Puppy Fullhouse(パピィフルハウス)はキャンパー厚木が製作する、カムロードをベース車にした5mを切るキャブコン。
同社はちょうど1年前にPuppy480を発表したが、カムロードベースながらコンパクトなボディが好評を博した。今回発表されたPuppy FullhouseはPuppy480と同サイズのボディで、二人旅に特化したレイアウトとした。
(記事中の価格は全て税込です)
コンセプト
カムロードベースながら、ノアやヴォクシーと同程度の車幅(1740mm)を持つ。これにより、今まで駐車場に入らないという理由でキャブコンを諦めていたユーザー層にアピールしている。車長は当然ながら5mを切る。
Puppy Fullhouseは、従来のPuppyのレイアウトを二人旅に特化したレイアウトに変更し、より快適な二人旅を目的にしている。エアコンを標準装備するなど、空調も充実している。
エクステリア
Puppy Fullhouseのエクステリア
ベース車には標準トレッドのカムロードを使用。これにFRP一体成型のシェルを架装している。シェル幅がキャブ幅とほぼ同じなので後方の確認がしやすく、キャブコンに乗りたいが運転が不安と言うユーザーにも扱いやすい。
Puppy480の最大の特徴は車幅が1740mmとミニバン並みなこと。ノアやヴォクシー(1735mm)とほぼ同じ車幅のため、高さには注意する必要があるものの家庭のカーポートにも入れられる。
Puppy480との比較
Puppyから変更された点でまず目に入るのが、デザインラインがブルーからブラックになったこと。またレイアウトの変更により、ウインドウの位置や大きさが変更されている。
網戸が組み込まれてたエントランス
エントランスドアはPuppyと同様にシェードが組み込まれているほか、網戸にすることもできる。
なお、トヨタによるベース車の変更で、全車エマージェンシーブレーキなどの安全面が強化され、全車ダブルタイヤになった(2WDは小径、4WDは同径)。そのため価格もアップする。
インテリア
インテリアは様々な素材や色を選択できる
家具色やシート生地は基本的にPuppy480と同じ。木目調の家具と薄いブラウン系のシート色で、インテリアの変更や選択は用意されていない。しかし、落ち着いた配色で長期間過ごしても飽きのないインテリアだ。
照明は天井のメイン照明の他に、カウンター上部に間接照明が配置されている。天井の照明はPuppy480同様、明るさと色温度の調光ができる。
レイアウト
前部にギャレーとバンクロフト、後部は広いダイネットを配置している。特にダイネットは広く、二人での長期旅でも窮屈感は少ないだろう。
ロフトには常設のシングルベッドが配置されている。ダイネット展開したベッドで2名、ロフトベッドで1名の計3名が就寝できるわけだが、二人ならダイネットベッドとロフトベッドで別々に就寝しても良い。
二人旅と言ってもプライベートな時間が欲しい場合もある。特に就寝前は本を読んだり、スマートフォンなどを観たりなど、プライベートな時間を過ごしたいものだ。
この場合は特にダイネット展開は不要で、ロングソファがそのままシングルベッドとして使用できる。シートバックははめ込んで固定されているだけなので、ベッド展開のための労力はほぼ必要ない。
ダイネット
ロングシートのダイネット
ダイネットは二人なら十分な広さだ。またテーブルは大きく、二人分の食器なら余裕で並べることができる。
更にPuppy Fullhouseには右サイド(ロングソファの対面)にカウンターと、その下にシートが備えられている。このシートはカウンターがあるので座ることはできないが、足を投げ出して寛ぐことができる。
ダイネットは常に行儀良く座っているところではなく寛ぐところなので、どのような体勢で寛げるかは大きなポイントになる。ただ座ることだけを考えたダイネットは疲れるものだ。
なお、カウンターは一見無駄なスペースに思えるが、ここにテレビを置いたり、観葉植物を置いたりと、様々な使い方ができる。スペースファクターが優先されがちなキャンピングカーの室内だが、このような空間があることにより、クルマ旅を豊かなものにしてくれる。
ベッド
ダイネットを展開したベッド
ダイネットをベッド展開すると、1900x1160(最大1580)mmのベッドになる。(キャンピングカーファン実測値) 最大幅は右側のカウンター下の空間(420mm幅)を加えた寸法。
1160mmは家庭用ベッドならほぼセミダブルベッドの幅で、2名が就寝できる。また1580mmは家庭用ではほぼクイーンサイズベッドに相当する。
ロフトのシングルベッド
もう一つはロフトベッド(バンクベッド)で、こちらは1920x760mm(同)。家庭用シングルベッドの幅(970mm)には及ばないが、キャンピングカーのシングルベッドでは一般的な幅だ。
このベッドは常設ベッドで、ベッド展開は不要。寝具もそのままにしておける。ダイネットベッドの寝具も昼間はここに収納しておくと生活臭さが無くなる。
ギャレー
前部のギャレーセクション
ギャレーコンソールにはぽつんとシンクだけが埋め込まれているように見えるが、右側の冷蔵庫や電子レンジが収納されているタワーと調理台でつなぐと、立派なキッチンができあがる。
調理台は引き出してセットする
調理台は冷蔵庫の上に収納されており、スルスルと引き出してシンクのコンソールとドッキングしロックできる。これは広く機能的なキッチンだ。ベンチレーターがロフト上にあるので調理時の排気もスムースだ。
また、20L給水タンクは車外のドアから出し入れする。排水タンクは43Lで床下に設置されており、バルブを緩めて排水する。
冷蔵庫/電子レンジ
40L冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は65L横開き式冷凍冷蔵庫が標準装備される。また電子レンジも標準装備され冷蔵庫の上部にすっきり収納される。1500Wインバーターも標準装備なので、外部電源が無いところでもサブバッテリーで使用できる。
トイレルーム
カセットトイレが標準装備される
Puppy480ではトイレはオプションだったが、Puppy Fullhouseではカセットトイレが標準装備される。二人旅のユーザー層を考えると、トイレルームは必需品という判断からだ。
なお、カセットトイレが不要なユーザーにはレスオプション(-55,000円)が用意されており、ポータブルトイレ(31,900円)やラップポン(182,600円)に変更することもできる。
収納
両側に設置されたオーバーヘッド収納
Puppy Fullhouseの収納は非常に充実している。まず、オーバーヘッド収納が両側にあり、特に左側は前部まで連なっている。また、右側の収納は大きく、収納力も申し分ない。
ロングシート下の収納スペース
次に、ロングシート下は大きな収納スペースで、ここには大き目のバッグなども収納できる。最後部のシート下も同様に収納スペースになっている。ただ、FFヒーターのダクトが通っているので、荷物の出し入れには注意する必要がある。
ロフトのタンス収納
ロフトにあるタンス収納は斬新なアイデアで、3段の引き出しが用意されている。一番上の引き出しは引き抜けるようになっており、取り外して収納物の出し入れを行う。ロフトには左側面にも扉付きの収納が用意されている。
後部右側のクローゼット
後部右側には大きなクローゼットも用意されている。このクローゼットは背が高く、ロングコートも問題なく吊るすことができる。長期旅ならラフなシャツだけでは済まない場合もあるので、クローゼットがあると衣服の収納が楽だ。
その他、シンク下やトイレルームにも収納が用意されている。シンク下の収納には、鍋やフライパンなどの調理用具を収納しておくことができる。
空調
家庭用エアコンの室外機はここに設置
家庭用エアコンが標準装備される。室内機は最後部に取り付けられているので、冷気はストレートに車内に行き渡る。室外機はPuppy480とは逆に右側後方に設置されている。
また暖房にはFFヒーターが標準装備されるほか、ベンチレーターも標準でバンク部上部に取り付けられている。ベンチレーターはPuppy480同様、できるだけ低く取り付ける工夫がされており、全高を抑えている。
テレビ/ナビ
ナビはパイオニア製の各種ナビがオプション設定されている。ドライブレコーダーやETCもオプション。テレビは特にオプション設定されていないが、取り付けは可能だろう。
電装系
右側ラック下の電装系
電装系は右側ラック下に収納されており、メンテナンスがしやすい。なお、サブバッテリー3個は重量バランスの関係で前部シンク下に収納されている。
サブバッテリーは100Ahのディープサイクルバッテリーが3個(計300Ah)標準装備されており、昇圧式走行充電と外部100V電源入力、および充電機能も標準装備される。
なお、リチウムイオンバッテリーは設定されていない。これは3個のディープサイクルバッテリーで負荷を分散することにより各バッテリーの負荷を少なくしているため。また大容量ソーラーシステムを設置した場合は、更に負荷が軽くなる。これらの理由により、ディープサイクルバッテリーでも寿命を延ばすことができ、コスト的にも有利なことが理由としている。
インバーターは1500Wと122W(いずれも正弦波)が標準装備されており、エアコンなど大電力系と小電力系に分かれている。これは、エアコンなどを使用しない場合は1500Wインバーターはオフにしておくことにより、インバーター自体の消費電力を節約するのが目的だ。
480Wのソーラーシステム(オプション)
また、オプションで480Wのソーラーシステムを装備できる。これだけの容量があれば天気の良い日中ならエアコンの消費電力の多くを賄うことができ、バッテリーの消費を節約できる。
価格(2021年7月現在:千円台切り上げ:税込)
ガソリン2WD/6ATの価格は788万円~、ディーゼル4WD/6ATは880万円~となっている。ベース車のセレクションはこの2種類のみ。
必需品はほぼ全て標準装備なので、付けておきたいオプションは無い。必要に応じて480Wソーラーシステム(286,000円)やサイドオーニング(129,800円)が選択できる。
なお、ベース車がエマージェンシーブレーキなどの安全面が強化され、ダブルタイヤが標準となるモデルチェンジがされたことにより、100万円以上の大幅な価格アップとなった。当初Puppy480は598万円~(税別)だったが、Puppy480もPuppy
Fullhouseと同レベルの新価格になる予定。
他モデル
カムロードベースのキャブコンは非常い多く存在し、5m未満の車長を持ち、かつエアコンを装着できるモデルだけでも、以下のように多数のモデルがある。
アンセイエ:MYSミスティック
アンソニーLE:エートゥゼット
伊勢志摩:ダイレクトカーズ
イグアス:ファンルーチェ
ヴォーン ノイン R2B/DC:東和モータース
クレア5.0/スティング5.0 シリーズ:ナッツRV
クレソンジャーニーシリーズ:ナッツRV
コルド バンクス/リーブス/ランディ:バンテック
ジル 480スキップ:バンテック
Puppy480/Fullhouse:キャンパー厚木
しかし、Puppy以外のモデルは車幅が2m近くあり、最も車幅が狭いアンソニーLEでも1910mmだ。すなわち、1740mmのPuppy480/Fullhouseは他にはないコンパクトなモデルと言える。
まとめ
Puppy FullhouseはPuppy480同様、「家庭のカーポートに入る」カムロードキャブコンだ。これこそがPuppyのコンセプトで、このコンセプトで真正面から対抗したカムロードキャブコンはまだ存在しない。
このマーケットが存在することはPuppy480のヒットで証明されているが、もちろん幅が狭いという理由だけではここまで支持されなかっただろう。エアコン標準装備をはじめ、ほとんどの必需品を標準装備し、かつリーズナブルな価格設定も大きな理由だ。
さて、Puppy FullhouseはこのPuppy480の二人旅仕様車だ。もちろんPuppy480でも二人旅はできるが、Fullhouseは二人旅に「特化」したモデルだ。その特化と言うのは、おそらく「余裕」と「プライベート感」だろう。
小さな子供がいるファミリーならいつも一緒でワイワイと賑やかでも苦にならない。しかし、二人旅(特に年配の夫婦)の場合は、いつも面と向かっているのは苦痛!?だ。ましてや、寝る時も一緒というのは疲れる。プライベート空間が必要なのだ。
Puppy Fullhouseは、そのことが良く考えられている。広いダイネットはそれぞれ好みの体勢で寛げるし、ベッドはプライベート感のあるロフトベッドが用意されている。ダイネットベッドも一人で就寝するならベッド展開は不要だ。
しかし食事は楽しく一緒に食べたい。機能的なギャレーでちょっとした調理をし、ダイネットソファをコの字型にすると、向かい合っても隣り合ってでも食事ができる。
多くのご同輩は「退職したら二人でクルマ旅を」と計画しているが、いずれ奥様は来なくなる。狭い車内で四六時中一緒にいなければならないことも原因の一つだが、トイレ事情もある。夜中に車外のトイレに行くのは、女性でなくても面倒なものだ。
そこでPuppy Fullhouseにはカセットトイレが標準装備された。二人旅仕様にはトイレルームは必需装備だ。また、やはり二人旅なら優雅に、快適に行きたい。従って、エアコンも標準装備されている。
出窓(風)がある広いダイネット、プライベート感のあるベッド、広く清潔なトイレ、快適な空調、大きなクローゼット、これらがPuppy Fullhouseが目指した「二人仕様」だ。
懸案点も挙げておきたい。最大の懸案点は価格だろう。「Puppy480と600万円のエアコン付きファミリー向けモデル比較」の記事で書いた通り、旧価格のPuppy480はスーパーロングバンコンの対抗馬でもあった。
しかしカムロードの価格アップにより、その戦略は難しくなる。キャブコンなら、タコスのベリーに代表される低価格のハイエースベースキャブコンが相対的に有利になる。
しかし、カムロードベースのキャブコン同士なら同条件なので、Puppy480/Fullhouseはカムロードキャブコンとしては比較的低価格のポジションとなると思われる。いずれにしても、ノアやヴォクシーとほぼ同じ車幅のカムロードキャブコンと言う優位性は変わらない。
関連記事