クレア5.3Wは、ナッツRVが製作する、カムロードベースのキャブコンキャンピングカー。全長5mを超えるフルサイズキャブコンだ。
同社は、マイクロバスにシェルを架装したセミフルコンのボーダーシリーズから軽キャンパーまで扱う総合ビルダーだが、クレアはその中核をなすキャブコンシリーズ。5mを下回るクレソンジャニーシリーズとで同社のカムロードキャブコンを構成している。
(記事中の価格は全て税込です)
コンセプト
5mを超えるフルサイズキャブコン。バンクを持つクレアシリーズと、バンクがスマートなスティングシリーズを選択できる。また、それぞれ、後部のベッドスタイルが2段ベッドのWと、ダブルベッドのXが選択できる。
同社は2016年より「EVOLUTION」システムをクレア/スティングに搭載しているが、2021年モデルではこれをリチウムイオンバッテリー対応にした「HYPER EVOLUTION」システムを新に搭載した。
なお、EVOLUTIONシステム非搭載車、EVOLUTIONシステム搭載車、HYPER EVOLUTIONシステム搭載車の各選択肢がある。EVOLUTIONシステム搭載車は従来通り家庭用エアコンと3本のディープサイクルバッテリーが搭載される。
エクステリア
クレア5.3Wのエクステリア
ベース車はトヨタ カムロード。2.0ガソリン/2WD、3.0ディーゼル/2WD、ディーゼル/4WD、ディーゼル/2WDダブルタイヤが選択できる。
シェルは同社独自のアルミコンポジットパネル(側面)とFRPコンポジットパネル(天井と床)を採用、高断熱性と軽量化を実現している。シェルの色は5色から選択できる。
また足回りも、高速走行に対応するミシュランタイヤ、オリジナルの強化アルミホイールの採用、さらにはダブルタイヤの選択など安全性にも高度な配慮がされている。また強化ショックアブソーバーも標準装備される。
インテリア
4種類の家具色から選べるインテリア(写真:ナッツRV)
同社の最上位キャブコンだけあって、高級感のあるインテリアが与えられている。家具はPVC合板が使われており、色は4色から選択できる。シート地はベルギーリネンを採用し、これもカラーや生地の選択が可能。収納の取っ手など細部も抜かりなくコーディネートされている。
レイアウト
5.3Wのレイアウトは前部に対座ダイネット、後部に横置き2段ベッド。中央にギャレーとユーティリティールームを配置する。ちなみに5.3Xは後部がダブルベッド仕様になっている。
5.3Wの特徴は後部ダブルベッドが上下段とも最大1200mmの幅を持つこと。これは5.3Xのダブルベッドと同じ大きさだ。即ち計7名が就寝でき、5.3Xに比べて大人数使用に適したレイアウトとなっている。
もちろん2名で使うことも可能で、この場合は広い2段ベッドで各人が自由な時間を過ごすことができる。なお2段ベッドの短所は高いところに上がらなければならないことで、夜中にトイレに立つといった場合は気を付ける必要がある。年配のユーザーには5.3Xの方が適しているかもしれない。
ダイネット
対座シートを中心にしたダイネット
ダイネットは4名対座シートをベースにサイドソファと単座シートがあり6名が着座できる。さらにエントランス部分にエクストラシートを設置でき、これにより計7名がテーブルを囲める。
なお移動時は対座ダイネットに4名、運転席と助手席で計6名が乗車できる。前向きに着座できるのは4名ということになる。単座シートに乗車することはできない。
ベッド
上下段ともウッドスプリングが採用されている
後部2段ベッドは1930x1200mmの大きさ。1200mmは家庭用ベッドではセミダブルベッドに相当する。即ち、各段に2名が就寝できる。ただし足元は多少狭い変形タイプだ。
上下段ともウッドスプリングが採用されており、また110mm厚の専用マットレスで、質の高い睡眠が約束されている。
720mmの高さがあるバンクベッド
バンクベッドは1900x1800mmの大きさ。クレアのバンクベッドの長所は高さが720mmあることで、ベッドへのアクセスが非常に楽だ。スティングはスマートなバンクではあるが、バンクベッドは基本的に収納スペースとして設計されているので低く、就寝できないことはないがエマージェンシーベッドと考えた方が良い。
ダイネットを展開したベッド(写真:ナッツRV)
3つ目のベッドはダイネット展開ベッドで、大きさは1900x900mm。家庭用ベッドではシングルベッドに多少満たない幅だが、大人1名が就寝できる。ベッド展開自体はシートバックを外して並べるだけなのでそれほど労力は必要ない。ダイネットベッドながら身長方向に1900mm取れており、窮屈なことはない。
ギャレー
2口常設コンロがあるギャレーセクション
ギャレーコンソールには2口コンロが一体になったシンクがビルトインされている。さすがに上級モデルなのでポータブルカセットコンロをいちいちセットする必要なく、すぐに使うことができる。
調理スペースは一見あまり広くないが、単座シートの上に延長の調理台が用意されており、これを下すと広い調理スペースができる。
冷蔵庫/電子レンジ
70L横開き冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は70L横開き式が、EVOLUTIONとHYPER EVOLUTIONに標準装備される。比較的大きな容量の冷蔵庫なのでファミリー分の食材を保存しておくことができる。
また電子レンジも同様に標準装備されており、ギャレー上部に収納される。調理は万全の装備となっているので、手の込んだ料理もできる。
ユーティリティールーム
防水処理されたユーティリティールーム
ユーティリティールームは防水処理されており、排水溝も備えられているので従来通りシャワーも可能と思われる。ただし2021年モデルのWebサイトには温水シャワーオプションが書かれていないので、必要な場合は確認いただきたい。
またカセットトイレもオプションとなっている。これはポータブルトイレやラップポンの選択肢、あるいは単に収納庫として使う場合の想定でもある。外部から直接アクセスできるドアが用意されていることからも、収納として使用することも考慮されていることが分かる。
なお、ルーム下部にはFFヒーターの吹き出し口が用意されており、トイレ時に寒い思いをすることは無い。
収納
ダイネットの上のオーバーヘッド収納
オーバーヘッド収納はダイネットの上とギャレー上に設置されている。特にダイネット上のオーバーヘッド収納は大型で収納力も大きい。またギャレー上の収納には食器類を収納しておける。
ただ内部にはそれ以外の収納は無い。ベッドルームやエントランスの上に更にオーバーヘッド収納を持つ5.3Xと比べると、収納スペースは少ない。
ベッド下の外部収納
また、2段ベッドの下は大きな収納になっており、多くのキャンプ用品などを積むことができる。ただし開口部は縦長ではなく、バンテックのコルドバンクスのように2段ベッドを取り外して自転車等を積むことは想定されていないようだ。
空調
家庭用エアコンが標準装備される
暖房はFFヒーターが標準装備される。また冷房は家庭用エアコンがEVOLUTIONとHYPER EVOLUTIONに標準装備される。室外機の位置は5.3Xがベッドルームの最後部に前向きに設置されるのに対し、5.3Eはエントランス上に設置される。
なおEVOLUTIONシステムのもう一つの特徴は、アイドリングだけでエアコンがほぼ無制限に使えること。即ち、アイドリングをしていれば、バッテリー消費なしにエアコンを使い続けられる。しかし長時間アイドリングを続けるのはやはり控えるべきで、停車時はバッテリーでエアコンを運転すべきだろう。
テレビ/ナビ
従来モデルには19型のテレビがオプション設定されていたが、これも現在同社のWebサイトに記載されていない。ナビもオプションと思われるが、必要に応じて確認いただきたい。
電装系
HYPER EVOLUTION システムのリチウムイオンバッテリー(写真:ナッツRV)
2021年モデルのクレアシリーズで最も大きな話題は、HYPER EVOLUTION システムの導入だろう 。これは、今までのREVOLUTIONシステムのサブバッテリーをリチウムイオンバッテリーに変更したもの。100Ahのリチウムイオンバッテリーが4個標準装備される。
なお従来のEVOLUTIONシステムバージョンも存続し、これには105Ahのディープサイクルバッテリー3個が標準装備される。さらにEVOLUTIONシステムを搭載しないノーマルバージョンも存続している。
搭載されるリチウムイオンバッテリーはHYPER EVOLUTIONのロゴが印刷されているので、同社のオリジナルと思われるが、キャンピングカーに一般的に使われているリン酸鉄リチウムイオンバッテリーだ。
ところでEVOLUTIONシステムのメインの機能は「エンジンでの発電によるサブバッテリーの急速充電」で、従来走行充電ではしっかり充電できなかったが、これを急速にしっかり充電できるようにしたシステムのことだ。
ただし、ディープサイクルバッテリーでは入力できる充電電流が限られていたため、EVOLUTIONシステムではしっかり充電できるが、ある程度時間がかかった。しかしリチウムイオンバッテリーでは大電流で充電できるためしっかり充電できるうえ、充電時間が短くなるというメリットもある。
具体的には、100Ahのリチウムイオンバッテリー4個(=400Ah)を、4~5時間のアイドリングで満充電できるとしている。80~90%程度までの充電なら急速充電されるのでもっと短時間で充電されるだろう。
そしてもちろん、リチウムイオンバッテリーの優位性がある。それは大電力に強いため、エアコンや電子レンジを駆動しても実質的な電気量を使える(ディープサイクルバッテリーでは大電力の場合容量の60%程度しか使えない)他、経年劣化が少なく寿命の直前まで容量の低下が少ないことだ。価格的には高価だが、長い目で見れば2~3年で交換しなければならないディープサイクルバッテリーよりも優位だ。
価格(2021年6月現在:千円台切り上げ:税込)
ガソリン2WD/ATシングルタイヤHYPER EVOLUTIONシステム搭載車で918万円~。EVOLUTIONシステム搭載車は830万円~、EVOLUTIONシステム非搭載車は750万円~。またHYPER
EVOLUTIONシステム搭載車でディーゼル2WD/ATダブルタイヤは1023万円~となっている。
高額なオプションはほとんど装備されているので、必需品で取り付けておくべきものは特にない。なおカセットトイレやポータブルトイレは搭載されていないので、必要に応じて設置できる。ラップポンの選択もありうるだろう。なおオプションの価格は未発表なので分からないが、旧モデルではカセットトイレは¥136,620(税別)とされていた。
また温水シャワーの設置の可否も不明だが、旧モデルでは35万円程度(同)で設定されていた。ソーラーシステムも必要に応じて設置できるだろう。
他モデル
5m超のカムロードキャブコンは多数存在するが、家庭用エアコンを装備し、リチウムイオンバッテリーを搭載するモデルは、アネックスのリバティ52DB/52SP(ディーゼル2WD/ATダブルタイヤ990万円~)、ダイレクトカーズのトリップ(同955万円~)/トリップ2(同1099万円~)/トリップ3(同1155万円~)がある。
これらのモデルは「HYPER EVOLUTIONシステム」のようなネーミングは無いが、HYPER EVOLUTIONシステムとほぼ同じ機能を持つ。リチウムイオンバッテリーの容量はリバティが240Ah、トリップ2は400Ahだ。
もちろんどちらもエアコン標準装備(リバティは家庭用、トリップはCOOLSTAR)で、どちらも瞬間湯沸かし付きのシャワールームも標準装備する。更にリバティは床暖房も標準装備だ。またファンルーチェのヨセミテもリチウムイオンバッテリー対応の予定がある。なおバンテックのジルシリーズにはリチウムイオンバッテリーのオプションはリストされていない。
まとめ
クレアもようやくリチウムイオンバッテリーに対応した感がある。ユーザーにとっては新たな選択肢ができたので良いニュースだが、大手ビルダーにしては遅い気がする。もっとも大手ビルダーだからこそ、安全面でのテストを重ねていたのかもしれない。しかしリン酸鉄リチウムイオンバッテリーの安全性は完璧とは言えないまでも証明されているし、現在では多くのビルダーがすでに対応している。
ということで、クレアを購入するなら、やはりHYPER EVOLUTIONシステム搭載車をお勧めする。EVOLUTIONシステム搭載車とは88万円高だが、バッテリー交換の手間が無くなり、またバッテリーの劣化を気にしながらエアコンや電子レンジを使う必要は無くなるので、その価値は十分あるだろう。
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