットを採用しているが、これがデュカトの回転するフロントシートを最も”普通”に活用しているダイネットだ。フロントシートをダイネットシートに使用することにより、室内の使用効率が最大限生かせる。
Type LとType TLはいずれもソファスタイルのダイネットを採用するが、Type LはL字型、Type TLはストレート型だ。
ベッド
スペランツァ600TIのツインベッド
ゼニア TypeTとType TLにはツインベッドが設置されている。縦置きツインベッドの特徴は、パートナーを起こさずにトイレに立ったり、自分のタイミングで就寝できること。2段ベッドでもこれは可能だが、ツインベッドは高いところに上らなくて済むし圧迫感もない。
いうなれば最も理想的なベッド形態だが、最もスペース効率が悪いともいえる。これを実現するため、L3H2の長いボディが必要だったわけだ。
ベッドサイズは左右で多少異なり、左サイド(写真の向かって右側)は1930x790mm、右サイドは1830x750mmとなっている。更に中央をベッドマットで埋めると、1930/1830x1900mmの広大なキングサイズ以上のベッドになる。
ゼニア TypeLの横置きダブルベッド
ゼニア TypeLのみ横置きダブルベッドを採用している。ベッドサイズは1900x1410mm。家庭用ではレギュラーのダブルベッドの幅に相当する。特に大きな特徴があるわけではないが、ベッドサイズがコンパクトな分、それぞれの箇所が無理なく収まっている。
ギャレー
ゼニアTypeTのギャレー
ギャレーはどのタイプも同じで、左サイド中央に設置されたギャレーキャビネットの天板にはシンクとフォーセットが埋め込まれている。相変わらずコンロはポータブルカセットコンロを使用する度にセットする方法で、1300万円を超えるキャンピングカーのギャレーとしては貧弱だ。
Type TLのギャレーキャビネット
ギャレーキャビネット下部には各12Lの給排水タンクを収納している。なおオプションの温水シャワーを選択した場合は、荷室に100Lの給水タンク(Type-Lのセカンドダイネット仕様は68L)と床下に85Lの排水タンクが設置される。
冷蔵庫/電子レンジ
70L両開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は70L両開き式が標準装備される。車内からでも車外からでも開けることができるので、車外で遊んでいて冷たい飲み物が欲しくなった場合などでもすぐにアクセスできる。もちろん冷凍・製氷と冷蔵が同時にできる。
電子レンジも標準装備される
家庭用の100V仕様の電子レンジが標準装備される。ちょっとした温めものや冷凍食品の調理に重宝する。2000Wインバーターも標準装備されるので、外部電源のないところでも電子レンジを使うことができる。
多目的ルーム
Type TとType Lの多目的ルーム
Type TとType Lには防水処理され排水口もある多目的ルームが設置されている。ポータブルトイレやラップポンを設置してトイレルームにできる他、温水シャワーを設置することも可能だ。(いずれもOP)
フォルトナにはシャワーフォーセットがあらかじめ設置されていたが、ゼニアでは無いので、どのようにシャワーが設置されるのかは不明。FFヒーターの吹き出し口が用意されているので、冬場でも寒い思いをすることは無い。
収納
ダイネット上にオーバーヘッド収納が設置される
ダイネット上部とベッドルーム上部にオーバーヘッド収納が設置されている。フロントシートの後部にも設置されている。豊富に設置されているので大きな収納力がある。
TypeTの2列目シート下収納
TypeTの2列目シート下には引き出し収納が設置されている。シートクッションを持ち上げなくても良いので、大変便利だ。
TypeT、Type TLのベッド下収納
Type TとType TLのツインベッド下は大きな収納スペースになっている。ベッドはTypeLのように両側にベッドを支えるキャビネットは無い。
Type Lのベッド下収納
Type Lでは両側にベッドボードを支えるキャビネットがあり、左右それぞれのキャビネットは扉付きの収納になっている。収納品を分類して収納できるのが特徴。
空調
家庭用セパレートエアコンを標準装備
暖房はFFヒーターが標準装備され、冷房は家庭用エアコンが標準装備される。エアコンの室内機はギャレーキャビネット上部に設置される。400Ahのリチウムイオンバッテリーが標準装備されるので、電気容量の心配なしにエアコンを使用できる。
テレビ/ナビ
取り付け位置は不明だが、19型のテレビがオプションで用意されている。ナビは特にオプションリストにないが、好みのものを取り付けることができるだろう。
電装系
サブバッテリーは400Ahのリチウムイオンバッテリーが標準装備される。その他の電装系ではエボライト急速走行充電システム、外部100V電源入力とチャージャー、1500W正弦波インバーターが標準装備される。280Wソーラーシステムはオプション。
価格(2024年3月現在:千円台切り上げ:税込)
全タイプ価格は同じで1375万円~。デュカトは2WDのみで4WDは無い。ほとんどの必需装備は標準なので、付けておきたい必需オプションは無い。(ナビ関連は除く)
必要に応じて、サイドオーニング(311,100円)、19インチ液晶テレビ(156,200円)、シャワーキット(600,780 円)、ラップポン・トレッカー
WT-4(S)(235,400円)、ラップポン用防水コンセント(24,200円)などがある。価格表はこちら。
280Wクラスソーラーチャージャー(238,500円)とマックスファンベンチレータ(152,900円)は是非付けておきたい。
他モデル
正規輸入のデュカトL3H2をベース車にする国産モデルは、RVランドのランドワゴン ルーム(1100万円~)、トイファクトリーのダ・ヴィンチ6.0(1474万円~)がある。ただしどちらもゼニアと同じレイアウトではない。
東和モータース販売のスペランツァ600シリーズは、車名が異なるだけで、全く同じモデルだ。同社のヴォーンシリーズなどでは同社の特徴を出していたが、スペランツァ600シリーズでは価格も同じとなっている。
デュカトベースの輸入バンコンモデルでL3H2を使用しているモデルは、アドリアのツイン スプリーム600 SPB、サンリビングの V60SP、サンライトのクリフ600シリーズ、ローラーチームのリビングストーン5などがある。
しかし、これらの中にツインベッドを持つモデルは無い。L3H2を採用している輸入バンコンはいずれも横置きダブルベッドや横置き2段ベッドを採用している。ダイネットは全て対座なので、ゼニアと同じものは存在しない。
即ち、L3H2(6m未満)のデュカトベースでツインベッドを持つモデルはゼニアだけだ。
まとめ
ゼニアシリーズは、国産バンコンに本格的なツインベッドを導入した初めてのバンコンとなった。理想的なベッドを手に入れたユーザーは、優雅なクルマ旅を満喫できることだろう。
ただ、価格を見ると、輸入モデルとほとんど変わらないか、むしろ輸入モデルの方が安価な場合もある。もちろん装備や機能で勝っていれば問題ないが、残念ながら輸入モデルと比べると見劣りする部分が多い。
例えばギャレーには常設コンロや収納が無いし、温水シャワーもオプション。サニタリールームとして専用の手洗いや収納も無い。サンルーフは輸入モデルはほぼ全て標準装備されているが、ゼニアにはオプション設定もされていない。
ただ、これはゼニアだけではなく、国産のデュカトベースバンコン全般に、大なり小なり言えることだ。残念ながら、輸入モデルに対抗できるデュカトベースの国産モデルは少ない。
もちろん日本には多くの温泉があったり、滞在型ではなく移動型なので車内で調理するユーザーは少ないなど環境の違いがあるので、輸入モデルと同じフル装備は不要かもしれないが、ならば価格的に安価であって欲しい。
輸入モデルに対するゼニアの優位点としては、6m未満でツインベッドを実現した点の他には、エントランスが左側にある点や家庭用エアコンが最初から組み込まれている点が挙げられる。また、ソファダイネットを持つ輸入モデルは非常に少ない。判で押したように同じようなレイアウトの輸入モデルに対し、多彩なレイアウトを選択できるのも、国産モデルの優位点だ。
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