Compact Plus SL(コンパクトプラスSL)は欧州のビルダーアドリアモービルが製作する、フィアットデュカトをベース車にしたキャブコンキャンピングカー。日本ではデルタリンクが輸入販売している。
アドリはスロベニアに拠点を置くビルダーで、フランスのトリガノグループカンパニーでもある。また、セカンドブランドとしてサンリビングを翼下に置いている。
Compactはアドリアのラインアップのうち、最も小型のキャブコンの位置付けで、上級クラスのSUPREMEと普及クラスのPLUSがあるが、インテリアや装備は変わらず、エクステリアがグレーかホワイトかの違いのみとなっている。
日本へはDL、SL、SPが輸入されている。これらはレイアウトのバリエーションで、DLとSLがツインベッド、SPは横置きダブルベッドを持つ。DLは全長が6,990mmに対し、SLは6,620mmと多少短くなっている。ちなみにSPは5,999mmで6mを切る。
コンセプト
人気のツインベッドを搭載するモデルとしては、他ブランドを含めた輸入モデルの中で最も全長が短い。それでもゆうに6mを超え、国内では扱いやすい大きさではない。しかし独特の洗練されたインテリアや温水シャワーまで用意された装備は欧州モデルならではと言える。
エクステリア
Compact PLUS SLのエクステリア
ベース車はフィアットデュカトのディーゼル2.3L 160HPモデル。オプションで180HPにグレードアップできる。デュカトなので駆動はFFのみ。なお自動ブレーキシステムや車線逸脱警報などの最新安全装置が標準装備される。
エクステリアデザインはSUPREMEとの唯一の差異で、SUPREMEがシルバーメタリックに対し、PLUSはホワイトになる。(オプションでアップグレード可能)
なお、エントランスは右サイドのみだが、ハンドルは左右が選択できる。またサイドオーニングはオプション設定となる。
インテリア
インテリアは様々な素材や色を選択できる
家具デザインは「Sandy White」と言われる1種類だけながらシートは数種類から選択できる。全体的なインテリアやサニタリールームは、欧州車らしい洗練された内容になっている。
大きなサンルーフが標準装備される
また、2020年モデルの特徴は、ダイネット上の大きな二つのサンルーフ。バンコンのTWINとは異なり、CompactではPLUSにもSUPREMEと同じサンルーフが搭載される。
レイアウト
多くの欧州モデルと同じで、前部にダイネット、後部にベッドルーム、中央にギャレーとサニタリールームを配置する。室内が広いので、前から後ろまで動線は全く問題ない。運転席、助手席から後部への移動もごく普通に行える。
トイレルームとシャワールームは、Compactの全レイアウトでセパレートではなく一体式。またプルダウンベッドは持たず、ダイネット展開するエマージェンシーベッドはあるものの、基本的には二人仕様のレイアウトとなっている。
ダイネット
2名対座にロングシートを加えたダイネット
運転席、助手席が回転してダイネットチェアになり、2列目シートと対座ダイネットを形成するのは、多くの欧州モデルと同じ。SLにはサイドに単座チェアも置かれており、5名程度でテーブルを囲むことができる。
ベッド
ツインベッドは中央を埋めてダブルベッドにもなる
SLはツインベッドを持つレイアウトで、最後部に縦置きツインベッドが配置される。大きさは2000x850mmと1970x800mm。家庭用シングルベッドの幅が970mmなのでこれには満たないが、中央を別マットで埋めると、2000x2000mmの巨大なベッドになる。
またダイネットを展開するベッドは1680x1000mmで、こちらは身長方向が1800mmに満たないので子供用ベッド、もしくはエマージェンシーベッドの位置付けになる。
ギャレー
前面が広く取られたギャレーセクション
Compact PLUS SLのギャレーはエントランスのすぐ後ろにあり、ギャレーコンソールには3口コンロとシンクがビルトインされている。コンロの手前は大きくスペースが設けられており、調理がしやすい。
また、ギャレーコンソールには豊富に引き出し収納が用意されており、食器や調理器具などを余裕で収納しておくことができる。
冷蔵庫/電子レンジ
40L冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は3Way70Lで、もちろん冷凍室付き。3Wayというのは外部電源、バッテリー、そしてガスで動作することを意味する。欧州車の場合、外部電源が取れない場合はガス(プロパン)で冷却するのが一般的。
Compact PLUS SLも8Kgのガスボンベが2本搭載できるようになっている。
サニタリールーム
ラップポントイレ(別売)も置くことができる。
欧州車のサニタリールームは総じてお洒落で装備も整っているが、Compact PLUS SLも同じで、カセットトイレ、温水シャワー、専用手洗いが装備されている。
最近の欧州車では、シャワールームとトイレルームが同居している場合、手洗いボードを回転させると、まるで回り舞台のようにシャワールームに変身する仕掛けになっている。これにより、シャワーを使っても便器などが濡れることはない。
温水はTORUMA社製のCombi4ボイラーで沸かし、40~60℃の湯を水と混合して使う。ただし、欧州車の他のモデルにも共通することだが、これでは2人分程度でも不足する。数人が使う場合はその都度沸かす必要があり、その間待たなければならない。
国産キャブコンではトリップやリバティ52BD/SPのように瞬間湯沸かし機能が採用されたモデルも登場している。欧州ビルダーにも要望したい点だ。
収納
下段ベッド下の収納
一般的に欧州車の収納は非常に充実しているが、Compact PLUS SLも例に違わない。まずオーバーヘッド収納はダイネット上部両側、ギャレー上、そしてベッドルームを取り囲む形で取り付けられており、それぞれが大容量。
また、先にも触れたように、ギャレーにはカトラリー収納を含め引き出し収納や調理器具用の収納が充実している。またベッド下部にも車内用の収納が用意されている。
車内のベッド下収納
更に後部ベッド下は車外からアクセスする巨大な外部収納になっている。左右両側には大きな扉が付いており、バイクでも積載することができる。
巨大な外部収納
空調
逆に欧州車の弱点は空調だ。暖房はトルマのボイラーがFFヒーターの機能も持っている。しかしこれはガスを燃料にするので、ガスを使いたくない場合にはオプションの軽油仕様のFFヒーターを別に搭載する必要がある。
また冷房系は国内で取り付けることになる。欧州ではルーフエアコンが主流だが、これは外部電源が取れる環境が整っているから。
国内ではバッテリーで動作させるため、効率の良い家庭用エアコンが望ましい。しかしもとから家庭用セパレートエアコンを取り付ける設計がされていないので、国内ビルダーが工夫して取り付けているのが現状だ。
Compact PLUS SLにはトリプルバッテリーのオプションとリチウムイオンバッテリーと1500Wのセットオプションが用意されているので、エアコンを長年にわたり実用的に使うにはリチウムイオンバッテリーを選んでおきたい。
テレビ/ナビ
19型のテレビがオプションで用意されている。ナビシステムはもちろん国産品がオプションとなる。
電装系
標準装備では100Ahのサブバッテリーが1個と走行充電、外部100V入力とこれによる充電機能が標準装備される。もちろん100Ahのサブバッテリー1個では心もとないので、オプションで増設する必要がある。
リチウムイオンバッテリーは200Ahと400Ahが用意されており、いずれも1500W正弦波インバーターとセットオプションになっている。車内が広く、家庭用エアコンの消費電力は大きいと思われるので400Ahが安心だが、価格は実に1,076,000円(税別)もする。200Ahでは745,000円(同)となっている。
ソーラーシステムはオプションで、100Wか200W(100W x2)が選択できるが、ルーフ面積は十分あるので、もちろん200Wを選んでおきたい。
価格(2020年12月現在:千円台切り上げ:税別)
Compact PLUS SLの車両本体価格は税別880万円~。ちなみにSupreme SLは910万円~で30万円しか変わらない。ただし、装備やインテリアは同じで、外装色のみが異なる。
装備しておきたいオプションは、セパレートエアコン(50万円)、リチウムイオンバッテリー(200Ah)+1500W正弦波インバーター(745,000円)、電子レンジ(6万円)が挙げられる。
予算に余裕があればリチウムイオンバッテリーは400Ahが選択できる(1,076,000円)。またトルマヒーターはガスを消費するので、これを避けたい場合は軽油を燃料とするべバスト製FFヒーター(20万円
or 28万円)を装備しておくのも良いだろう。
他モデル
ツインベッドのレイアウトを持つモデルは、デスレフならPULSE(パルス) Low-Profile T6811 EB(全長6990mm:1180万円~))、サンライトならLow-Profile T67S(6960mm:880万円~)、サンリビングならS65SL(6703mm:812万円~)、ホビーならT65GE(7060mm:1013万円~)、ローラーチームならZEFIRO 285TL(6990mm:889万円~)があるが、いずれもCompact PLUS SL(6620mm:880万円)よりも全長が長い。
まとめ
Compact PLUS SLに限らず欧州車全般に言えることは、インフラ環境が異なる欧州で企画されたモデルであるということ。キャンピングカーマーケットが小さい日本の事情を考慮して作っているわけではない。従って、日本国内で乗る場合は不便な点も知っておく必要がある。
日本で使う場合最も困るのはエアコンとガスだろう。日本ほど高温多湿でない欧州ではエアコンの必要性が少なく、またルーフエアコンが付いていても外部電源でしか動作しない。これは外部電源が取れる環境が少ない日本では使い難い。
また、ヒーターやボイラー、あるいは3Way冷蔵庫はガスで動作することが前提だが、国内ではガスボンベの充填が、特に旅先では難しい。従って長期旅ではあらかじめガスを充填してくれる販売店を探しておくか、できるだけガスを使わないようにする。
なお、ハンドルの左右は、Compact PLUS SLでは選択できる。ただしエントランスは右側になる。ちなみに左ハンドルは慣れてしまうと良い面もあり、左側いっぱいに寄せて対向車とすれ違ったり、左側に寄せて駐車する場合視認性が良い。
Compact PLUS SLはメインブランドでありながら価格が安価なのも大きなアドバンテージだ。国産キャブコンでも同じくらいの価格なので、国産キャブコンユーザーにも大きくアピールするだろう。
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