二人旅に適したバンコンとは?
二人で長期旅をするのに最適なレイアウトを持つバンコンを、ここでは「二人旅に適したバンコン」とした。
具体的にはスーパーロングボディを持つバンコンで、前向きシートは運転席、助手席の2名だけ、ダイネットにはラウンジソファやロングソファを採用したモデルだ。
二人使用に割り切ることにより、広いダイネットや、マルチモードシートに邪魔されない前後の動線が確保でき、ストレスの少ない室内が実現できる。
目 次
ACSリトルノオクタービア RVビックフット
RVビックフットは埼玉県春日部市に本拠を置くビルダーで、セミフルコンからハイエースバンコンまでを手掛ける。ACSリトルノオクタービアは、ハイエーススーパーロングベースの「ACSリトルノオクタービアM」とNV350キャラバンワイドスーパーロングベースの「ACSリトルノオクタービア5.2」が選択できる。
同社はACSシリーズを展開しているが、これは100VのAC電源で車内の家電品を動かすというコンセプト。大容量ソーラーシステムで発電した電気をサブバッテリーに蓄電し、インバーターで100Vにして家電品に給電する。
ホワイト系でコーディネートした車内
ACSリトルノオクタービアの特徴は、大型2ドア冷蔵庫やIHコンロを標準装備し、オール100V電化を図っていること。160Wのソーラーパネルが2枚(=320W)標準装備される。
インテリアはACSシリーズ共通のホワイトで統一された家具とシートで構成され、非日常でお洒落な室内を演出している。レイアウトで特徴的なのは、後部のハイマウントダブルベッドが縦置きなこと。
標準では身長方向に1800mmだが、延長ベッドボードを追加することにより、長身のユーザーにも対応できる。ただし、これは片側だけで、また延長時はクローゼットを開けることはできない。
大型2ドア冷蔵庫を搭載
ACSリトルノオクタービアには大型冷蔵庫やIHコンロが標準装備されるが、そのためには大容量のサブバッテリーが必要となる。またオプションの電子レンジや家庭用エアコンを搭載する場合は更に大容量のバッテリーを搭載しなければならない。
そこで、サブバッテリーは標準装備でも105Ahを2個、エアコンを装備する場合は計4個を搭載する。
160Wのソーラーパネルが2枚(=320W)標準装備される(写真:RVビックフット)
ただし、大型冷蔵庫やIHヒーター、更には電子レンジを使う場合は、2個では多少不安かもしれない。また、家庭用エアコンを搭載する場合は4個になるが、重量的にも好ましくないし、2~3年ごとに4個のバッテリーを交換するのはコスト的にも大変だし、時間的にも面倒だ。
同社ではリチウムイオンバッテリーも用意しているようなので、できれば200Ah以上のリチウムイオンバッテリーを搭載することをお勧めする。
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クエスト:バンレボ
バンレボは新潟県上越市に本拠を置くビルダーで、主にハイエースとNV350キャラバンベースのバンコンを手がけている。
同社はVR(バンレボリューション)シリーズが有名で、比較的シンプルな装備やトランポを特徴とするが、クエストは異色の1台。他のビルダーを見ても(このモデルを除き)他にない。なお同社にはハイエース標準ボディハイルーフを使用したクエスト雅もある。
和室を再現した室内
その車内に再現された「完璧な」和室は誰もが驚く造り込みで、車内にいるとは思えない落ち着き感がある。
一見畳の和室に見えるが、実は下に掘りごたつが仕込んであり、こたつテーブルをセットすると掘りごたつの和室が出来上がる。
普段は和室の下に収納できる2列目シート
クエストは和室に目が行きがちだが、畳の下に2人掛けソファが収納されており、引き出すと、2列目シートになる。和室だけでなく、洋室のコーナーも用意されている。
L字型のギャレー
冷蔵庫や電子レンジも標準装備されており長期旅にも対応できるが、旅先で自分の和室で過ごせるのは、クエストならではの贅沢だ。
ただ残念なのは、クエストにはエアコンのオプション設定がない。風通しをよくしようと窓を開けたいが、障子を外さなければならず現実的ではない。
今回冒頭で取り上げたモデルは全て冷房のソリューションが用意されていることを条件としたが、クエストに関しては非常にユニークな室内のため、条件から外れるが取り上げた。今後冷房機器が用意されることを期待したい。
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シャングリラ:レクビィ
レクビィは愛知県瀬戸市を拠点に、ハイエースを中心にしたバンコンを製作しているビルダー。ハイエンドの「カントリークラブ」や「ファイブスター」から普及モデルの「プラス」シリーズまで、充実したラインアップを揃える。
オプションの「栃木レザー」を使ったダイネットシート(標準シート生地は黒の本革 )
シャングリラはハイエーススーパーハイルーフ専用の同社のフラグシップモデルで、優雅なリビングをイメージしたインテリアが特徴。同社のモデルはどれも洗練されたインテリアと高級感で定評があるが、シャングリラはその中でも最高位に位置する。
ダイネットには標準で本革(黒)のリビングソファが設置されるが、オプションで栃木レザーを使用した本革シートも選択できる。
シャングリラの大きな特徴のひとつは温水シャワーが使える、FRPで完全防水されたシャワールーム。トイレとドレッサーも装備されており、バンコンでは他に類を見ない豪華さと充実装備だ。
完全防水されたサニタリールーム
なお、湯はエンジンの熱で加熱する熱交換方式で湯量は60L。二人なら十分な湯量だ。なお、カントリークラブやファイブスターシリーズで同様の防水ルームがありオプションで温水シャワーが使えるが、湯量は19Lとなっている。
サニタリールームのドレッサー
家庭用エアコンと200Ah(100Ah x2)のリチウムイオンバッテリーのほか215Wのソーラーシステムも標準装備され、エアコンや電子レンジが実用的に使える。また、ギャレーには49L横開き式冷蔵庫や電子レンジが標準装備されており、旅先での料理もできる。
これだけの装備が付いているので当然価格的にもハイエンドだが、バンコンながら温水シャワーまで完備され、二人で優雅なクルマ旅をするには最適なモデルだ。
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G-LIB:日産ピーズフィールドクラフト
日産ピーズフィールドクラフトは日産プリンス東京販売直営のキャンピングカービルダーで、東京都世田谷区を拠点に、NV350キャラバンやNV200バネットなどの日産車をベースにしたバンコンを中心に製作する。
現在はNV350とNV200をベース車に8モデルを展開するが、G-LIBは大容量リチウムイオンバッテリーを搭載する異色のモデル。 日産の電気自動車で培った技術を使用したキャンピングカーだが、もちろんバッテリーで動く電気自動車ではない。
8000Whのリチウムイオンバッテリーを搭載
NV350キャラバンは通常のものと同じだが、搭載しているサブバッテリーが8,000Whのリチウムイオンバッテリーだ。 これは、キャンパー鹿児島のレム・フォレストなどに積まれている5000Whリチウムイオンバッテリー「KULOS」よりも更に大容量だ。
鉛バッテリーなら実質10個以上に相当する。 これだけの容量の電源があるので、標準で装備されている家庭用エアコン、IHコンロ、冷蔵庫、電子レンジは、電気容量は全く気にせず使用できる。エアコンの消費電力を500Wとしても16時間使用できる計算だ。
(参考までに、日産リーフに搭載されているバッテリーは62,000Wh。)
優雅なラウンジダイネット
ただし、充電は外部100V充電のみ。走行充電やソーラーシステムからの充電はできない。従って数日ごとにキャンプ場やRVパークで充電する必要があるが、充電時間は空の状態からでも6時間程度としているので、一晩のうちに充電が完了する。
IHコンロが標準装備されたギャレー
レイアウトは優雅な白いソファーダイネットと後部にギャレーの組み合わせ。常設ベッドは無く、ダイネットを展開してベッドにする。ただし、ベッド展開と言ってもテーブルを下げてベッドマットを置くだけで、極めて簡単に終了する。
最大の問題点は価格で、実に1021万円~。ゆうに上級キャブコンが買える価格だ。
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プラスSL:レクビィ
レクビィのキャンピングカーラインアップで、先のシャングリラはフラグシップモデルだったが、プラスシリーズは普及クラスに位置するモデル。プラスSLはプラスシリーズの中では、標準ボディハイルーフのプラスLVとともに、二人旅に特化したモデルだ。
広々とした室内
普及モデルと言ってもそのインテリアの洗練度とクォリティーは極めて高く、特にプラスシリーズに共通して使用されている網代(あじろ)仕立ての家具は、気品高く落ち着いた室内に貢献している。
レイアウトは前部にギャレー、後部は2本のロングソファを配した二の字型ダイネットで、広々とした空間は長旅でもストレスが少ない。ベッドはダイネットを展開する必要があるが、シートバックを中央に移動するだけなので、マルチモードシートのような苦労はない。
なお、テーブルを残してベッド状態にできるので、ちゃぶ台スタイルで寛ぐこともできる。
最後部のユーティリティールーム
最後部はドアで仕切られた広い個室になっており、シャングリラのようなシャワー設備は搭載できないが、トイレルームや大容量のカーゴルームとして自由に使える。
もちろん家庭用エアコンも装備でき、Superior+A/C仕様を選ぶと、115Ahのディープサイクルバッテリー3個ともども装備される。
ギャレーコンソールも網代仕立て
プラスSLには、プラスSL+1(プラスワン)というモデルもあり、これは単座シートを設けたレイアウトになっている。オットマンも付いているので助手席の代わりに使っても良いし、もう1名乗車することもできる。
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マティアス:MYSミスティック
MYSミスティックは山梨県甲斐市に本拠を置くビルダーで、ハイエースバンコンからアンセイエのようなカムロードベースのキャブコンまで手掛けるが、特にトラックキャンパーのビルダーとして有名。またレジストロやミニポップビーなどの軽キャブコンラインアップも充実している。
マティアスは同社のハイエースバンコンの中では二人旅をターゲットにしたもので、標準ボディハイルーフをベースに同じレイアウトを持つマティアスCもある。
オプションの小型一体型クーラー
マティアスの特徴はオプションで小型一体型クーラーを後部右側のウインドウ部に組み込めること。家庭用エアコンではないが簡易クーラーでもなく、実用的に冷房できるクーラーで排水処理もしっかりされている。
また、災害時のシェルターとしても謳われており、ソーラーシステムで発電した電気をサブバッテリーに蓄電し、必要に応じて車外で100Vが使えるというコンセプトも当初から打ち出している。
ただし、標準ではサブバッテリーは105Ahが1個、ソーラーパネルは80W、オプションでもトリプルンバッテリーと120Wソーラーパネルなので、大容量の電気を供給できるわけではない。
マティアスのインテリア
レイアウトは前部にギャレー、後部はコの字型ダイネットが配置されている。更に上段にベッドボードが用意されており、就寝時はこのベッドボードを広げると、上段ベッドになる。
上段ベッドを設置できる
従って、ダイネットも展開すると計6名が就寝できる。しかし前向きには2名のみ着座できるので二人旅に向いており、この場合上段ベッドに就寝するとダイネットはそのままにしてすぐに就寝できる。
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オールインリミテッドⅢ:甲和オートサービス
このモデルは映像素材がないため、冒頭のビデオには収録していないが、二人旅仕様のスーパーロングキャンピングカーなので、ここに追加しておく。
講和オートサービスは、埼玉県行田市に本拠を置くビルダーで、ハイエースバンコンを中心にバンコンキャンピングカーを製作している。現在はAll Inシリーズ3モデルのみをラインアップしている。
オールインリミテッドⅢの室内
オールインリミテッドⅢはALL Inの名前通り、ほとんどの主要装備を標準としており、家庭用エアコンのみオプション設定されている。 そのうえで価格が比較的安価に抑えられているのが大きな特徴だ。
オールインリミテッドⅢの縦置き2段ベッド
レイアウトは前部にラウンジダイネット、後部には縦置き2段ベッドとユーティリティールームが配置されている。ユーティリティルームにはトイレが標準装備されておりトイレルームとしても使用できる。
コンロはポータブルカセットガスコンロだが、49L横開き式冷蔵庫、電子レンジを備えたギャレーは長期旅での調理も可能。オプションのエアコンを装備すれば、暖房用のFFヒーターも標準装備されているので一年中快適に過ごせる。
オールインリミテッドⅢは、今回取り上げたモデルの中ではACSリトルノオクタービアと並んで常設ベッドを持つモデル。やはり常設ベッドがあると、ダイネットを片付けたりベッド展開する必要なくすぐに就寝できる。
その他のモデル
上記の6モデルの他にも、以下のような二人旅専用のレイアウトを持つモデルが存在する。
・ウォークタイプC:ドリーム・エーティー
・エースリーパー:カトーモーター
・FOCS シエスタ/リテラ:フジカーズジャパン
・FOCS Ds L-Style:フジカーズジャパン
ただし、これらにはエアコンのソリューションが記載されてないため、ピックアップは見送った。(ただしビルダーによっては対応できる場合もあるので、必要な場合はビルダーに問い合わせいただきたい)
また、以下のモデルは二人旅にも十分適しているが、特に小さな子供連れのファミリーも使えるレイアウトなので、別途特集したい。
・アルコーバ:トイファクトリー
・ヴォーグアルタモーダ:トイファクトリー
・コルドバクルーズ:トイファクトリー
・リチ:キャンパーアシスト
まとめ
今回特集した中で「優雅な二人旅にお勧めのスーパーロングバンコン」という表題に最も当てはまるのはシャングリラだ。高い天井高は長期旅でもストレスが少ない。豪華な室内は旅先にいても、常に自宅で寛いでいるようで旅の疲れを癒してくれる。
また、実用的に使える温水シャワーがあるのも有利な点だ。長期旅では毎日温泉を見つける手間から解放され、シャワーを使ってすぐにビールを飲みたい時もある。
毎日のベッド展開が面倒な場合は、常設ベッドを持つレイアウトが良い。これにはACSリトルノオクタービアとオールインリミテッドⅢが相当する。縦置き2段ベッドと縦置きハイマウントダブルベッドの違いがあるが、どちらも1800mm以上あり(ACSリトルノオクタービアは拡張ボード使用の場合)、身長方向の窮屈感はない。
この2モデルに関しては、ACSリトルノオクタービアはトイレルームを持たないのに対し、オールインリミテッドⅢは持つのが異なる点。
プラスSLとマティアスは似たレイアウトだが、マティアスは上段ベッドを持つ。これによりダイネットはそのままにして、上段ベッドを引き出すだけで就寝できる。
ただ、マティアスの上段ベッドは昼間は邪魔になり、ダイネットが狭くなってしまう。その意味では、プラスSLはダイネット展開が必要だが、シートバックを移動するだけなので大きな手間ではない。プラスSLの広いダイネットは魅力的だ。またプラスSLは後部の大きなトイレルームも大きな利点だ。
G-Libは大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載する先進の技術を取り入れたモデルだが、とにかく高価すぎる。また暖房はFFヒーターの設定がなく、家庭用エアコンの暖房モードで行うようだが、これはやはりFFヒーターの方が効率的だろう。
全体的に見て、最もバランスの良いモデルとして、プラスSLとオールインリミテッドⅢを挙げたい。一番の理由として、トイレルームがあること。これは奥様あるいは女性の方が、夜間に車外のトイレに行かなくても良いからだ。
道の駅にせよオートキャンプ場にせよ、夜間に車外に出るのは(男性でも)気が進まないものだ。その結果、飲み物を控えたりすることになる。これでは楽しいクルマ旅とは言えない。
シャングリラはトイレに加え、温水シャワーも装備されている。キャンピングカーに温水シャワーが必要と答えるユーザーは少数派と思われるが、前述のようにシャワーを手軽に使えると大変気が楽になる。
その意味ではシャングリラは、価格を除いては、ほぼ完ぺきな二人旅仕様車だろう。ただ、この価格(891万円:税別)ならキャブコンが買える、という意見もあるだろう。確かに、5m超のカムロードキャブコンと同じか、むしろシャングリラのほうが高価なくらいだ。
後は好みの問題かもしれない。居住性ならやはりキャブコンが有利だが、ベース車の動力性能やステータスはハイエースが上だ。スタイル面からバンコンを選ぶユーザーもおられるだろう。
まとめると、二人旅専用のスーパーロングバンコンとしては、バランスの良いモデルとしてプラスSLとオールインリミテッドⅢ、高級モデルならシャングリラを挙げておきたい。ただし、プラスSLとオールインリミテッドⅢに関しては、できればリチウムイオンバッテリーのオプション設定が欲しい。