ダーウィンQ5はデルタリンクが製作する、ハイエーススーパーロングをベース車にしたバンコンキャンピングカー。
同社はアドリアやサンリビングといった欧州モデルの輸入販売の他、D.V.D(デルタ・バン・デザイン)のブランドでハイエーススーパーロングをベース車にする「ダーウィン」シリーズを展開している。
また、ジャパンキャンピングカーショー2023では「TEH THIRD SPACE」というブランドでフィアットデュカトベースの国産モデル「BREATH 54DD」と「BREATH 54SL」を発表した。
ダーウィンシリーズには多目的ルームを持たない「ダーウィンQ3」と、多目的ルームを持つ「ダーウィンQ5」がある。ここではダーゥインQ5をレビューする。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
ハイエーススーパーロングをベース車にするバン・コンバージョン キャンピングカー。対座ダイネット、ギャレー、ダブルベッド、多目的ルームの全てを持つ、数少ないレイアウトを採用している。
これらすべての要素を配置するため、運転席と助手席のシートバックを前に倒し、後ろ向きのシートとして活用、2列目のマルチモードシートとで対座ダイネットを形作っている。
ジャパンキャンピングカーショー2023では、特別なエクステリアデザインを施した「Vantastic Edition」を発表。また家庭用セパレートエアコンを最後部に設置できるようになったほか、スタイリッシュな台座に設置される300Wのソーラーシステムも発表した。
アピールポイント
・対座ダイネット、ギャレー、ダブルベッド、多目的ルームを設置したレイアウト
・洗練された内外装デザイン
・右側ウインドウにエクステンションウインドウを架装
・左側後部とリアゲートウインドウはアクリル2重窓を標準装備
・横置き冷蔵庫や常設コンロでクルマ旅に理想的な装備
・後部に常設ハイマウントダブルベッドを設置
・ベッド下の大きな収納スぺース
・豊富なオーバーヘッド収納
・家庭用エアコンを設置可能(OP)
・特別なエクステリアデザインを施した「Vantastic Edition」を選択できる(OP)
・スタイリッシュな台座の300Wソーラーシステム(OP)
ベース車とエクステリア
ダーゥインQ5のエクステリア
ベース車はハイエーススーパーロング特装車。2WDと4WDが選択できる。右側には前部まで続くエクステンションウインドウを架装。前部のダイネット横の窓はアクリル2重窓になっている。
更に後部左側とリアゲートの窓もアクリル2重窓を標準で架装。高い断熱性能が期待できる他、アクリル2重窓は跳ね上げて開くことができるので、リアゲートを開けなくても換気できるという利便性もある。
ルーフ後部にはスタイリッシュな台座にソーラーパネルをオプションで設置可能。2023年には新たな台座と300Wのソーラーパネルも選択できるようになった。
インテリア
ブラウンオークのインテリア
ダーウィンのインテリアは洗練されており、高級感もある。家具色は明るい「ナチュラルオーク」と濃い「ブラウンオーク」の2種類、シート地は4種類から選択できる。
照明は間接照明が採用されており、調光も可能になっている。
レイアウト
ダーウィンQ5の特徴は、対座ダイネット、ギャレー、ダブルベッド、多目的ルームを全て持つレイアウトにある。一般的にダブルベッドを採用すると、前方に浸食するためスペース効率が悪く、例えばダーゥインQ3では多目的ルームを廃している。
これら4つの要素を全て収めるため、ダーゥインQ5では運転席、助手席のシートバックを前に倒して後ろ向きのシートとし、2列目のマルチモードシートと対座ダイネットを形成している。
2列目シートには2名が着座できるので、乗車定員は運転席、助手席を合わせて4名となる。また、就寝定員は2名だが、2列目シートをフラットにすると小さな子供なら就寝できる。(ベッドの項参照)
2列目シートにはチャイルドシートを設置することもできるので、小さな子供連れのファミリーにも対応できる。もちろん二人旅にも適したレイアウトだ。
ダイネット
スイベルシートを設置したダイネット
前述のように運転席、助手席のシートバックを前に倒して後ろ向きのシートにすることができるが、上の写真のように、シート自体が回転するスイベルシートに置き換えるオプションもある。
ただしデュカトのシートのように座ったまま回転することはできず、狭い車内で回転するのは多少面倒だ。
ダイネット上部のオーバーヘッド収納
ダイネット上部には大きな収納力があるオーバーヘッド収納が設置されている。その前部にはマガジンラックも備えられている。
ベッド
後部の常設横置きダブルベッド
後部の常設横置きダブルベッドの大きさは1800x1400mm。これは家庭用ではレギュラーダブルベッドの幅に相当する。
ベッドルーム上部両側のオーバーヘッド収納
ベッドルーム上部両側にオーバーヘッド収納が設置されている。大きな収納力があり、寝具や衣類を収納しておくことができる。
ダイネットを展開した子供用のベッド
ダイネットを展開すると950x900mmのベッドになる。これはもちろん子供用のベッドの規格(1600x400mm)にも満たないので、ベッドとしてカウントされないが、小さい子供なら寝かせることができる。
ギャレー
常設2口コンロがあるギャレー
ダーゥインQ5のギャレーの特徴は、常設2口コンロを標準装備していること。多くのバンコン(キャブコンの一部でさえ)では常設コンロを装備していない。調理をするユーザーにとって常設コンロは大変便利な装備だ。
後部左側に収納された給排水タンク
給排水タンクはシンクの下ではなく、後部左側に収納されている。この位置にしたことにより、①リアゲートを開けて車外から直接出し入れできる、②冷蔵庫がエントランス側に設置できる、③ギャレーキャビネットに収納を設けられる、といったメリットが生まれる。
デメリットは給排水タンクとシンクの位置が離れていることだが、それはユーザーのデメリットではない。細かいことだが、ユーザーの使い勝手が良く考えられている一例だ。
ギャレーキャビネットの引き出し収納
ギャレーキャビネットには上下2段の引き出し収納が設置されている。カトラリーや食器を収納しておくのに大変便利だ。
ギャレー上部のオーバーヘッド収納
ギャレー上部にはオーバーヘッド収納が設置されており、ここにも食器や調理用具を収納しておける。
冷蔵庫/電子レンジ
49L横開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は49L横開き式が標準装備される。エントランス横にビルトインされているので、車外からもすぐにアクセスできる。もちろん冷凍室もあるので、冷凍食品を保冷したり、製氷ができる。
電子レンジも標準装備される
家庭用の100V仕様の電子レンジが標準装備され、ギャレーキャビネットにビルトインされる。1500Wインバーターも標準装備されるので、外部電源のないところでも電子レンジを使うことができる。
多目的ルーム
トイレルームとして使用できる多目的ルーム
ダーウィンQ5の多目的ルームは、ダブルベッドと対座ダイネットに挟まれ限られたスぺースながら、ポータブルトイレを置いてトイレルームとして使用できる。ただし、残念ながらFFヒーターの吹き出し口は無いようだ。
収納
後部ベッドの大きな収納スペース
ダーウィンQ5には充実した収納が備えられている。前述のダイネット、ギャレー、ベッドルーム各上部のオーバーヘッド収納の他、後部ベッドの下も大きな収納となっている。
左側キャビネットの収納
左側のキャビネットは独立した収納になっており、ベッド下の大きな荷物とは別に小物を分類して収納しておける。扉が付いているが、スライド式の扉なら、ベッド下の収納に荷物があっても開けやすかったのだが。
最後部の大きなカーゴスペース
2列目シートの前にも収納が設置されている。収納は多いほど良いが、こういったところにも収納を設置するビルダーのこだわりは嬉しい。
空調
家庭用エアコンは最後部に設置される
家庭用エアコンは、従来はベッドルーム右側のオーバーヘッド収納の位置に取り付けていたが、2023年モデルからは、上の写真のように最後部に設置できるようになった(OP)。これによりオーバーヘッド収納は温存され、冷風も車内前方に届きやすくなる。
暖房はFFヒーターがオプションで設置できる。また、ルーフベンチレーターもオプションで設置可能だ。
テレビ/ナビ
テレビはオプションリストにないが、設置することは可能だろう。ナビは好みのものを装着できる。
電装系
ベッド下右側のキャビネットには電装系を収納
100Ahのディープサイクルバッテリーが2個標準装備されるが、エアコンを装備した場合は、これでは心もとない。リチウムイオンバッテリーの記述が無いので選択できるか不明だが、同社のデュカトベースのニューモデル ブレス 54DDにはリチウムイオンバッテリーが搭載されているので、選択できないことは無いと思われる。
新デザインの台座と300Wのソーラーパネル
外部100V電源入力と充電機能、1500W正弦波インバーターは標準装備。ソーラーシステムは新デザインの台座とともに300Wのパネルの設置が可能になった。
価格(2023年4月現在:千円台切り上げ:税込)
同社のサイトには価格が表示されていないので現在の価格は不明だが、2023年2月時点ではガソリン2WDの車両本体価格は762万円~となっていた。4WDの価格は不明。
付けておきたい必需オプションは、FFヒーター(258,500円)、家庭用エアコン(495,000円)が挙げられる。リチウムイオンバッテリー(価格不明)も同時に付けて置きたい。
予算に余裕があれば、300Wソーラーシステム(495,000円)も付けておくと、駐車中にも充電されるので便利だ。
他モデル
ハイエーススーパーロングをベース車にするバンコンで、対座ダイネット、ギャレー、ダブルベッド、多目的ルームを全て搭載するモデルは、他にない。
ダブルベッドと多目的ルームを持つモデルを探すと、RVトラストのジョイン(990万円~:4WD/2023年2月時)、カトーモーターのウインディK(627万円~)、ホワイトトップのアジサシ(価格不明)がある。
ジョインは3名が前向き乗車でき、2名就寝、ウインディKはやはり3名が前向き乗車でき、大人2名+子供1名が就寝できる。アジサシは前向き乗車は2名、就寝も2名となっている。
まとめ
ダーウィンQ5は一見普通そうに見えるレイアウトだが、他に存在しないユニークなレイアウトと言える。対座ダイネットと多目的ルームを望む場合、トイファクトリーのGTやアルコーバ、レクビィのファイブスターセプトのように、スペース効率の良い2段ベッドが主流だからだ。
ダーウィンQ3のレイアウトは、トイファクトリーのバーデンをはじめ多数存在するが、これに多目的ルームも追加したい場合、ダーゥインQ5は唯一の選択肢になる。
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