TWIN(ツイン)Supreme 600SPB GBは、スロベニアのビルダーアドリアモービルが製作する、フィアット デュカトをベース車に使用した欧州バンコン。日本での販売網はこちら。
TWINはアドリアのラインアップでは唯一のバンコンモデル。輸入されているTwinにはSupremeとPlusの2種類のグレードがあり、Supremeが上級グレードとなる。本国では更に下位グレードのAxessもある。
またレイアウトは、Supremeでは4種類が輸入されているが、6mを切るのは600SPBだけ。なおGBは左エントランスを意味している。
(記事中の価格は全て税別です)
コンセプト
6mを切るボディサイズは国内で比較的運転しやすく、またGBは右ハンドル左エントランスなので国産キャンピングカーと同じ感覚で使用できる。ただそうは言ってもハイエーススーパーロングよりも更に長いし車幅も広いので、それなりに取り回しには気を使う。
欧州モーターホームはコンパクトなバンコンでもギャレーやカセットトイレ、温水シャワーが標準装備されており、国産のキャブコンと遜色ない装備を持つ。
エクステリア

Twin Supremeのエクステリア
ベース車はフィアットデュカト2.3L 160HPでオプションで180HPも選択できる。2020年モデルの大きな魅力は、リビングエリアの大きな二つのサンルーフ。Plusでは一つしか無いので、Supremeの大きなアドバンテージでもある。
外装色は6種類から選択でき、これはPlusも同じ。
インテリア

インテリアは様々な素材や色を選択できる
インテリアカラーもシートと家具色の組み合わせを6種類から選択できる。欧州車らしい洗練されたインテリアが特徴だ。
オーバーヘッド収納には取っ手が無く、プッシュして開く仕掛けになっている。
レイアウト
600SPB GBは、前部に対座ダイネット、後部に横置きハイマウントダブルベッド、中央にギャレーとサニタリールームを配置する。乗車人数は4名で、全員が前向き乗車できる。ただし、就寝定員は後部ダブルベッドの2名のみなので、基本的には二人仕様となる。
なお、Twinは名前が示す通り基本的に二人旅仕様車だが、640 SPB FAMILYのように後部ベッドが2段になっており、4名が就寝できるモデルもある。6mを切るファミリー向けモデルはSupremeにはなく、Plus600
SBP Familyが選択できる。
ダイネット

フロントシートが回転するダイネット
欧州車でおなじみの運転席と助手席が反転して後ろ向きになりダイネットシートとして使用できる。2列目シートと合わせて4名でテーブルを囲める。
ただ、先述の通り2名で使用するケースが多いので、2名ならゆったり座ることができる。テーブルはスライドして回転すると面積が広くなる。

ダイネットの上には大きなサンルーフが装備される
ダイネットの上部には大きなサンルーフが2か所あり、明るく開放的なダイネットだ。
ベッド

後部には横置きハイマウントダブルベッドが備わる
後部のハイマウントダブルベッドアは横置きで、1960x1450mmの大きさ。家庭用のダブルベッドが1950x1400mmの大きさなので、これよりも大きい。ベッド下にはウッドスプリングがあり、寝心地にも配慮されている。

ベッド下にはウッドスプリングが仕込まれている
なお、就寝人数は2名となっているが、スペックシートにはダイネットシートの大きさも記載されており、1800x1000/600mmとなっている。これはエマージェンシーベッドと位置付けられているので就寝人数にはカウントされていないようだ。
ギャレー

収納が豊富に用意されたギャレーコンソール
Twinのギャレーは欧州車の標準から比べるとコンパクトだが、それでも2口コンロが一体になったコンビネーションシンクがビルトインされている。跳ね上げ式の調理台が付いているので、手の込んだ調理もできる。
更にギャレーコンソールには多くの引き出し収納が付いており、食器や調理道具を収納しておける。
給水タンクと排水タンクはそれぞれ100Lと70L。シャワーにも使うため大容量の水タンクが積載されている。もちろんボイラーが付いているので湯を使うことができる。
冷蔵庫/電子レンジ

84L冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は12V仕様で、容量は84Lのものが標準装備される。欧州車は3Wayの冷蔵庫を搭載するケースが多いが、他車も含めバンコンモデルは12V仕様が多い。

ガスオーブンが標準装備される
また、ガスオーブンが標準装備される。これは国内ユーザーにはオーバースペックかもしれない。むしろ電子レンジが欲しいところだが、これはオプション(6万円)となっている。
サニタリールーム

カセットトイレと専用手洗い
欧州車はバンコンでも当然のようにトイレルーム(しかも専用手洗い付き)と温水シャワールームが標準装備される。ただ、スペース的に制限があるバンコンタイプやコンパクトなキャブコンでは、トイレルームとシャワールームが共通しているケースが多い。
従って、少し古いタイプのモデルでは、シャワーを使うと便器が濡れてしまうという欠点があった。
最近のアドリアモデルでは、これを「回転する仕切り壁」で解決している。具体的には手洗いが付いている壁を右に回転すると、手洗いがトイレの上の部分に移動し、左側にシャワールームが出現する。
シャワーの温水はToruma Combi4で作る。このボイラーはガスで加熱するが、湯沸かしと同時にFFヒーターとしても使用できる優れモノで、欧州モーターホームには多く使用されている。
ただし、湯は一度に60℃で10Lしか沸かすことができないため、これを水と混ぜ、適温にして使用しても一人分程度しか使えない。従ってファミリーで使うには何度も沸かさなければならない。この辺りは瞬間湯沸かし機能が付いた一部の国産キャブコンの方が先を行く。
収納

ダイネット上のオーバーヘッド収納
欧州車はコンパクトなバンコンモデルでも収納が充実している。まずオーベーヘッド収納は、ダイネット上両側、ギャレー上、そしてベッドルームの左右と後部に設置されている。更にそれぞれが大容量なので、これだけでも大きな収納力を持つ。

ベッドルームのオーバーヘッド収納
また先述のように、ギャレーコンソールには引き出し収納が豊富に用意されており、食器類はここに収納できる。
車内にはこのほか様々なところに収納が用意されており、収納に困ることは無い。

後部ベッド下の収納スペース
更に、ベッド下は大きな収納スペースになっており、小型の自転車なら積むことができるだろう。また、左側は扉のある独立した収納も用意されている。左側最後部はガスボンベの収納になっている。
空調
暖房は先のようにToruma Combi4ボイラーがFFヒーターとしても機能する。
冷房は、アドリアで用意されているエアコンはTruma Aventa comfort2400で、これは一体型ルーフエアコンなのですっきり取り付けられるが、外部電源でしか動作しない。
ディーラーでは日本製の家庭用セパレートエアコンをオプション(65万円~)で用意している。これは日本製家庭用エアコンを車載用に改造したe-Comfortで、ルーフに取り付ける。通常の家庭用エアコンと同じなので、サブバッテリーで動作することができ。
ただし実用的にサブバッテリーで運転するためには、オプションのリチウムイオンバッテリーをお勧めする。ただ、200Ah(インバーターと充電機能付属)で745,000円、400Ah(同)で1,076,000円と非常に高価だ。
テレビ/ナビ
19型のテレビがオプション設定されている。また、地デジチューナーや地デジアンテナ、追尾式BSと110°CSアンテナなどのオプションも用意されている。ナビもオプションで用意されている。
電装系
このモデルに限らず、海外モデルは往々にして電装系は貧弱だ。これは外部電源が取れる環境が整っているからで、このインフラを想定して作れたキャンピングカーを日本で使う場合は、電装系を強化する必要がある。
サブバッテリーは標準では105Ahのディープサイクルバッテリーが1個しか付いておらず、これでは心もとない。セパレートエアコンを装備する場合は、少なくとも200Ahのリチウムイオンバッテリーの搭載をお勧めする。1500W正弦波インバーターと走行充電、外部電源による充電機能も必要になる。
また、ソーラーシステムもオプションで用意されている。実用的に使うなら200Wがお勧めだ(188,000円)。
価格(2020年12月現在:千円台切り上げ:税別)
Twin Spreme 600SPB GBは828万円~。装備しておきたいオプションは、セパレートエアコン(65万円~)、リチウムイオンバッテリー(200Ah)+1500Wインバーター+充電器+走行充電強化(745,000円)が挙げられる。
後は必要に応じてソーラーシステム100W x2(188,000円)、電子レンジ(6万円)などがある。
他モデル
6mを切る欧州バンコンでは、サンライトのCLIFF(クリフ)と、ローラーチームのリビングストーン K2がある。
CLIFFは540(880万円~)、600(913万円~)があり、全長は600は5990mmだが、540は5410mmと更にコンパクト。ハイエーススーパーロングとほとんど同じだ。この他、ファミリー用の601もある。
ただしCLIFFには家庭用エアコンが搭載できない。用意されているエアコンはTorumaのルーフエアコンのみとなる。
また、リビングストーンK2(669万円~)は全長5410mmでCLIFF540と同じ。こちらは前出のe-Comfortがルーフに装備でき(50万円)、バッテリーで運転できる。リビングストーンK2にはリチウムイオンバッテリーもオプションで用意されている。(200Ah:67万円)
ローラーチームにはK2のほか、ファミリー対応のリビングストーンK3(669万円~)とリビングストーンKJ(689万円~)もあり、いずれも全長5410mmだ。
まとめ
アドリアのモデルは毎年進化しており、特にSpreme2020年モデルの大きなサンルーフは他にないアドバンテージだ。また欧州車の洗練されたインテリアも、大きな魅力と言える。更に、国内で家庭用エアコンが装備できるのも嬉しい。
欧州モデルはエクステリアもインテリアもお洒落で、国産バンコンに無い魅力がある。しかし、キャンピングカー文化の異なる欧州で設計されたモデルのため、先に書いたように注意すべきことも多々ある。
特に電気やガスのインフラに関しては、よく調べて理解しておく必要がある。しかし、600SBP GBでは左エントランスとなっており、これは国内では使いやすい。セパレートエアコンやリチウムイオンバッテリーも装備できるようになり、輸入モデルのデメリットは徐々に解消されつつある。今後はプロパンからカセットガスへの変更や瞬間湯沸かしなどを期待したい。
関連記事