ジル ノーブルはバンテックが製作する、トヨタカムロードをベース車にしたキャブコンキャンピングカー。
同社はジルシリーズをフラグシップにするキャブコンビルダー。ジルシリーズの他、5m未満の全長を持つコルドシリーズをラインアップする。その他、キャラバンをベース車にしたキャブコン「アストラーレCC1」や、軽バンコン「ルネッタ」も擁している。
ジルシリーズには、リアエントランスの「ジル」、後部ベッドが横置き2段の「ジル520」、そして今回取り上げた「ジル ノーブルがある」。
2023年モデルには新たに開発された電装システム「IRiS（イリス）」が搭載された。同社は今までリチウムイオンバッテリーを扱っていなかったが、これにより最新の電装系を持つことになる。
（記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。）
概要
カムロードをベース車にする5m超のキャブコンで、前部に対座ダイネット、後部にハイマウントダブルベッドのレイアウト。
常設二口コンロや、生活水と清水が別になった蛇口のギャレーや、カセットトイレ、温水シャワー、専用手洗いなどが装備されたお洒落なサニタリールーム、家庭用エアコンなどハイグレードな装備を持つ二人旅に向けたモデル。
2023年からは新開発の「IRiS」を搭載。同社初のリチウムイオンバッテリー電装システムになる。
アピールポイント
・５ｍ超の余裕あるボディサイズ
・先進の「IRiS」リチウムイオンバッテリーシステムを標準装備
・生活水と清水が別になった蛇口
・常設二口コンロ標準装備
・カセットトイレ、温水シャワー、専用手洗いが標準装備のお洒落なサニタリールーム
・軽量独立式プラスチックスプリングを採用した本格的なベッド
・家庭用エアコン、FFヒーター標準装備
ベース車とエクステリア
ジルノーブルのエクステリア
ベース車はトヨタ カムロード ワイドトレッドダブルタイヤ。新型カムロードは全車ダブルタイヤになる。これに「CSボディ」と呼ばれるFRP一体型のシェルを架装している。５ｍを超える全長で、同社のフラグシップの位置付け。
インテリア
間接光やスポットライトを使ったインテリア
ジルシリーズのインテリアは従来から変わらず、間接光やスポットライトを巧みに使って、落ち着いた中にもゴージャスな室内を演出している。特に、ジルシリーズのサニタリールームは「ホテルのような」と形容されるお洒落感がある。
ダイネットの上部に設置されたグラスケース
特筆されるのはダイネットの上部に設置されたグラスケース。中には照明が施されグラスが美しく映える。このような演出はスペース効率を重視するキャンピングカーでは簡単ではないが、寛ぐ場として重要なアイテムだ。
レイアウト
前部に対座ダイネット、中央にギャレーとサニタリールーム、最後部にベッドルームを配置する。ベッドはハイマウントダブルベッドを採用。長い車長を生かし、ダブルベッド、サニタリールーム、対座ダイネットを無理なく配置している。
前部にはバンクベッドもあり、就寝定員は4名。また、4名対座のダイネットと運転席、助手席、その真ん中にある補助シートで、計7名が乗車定員となる。なお、4WDは補助シートが無いので乗車定員は6名。
ダイネット
4名が対座できるダイネット
2列目の後ろ向きシート、3列目の前向きシートで4名が対座できるダイネットを形成する。シートはいずれも固定で、リクライニングはできないが、シート地は厚く、座り心地は良い。
ベッド
家庭用のダブルベッドに相当する後部ベッド
後部の常設ダブルベッドは1900x1400mmの大きさ。幅1400mmは家庭用ではレギュラーダブルベッドに相当する。
後部ベッドの「軽量独立式プラスティックスプリング」
「本物のダブルベッド」がジルノーブルの謳い文句で、独特の「軽量独立式プラスチックスプリング」の上に、厚さ100mmで5層構造のウレタンマットを重ねている。
2名が就寝できるダイネットベッド
バンクベッドは1880x1300mmの大きさ。これは家庭用ではセミダブルベッドの幅（1200mm）以上あり、2名が就寝できる。天井高が700mmもあるので、ベッドへの昇り降りは楽だ。
ベッド展開は、スライド式でも跳ね上げ式でもない、マットをはめ込むタイプ。いちいちセットせず、常設的に使用することを想定しているようだ。なお、ダイネットを展開してベッドにすることはできない。
ギャレー
常設二口コンロが標準装備されるギャレー
ギャレーキャビネットには独立したシンクと常設二口コンロが標準装備される、豪華なギャレーだ。シャワーでも使用する大容量の55Lのタンクからの生活水と、
清潔な20Lタンクからの清水を使い分けられるよう蛇口が分かれている。
いずれにしても飲料水は市販のペットボトルの水を飲むことをお勧めするが、食器を最後にすすぐのは清水が安心だ。水に対してここまで考慮しているモデルは他にない。
ギャレーキャビネットの収納
ギャレーキャビネットには引き出し式と扉式の収納があり、食器や調理用具を収納しておける。
ギャレー上のオーバーヘッド収納
ギャレー上には大容量のオーバーヘッド収納があり、ここにも調理用具などを収納しておける。写真のダクトは、コンロの上部に設置された換気扇のもの。
冷蔵庫/電子レンジ
85L横開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は85L横開き式が標準装備されており、十分な容量がある。もちろん冷凍室もあるので、冷凍食品の保冷や製氷も可能だ。
「電子レンジも標準装備される」と書きたいところだが、電子レンジだけは何故かオプション。特に高価な装備でもなく、何よりクルマ旅にはほぼ必需オプションなので、標準装備にして欲しいところだ。
サニタリールーム
カセットトイレ、温水シャワー、専用手洗いが標準装備される
ジルシリーズでは、サニタリールームへのこだわりが特筆される。欧州モデルに勝るとも劣らないお洒落なインテリアで、カセットトイレ、温水シャワー、専用手洗いが標準装備される。
お洒落なインテリアのサニタリールーム
大きな2面鏡とブラインド付きの窓、そして専用のオーバーヘッド収納も用意されている。
収納
ダイネット上のオーバーヘッド収納
ジル ノーブルの収納は充実している。まず、大きなオーバーヘッド収納がダイネット上、ギャレー上、ベッドルームの右側上部に設置されている。
前部左側のハーフクローゼット
前部左側、バンクベッドの横にはハーフクローゼットを設置。ジャケットなどを吊るしておくハンガーパイプも用意されている。
最後部の大きなカーゴスペース
ハイマウントダブルベッドの特徴だが、後部ベッド下は大きな外部収納になっており、かさばる荷物を車外から積み込むことができる。ボディ左側と後部に大きな開口部を設けている。開口部は、左側は1180x500mm、後部は1070x390mmの大きさ。
空調
家庭用セパレートクーラーを標準装備
暖房はFFヒーターが標準装備され、冷房は家庭用セパレートエアコンがベッドルームの後部に設置される。マックスファンも標準装備される。
家庭用クーラーの室外機
室外機は、車両後部右側に設置されている。
テレビ/ナビ
テレビ用ステーが標準装備される
テレビは19型テレビを持ち込み、前部左側、クローゼットの下のテレビ用ステーに設置できる。ナビは好みのものを取り付けることができる。
電装系
2023年モデルで最も進化したのが、新開発の電装系「ILiS（イリス）」だ。これはポータブル電源のECOFLOWを生産するEcoFlow Technology社とバンテックが共同開発したもので、ECOFLOWをベースに専用の電装システムとしたもの。
4000Whの容量を持つ。WhとAhは多少意味合いが異なるが、単純計算では100Ahのリチウムイオンバッテリー3.3個分と同じくらいということになる。
ILiSは最大3000Wまでの電力を取り出すことができるので、エアコンを運転しながら電子レンジを使う場合も安心だ。また、専用のコントロールパネルからだけではなく、スマートフォンからコントロールできるのもユニークな点。
スマートフォンの画面で、残容量や充電状況、満充電までの時間などが表示できる他、車内の照明や電装品のOn/Offがコントロールできる。
他社がリチウムイオンバッテリーの搭載を進める中、バンテックは今まで音沙汰がなかったため電装系に時代遅れ感があったが、ILiSにより最先端の電装系を持つことになった。
ただし、全車がILiSを搭載しているわけではなく、従来のディープサイクルバッテリー搭載車も用意されている。価格差は77万円。これが高価かどうかは考え方によるが、3個のディープサイクルバッテリーを2～3年ごとに交換することを考えると、高くはないだろう。
価格（2023年1月現在：千円台切り上げ：税込）
ILiS搭載車は、ディーゼル2WDが1202万円～、4WDが1220万円～となっている。ディープサイクルバッテリー搭載車は、2WDが1125万円～、4WDが1143万円～だ。
付けておきたい必需オプションは、電子レンジのみ。予算に余裕があれば、というより、是非付けておきたいのがソーラーシステム。480Wと240Wが用意されているが両方同時に設置することができる。
更に、外部電源や走行充電も合算で充電することができるのは画期的だ。ILiSを100パーセント生かすにはソーラーシステムは欠かせない。
これだけの電源入力が備わっているので、発電機はもはや不要かもしれないが、ジルシリーズには「ibox」という、ホンダEU18iを収納できるオプションが用意されている。電気が不足する場合、最後に頼りになるのが発電機ではある。
他モデル
５ｍ超のカムロードベースキャブコンで、ジルノーブルと同じレイアウトを持つキャンピングカーをピックアップすると、
・リバティ 52SP：アネックス（1254万円～）
・ヴォーン エクスクルーシブ RWB（1144万円～）
・クレア ハイパーエボリューションNEO Type X：ナッツRV（1184万円～）
・ヨセミテ：ファンルーチェ（1219万円～）
・トリップ プレミアム：ダイレクトカーズ（1235万円～）
上記モデルはいずれも2WDで、家庭用エアコンとリチウムイオンバッテリーを標準装備する。リバティ52SPとヨセミテは温水シャワーと専用手洗いを標準装備。リバティ52SPは更にカセットトイレを標準装備する。トリッププレミアムは唯一レイアウトが多少異なり、縦置きダブルベッドになる。
まとめ
このクラスになるといずれもフラグシップ級のモデルになるため、充実装備はもちろん、インテリアは豪華になり、使い勝手にもより配慮されている。老舗のキャブコンビルダーのバンテックが作るジルシリーズはその点においてはトップクラスだが、ILiSを得てさらに強化された。
ジル ノーブルは一見するとオーソドックスなモデルに見えるが、使うほどにその良さが分かってくるモデルだろう。
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