ジル(ZIL)はバンテックが製作する、トヨタカムロードをベース車にする全長5mを超えるキャブコンキャンピングカー。
同社は埼玉県所沢市を本拠に、全国に直営店を展開する老舗のキャブコン専門キャンピングカービルダー。カムロードベースのキャブコンモデルを中心にラインアップを展開している。ジルシリーズは全長5mを超すフルサイズキャブコンで、リアエントランスのジルの他、センターエントランスで後部に2段ベッドを持つジル520、後部にダブルベッドを持つジルノーブルがある。ジルシリーズは2026年モデルが発表された。(同社の発表文はこちら)
全長5m未満のカムロードキャブコンはコルドシリーズで、センターエントランスで2段ベッドを持つコルドバンクスとリアエントランスのコルドリーブスがある。
近年では、新しいラインアップとしてアストラーレブランドも立ち上げており、アストラーレCCIビーナス、CH1マーズ、トリアス480、GX4などがラインアップされている。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
トヨタカムロードをベース車にする、全長5mを超すキャブコンキャンピングカー。リアエントランスのレイアウトを採用しており、前部の広いダイネットと両側の大きなアクリル2重窓が特徴。後部にギャレーとサニタリールームも配置するフル装備のモデルとなっている。
電装系は同社がEcoFlow社と共同開発した先進のリチウムイオンバッテリーシステム「IRiS(イリス)」を選択でき、6000Whの大容量で家庭用エアコンを実用的に使用できる。安価なディープサイクルバッテリーを選択することもできる。
アピールポイント
・全長5mを超すフルサイズキャブコンで広い室内スペース
・リアエントランスで広いダイネットとベッド
・両側に大きなアクリル2重窓
・常設2口コンロがあるギャレー
・清水と生活水が別のタンクで衛生面にも配慮
・カセットトイレと専用の手洗いがあるサニタリールーム
・温水も使えるシャワーを標準装備
・6000Whのリチウムイオンバッテリーシステム「IRiS」を選択可能
ベース車とエクステリア
ジルのエクステリア
ベース車はトヨタカムロード。全車ワイドトレッドで後輪ダブルタイヤとなっており、ディーゼル2WDと4WDが選択できる。このシャシーにFRP一体成型のシェルを架装している。
ボディのデカールは標準で付けられているが、2026年モデルでは⾒る⾓度によって⾊が変わる特別カラー「オーロラ」が採用された。
レイアウト
ジルのレイアウト
リアエントランスの定石通り、前部に広いダイネット、後部にギャレとサニタリールームを配置している。乗車定員は2WDが、フロントに3名とダイネットに4名で計7名、4WDは運転席と助手席の間の簡易シートが無いので6名となっている。就寝定員はバンクベッドに2名とダイネット展開ベッドに3名で計5名となっている。
リアエントランスのメリットは広いダイネットとベッド、そしてダイネットの両側に大きな窓がとれることで、開放感のある車内であること。ダイネットでは大勢がテーブルを囲めるが、二人旅でも広いダイネットは疲労が蓄積しにくい。ペットにも良い環境だろう。
一方、デメリットは、常設ベッドが無いので、就寝前にベッドメークする必要がある。それほど大仕事ではないが、常設ベッドのように何もしないで横になることはできない。
また、ベッド下の大きな収納が無いのもデメリットだ。かさばるキャンプ用具などは左サイドの外部収納に入れることになるが大きな荷物は入らないかもしれない。大きな収納が必要な場合はジルノーブルのようなダブルベッドのレイアウトがお勧めだ。
インテリア
後部のインテリア
濃い木目の家具とアイボリーのシートカラーの組み合わせ。全体的にクラシカルなイメージだ。インテリアの選択肢は、コルドシリーズには2種類用意されているが、ジルシリーズには無いようだ。ただしシート生地の変更はオプションで用意されている。
ルーフの作りもシンプルなものだが、暖色系の間接光が効果的に使われている。
ダイネット
広いダイネット
4名が対座でき、さらにベンチシートに2~3名が座れるので、6~7名でテーブルを囲むことができる。ベンチシートの通路部分にベッドマットを置くと、1名が横になることも可能だ。
テーブルは大きく、4名が食事をすることもできる。両側に大きなアクリル2重窓があるのでパノラミックな美しい景色を見ながらのコーヒータイムも楽しめる。
ベッド
ダイネットベッド
ダイネットを展開したベッドは、1900x1850mmの大きさ。家庭用ではキングサイズベッド以上の幅がある。ベッド展開は、テーブルを下げ、その上にシートバックを移動する。
バンクベッド
バンクベッドは1880x1860mmの大きさ。こちらもキングサイズのベッドの幅に相当する。ただし、バンクベッドは2名の就寝定員となっている。ベッド端を引き出してベッドセットする。高さも十分あり、圧迫感を大きく感じることは無いだろう。
ギャレー
ギャレーキャビネット
ギャレーは最後部に位置している。常設2口コンロが標準装備されているので、調理するユーザーには使いやすいギャレーだ。更に清水と生活水が分かれており、フォーセットも別々になっている。
給水タンクは清水用が19L、生活水用が55Lとなっている。生活水用のタンクは3列目シートの下に、清水タンクはコンロの下に収納されている。排水タンクは70Lで、床下に設置されている。なお、2026年モデルではインスペクションハッチ(手を入れることができる円形の開口部)によりタンクのメンテナンス性が向上したと謳われている。
ギャレーキャビネットには3段の大きな引き出し収納があり、食器や調理用具などを収納しておける。また、上部にもオーバーヘッド収納が設置されており、ギャレーまわりの収納は充実している。
冷蔵庫/電子レンジ
85L横開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は85L横開き式が標準装備される。目の高さの位置に設置されているので、食品を出し入れしやすい。ただし、片開なのでダイネットからはアクセスし難いのが難点。両開きの冷蔵庫が望まれる。
電子レンジも標準装備される
2026年モデルでは電子レンジも標準装備となった。このクラスのモデルでは電子レンジは標準装備が一般的なので、今までオプションだったことの方が不思議だ。
サニタリールーム
ラップ式トイレが標準装備のサニタリールーム
サニタリールームにはラップ式トイレのラップルと専用手洗いが標準装備される。ラップルをレスオプションで他のトイレに代えたりトイレレスにすることもできる。
サニタリールームでは温水シャワーも標準装備される。22Lの熱交換式ボイラーは2列目シートの下に設置されている。2026年モデルではサブバッテリーで湯を沸かすことも可能になった。ただし、大電力を使うので、熱交換で沸かすのが基本だ。
しかし、やはり理想は瞬間湯沸かしだろう。アネックスのリバティ52シリーズが採用しているヒートエクスチェンジャー方式やダイレクトカーズのガスボイラー方式は瞬間湯沸かしなので、水が無くなるまで連続して温水シャワーを使用できる。
収納
収納は、ギャレーまわりの収納の他、ダイネット上部のオーバーヘッド収納、冷蔵庫上下部の収納、クローゼット、シューズボックス、そして外部収納が用意されている。
ダイネット上部のオーバーヘッド収納
まず、ダイネット上部のオーバーヘッド収納。右サイドにはエアコンの室内機が設置されているので、主な収納は左サイドになる。
冷蔵庫下の収納
冷蔵庫の下の収納は奥行きがあり、大きな収納力がある。
クローゼット
リアエントランスのレイアウトでは、この位置にクローゼットを持つモデルが多い。ジルも同様で、縦に長いクローゼットが設置されている。クローゼットがあると、長いコートも皺にならずに吊り下げておくことができる。
シューズボックス
エントランス横には4段のシューズボックスが設置されている。ファミリーで使用する場合でも靴がエントランスにあふれることは無いだろう。
左サイドの外部収納
左サイドと後部に引き出し式の外部収納が用意されている。どちらもFRP製で汚れても水洗いできるのが特徴だ。左サイドの収納は特に大型にできており、上部に蓋も設置されている。後部の収納は生ゴミなど車内に持ち込みたくないものを入れておくのに便利だろう。
右サイドの外部収納
右サイドにも外部収納が用意されているが、ここはFRP製ではなく木製となっている。ここは車内ではベンチシートの下に当たり、車内からもアクセスできる。
空調
ダイネット上部に設置された家庭用エアコン
家庭用エアコンが標準装備される。ダイネットの右サイドに設置されているが、オーバーヘッド収納と同じ扉でカバーされているので目立つことは無い。室外機は右側の後部タイヤハウスの上部に設置されており、泥水や塩害の影響を受けにくい。
テレビ/ナビ
テレビ設置用のアームがダイネット前部右側に用意されている。テレビ自体はオプション設定されておらず、持込の液晶テレビを取付けできる。画面サイズは19型が指定されている。
ナビは特にオプション設定は無いが、好みのものが設置できるだろう。
電装系
ILiSサブバッテリーシステム(写真はジルノーブル)
2023年に同社がEcoFlow Technology社と共同開発した6000Wh(当初は4000Wh)の大容量サブバッテリーシステム「ILiS」が選択できる。ディープサイクルバッテリー仕様では105Ahが3個標準装備される。
その他の電装系では、走行充電、外部100V電源入力とチャージャー、1500W正弦波インバーター(ILiS仕様は3000Wの正弦波インバーターを内蔵)が標準装備される。ソーラーシステムは最大480Wのものがオプションで設置できる。
価格(2026年1月現在:千円台切り上げ:税込)
ディーゼルのみで、ディープサイクル仕様は2WDが1334万円~、4WDは1352万円~、ILiS仕様は、2WDが1433万円~、4WDは1451万円~となっている。
標準装備が充実しているので付けておきたい必需オプションは特に無いが、できればソーラーシステムは付けておくと良いだろう。また、100万円ほど高くなるがIRiS仕様をお勧めしたい。ディープサイクルバッテリーは3個を2~3年ごとに交換する必要があるので、長い目で見ればIRiSの方がお得だ。(ナビ関連は除く)
他モデル
カムロードベースで5m超のリアエントランスモデルはジルの独壇場だったが、2024年にダイレクトカーズがニンジャ(1348万円~:2WD)とトリップログベースプレミアムエディション(1949万円:2WD)を投入した。アネックスもリバティ52シリーズでリアエントランスモデルを発表しており、2026年に投入を予定している。
まとめ
ジルはロングセラーモデルでありリアエントランスモデルとしての実績も十分にある定番的な存在と言える。弱点だった電装系も、ILiSの導入によって先進のシステムへと進化した。
従って現在でも輝きを失っていない主要モデルのひとつであることは間違いない。ただし、最近ではリアエントランスモデルも増えてきた。特にダイレクトカーズのニンジャは真っ向から対抗するモデルと言える。
ニンジャとの詳しい比較は下の比較表を参照いただきたいが、インテリアや、両開き式冷蔵庫、大容量外部収納、瞬間湯沸かしなどといった装備に好印象を持つユーザーも多いだろう。価格的にもIRiS仕様のジルよりも安価で、強力なコンペティターと言える。
残念ながら2026年モデルはそれほど大きな進化は無かったが、今後の進化に期待したい。
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