ブレス54DDはデルタリンクが製作する、フィアット デュカトをベース車に使用したバンコンキャンピングカー
同社はオリジナルのキャンピングカーとして、D.V.DブランドのダーウィンQ3とダーウィンQ5をラインアップしている。また、多くの他社ビルダーのモデルも扱うほか、アドリアモービルやサンリビングの輸入モデルも扱っている。
ブレス54DDは、2022年に正式輸入が開始されたフィアットのデュカトをベース車にしたバンコンで、2023年2月に、TEH THIRD SPACE
のブランドで発表された。ブレス54DDの他にレイアウトの異なるブレスSLがある。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
デュカトH2L2をベース車にしたバンコンキャンピングカー。前部に対座ダイネット、後部に2段ベッドのレイアウト。各段に2名が就寝できるので、就寝人数は4名。
ハードメープルのリアルウッドを貼ったインテリアは、深いグリーンの家具とのマッチングも良い。
エクステリアは、オプションでオーバーフェンダーなどを装備することができ、内外装にこだわりを持つ。
アピールポイント
・デュカトをベース車に採用し、国産で最大サイズのバンコン
・上下段に各2名が就寝できる横置き2段ベッドで、ファミリーにも対応
・ハードメープルのインテリア
・家庭用エアコンと400Ahリチウムイオンバッテリーを標準装備
・オーバーフェンダーやラッピングなどエクステリアをドレスアップ(OP)
ベース車とエクステリア
ブレス54DDのエクステリア
ベース車はフィアット デュカトの正式輸入版で、サイズは輸入されるもののうち最小のL2H2。それでも、全長5,410、全幅2,050もあり、ハイエーススーパーロング(5380x1880mm)より大きい。
そのため街中での取り回しは良いとは言えないが、動力性能やスタイリッシュな外観は、キャブコンにも対抗できるパフォーマンスがある。
ブレス54DDはエクステリアのドレスアップも用意されており、展示車にはオプションのオーバーフェンダーやボディラッピング、あるいはオリジナルのアルミホイールなどが装着されていた。
架装前のベース車の荷室部分に窓はなく、ビルダーがレイアウトに合わせて窓を作ることになるが、ブレス54DDではキャビン以外の窓は全てアクリル2重窓になっている。
エンジンは2184ccの直列4気筒マルチジェットディーゼルインタクーラー付きターボで、ミッションは9速AT。輸入されるベース車は全て最上位の180psバージョンとなっている。なお、デュカトには4WDは無く、2WDのみとなっている。
インテリア
ハードメープルのインテリア
室内は一部の家具や天井板がハードメープルのリアルウッドになっている。ギャレーキャビネットやオーバーヘッド収納の扉は深いグリーンで、お洒落でモダンな空間を作り出している。
ギャレーのフォーセットをはじめとする金属部にマットブラックを採用しているのも、インテリアを引き締めている。照明はスポットライトが多用されており、洗練された高級感がある。
レイアウト
後部に横置き2段ベッドを持つレイアウト
前部に対座ダイネット、後部に横置き2段ベッド、左サイドにギャレーを配置。多目的ルームは持たない。
2列目の固定前向きシートに2名とフロントシートに2名、および後部のセカンドダイネットに4名で、計8名が乗車定員。3点式シートベルトは前部の4名分が用意されている。現実の使用では、後部の横座りシートに乗車することは考えない方が良いだろう。
就寝定員は、後部の2段ベッドに各段2名が就寝できるので、4名となっている。
ダイネット
回転する運転席と助手席のダイネット
デュカトでおなじみの、回転する運転席/助手席と2列目の前向きシートとで対座ダイネットになり、4名でテーブルを囲める。テーブルは2重になっており、広げて面積を増やせる。
ブレス54DDの大きな特徴のひとつに、後部のセカンドダイネットがある。上段ベッドを外し、下段ベッドの中央部を背もたれとして移動することにより、4名が横座りで対座できる。
ベッド
後部ベッド
後部の常設横置き2段ベッドは、上下段とも1900x1400mmの大きさ。ハイエースのようにエクステンションウインドウを設けなくても1900mmの長さが取れるのが、デュカトの利点のひとつだ。
1400mmは、家庭用ではレギュラーダブルベッドの幅に相当する。即ち、各段に2名が就寝できる。
マットレスにはクリングエアという素材を使用しており、快適な寝心地が得られると謳っている。
ギャレー
左サイド中央に設置されたギャレー
左サイド中央に設置されたギャレーは、前面が通路になっているので、立って調理ができる。デュカトは室内高が高いので、ハイエーススーパーロングでは頭がつかえてしまうユーザーでも問題ないだろう。
シンクの下の給排水タンクと収納
天板にはIHコンロとシンクがビルトインされている。IHコンロでの消費電力が気になるが、中火程度で700W、弱火で500〜200W程度と言われているので、平均して500Wと仮定すると、400Ahのリチウムイオンバッテリーで8時間程度使用できる計算になる。
それほど長く調理することは稀なので、まず問題ないと思われるが、エアコンも使用することを考えると、電気の残量には気を付けた方が良い。
シンクは大きく深いが、他モデルではあまり見かけない深さだ。また、フォーセットはマットブラックで、おしゃれなギャレーになっている。
シンクの下には各19Lの給排水タンクが収納されている。エントランスから少し離れているので車外から直接出し入れできないのが多少面倒な点。
ギャレー上部のオーバーヘッド収納
ギャレーキャビネットには引き出し収納が設置されており、食器や調理用具を収納しておくことができる。また、ギャレー上部にはオーバーヘッド収納も設置されている。
ギャレー上のオーバーヘッド収納の底部にスポットライトが無いのは残念な点。これがあれば調理の手元が明るくなるのだが。
冷蔵庫/電子レンジ
58L横開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は58L横開き式で、ギャレーと対面するカウンターの下に標準装備される。このカウンターは調理台にも使え、上部にはスパイスラックも設置されている。
電子レンジも標準装備される
家庭用の100V仕様の電子レンジが標準装備される。ちょっとした温めものや冷凍食品の調理に重宝する。1500Wインバーターも標準装備されるので、外部電源のないところでも電子レンジを使うことができる。
多目的ルーム
ブレス54DDには多目的ルームは設置されていない。その分、広いベッドとダイネットが可能になっているが、トイレルームを希望する場合は選択肢から外れてしまう。ただし、デルタリンクはアドリアやサンリビングの輸入モデルも扱っている。
アドリアのツインプラス540SPや、サンリビングのVシリーズ55SPなら、ブレス54DDとほぼ同じサイズで、サニタリールームがあり、温水シャワーまで標準装備されている。
収納
ベッドルーム右側上部の収納
オーバーヘッド収納は先のギャレー上の他に、ベッドルーム右側上部に設置されている。
フロントシート上部の収納
また、フロントシート上部にも収納が用意されている。
後部のベッド下の収納スペース
更に後部のベッド下も収納スペースとして利用できる。
空調
家庭用エアコンを標準装備
家庭用エアコンが標準装備され、室内機は右側中央に設置される。
テレビ/ナビ
テレビは特にオプション設定されていないが、設置か可能だろう。また、ナビもオプションリストにないが、希望のものが取り付けられると思われる。
電装系
サブバッテリーは、400Ahのリチウムイオンバッテリーが標準装備される。その他の電装系は全てオランダのVictron Energy社製のものを使用している。
なお、電源ユニットはギャレーキャビネットのエントランス側に設置されている。ここは一般的には車外からアクセスしやすいように冷蔵庫や給排水タンクを配置する。この位置に電源ユニットを置く必要があったのか疑問だ。
価格(2023年6月現在:千円台切り上げ:税込)
ブレス54DDの車両本体価格は、1307万円となっている。
ほとんどの主要装備は標準なので、追加して装備する必需装備はないが、予算に余裕があれば300Wのソーラーシステムは装備しておくと良いだろう。
他モデル
デュカトベースの国産バンコンは各社から発表されたが、ブレス54DDに似たレイアウトのモデルにナッツRVのフォルトナ TypeCがある。フォルトナTypeCも対座ダイネットと後部の2段ベッドの構成で、後部のベッドはセカンドダイネットになる。
ただし、フォルトナの上段ベッドは電動昇降式で、これはオプション。200Ahのリチウムイオンバッテリーが標準装備されるが、プルダウンベッド、家庭用エアコン、追加200Ahリチウムイオンバッテリーがセットになったコンフォートパッケージは1,400,000円もするので、特に電動昇降式ベッドが必要なければ、ブレス54DDの方が安価だ。
ダークホース的なモデルとして、ローラーチームのリビングストーンKJがある。これはフジカーズジャパンが販売する輸入モデルだが、日本の使い勝手に合わせた特別仕様となっている。エントランスが右側なのは残念な点だが、エンジンが140hpな分、安価だ。
まとめ
ブレス54DDは外観を一見するとオフロード志向のモデルかと思ってしまうが、これら外観のアクセサリーは全てオプション。本来の姿は、快適で美しいインテリアが楽しめるコンフォートなモデルだ。
あえて気になる点を挙げておくと、先述の通り、電装系のユニットがエントランス横の一等地にあるため、19Lの給排水タンクは車外から直接取り出せない点が挙げられる。
セカンドダイネットモードにする場合、取り外した上段ベッドをどうするのかも気になる。更に、ダイネット上にもオーバーヘッド収納が欲しいところ。ギャレー上部のクリアランスを考えているのかもしれないが、天井高が高いのでオーバーヘッド収納があっても特に問題ないだろう。
しかし4名のファミリーでも二人旅でも、ダイネット展開なしに就寝できるレイアウトは便利だし、特に2人で使用する場合は、各段ダブルベッドサイズで窮屈さは全くない。400Ahのリチウムイオンバッテリーや家庭用エアコンが標準装備されるなど、装備面も充実している。
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