Twin Plus(ツインプラス)540SPはアドリアが製作する、フィアットデュカトをベース車にした輸入バンコンキャンピングカー。
アドリアモービルはスロベニアに拠点を置く欧州の大手のビルダーで、フルコンの「Sonic(ソニック)」シリーズ、キャブコンの「Matrix(マトリックス)」、「Coral(コーラル)」、「Compact(コンパクト)」といったキャブコン、そしてバンコンの「Twin(ツイン)」シリーズをラインアップしている。
「Twin」シリーズにはポップアップルーフを持つ「Twin Sports」シリーズと、二人旅を想定した「Twin」シリーズがあり、更に「Twin」シリーズには上級グレードの「Twin Supreme(ツインスプリーム)」と標準グレードの「Twin Plus」シリーズがある。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
フィアットデュカトをベース車にした欧州の輸入バンコン。「Twin Plus 540SP」はTwinシリーズで最も全長が短いモデルで、輸入車の中では日本国内で比較的扱いやすい。
ダイネット、ギャレー、サニタリールーム、ベッドルームを持ち、またサニタリールームではカセットトイレと温水シャワーも完備されており、コンパクトなバンコンながらモーターホームとしての要素を全て装備している。
アピールポイント
・輸入モデルとしてはコンパクトで国内でも比較的扱いやすい
・高い天井高で圧迫感が少ない
・欧州モデルらしい洗練されたインテリア
・カセットトイレや温水シャワーを標準装備
・二口常設コンロがある広いギャレー
・豊富なオーバーヘッド収納を含む充実した収納
・ベッドを跳ね上げると自転車も積めるラゲッジルーム
ベース車とエクステリア

Twin Plusのエクステリア
ベース車はフィアット デュカト 2.2L 160HPバージョン。600SPBや600SPB Familyでは180HPバージョンがオプションで選択できるが、560SPではその選択肢は無い。
ハンドル位置は左右が選択できるが、エントランスは右側のみとなる。エアサスがオプションで設定されているので乗り心地の改善が期待できる。外装色は8種類から選択できる。
インテリア

エレガントで洗練されたインテリア
欧州車らしく、エレガントで洗練されたインテリアが特徴。家具は薄く、軽い材質を使用しているが、チープな感じは全くない。シート色は6種類から選択できるようだが、家具色についての選択肢は書かれていない。
レイアウト
前部にダイネット、中央にギャレーとサニタリールーム、後部に横置きダブルベッドのレイアウト。5413mmの全長なので多少詰め込み感はあるが、モーターホームとしての全ての要素が揃っている。
ダイネット

運転席と助手席が回転するダイネット
デュカトベースのバンコンやキャブコンに共通しているのが、運転席と助手席が回転してダイネットチェアになる仕掛け。これはフィアットがキャンピングカービルダーに提供するベース車に付属している機能で、従って自動的に装備される。
これにより、同じベース車を使うモデルには、他社モデルでも判を押したようにこの機能が付いている。これが欧州車のレイアウトを単一化している原因かもしれない。
ベッド

最後部の横置きダブルベッド
Twin Plus 540SPでは、最後部に横置きダブルベッドが配置される。ベッドサイズは1960x1270mmだが、左サイドは狭くなっており1130mmとなっている。全長が短いことのしわ寄せがこういったところに出ている。
1270mmのベッド幅は家庭用ではセミダブルベッドの幅(1200mm)に相当し、大人が2名就寝できる。ベッドにはウッドスプリングが採用されており、寝心地は期待できる。
ギャレー

常設二口コンロがあるギャレー
欧州のユーザーは決まったところに数日間停泊し、モーターホームとして過ごすため、車内で毎日のように調理をする。従って、コンパクトなバンコンであってもギャレーは実用的に使えるようになっている。
Twin Plus 540 SPでもそれは同じで、上位モデルと同様に、常設二口コンロと広い調理スペースが設けられている。日本のユーザーは移動型が多いためか外食がメインで、車内で調理はしないというケースが多い。
そのため、キャブコンであってもコンロはポータブルカセットコンロをいちいちセットするモデルが多く存在する。キャンピングカー文化の違いがキャンピングカーの設計にも現れている良い例と言える。

ギャレーキャビネットの引き出し収納
調理をするので、当然調理用具や食器も収納しておく必要があり、ギャレーキャビネットには大きな引き出し収納が用意されている。更にギャレーの上にはオーバーヘッド収納もあり、調理器具や食器、あるいは食材を収納しておくことができる。
冷蔵庫/電子レンジ

84L横開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は84L横開き式が標準装備されており、ギャレーキャビネットのエントランスに面した位置にビルトインされている。全長の長いモデルではギャレーとベッドルームの間に大型冷蔵庫が設置されているケースが多いが、Twin
Plus 540SPのみこの位置になっている。
そのため跳ね上げ式の調理台が省かれている。これも全長を短くしたしわ寄せのひとつと言える。
電子レンジはオプションで用意されており、これは国内で取り付けられる。欧州モデルでも不思議な点はあり、スペースに余裕があるモデルではガスオーブンが設置されるが、そうでない場合は電子レンジさえ用意されない。
Twin Plus 540SPもそうで、電子レンジの設置スペースは用意されていない。そのため、日本で電子レンジを付ける場合、オーバーヘッド収納を改修したりして対応することになる。
サニタリールーム

お洒落なサニタリールーム
日本の国産モデルでは多目的ルームという形で用意されており、トイレは最初から設置されていない場合が多いが、輸入される欧州モデルではほぼ全てにカセットトイレと専用の手洗いが標準装備されている。また最初から作り付けのため、デザイン的にも洗練されたものが多い。
国産バンコンで温水シャワーを装備できるモデルはほとんど存在しないが、唯一レクビィのシャングリラやカントリークラブに設置されている。
なお、Twin Plus 540SPではTrumaのCombi4ガスボイラーでで給湯する。しかし日本ではガスボンベの充填は旅先でできない可能性が高いため、ベース車の燃料(軽油)で動作するオプションのTruma
Combi D6の方が好ましい。
なお、給水タンクは100L、排水タンクは70Lが装備されている。
収納

ベッドルーム3面にオーバーヘッド収納が設置される
先に触れた通り、ギャレーキャビネットには豊富に収納が用意されているが、一般的に輸入モデルは収納が充実している。
Twin Plus 540SPも例に漏れず、豊富な収納を装備しているが、まずオーバーヘッド収納が挙げられる。オーバーヘッド収納はダイネット両側とベッドルーム3面に設置されており、それぞれが大きな収納力を持つ。

ベッド下の大きなラゲッジスペース
また、ベッド下は大きなラゲッジスペースになっており、キャンプ用具などかさばる荷物も多く積み込むことができる。

ベッドを跳ね上げると自転車も積める
さらにベッドを跳ね上げると、自転車も積める大きな荷室になる。ただし、この状態では就寝するベッドが無くなってしまうので、就寝する場合は自転車を車外に下す必要がある。

ベッド下左側の収納キャビネット
また、ベッド下左側の収納キャビネットには扉付きの収納も用意されている。この扉は下向きに開くようになっているが、手前に荷物があると開けることができない。できればスライド式の扉が望まれる。
空調
暖房はTruma Combi4が標準装備されており、給湯とFFヒーターの機能を併せ持つ。冷房はDometic製のルーフエアコンが本国取り付けのオプションとして用意されているが、これは外部電源があるところでしか使えない。
そこでディーラーオプションとして、国内で家庭用セパレートエアコンを取り付けることができる。
展示車にはセパレートエアコンが装備されていないので、どこにどのように取り付けられるのか分からないが、バンコンにも取り付けられるようになったのは大きな進展と言える。
テレビ/ナビ

テレビ取り付け用の金具
テレビ取り付け用の金具が標準装備され、19型テレビがオプション設定されている。また、ナビもオプション設定されているが、好みのものも設置することができるだろう。
電装系
外部電源のインフラが完備されていない日本では、輸入モデルの電装系は弱点だ。標準では100Ahのディープサイクルバッテリーが1個のみ装備されている。もちろんこれでは不足なので、国内でバッテリーの強化オプションが用意されている。
これはAGMバッテリーと、リチウムイオンバッテリーが選択でき、リチウムイオンバッテリーでは200Ahと400Ahが選択できる。また、リチウムイオンバッテリーはインバーター、外部100V電源による充電、走行充電がセットになっており、インバーターは1500Wと2000Wが選択できる。
セパレートエアコンを搭載する場合はリチウムイオンバッテリーと1500Wインバーター、あるいは2000Wインバーターのセットの搭載をお勧めする。
またソーラーシステムもオプションで用意されており、100Wパネル1枚、100Wパネル2枚、250Wフレキシブルパネル1枚が選択できる。
価格(2022年11月現在:千円台切り上げ:税込)
ベース車のデュカトはディーゼル2.2L 160HP 2WD 9ATのみで、車両本体価格は995万円~となっている。
付けておきたいオプションは、セパレートエアコン(715,000円)、400Ahリチウムイオンバッテリーと1500Wインバーターその他セット(1,320,000円)、電子レンジ(66,000円)が挙げられる。
エアコンとリチウムイオンバッテリーは相当高価だが、高温多湿な日本で使用する場合は、このクラスのモデルには必須の装備と考えられる。
他モデル

クリフアドベンチャーエディション 540のインテリア
このサイズの輸入バンコンは、サンライトのクリフアドベンチャーエディション 540(1067万円)と、ローラーチームのリビングストンK2(965万円~)と同リビングストンKJ(974万円~)が挙げられる
全長はいずれも5410mmで、同様にデュカト2.2L 160HP(リビングストンK2は140HP)をベース車にしている。レイアウトはほとんど同じで、インテリアが異なるが、リビングストンKJは後部ベッドが2段になっており、計4名が就寝できるので、ファミリー向けのレイアウトになっている。
まとめ
輸入モデルはお洒落なインテリアデザインや、装備が充実していることで人気があるが、欧州と日本ではキャンピングカーを取り巻く環境が異なるので、注意が必要だ。
まず、ガスがプロパンガスボンベを使用していること。旅先でのプロパンガスの充填は断られることが多く、ガスの使用量を減らすため、できればTruma
Combiは軽油バージョンが望ましい。
また、セパレートエアコンの搭載を前提にしていないので、どこにどのように取り付けられるのか確認すると良いだろう。これは電子レンジも同じ。
また、エントランスが右側にあるので、車道で車外に出る場合、特に子供がいる場合は注意する必要がある。
上記3モデルの比較表を下に掲載したが、内容はほとんど同じだ。価格やインテリアデザインで好みのものを選択すると良いだろう。これらは主に二人旅仕様だが、このサイズで、ファミリーで使用したい場合はリビングストンKJのみとなる。
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