アストラーレ TRIAS480(トリアス480)はバンテックが製作する、トヨタ カムロードをベース車にした、全長5mを切るキャブコンキャンピングカー。
同社は埼玉県所沢市に本拠を置くビルダーで、、ジルシリーズやコルドシリーズと言ったカムロードベースのキャブコンを中心にラインアップしている。アストラーレはそのような従来からのブランドに対し、新しいコンセプトカテゴリーを目的に作られた。
アストラーレブランドは、2021年にアストラーレ CCI(現在はCC1ビーナス)が最初のモデルとして発表され、2024年にはハイラックスベースのキャブコンGX4が追加された。そして2025年にトラリス480をはじめ、ハイエースワイドロングベースのキャブコンCH1マーズと、キャラバン標準ボディベースのバンコン、NSビアートが追加された。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
カムロードをベースにするキャブコンで、全長を4,800mmに抑えたのが特徴。レインドロップを考慮したバンク形状を含めスタイリッシュなシェルを持つ。
横座り対座スタイルのダイネットをはじめ二人旅に適したレイアウトを採用し、後部の横置き2段ベッド(上段はオプション)ルームは、スライド扉が付いていて、緊急のトイレルームにもなる。
後部のバンパー部を引き出すと、水洗いできる大きな外部収納など、多くのアイデアが採用されている。家庭用エアコンを標準装備し、EcoFlow仕様では、同社独自のIRiSシステムが搭載され、6000Whのリチウムイオンバッテリーを標準装備する。
アピールポイント
・カムロードベースながら、短い全長で取り回しがしやすい
・レインドロップを考慮したスタイリッシュなシェル
・二人旅に適したリビングスタイルのダイネット
・緊急のトイレルームとしても使える、後部のベッドルーム
・水淡いできる大きな外部収納
・家庭用エアコンを標準装備
・6000Whのリチウムイオンバッテリーを標準装備(EcoFlow仕様)
ベース車とエクステリア

トラリス480のエクステリア
ベース車は、トヨタカムロード。ディーゼルの2WDと4WDが選択できる。どちらも、ワイドトレッドと同径リアダブルタイヤのシャシーを採用している。これに、FRP一体成型の高断熱シェルを架装している。
バンク部は雨水の流れる溝を作り、ドアを開けたとき雨水が落ちてこないデザインになっている。また、このデザインを含め、スタイリッシュなフォルムも特徴。更にリアスポイラー(OP)を加えて、空力特性の良い形状としている。
インテリア

トラリス480のインテリア
家具色はナチュラルな木目の家具とアイボリーのシートカラーの組み合わせ。シート地は同社の他モデルのシート地を選択することもできる(OP)。照明はスポットライトと間接照明で、お洒落な夜のインテリアを演出している。
レイアウト

トリアス480のレイアウト
前部に横座り対座ダイネット、中央にギャレー、後部に横置き2段ベッド(上段はオプション)を設置するベッドルーム兼多目的ルームの構成。リビングスタイルのダイネットはカムロードキャブコンとしては多くなく、また、ベッドルームを多目的ルームとして使うアイデアは、新しい。
確かに、多目的ルームの要不要は意見の分かれるところだ。ただ、不要と思うユーザーでも、緊急用としては何か手段があった方が安心と思うだろう。トリアス480
の「ベッドルームを緊急用の多目的ルームにする」というアイデアは、これを見事に解決している。今までありそうでなかったアイデアだ。
もちろん、このスペースを専用のトイレルームや収納スペースにしても良い。 2名ならバンクベッドとダイネットを展開したベッドで就寝できる。そのおかげで、室内は広くなり、大きなクローゼットも実現している。
乗車定員は7名(4EDは6名)、就寝定員は4名だが、前向きシートは運転席と助手席のみなので、長距離やクルマ旅では2名での使用が適しているだろう。
ダイネット

ラウンジソファのダイネット
カムロードキャブコンでは珍しく、横座り対座スタイルのダイネットを採用している。多数派は、ナッツRVのジョリビーに見られるような縦置きの対座ダイネットだ。これなら前向きに4名が乗車できるので、汎用性にも勝る。
しかしあえて横座り対座にした理由は、「余裕」の表現ではないだろうか。横座り対座スタイルは物理的にも広く、見た目も遮るものが無く、優雅に見える。二人で使うならこちらの方がゆったりしているし、ファミリーで使うならもう少し広いコルドバンクスがお勧めと言うことだ。
ベッド
トリアス480のベッドは後部の横置き2段ベッド(上段はオプション)、バンクベッド、ダイネットベッドの3か所がある。

後部の2段ベッド
まず、トリアス480の特徴でもある後部のベッドから(この「特徴」についてはレイアウトの項参照)。ベッドサイズは、下段が1860x700mm、上段(OP)が1860x735mmの大きさ(同社談)。ちょっと不思議だが、オプションの上段の方が幅が広い。
また、オプションである上段にしか窓が無いというのも残念なところではあるが、バゲッジドアがあるので仕方のないことかもしれない。

バンクベッド
バンクベッドは固定で、1870x1120mmの大きさ(同社談)。車幅方向に大人1名か子供2名が就寝できる(読書灯は一応両側についている)。引き出し式にすれば大人2名が就寝できたと思われるが(実際ジョリビーは2名就寝できる)、それをやらなかった理由は、スタイリッシュなバンク形状を優先したこともあるかもしれないが、コンパクトな車体にそれほど就寝人数は必要ないと考えたからだと思われる。リビングスタイルのダイネットもそうだが、その割り切りは一つの正しい方向だろう。
バンクベッドの上部には、大きなスカイビューウインドウが設置されている。これはオプションだが、付けておきたい機能だ。光を取り入れ車内が明るくなるだけで無く、星空を見ながら就寝できたり、網戸にして涼を取ったり、シェードにしてプライバシーを確保したりできる。
残念ながらダイネットベッドの写真は無いが、ダイネットを展開すると、1860x1400mmの大きさのベッドになる。1400mmの幅は家庭用のレギュラーダブルベッドの幅に相当し、一般的な対座ダイネットをベッド展開した場合より大きい。
これは横座り対座ダイネットを採用した結果でもあるだろう。さらに、オプションのベッドマットを追加すると、1860x1780mmのベッドになる。1780mmはほぼキングサイズベッドの幅に相当する。
ベッド展開は、テーブルを押し下げ、ソファの背もたれを移動するだけで完成する。
ギャレー

ギャレーセクション
左側中央に設置されたギャレーキャビネットは比較的奥行きがあり、シンクとフォーセットがビルトインされている。シンクの隣が広くなっているので、IHコンロ(大容量バッテリーなのでIHコンロがお勧め)を置いても十分余裕がある。
このクラスのカムロードキャブコンはほとんどの場合常設コンロは持たないし、このクルマのコンセプトからするとこれが正解かもしれないが、調理をするユーザーは、常設コンロの選択肢も欲しいところではある。

ギャレーキャビネットの給排水タンクと引出し収納
シンクの下には各20Lの給排水タンクが収納されている。給排水タンクの収納位置はエントランスから遠いので出し入れが大変そうに見えるが、実はタンクの反対側に車外への扉があり、車外から直接出し入れできる。このあたりは、さすがに老舗のバンテックだ。
ギャレーキャビネットには、引き出し収納が2箇所あるが、取っ手が無い。これはプッシュすると飛び出してくる仕掛けで、閉めた場合自動的にロックされる。いつものロックボタンを押し込む手間が無いのだ。何気ないことだが、なぜ今までなかったのかと思ってしまう。

ギャレー上部のオーバーヘッド収納
ギャレー上部にはオーバーヘッド収納が設置されている。食器や調理用具などの収納に便利だ。
冷蔵庫/電子レンジ

85L横開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は85L横開き式が標準装備される。最近増えてきた両開き式ではないが、特に大きな問題ではないだろう。冷凍室も備わっているので、製氷や冷凍食品の保冷も可能だ。

電子レンジも標準装備される
家庭用の100V仕様の電子レンジが標準装備される。冷蔵庫と電子レンジはギャレーキャビネットの対面にある収納タワーに収まっており、使いやすい位置にあるが、これも多目的ルームをベッドルーム兼用にした恩恵だろう。
多目的ルーム
上記で述べているように、専用の多目的ルームは無いが、ベッドルームを緊急用のトイレルームにしたり、収納庫にしたりできるというアイデアは優れモノだ。頻繁にトイレを使用しないならこれで十分だろう。

「ラップル」を収納
しかしこのアイデアを実用的なものにしているのは、冷蔵庫の下に用意された車載用ラップ式トイレ「ラップル」の収納庫だろう(トイレ本体はオプション)。この収納が無ければ、実際に想定されたように使うユーザーは少ないかもしれない。
実際に使う場合は、まずベッドボードを跳ね上げ、トイレをここから出してベッドルームに設置するという作業が必要だが、無いよりははるかにマシだ。
収納
トリアス480には、ギャレー上部とダイネット上部両側のオーバーヘッド収納、クローゼット、外部収納など、コンパクトなキャブコンながら収納が豊富に用意されている。

ダイネット両側にオーバーヘッド収納が設置される
まずダイネット両側にオーバーヘッド収納が設置されている。これだけあると収納力も大きく、車内が荷物で煩雑になることは無いだろう。ダイネットのシート下も収納になっているが、これは車外からのアクセスをメインに想定しているようだ。

クローゼット
次に、大きなクローゼットも用意されている。クローゼットがあると、かさばるコートやジャケットの他、衣類も収納しておけるので大変便利だ。ただ、「贅沢」なスペースなので、コンパクトなモデルにはほとんど付いていないが、これもベッドルーム兼多目的ルームのアイデアの産物だ。

大きな外部収納
トリアス480の注目機能のひとつがリアバンパーを引き出すと出てくる大きな外部収納だ。ダイレクトカーズのNINJAでも採用されているが、大きな外部収納はもともとバンテックのジルで採用されている。
しかし、これらのモデルはいずれも全長5mを超えるモデルで、トリアス480のようなコンパクトなモデルでは特に重宝な装備と言えるだろう。これらはFRP製なので、水洗いでき、排水口も用意されている。
なお、左側が空いているのは、ここにエアコンの室外機があるため。エクステリアに室内機の排気口が見当たらないが、デザインが優先されているのかもしれない。
空調

家庭用エアコンを標準装備
家庭用エアコンが標準装備される。暖房はFFヒーターを標準装備、マックスファンも標準装備だ。
テレビ/ナビ

テレビはオプション
テレビはオプションリストに無いが、好みのものを設置できるようだ。ただし最大サイズは不明。テレビ用のステーもオプションで用意されており、上の写真の位置に取り付けることができる。単座のシートに座っている場合は少し見難そうだ。
電装系
標準仕様では300Ahのディープサイクルバッテリーが標準装備されるが、EcoFlow仕様では、同社の6000Whのリチウムイオンバッテリーを含むILiSシステムが標準装備される。
EcoFlow仕様ではその他、走行充電、外部100V電源入力とチャージャー、3000W正弦波インバーターを標準装備。ソーラーシステムは240W、480W、720Wのものがオプションで装備できる。
価格(2025年2月現在:千円台切り上げ:税込)
ディーゼルのダブルタイヤのみが選択可能で、標準仕様は2WDが988万円~、4WDが1006万円~、EcoFlow仕様は2WDが1087万円~、4WDが1105万円~となっている。
付けておきたい必需オプションは、標準装備が充実しているのでほとんど無いが、できればソーラーシステムを選択しておくと、大容量バッテリーへの充電が常に行われることになるにで、効率よく充電できる。(ナビ関連は除く)
他モデル
全長5mを切るカムロードキャブコンは多数存在するが、特にショートボディモデルとしては、ナッツRVのジョリビー(4790mm/300Ah:951万円~)とアレッタ(4850mm/400Ah:1168万円~)、東和モータース販売のレーベン(4850mm/400Ah:1168万円~)、AtoZのACE-M(4650mm:825万円~)、キャンパー厚木のパピィフルハウス(4880mm/416Ah:1096万円~)
全てディーゼル4WD、ワイドトレッド、同径リアダブルタイヤの価格を表示している。ACE-Mを除き全車リチウムイオンバッテリーを搭載した価格。
トリアス480以外は全てガソリン2WD、標準トレッド、小径リアダブルタイヤを選択できる。
まとめ
トリアス480はコンパクながら、充実装備で収納も多く、斬新なアイデアがいたるところに採用された、優れた設計思想のモデルだ。スタイリッシュなエクステリアデザインも目を引くだろう。
全長5mを切るカムロードキャブコンの中でも特に全長を短くしたモデルの中では、最もお勧めしたいモデルのひとつだ。(ただし二人使用で)
あえて短所を挙げるとすると、普通免許で乗れるガソリン2WDが選択できないこと。ディーゼルは、新たに免許を取得する場合、準中型免許が必要となる。ガソリン車は価格が安価というのもメリットだ。もちろんディーゼルを好む場合は問題ではない。
もう1点は価格。ジョリビーに比べて約57万円高価だ。 ただしこれはリチウムイオンバッテリーの容量の違いによるところもあり、トリアス480が6000Whに対し、ジョリビーは300Ah=3600Whとなっている。価格重視のこのカテゴリーでは6000Whは少しオーバースペックかもしれない。
しかし、二人旅に使うなら魅力的なモデルであることは間違いない。リビングスタイルの広いダイネット、大きなクローゼットや外部収納、スタイリッシュなエクステリア、スカイビューウインドウなどは他車にない魅力的な装備だ。
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