ヨセミテはファンルーチェが製作する、カムロードをベース車にした全長5mを超えるスタンダードキャブコン。同社はカムロードベースの他、ハイエースワイドロングベースのセレンゲティやパタゴニア、あるいはハイエース標準ボディベースのウラルエイジアなどのキャブコンも生産している。
ヨセミテは以前同社で生産されていたモデルだが、現在では生産を終了していた。ファンルーチェにはカムロードバージョンとしてイグアス(Type-WとType-X)があるが、これらは5m以下の全長で、ヨセミテが5m超のカテゴリーをカバーすることになる。
これで同社は、ハイエースのワイドとナロー、5m超と5m以下、そして、カムロードの5m超と5m以下が揃い、ラインアップが完成する。ただし、2021年4月のジャパンキャンピングカーショーで展示されたのは参考出品車で、今後最終モデルが発売される予定。
(記事中の価格は全て税込です)
コンセプト
カムロードベースの5mを超えるフルサイズキャブコン。キャブコン専門ビルダーのファンルーチェとしてこのカテゴリーのモデルが無かったため、ここを埋めるモデルとなる。
現在のキャブコンらしく、家庭用エアコンが標準装備される。リチウムイオンバッテリーもオプション設定される。なお、温水シャワーが標準装備されるのも特徴だ。
エクステリア
ヨセミテのエクステリア
ベース車はカムロードで、これにFRP一体成型のシェルを架装している。全長は5,225mm。
外装面での特徴は絞り込まれたバンクで、スマートな形状になっている。ただし、全体的にはオーソドックスなキャブコンスタイルとなっている。サイドオーニングがオプションで取り付けられる。
インテリア
落ち着いたカラーリングのインテリア
展示車のインテリアは、落ち着いた木目模様の家具と、グレー調のシート地の組み合わせ。華やかさは無いが、長時間車内にいても疲れない、落ち着いた室内になっている。家具色やシート地がどの程度自由に選択できるか不明だが、展示車のインテリアでも特に不満は無いだろう。
レイアウト
前部にダイネット、後部にハイマウントダブルベッド、中央にギャレーとシャワールームを配置する。5.3mの車長なので、このレイアウトでも無理無く全てが収まっている。
3列目シートは2名掛けで、フロントシートに3名乗車できるので、計5名が前向き乗車できる。フロントシートの中央席は通常は座らないので、実質的には4名となる。
また就寝は後部ベッドで2名、バンクベッドで1名の計3名となっている。ただしバンクベッドの1名は、規定上は車幅方向に就寝することになっている。また規定では子供なら車幅方向に2名が就寝できる寸法(800mm)だ。ただ、実際には(規定を考えなければ)小さな子供が車長方向に就寝しても、もちろんかまわない。
ダイネット
4~5名が対座できるダイネット
2列目と3列目シートで対座ダイネットを形成する。後ろ向きの2列目シートは乗車できないが、停泊時は3名程度が着座できる。3列目シートは2名掛けで、走行中も着座でき、3点式シートベルトが使用できる。
ベッド
2名が就寝できるベッドルーム
後部のベッドは1900x1350mmの大きさで、家庭用ならダブルベッドの幅(1400mm)に多少足りない程度で、大人2名がゆったり就寝できる。後部ベッドはウッドスプリングが採用されており、寝心地にも配慮されている。
後部ベッドに採用されているウッドスプリング
またバンクベッドの大きさは1850(車幅方向)x800mmで、規定上は車幅方向に大人が1名、あるいは子供が2名就寝できる。なお800mmというのは高さが規定上確保されている部分のみの長さで、一番前方までの長さではない。
即ち、規定上大人が車幅方向に就寝するということになっているが、車長方向に就寝できるなら就寝しても問題なく、子供なら2~3名が車長方向に就寝できる。従って、大人2名と小さな子供2名のファミリーなら、乗車と就寝が可能だ。もちろん購入を検討する場合は実際に横になって確かめることをお勧めする。
規定上は大人1名が横方向に就寝できるバンクベッド
なお、サイズが規定値に達しないため、ダイネット展開してベッドにすることはできない。ただし、ダイネット部分をフラットにすることは可能のようで、ちゃぶ台スタイルで寛ぐことができる。またベッドボードを追加すると大人用ベッドにもなるようだ。
ギャレー
跳ね上げ式調理台も用意されたギャレー
ギャレーコンソールには中皿程度の食器が洗える大きさのシンクがビルトインされている。しかしコンロはポータブルカセットガスコンロを、使用する度にセットする必要がある。調理をするユーザーにとっては、これは大きなマイナスポイントだ。
5mを切るイグアスにはコンロ一体型のシンクが付いているのに、5m超のヨセミテがそうでないのは少しちぐはぐな気がする。是非オプションで対応するなどのソリューションが欲しい。折角跳ね上げ式の調理台もあるので残念なところだ。
追記:シンク一体型のガスコンロは火力が弱かったり、高地で火力が低下するなどの理由から、高性能で信頼性の高いイワタニのポータブルカセットコンロを採用したとのこと。また、ポータブルカセットコンロは、使う場所を選ばず、車外で使うことも可能という利点があるのもその理由となっている。
冷蔵庫/電子レンジ
65L冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は65L横開き式冷凍冷蔵庫が標準装備される。また電子レンジは家庭用100V仕様のものがオプション設定されている。設置場所も用意されており、すっきり収納される。
追記:なお、冷蔵庫から出る排気は壁の中に設置された排気ダクトを通り、ルーフに設けられた専用のベンチレーターから排出される。冷蔵庫の後面の壁にルーバーを設けて排熱すると簡単だが、これでは見た目や浸水のリスクがある。見えないところだが、このようなところにも丁寧な設計がされている。
電子レンジ(OP)もすっきり収納できる
1500Wインバーターも標準装備されるので、外部電源が取れない場合でもサブバッテリーで使用できる。
サニタリールーム
ヨセミテのシャワールーム
ヨセミテのサニタリールームで特徴的なのは、温水シャワーが標準装備で、カセットトイレはオプションであること。このクラスではカセットトイレは標準装備で温水シャワーはオプションであることが一般的だが、ヨセミテは逆になっている。
もちろんカセットトイレはオプションで設置できるのだが、一般的にトイレよりも需要が少ない温水シャワーを標準装備にしたところが興味深い。トイレはポータブルトイレで十分という考え方かもしれない。
温水はトルマコンビD6という10Lの軽油ボイラーで沸かし、水と混合して使用する。15℃の水を60℃まで加熱するのに20分程度を要する。シャワー重視であれば、ダイレクトカーズのトリップのように瞬間湯沸かしボイラーが欲しいところではある。
なお、サニタリールームにはFFヒーターの吹き出し口も用意されており、シャワー使用時に寒い思いをすることは無い。また強制換気はできないがシャワールーム専用の換気窓と手洗いも用意されている。
追記:温水シャワーの標準装備は、災害時やビジネスなど、キャンピングカーの使い方も多様化している背景があるとの理由から。トルマコンビの採用は、世界で使われている高い信頼性に基づくもの。トイレは要不要が分かれるため、オプション設定としている。
収納
ダイネット上のオーバーヘッド収納
ヨセミテには多くの収納が用意されている。まず、ダイネット上とギャレー 上、それとベッドルーム左サイドにオーバーヘッド収納が設置されており、奥行きも十分で大きな収納力がある。
ギャレーの引き出し収納
ギャレーには引き出し収納も用意されており、食器やカトラリーを収納しておくことができる。
ベッド下の大きな外部収納
後部ハイマウントダブルベッドの下には大きな外部収納があり、左サイドと後部、そして車内からもアクセスできる。縦長の収納ではないため自転車等を収納するには向かないが、キャンプ用具や大き目のバッグなどを積むことができる。
空調
家庭用エアコンの室外機は右側後部に収納
暖房は前出のトルマコンビD6がFFヒーター機能も持っている。また、冷房は家庭用エアコンが標準装備されるのが特徴。1500Wインバーターも標準装備のため、外部電源だけでなく、バッテリーでもエアコンを稼働できる。なお、ベンチレーターも標準装備される。
テレビ/ナビ
19型のテレビがオプションで用意されている。テレビはダイネットとベッドルームに設置できる。ナビは特に専用のものは無く、好みのものが取り付けできる。
電装系
115Ahのディープサイクルバッテリーが2個標準装備される。ただしエアコンを運転できる時間は、外気温にもよるが500Wの消費電力と仮定すると、効率も考え3時間程度と思われる。また、経年劣化があるので、2年も使っていると容量がかなり低下する。
ただし、リチウムイオンバッテリーがオプションで用意される予定があり、容量は90Ahを2個、即ち180Ahとのこと。これなら同条件で4時間程度はエアコンを運転でき、さらに経年劣化もそれほど大きくない。価格は未定だが、やはりリチウムイオンバッテリーが理想的だ。
価格(2021年4月現在:千円台切り上げ:税込)
展示車は参考出品の試作車で、価格は未定。付けておきたいオプションは、リチウムイオンバッテリーが挙げられる。また必要に応じて電子レンジがあれば長期旅に便利だ。
他モデル
カムロードベースの5m超キャブコンは激戦区で、優れたモデルが多数存在する。また多くのモデルがエアコンとリチウムイオンバッテリーを装備可能もしくは標準装備している。
同じレイアウトを持つ主なモデルは、アネックスのリバティ52SP(946万円~)、ダイレクトカーズのトリップ(1029万円~)、ナッツRVのクレア5.3XHyper Evolution(979万円~)、バンテックのジルノーブル(915万円~)が挙げられる。(いずれもディーゼル2WDシングルタイヤ)
まとめ
ヨセミテは「比較的安価でそこそこ体裁の良い」ポジショニングのように思われる。上記のリバティ52SPやトリップ、あるいはスティングやジルノーブルのような超高級感は無い。しかしチープなインテリアかというとそうではなく、華やかさこそないが気持ちの良いインテリアだ。
価格はまだ未定だが、これらのモデルよりも安価でお買い得感があれば魅力的なモデルだろう。ただし、温水シャワーを使うユーザーでないと無駄な装備への投資になってしまう。
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