ランドワゴン ルームはRVランドが製作する、フィアット デュカトをベース車にするバン・コンバージョンキャンピングカー。
同社は各社の新車や中古車を販売しているが、ランドホーム コースターやランドワゴンリノプレミアムといった同社オリジナルのモデルも製作している。
ランドワゴン ルームは、2022年に正式輸入が始まったフィアットデュカトをベース車にするバンコンで、2023年2月に開催されたジャパンキャンピングカーショーで、ランドワゴン
タイムレストラベルと共に発表された。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
日本に正式輸入されるフィアット デュカトをベース車にするバンコンモデル。輸入キャンピングカーと異なり、エントランスは左側にある。
デュカトL3H2の6m近い車体に、多目的ルームを持たないレイアウトで、広々とした室内を実現。更に、モダンリビングの一室のようなインテリアを特徴としている。
前部にギャレー、中央に横座り対座ダイネット、後部に常設の横置きハイマウントダブルベッドを配置する。
家庭用エアコンかルーフクーラーを選択して設置できる。EcoFlowの大容量ポータブル電源 DELTA Proをシステム電源として使用している。
アピールポイント
・デュカトL3H2を使用し、多目的ルームを廃したことによる広い室内
・モダンリビングのようなインテリア
・家庭用エアコンかルーフクーラーを装備可能
・3600Whの大容量ポータブル電源をシステム電源として採用
ベース車とエクステリア
ルームのエクステリア
ベース車はフィアット デュカト L3H2。輸入されるデュカトの最も小型のサイズは全長5410mmのL2H2だが、それより長い全長のL3H2を選択。全長は5995mmと6mに近い。
エンジンは2184ccの直列4気筒マルチジェットディーゼルインタクーラー付きターボで、ミッションは9速AT。輸入されるベース車は全て最上位の180psバージョンとなっている。なお、デュカトには4WDは無く、2WDのみが存在する。
架装前のデュカトは運転席周り以外窓が無いため、モデルによってさまざまな位置に様々な大きさの窓が開けられる。ルームの場合はドアとリアゲートを除き、右側に2か所、左側に1か所、比較的小さめの窓が設けられている。
運転席周りの窓を除き、後部の窓は全てアクリル2重窓になっている。各窓には網戸とシェードが組み込まれている。
インテリア
ルームのインテリア
おそらく、インテリアがルームの最も大きな特徴だろう。白い壁と、ルーフに貼られたリアウッドの組み合わせは、モデルルームの一室のようだ。
Roomのロゴとインテリアライト
特に、Roomのロゴとインテリアライトのあるダイネット上の一角は、お洒落な演出だ。はやりの間接照明ではなく、スポットライトを使用した照明も、このインテリアにマッチし、高級感を与えている。
レイアウト
しかしこのインテリアが映えるのは、広い室内であることが原因として大きい。多目的ルームまで含めた全ての要素を無理無く配置するために長いL3H2を選択したのではなく、逆に多目的ルームを廃することにより、広々とした室内を実現している。
具体的には、前部にギャレー、中央に横座り対座ダイネット、後部に常設横置きハイマウントダブルベッドを配置している。デュカトの特徴である、回転して後ろ向きになるフロントシートの存在も無視している。
今までの常識にとらわれない、意欲的なレイアウトだ。乗車定員はこのダイネットに4名と、運転席、助手席に各1名なので、計6名。就寝定員は後部常設ベッドに2名、ダイネット展開ベッドに2名で、計4名となっている。
ダイネット
横座り対座スタイルのダイネット
車内中央にあるダイネットは、横座りの対座スタイル。テーブルは引き出してセットする。テーブルの脚が無いので、足元がすっきりしている。また、車幅が広いので、足元のスペースも十分余裕がある。
ダイネットで気になるのは、窓が無い点。窓は、右側はギャレーとベッドルーム、左側はスライドドアとベッドルーム、後はリアゲートにあるのみで、ダイネットには無い。食事中に外の景色を見られないのは残念だ。
ベッド
後部の常設横置きハイマウントダブルベッド
後部の常設横置きハイマウントダブルベッドは、1940x1200mmの大きさ。1200mmは家庭用ではセミダブルベッドの幅に相当する。身長方向も、エクステンションウインドウなどの細工をしなくても十分な長さが取れるのはデュカトの大きなメリットだ。
ダイネットベッド
ダイネットを展開すると、ここもベッドになる。ベッドサイズは1800x1050mm。1050mmは家庭用のシングルベッドの幅(970mm)より80mm広いだけなので、大人2名で就寝するのは窮屈だ。
また、長さも1800mmなので、長身のユーザーは足がつかえてしまうだろう。ただ。このモデルは二人旅向けのレイアウトなので、ダイネットベッドが使われることはあまりないだろう。
ギャレー
お洒落なギャレーセクション
前部右側に設置されたギャレーには、マットブラックのシンクとフォーセットが設置されている。コンロは常設ではなく、カセットコンロをいちいちセットしなければならないのは、この車格のモデルとしては残念な点だ。
シンクの下の給排水タンクと収納
このギャレーのギミックは、給排水タンクの扉が大きな調理台になること。これだけ大きいと調理がしやすい。ただ、給排水タンクの出し入れの場合は、テーブルの下にもぐって20Lの重いタンクを取り出さなければならない。
冷蔵庫/電子レンジ
90L両開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は90Lの横開き式冷蔵庫が標準装備される。この冷蔵庫は左右どちらからでも開けることができる両開き式で、ギャレー側からもダイネット側からも便利にアクセスできる。もちろん冷凍室もあるので、製氷や冷凍食品の保冷が可能だ。
電子レンジも標準装備される
家庭用の100V仕様の電子レンジも標準装備。使いやすい位置に設置される。後述のポータブル電源にはインバーターも内蔵されているので、外部電源が無いところでも電子レンジを使うことができる。
多目的ルーム
ランドワゴン ルームには多目的ルームは無い。多目的ルームを無くしたことが一つのコンセプトになっているので、デメリットではないが、トイレルームは必需装備と考えるユーザーには残念なところだ。将来このインテリアで多目的ルームを持つモデルを期待したい。
収納
オーバーヘッド収納が3か所に設置される
オーバーヘッド収納はギャレーの上、ダイネットの上、ベッドの上の3か所に設置されている。いずれも2連の扉付き収納で、大きな収納力がある。
シート下の収納
右側のダイネットシート下は、収納になっている。大きな収納力があるが、シートクッションもろとも上板を持ち上げる必要があるし、開けたままロックできないので、決してアクセスしやすいとは言えない。
最後部の大きなカーゴスペース
後部のハイマウントベッド下は、大きな収納スペースだ。リアゲートを開けて大きな荷物を車外から直接積み込むことができる。
ハイエースのハイマウントベッドでは、両側にベッドボードを支えるキャビネットが設置されているのが一般的だが、ランドワゴン ルームにはそれが無い。その代わり、小さなキャビネットが両側に設置されていたが、この中に何があるのかは確認できなかった。
ここには大容量のポータブル電源が置かれていたが、上の写真のようにそのままの形で置かれており、荷物を積む場合、スペース効率が悪いように思われるし、ポータブル電源の冷却ファンが塞がれてしまう懸念もある。今後改良されるのかもしれない。
空調
ルーフエアコン(OP)
冷房はルーフエアコンか家庭用セパレートエアコンを選択できる。ルーフエアコンは文字通りルーフに設置するので、収納スペースを潰す必要が無い。もちろん、サブバッテリー(ポータブル電源)で運転できる。
これは、イタリアのindelBと言うメーカーの製品で、RVランドが取り扱っている。消費電力は最大500W程度なので、冷房能力は十分ありそうだ。ちなみにOne Coolは600W、CoolStarは720W程度だ。
このクーラーは12V仕様なので、ポータブル電源のDC出力で運転できそうだが、残念ながら12V出力はクーラーには対応できない。従って、100Vを12Vに変換して使用する。
タイムレストラベルに設置された家庭用エアコン
家庭用エアコンは、ランドワゴン ルームではどこに設置されるか不明だが、ランドワゴン タイムレストラベルと同じであれば、上の写真のように運転席、助手席の上部に取り付けられる。
ポータブル電源の100V出力は3000Wもあるので、全く問題なく運転できる。家庭用エアコンはルーフクーラーに比べて10万円以上高価だが、ポータブル電源の100Vで直接運転できるので効率が良い。ただし、収納が一部失われるデメリットはある。
なお、FFヒーターはオプションで装備できる。また、マックスファンベンチレーターは標準装備される。
テレビ/ナビ
テレビはオプション設定されていないが、設置することは可能だろう。デジタルテレビチューナーはオプションで用意されている。ナビはベース車に標準装備されている。
電装系
ランドワゴン ルームの電装系に関する特徴は、大容量のポータブル電源をそのまま利用していること。EcoFlowのDELTA Proが使用されている。このポータブル電源は、3600Whの容量を持ち、3000WのAC100VのAC出力が可能。3600Whは約300Ahに相当する。
コンパクトなキャンピングカーでポータブル電源を使用するケースは増えているが、ランドワゴン ルームのような大型のモデルでポータブル電源をそのまま使用している例は他に見当たらない。なお、バンテックはEcoFlowを使用した独自のシステムIrisを、同社のバンコンに採用している。
ポータブル電源をそのまま使用するメリットは、電装系の開発や設置が不要なこと、安全性に関してポータブル電源のメーカーが保証していること、インバーターやチャージャーなどの周辺機器が内蔵されていることが挙げられる。
ユーザーのメリットとしては、車外に持ち出して使用できることが挙げられる。ランドワゴン ルームではDELTA Proが標準装備されているが、一般的には必要に応じてユーザーがブランドや容量を選択できる。
ソーラーシステムは装備できると思われるが、オプションリストには載っていない。
価格(2023年3月現在:千円台切り上げ:税込)
ベース車のデュカトは2.2Lディーゼル、2WDのみ。車両本体価格は1100万円とされている。これは2023年6月時の価格で、同社のサイトにはまだ掲載されていないので、現時点の価格はビルダーに問い合わせていただきたい。
付けておきたい必需装備は、家庭用エアコン(462,000円)か、ルーフエアコン(352,000円)が挙げられる。暖房はFFヒーター(275,000円)が用意されているが、家庭用エアコンの暖房機能も使える。外部電源に接続する機会が多いなら、家庭用エアコンの暖房がお勧めだ。
他モデル
デュカトベースでランドワゴン ルームと似たコンセプトのモデルは、トイファクトリーのユーロバーデンとデルタリンクのブレス54DDが挙げられる。
ユーロバーデンはその名の通り、バーデンをデュカトに展開したレイアウトで、多目的ルームを廃した広い室内がコンセプト。ブレス54DDは後部に2段ベッドを持つが、雰囲気がルームに似た作りになっている。
しかし、ランドワゴン ルームはどれとも異なる、独特のインテリアを持っている。おそらく、ルームを気に入ったユーザーは、他のモデルと比較しないのではないだろうか。
まとめ
大きなボディを使いながらも多目的ルームを廃し、家庭のモダンリビングルームと見間違うようなインテリアとした発想は大胆で素晴らしい。今までになかったキャンピングカーだ。特に女性は一目で気に入るのではないだろうか。
気になる点も挙げておくと、以下の点が思いつく。
1.ダイネットに窓が無い
2. ギャレーに常設コンロが無い
3.給排水タンクが出し入れし難い
4.ダイネットベッドが狭い
1.はやはりダイネットに窓は欲しい。確かにダイネットシートの後部はインテリア的に魅力的なスペースだが、やはり窓は欲しい。2.は調理をするユーザーの要望であって、調理をしないユーザーはあまり関係ない。3.は扉を簡単に取り外せるヒンジがあれば良いのだが。4.は二人旅を想定しているので、あまり重要なことではないだろう。
最後に、クルマ旅では多目的ルーム(トイレルーム)が欠かせないと言うユーザーは多い。ぜひ、将来多目的ルームが備わったバージョンもラインアップされることを期待したい。
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