Ajisashi(アジサシ)はホワイトトップが製作する、ハイエーススーパーロングをベース車にしたバンコンキャンピングカー。同社は熊本県に本拠地を置くビルダーで、他社モデルの販売と並行して、自社モデルの開発も行っている。
現在同社のオリジナルモデルは、このアジサシと、ハイエース標準ボディハイルーフのSEAGULL(シーガル)の2モデルだが、どちらもユニークなレイアウトや機能を持っている。
(記事中の価格は全て税込です)
コンセプト
アジサシはマルチモードシートを持たない、二人旅を想定したレイアウトで、優雅なラウンジソファダイネットと、縦置き常設ベッドを持つ。
また、12Vエアコン(COOLSTAR)をオプションで設置できるほか、リチウムイオンバッテリーも選択できる。スーパーロングの広い室内を二人使用に割り切ったことで、快適で優雅な二人旅が期待できる。
エクステリア
アジサシのエクステリア
ベース車はハイエーススーパーロング。外観はノーマルのハイエースと変わらないが、オプションでアクリルウインドウ化が可能。装着した場合の写真は無いが、FRP枠にアクリルウインドウが付いたものが装着される。アクリルウインドウ化により断熱性が高まる。
なお、展示車はDXグレードでフロントシートは3人掛けだったが、キャンパー特装車も選択できる。ただし特装車は自動ブレーキが付かないので、必要な場合はDXグレードを選択する必要がある。
インテリア
アジサシのインテリア
展示車のインテリアは明るい木目の家具とツートーンのダイネットシートの組み合わせだった。どの程度インテリアカラーや素材を選択できるか不明だが、ある程度の自由度はあると思われる。
ダイネットサイドやギャレーのウインドウは半窓埋めされているし、左側後部のウインドウは全窓埋めされているが、このような手法も特徴的だ。断熱性の向上を狙ったものと思われる。
レイアウト
二人使用に割り切ったレイアウトが特徴。ダイネットシートはラウンジソファスタイルで、前向き乗車はできないが、リビングのように寛げるダイネットになっている。横に長いマルチモードシートがないため動線が遮られることが無く、運転席、助手席から最後部まで自由に移動できる。
後部にはギャレー、トイレルームと縦置きダブルベッドが置かれている。ベッドは縦置きのため車幅に影響されることなく足を延ばして就寝できる。大人が就寝できるのはこのベッドのみで2名が就寝できる。
乗車人数は、運転席と助手席、およびその間に1名着座でき、またダイネットシートに2名着座できるので、計5名が乗車できる。前向き乗車はフロントシートの3名だが、中央の席は通常座らないので、一般的には2名が前向き乗車できる。
ダイネット
2名対座にロングシートを加えたダイネット
L字型のラウンジソファスタイルのダイネットで、スペース的には5名程度が座れるが、二人旅の場合はゆったり寛げる。なお、テーブルを押し下げてベッドマットを乗せるだけでフラットスペースになるため、ちゃぶ台スタイルで寛ぐこともできる。
ベッド
後部の縦置きダブルベッド
ベッドは後部の縦置きダブルベッドと、ダイネットを展開するダイネットベッドの二つがあるが、ダイネットベッドはキャンピングカーで大人用として規定されている1800mmが確保できないため子供用となっている。
後部のダブルベッドは常設ベッドで、寝たいときにベッドメークする必要が無いのが大きな利点だ。また、このベッドの特徴はポケットコイルマットレスを採用したことで、バンコンとしてはもちろん、キャンピングカーとしてもトップクラスの寝心地を保証する。
大きさは1850x1050mmで、家庭用ベッドならシングルベッドの幅(970mm)よりも少し広い程度で、セミダブル(1200mm)には及ばない。そのため、二人で就寝するには多少窮屈かもしれない。
ダイネットベッドは子供用
ダイネットベッドは1700x1000mmの大きさで、子供用の設定になっている。ただ、コンセプトは二人旅仕様なので子供が就寝するケースは少ないかもしれない。二人旅の途中でケンカした場合のエマージェンシーベッドとして使える。
ギャレー
曲線を生かしたギャレーセクション
ギャレーは優雅な曲線を描くコンソールに丸形シンクがビルトインされている。ただしポータブルカセットコンロを置くスペースが無く、調理は難しそうだ。もちろんダイネットテーブルには置けるので、ダイネットで調理することはできる。しかしいずれにしても、調理をする想定はされていないように思える。
なお、下には各20Lの給排水タンクが収納できるようになっている。曲面に合わせてジャバラ扉が付いており、こういったところもデザイン的な工夫がされている。
ギャレーコンソールには引き出し収納が用意されている
なお、ギャレーコンソールには3段の引き出し収納が用意されており、食器やカトラリーを収納するのに大変便利だ。
冷蔵庫/電子レンジ
30L引き出し式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は30L引き出し式が標準装備されるが、これでは小さすぎると感じるユーザーも多いだろう。長期旅に使う場合は、やはり冷蔵庫は製氷室が独立している横開き式40L以上が欲しい。なお、横開き式冷蔵庫の設置は要相談とのことで、不可能ではなさそうだ。
また、電子レンジはオプションで設置でき、場所はシューズボックスの上か冷蔵庫の上部に設置できるとのこと。いずれも家具の改造が必要となる。これも冷蔵庫同様、希望するユーザー向けに設置を想定した構造が望まれる。
ユーティリティールーム
ラップポントイレ(別売)も置くことができる。
ユーティリティールームは後部右側に設置されており、ポータブルトイレが標準装備されている。写真にあるようにラップポンにグレードアップすることができる。
なお、トイレに入り方が技ありで、そのままでは入り口が狭くて入れないので、ドアに向かって右側が引き戸になっており、これを後部に開けることにより入り口が広くなる。(ビデオ参照)ちょっとしたアイデアだが、非常に便利だ。
収納
下段ベッド下の収納
アジサシの収納は各所に用意されており、室内が荷物で煩雑になることは無い。まず、ベッド上とギャレー上にオーバーヘッド収納が設置されている。特にベッド上のものは大型で収納力も大きい。
厚いマットレスごとダンパーで軽く持ち上がる
次にダブルベッド下が大きな収納スペースになっている。大きなバッグなどはここに収納しておける。なお、ベッドマットを含め上部がダンパーで持ち上がるようになっており、少ない力で開閉できる。これは非常に実用的だ。なお、ベッド下収納はリアゲートを開いて車外後部からもアクセスできる。
ダイネットソファ下の収納
もう一つはダイネットソファ下で、ここにも大き目の収納スペースが用意されている。なお、この位置は走行中エンジンの熱で熱くなるため、熱の影響を受けるものは収納しないほうが良い。
エントランス左側のシューズボックス
シューズボックスも用意されている。またギャレーの引き出し収納は前述の通り。
空調
12Vクーラーがオプションで設置できる
暖房はFFヒーターがオプションで用意されている。また冷房は12VクーラーCOOLSTARがオプション設定されている。なお、同社のHPには家庭用エアコン(356,400円)がオプションとして表記されており、価格は展示車に設置されていたCOOLSTAR(440,000円)よりも安価だ。どちらでも選択可能なのかもしれない。なお、ベンチレーターは標準装備される。
テレビ/ナビ
19型のテレビが標準装備される。ビデオにあるように、台座が回転し、ダイネットからでもベッドからでも観ることができる。ナビは特にオプションで設定されていないが、好みのものを装着できる。
電装系
リチウムイオンバッテリー(OP)も選択できる電装系
100AhのAGMバッテリーが1個標準装備される。AGMバッテリーは通常のディープサイクルバッテリーより高性能だが、それでもエアコンを装備する場合は100Ahではエアコンの使用時間が短い(日中だと1時間半程度)ので、バッテリーの増設をお勧めする。オプションでトリプル(3個)まで設置できる。
予算に余裕があれば、リチウムイオンバッテリーが理想的だ。AGMバッテリーと言っても鉛バッテリーには変わりないので、経年劣化は避けられない。リチウムイオンバッテリーなら経年劣化は少なく寿命も長い。外気温にもよるが、200Ahのリチウムイオンバッテリーなら日中でも4時間以上は使用できるだろう。(エアコンの消費電力を平均500Aで計算)
価格(2021年4月現在:千円台切り上げ:税込)
特装車ガソリン2WD/6ATで533万円~、4WDで564万円~となっている。なお、DXのGLパッケージバージョンだと535万円~。前述のように特装車の方が機能面や体裁が良いが自動ブレーキのToyota
Safety Senseは搭載できない。
必要なオプションはFFヒーター(216,000円)と1500W正弦波インバーター(162,000円)が挙げられる。できれば家庭用エアコン(324,000円)かCOOLSTAR(440,000円)と、バッテリー増設かリチウムイオンバッテリー(価格不明)を装備したい。
他モデル
ハイエーススーパーロングを使用し、ユーティリティールームを持つ二人旅仕様モデルは、カトーモーターのDD(746万円~)、ウインディK(572万円~)、甲和オートサービスのオールインリミテッドⅢ(599万円~)、トイファクトリーのアルコーバ(624万円~)、コルドバクルーズ(613万円~)、レクビィのプラスSL(509万円~)などがある。
このうち、ラウンジソファダイネットを持ち、エアコンを搭載できるモデルは、オールインリミテッドⅢとプラスSLが挙げられる。ただし、いずれもレイアウトやベッドスタイルは異なる。なお、どちらもエアコンが搭載できる。
まとめ
アジサシは二人旅仕様に割り切ったことで、ラウンジソファダイネットや縦置きダブルベッドなど、二人旅に最適なレイアウトが可能となった。特にポケットコイルマットレスのベッドは、このクルマの大きな優位点の一つだ。エアコンの搭載により、オールシーズンで快適な室内を確保できる。
一方、調理をしない場合は問題ないが、長期旅に使う場合は、もう少し調理ができるギャレーや大き目の冷蔵庫、あるいは電子レンジが欲しいと思うユーザーもいるだろう。オプションでも良いので、そのあたりの対応ができると、そのようなユーザーにもアピールできる。
対座ダイネットが主流で、ラウンジソファダイネットを持つ二人旅専用モデルが少ない中、アジサシは貴重な存在だ。同社は比較的カスタマイズに柔軟性があるので、これをベースに自分の希望を相談すると良いだろう。
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