ルネッタはバンテックが製作する、スズキ エブリイワゴンをベース車に使用した軽バンコン。
同社はジルシリーズやコルドシリーズなど大型のキャブコンビルダーとして知られているが、ルネッタのような軽バンコンもラインアップしている。しかし大型キャブコン以外はルネッタのみで、同社では極めてユニークな存在だ。
(記事中の価格は全て税込です)
コンセプト
軽バンコンながら非常に洗練されたインテリアを持ち、軽バンコンでも上質のモデルを求めるユーザーにアピールしている。質感でも価格でも軽バンコンでは最上位に位置付けられるが、同社のキャブコン作りのノウハウが小さなボディに凝縮されている。
プルダウンベッド(オプション)を装備することができ、4名就寝を実現している。もちろん実用的には2名がゆったり就寝できること、あるいは小さな子供がいるファミリー用途を目的としている。
エブリイワゴンとバンの外観の違い
ベース車はスズキ エブリイワゴン。ワゴンベースというのがこのモデルの性格を表している。乗り心地はバンに比べて多少は良いのだろうが、それよりも架装部分以外のエクステリア、インテリアが大きく異なる。
バンではマニュアルエアコンであったり、後部がマニュアルウインドウであったり、トリムされていないで鉄板がむき出しだったりと、がっかりする点が多い。ルネッタではワゴンベースを使用することにより、洗練された架装部分に相応しいベース車としている。
エクステリア
ルネッタのエクステリア
ボディ外側への架装は無いため、見た目は普通のエブリイワゴンと変わらない。先述の通りワゴンベースなので外観の見た目も良い。
なお、オプションで「月」と「光」の2種類のボディストライプ(18,700円)が用意されているので、更に個性を出したい場合は選択することができる。上の写真はオリジナルボディストライプ「月」。
グレードはエブリイワゴンのJPターボ、PZターボ、PZターボスペシャルグレードをそのまま選択することができる。装備の違いはこちら。
インテリア
洗練されたインテリア
ルネッタは軽バンコンの中でもトップクラスのインテリアを持つ。特に後部の家具は曲線をふんだんに取り入れた優雅な形状だ。また、ギャレーの天板やフォーセット等のパーツもそれぞれ洗練されている。
更に、軽バンコンながら間接照明を採用した室内は、夜のインテリアにも手を抜いていない。
レイアウト
ベッド兼ダイネットスペースと後部にギャレーのレイアウト
レイアウトは軽バンコンによくあるスタイルで、純正シートを畳んだ上にベッドマットを置いたダイネット兼ベッドスペースと、後部のギャレーや収納家具から構成される。
ギャレーや電装系を持つモデルではどうしてもそれらのスペースを確保するため後部に収納家具を置く形になる。そのため就寝時は足元が狭くなり、特に2名で就寝する場合は多少窮屈名のが難点ではある。このモデルではプルダウンベッドを装備できるので、2人使用時でも上下に分かれればゆったり就寝できる。
ダイネット
フラットスペースのダイネット
軽バンコンのダイネットはベッドと兼用のものが多く、ルネッタでもこのスタイルを採用している。後部にテーブルをセットすることができるがこれは固定される。市販の折り畳みテーブルを備えておくと任意の場所で使うことができる。
4名が乗車できる(写真はスズキのサイトから)
なお、ベッドの下には純正の2列目シートが折り畳んで収納されており、ベッドボードを取り去りシートを起こすと、通常のエブリイと同じように4名が乗車できる。取り去ったシートは後部の荷室に収納できる。
ベッド
大人が2名就寝できるダイネット兼用ベッド
下段ベッドに関しては、同社のサイトには1,610x1,180mm(最大)と書かれているが、エブリイの荷室長、荷室幅から考えると1800x1200mm程度は十分とれると思われる。(1610mmでは大人は就寝できない)
即ち、家庭用のセミダブルベッドくらいの広さはあるだろう。ただし、先述のように足元は家具があるので多少狭くなる。
ダンパーで上下できるプルダウンベッド
今回の展示車には軽バンコンには珍しい、プルダウンベッド(オプション)が装備されていた。具体的なサイズは書かれていないが、2名が就寝できるとしている。実際に2名で就寝するのはかなり窮屈と思われるので、現実的には大人1名、あるいは子供2名程度が適している。
作りは極めて本格的で、ルーフに収納した場合、もちろん天井高は低くなるが違和感はない。また左右のダンパーでサポートされており、一人で無理なく上下できる。こういったところはさすが同社のモデルで、しっかり作られている。
ただし、このプルダウンベッドに上がり込むのは、高さのないバンクベッドと同様、なかなか大変と思われる。また天井が目の前に迫り、閉所感が相当あるだろう。購入前に確認することをお勧めする。
ギャレー
高品質なギャレーセクション
ギャレーは後部右側に設置されている。ギャレーコンソールも曲面を使った形状で、天板やフォーセットも高級感がある。シンクは大きくは無いが十分実用になる大きさ。シャワーフォーセットは引き出して車外で使うこともできる。
シンクの下には5Lの給水タンクが収納されており、リアゲートを開ければ車外から直接出し入れすることができる。排水タンクは10Lで床下に設置されている。
冷蔵庫/電子レンジ
冷蔵庫はオプション設定されていない。もちろん好みのポータブル冷蔵庫を持ち込むことができるが、適当な収納スペースは用意されていない。
一方電子レンジ(WaveBox)はオプション設定されている。この電子レンジは12Vと100Vで駆動ができる。電子レンジを搭載する場合「家具側に専用のコンセントとプラグを取付」とも記載されている。ただし、電子レンジの収納方法は不明。インテリアのバランスを崩さずに収納できることを期待したい。
収納
後部のオーバーヘッド収納
ルネッタには後部に、これも曲線を生かしたオーバーヘッド収納が設置されている。左右と後面に連続した美しい家具で、3つの扉が付いている。
左側のオーバーヘッド収納
ただし奥行きはそれほどなく、収納力は大きくない。各収納スペースにはそれぞれLED照明が付いているのにはこだわりを感じる。
空調
空調に関しては特に特筆することは無い。暖房はFFヒーターがオプション設定されている。冷房は軽バンコンに望む方が無理があるが、折角の美しい室内なので、何らかのソリューションを将来期待したい。
テレビ/ナビ
アーム付きテレビを設置できる
画面サイズは書かれていないが、テレビがオプション設置されている。これは画面を任意の方向に向けることができるアームとともに設置される。
ナビについては、特に書かれていないが、希望のナビを取り付けることができるだろう。
電装系
電装系のスイッチと100Vコンセント
サブバッテリーは100Ahのディープサイクルサブバッテリーが1個標準装備される。走行充電も標準装備と思われる。外部電源入力や充電機能、あるいはインバーターやソーラーシステムなどはオプションとして書かれてないが、もちろん可能だろう。
照明などには上の写真のようなスイッチが使われており、スイッチもデザイン的に考慮されている。また100Vのコンセントも同じデザインのものが使われており、細部にもこだわっている。
価格(2021年8月現在:千円台切り上げ:税込)
JPターボ ガソリン2WD/4ATで309万円~。PZターボスペシャルでは331万円~。
付けておきたいオプションは、外部電源入力や充電機能、インバーター(いずれも価格不明)、FFヒーター (253,000円)が挙げられる。
必要に応じて電子レンジ(49,500円)も選択できる。また、プルダウンベッドは330,000円となっている。
他モデル
エブリイベースの軽バンコンでノーマルルーフのモデルは、ギャレーを持つものだけでも相当な数があるが、代表的なものを挙げると、オートワンの給電くん(179万円~:バンベース)、岡モータースのミニチュアクルーズCozy(287万円:バンベース JPターボ2WD/4AT)がある。
多くは200万円前後で、高価な部類に入るものでも300万円以下がほとんどだ。これらと比べると、ルネッタは更に高価なことが分かる。
例外としてstage21のリゾートデュオバスキングレグノ(418万円~:JOINターボ 4WD / 4AT)があるが、これは小型クーラーまで含めたフル装備だ。
まとめ
ルネッタは軽バンコンの中でも最高級のモデルだ。300万円を超えるこの価格ならNV200バネットやタウンエースベースのバンコンにも手が届く。ただし税金面では軽自動車は優遇されているので、維持費は安価ではある。
しかし軽バンコンに300万円は出せないと思うなら、このモデルは選択肢ではない。軽バンコンでも最高のインテリアを望むユーザー向けのモデルだ。
一方、装備面は充実しているとは言えない。冷蔵庫や電子レンジを装備することはあまり重要視されていないようだ。もちろんクーラーも無いので、夏場は車内で過ごすのは難しい。
ただしこれらは欠点ではない。軽バンコンに多くを望むのは適当ではないし、多くのモデルは冷蔵庫の設置スペースは無く、エアコンはもちろん装備できない。
ルネッタは高価だしインテリアも美しいので、装備も充実しているべきと思いがちだが、そのようなモデルではない。どちらかと言うと、シンプル装備で就寝を重視したモデルだ。
就寝スペースを確保するならポップアップルーフが一般的だ。しかしポップアップルーフはいちいちルーフを上げ下げしなければならないし、雨風に影響される。このような理由からあえてポップアップルーフとはせず、プルダウンベッドで就寝スペースを確保している。これが最も大きなルネッタのアドバンテージだろう。
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