常設横置きハイマウントダブルベッドの特徴
ハイエーススーパーロングと言えども、その室内スペースには限りがある。対座ダイネット、常設ダブルベッド、ギャレー、多目的ルームを全て配置しようとすると、ベッドが一部狭くなったり、ダイネットが窮屈になったりというしわ寄せがある。

今回特集したレイアウト
そこで、割り切って多目的ルームを廃し、広い対座ダイネットと常設横置きハイマウントダブルベッドを実現したのがこのレイアウト。これにより広々とした室内と無理のないレイアウトを実現している。
しかしハイエースのワイドボディでも、そのままでは大人用横置きベッドの規定の1800mmを確保することはできない。そのため、右側にエクステンションウインドウを架装するのが必須となる。
このレイアウトのもう一つの特徴は、後部ハイマウントベッド下に大きな収納スペースを持てること。キャンプ用具などのかさばる荷物も容易に積み込むことができる。
今回は、このレイアウトのうち、左側に独立したギャレーを持つモデルを特集する。このレイアウトは、二人旅にもファミリーでのクルマ旅にも対応できる、極めて汎用性の高いレイアウトで、トイファクトリーの「バーデン」が草分け的な存在だ。
なお、対座ダイネットと常設ハイマウントダブルベッドで構成されるレイアウトは、ホワイトハウスのコンパス ドルクのように、ギャレーがダイネットの右サイドに設置されているものもあるが、これらについては別途特集したい。
目 次
RSプレミアム:ATV群馬
ATV群馬は、社名の通り群馬県高崎市を本拠にするビルダーで、ハイエースバンコンと軽バンコンを中心にラインアップしている。RSプレミアムは同社の代表的モデル。縦置き2段ベッドと多目的ルームを持つ「RSプレミアムG」も新たにラインアップされた。
RSプレミアムのエクステンションウインドウは後部のベッド部のみに限られ、そのためコンパクトで軽量化も図られている。また後部左側のウインドウもパネル化され窓は埋められている。

RSプレミアムのインテリア
レイアウト的には、オプションだが、運転席と助手席のシートが回転して後ろ向きにすることができ、2列目シートと対座ダイネットを形作ることができる。もちろん2列目には900mm幅のFASPシートを設置しているので、他モデルと同様、3列目シートとで対座ダイネットにすることもできる。

49L横開き式冷蔵庫を標準装備
ギャレーには49L横開き式冷蔵庫を標準装備。横開き式は冷凍室があるので、冷凍と冷蔵が同時にできる。ペットボトルと冷凍食品を同時に保冷することや製氷も可能で、クルマ旅に適している。なお電子レンジも標準装備される。

後部まで続くオーバーヘッド収納
収納は、右サイドに後部まで続くオーバーヘッド収納を設置。大容量の収納を可能にしている。
電装系はディープサイクルバッテリーを2個標準装備する。横開き式冷蔵庫、電子レンジ、FFヒーター、1500W正弦波インバーターや外部100V電源入力と充電機能、160Wソーラーシステムなど、充実した標準装備も特徴。
なお、家庭用セパレートエアコンをオプションで設置できるが、リチウムイオンバッテリーのオプションは設定されていない。
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アメリア:AtoZ
AtoZは埼玉県春日部市に本拠を置くビルダーで、カムロードベースのキャブコンから軽バンコンまで幅広く製作する総合ビルダー。インテリアにテーマを設定し、カジュアルでお洒落なインテリアを前面に打ち出している。

「Cielo(シエロ)」のインテリア(写真は旧タイプ)
アメリアもその戦略に則っており、「Cielo(シエロ)」と「Tiera(ティエラ)」という2種類のコーディネートが選択できる。
エクステンションウインドウはダイネット横のウインドウまで続く大型のもので、スライド式のアクリル2重窓のため走行中も窓を開けることができる。2列目のマルチモードシートは1200mmで、3名が着座できる。

ギャレーは後部左側のキャビネットに位置する
なお、アメリアではレイアウトが多少異なっており、ギャレーは後部左側のキャビネットに位置する。従って、リアのハイマウントベッドをセットするとギャレーはその下に隠れてしまう。
ギャレーには18Lポータブル冷蔵庫を標準装備。電子レンジはオプションで設置できる。コンロはポータブルカセットコンロをその都度セットするタイプ。

ベッドルーム両側のオーバーヘッド収納
収納はベッドルームの左右両側にオーバーヘッド収納を設置し、大きな収納力があるが、ダイネット上は棚になっている。
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TRAVOIS LBD200SL-R:ティピーアウトドアデザイン
ティピーアウトドアデザインは埼玉県東松山市に本拠を置くビルダーで、ハイエースベースのバンコンを専門に架装している。同社のモデルは「TRAVOIS(トラボイ)」というブランドネームが付けられる。なお、同社のモデルは全てに架装部に対する永久保証が付けられるのも大きな優位点だ。

レカロシートが標準装備される
「R-Design」を冠に付けたモデルはレカロシートが標準装備される。LBD200SL-RもそのR-Designのひとつで、運転席、助手席にシートヒーター付きレカロシートが装備される。また、2列目(1200mm幅)だけでなく3列目(900mm幅)にもFASPシートが配置される。

2列目と3列目にはFASPシートが配置される
ギャレーには40L上開き式冷蔵庫が標準装備されるが、電子レンジのオプション設定は無い。またコンロはポータブルカセットコンロを使用ごとにセットする必要がある。

ギャレーには40L上開き式冷蔵庫が標準装備される
収納はダイネット上とギャレー上にオーバーヘッド収納が設置される。また、電装系は105Ahのサブバッテリー1個と走行充電、および外部100V入力と、これによる充電機能も標準装備される。
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オールインレジェンド:甲和オートサービス
甲和オートサービスは埼玉県熊谷市に本拠を置くビルダーで、オリジナルキャンピングカーはこのオールインレジェンドと、オールインリミテッドⅢの2モデルをラインアップしている。

オールインレジェンドのインテリア(写真は旧タイプ)
ラインアップは2モデルのみだが、モデル名の通り標準装備が充実しているのが特徴。49L横開き式冷蔵庫、電子レンジはもちろん、電装系やFFヒーター、家庭用セパレートエアコンに至るまで、ほとんどの必需機能を標準装備している。
ダイネットには2列目と3列目に各900mmのFASPシートを配置。車体右側には前部まで続くエクステンションウインドウを架装する。また、リアウインドウや後部左側ウインドウも標準でアクリル2重窓化しており、断熱性にも優れている。

常設2口コンロを標準装備
ギャレーには常設2口コンロを標準装備。49L横開き式冷蔵庫や電子レンジを含め、調理するユーザーには欠かせない理想的なギャレーとなっている。

充実したオーバーヘッド収納
収納は、右側に前部からベッドルームまで続くオーバーヘッド収納、左側にはギャレー上にオーバーヘッド収納を設置するなど、大きな収納力を持つ。
オールインレジェンドはかなり完成度が高いモデルで、フル装備を望むユーザーには最も気になる1台だが、リチウムイオンバッテリーについては記載が無いのが唯一残念なところではある。
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ダーウィンQ3:デルタリンク
デルタリンクは岡山県倉敷市に本拠を置くビルダーで、アドリアやサンリビングと言った輸入モデルを扱っているほか、自社モデルを、D.V.D(デルタバンデザイン)ブランドでハイエースベースのモデルをラインアップしている。

ダーウィンQ3のインテリア
ダーウィンQ3はD.V.Dブランドのモデルで、内外装のデザインにこだわった、洗練された作りが特徴。外装では前部まで連続したエクステンションウインドウを架装し、更にリアゲートと後部左側のウインドウもアクリル2重窓を架装している。2列目(1200mm幅)と3列目(900mm幅)にマルチモードシートを配置する。

常設2口コンロを標準装備
ギャレーには常設2口コンロを標準装備。また39L横開き式冷蔵庫と電子レンジも標準装備される。調理をするユーザーには理想的なギャレーだ。

両側に設置されたオーバーヘッド収納
収納は左右両側に前部から後部まで連続したオーバーヘッド収納が設置され、大きな収納力を持つ。また、空調はFFヒーターと家庭用セパレートエアコンがオプションで設置できる。
電装系は100Ahのディープサイクルバッテリーが2個標準装備されるが、残念ながらリチウムイオンバッテリーのオプション設定は無い。ソーラーパネルはオプションで用意されており、スタイリッシュな台座に設置される。
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ツェルトキリマ:東和モータース販売
東和モータース販売は東京都杉並区を拠点にする販売会社。デスレフやサンライトと言った欧州モデルを輸入販売するが、国産キャブコンから軽バンコンまで、オリジナルモデルも幅広く扱っている。
ツェルトは同社のハイエースバンコンのシリーズ名で、「ツェルトキリマ」はスーパーロングをベース車にし、車載用セパレートクーラー「CoolStar」が標準装備される。またリチウムイオンバッテリーを標準装備した「ツェルトキリマLi」も選択できる。

ツェルトキリマのインテリア
ボディ右側に前部まで続くエクステンションウインドウを架装する。またオプションでリアゲートのウインドウをアクリル2重窓化できる。2列目に1200mmのマルチモードシートを配置、3列目に900mmの前向きシートを配置する。

40L上開き式冷蔵庫(OP)
ギャレーにはオプションの40L上開き式冷蔵庫がビルトインできる。電子レンジもオプションで、後部左側キャビネットに収納できる。

ダイネット上部とギャレー上にオーバーヘッド収納が設置される
収納は、ダイネットとギャレー上部にオーバーヘッド収納が設置される。ベッド左側上部にはオーバーヘッド収納ではなくネットになっている。
電装系は、「キリマ」では115Ahのディープサイクルバッテリーが3個、キリマLiでは100Ahのリチウムイオンバッテリーが3個標準装備される。なおFFヒーターはいずれもオプションとなっている。
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バーデン:トイファクトリー
トイファクトリーは岐阜県可児市に本拠地があるビルダー。ハイエーススーパーロングバンコンを中心にラインアップするバンコン専門メーカーだが、一部バスコンも製作している。

バーデンCasaのインテリア
バーデンは同社の代表的モデルで、今回特集したレイアウトの草分け的な存在でもある。なお、バーデンにはスーパーハイルーフをベース車にした「バーデン アルタモーダ」も存在する。また、インテリアをCasa仕様にした、「バーデンCasa」も選択できる。
ボディ右側のエクステンションウインドウは前部まで連続した大型のもので、アクリル2重窓も装備。またオプションになるがリアゲートやスライドドアのウインドウもアクリル2重窓にできる。

40Lの上開き式冷蔵庫を標準装備する
2列目には1200mmの、3列目には900mmのマルチモードシートを設置。ギャレーには40Lの上開き式冷蔵庫を標準でビルトインしているが、コンロはポータブルカセットコンロを使用するごとにセットする必要がある。また電子レンジはオプションで後部左側キャビネットに収納できる。

両側にオーバーヘッド収納を設置
収納は右側に前部からベッド上まで続くオーバーヘッド収納と、左側にはギャレー上にオーバーヘッド収納を設置する。後部左側のキャビネットの収納部はスライド式の扉が採用されており、前に荷物があっても開閉することができるのは特筆できる。
FFヒーターはオプションで用意されており、「クールコンプシステム」と名付けられた家庭用エアコンがオプションで装着できる。電装系は100Ahのディープサイクルバッテリーが1個標準装備され、増設も可能だが、リチウムイオンバッテリーはオプション設定されていない。ソーラーパネルはオプションで、スタイリッシュな台座に設置される。
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リークII:ナッツRV
ナッツRVは福岡県遠賀郡に本社を置くビルダーで各地に販売店を展開する。セミフルコンから軽バンコンまでラインアップする、国内最大手ビルダーのひとつ。

リークⅡのインテリア
リークⅡは同社のハイエースバンコンラインアップのひとつで、もう一つのレイアウトの選択肢として「リーク」がある。今回特集するレイアウトはリークⅡの方で、2列目に1200mmのFASPシートを、3列目には900mmの前向きシートを設置している。家具色は4種類から選択できる。
エクステンションウインドウは前部まで続く大型のものでアクリル2重窓が前後2か所装備される。また、リアゲートもオプションでアクリル2重窓化できる。

40L上開き式冷蔵庫を設置できる(OP)
ギャレーキャビネットには、オプションで40L上開き式冷蔵庫を設置できる。コンロはポータブルカセットコンロを使用する度にセットする。また電子レンジはオプションで後部左側のキャビネットに収納される。

左右のオーバーヘッド収納
オーバーヘッド収納は右側に前部からベッド上まで連続しており、またギャレー上にも設置される。なお、後部左側のキャビネットにはベッドボードが収納できる。
空調はFFヒーターがオプションで装備できるが、クーラーなど冷房装置のオプション設定は無い。また、電装系は105Ahのディープサイクルバッテリーが1個標準装備される。外部電源入力は標準装備されるが、充電機能はオプション。インバーターやソーラーシステムもオプションとなっている。
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ロードセレクトSL:カスタムセレクト

(このモデルは映像の素材が無いため、冒頭のビデオには含まれていません)
カスタムセレクトは新潟県新潟市に拠点を置くビルダーで、ハイエースバンコンから軽バンコンまでバンコンを専門にラインアップする。同社のモデルは全て「ロードセレクト」の冠が付いており、スーパーロングベースには「ロードセレクトSL」のモデルネームが付く。
同社のモデルには使い勝手を考えた様々なアイデアが詰まっており、今回取り上げたロードセレクトSLにも、ヘッドレストを取り外さないでベッド展開できたり、荷物の量に合わせてリアベッドの高さを変えることができる。

ポップアップウインドウ(車種はロードセレクトNH)
更に、エクステンションウインドウの代わりに、就寝時のみ拡張できるポップアップウインドウを装備。車幅と重量とコストを増やすことなく、横置きハイマウントベッドを実現している。

インテリア(車種はロードセレクトNH)
2列目に1200mm、3列目に900mmのマルチモードシートを配置する。ギャレーキャビネットには40L横開き式冷蔵庫を標準装備する。また電子レンジはオプションで用意されており、収納できる
収納は右サイドとギャレー上にオーバーヘッド収納を設置。電装系はディープサイクルサブバッテリーが1個と外部電源入力が標準装備されるが、外部電源による充電機能やインバーター、ソーラーシステムはオプションになる。
また冷房装置として家庭用セパレートエアコンや車載用クーラーなどがオプションで用意されている。リチウムイオンバッテリーもオプションで用意されているので実用的に使える。なお、スーパーハイルーフをベース車に選択することもできる。
まとめ
このサイズの車体だと日常用途というよりはクルマ旅がメインになると思われるので、やはり装備が充実しているモデルが理想的だ。長期旅であれば車内で調理することも多く、常設コンロを持つオールインレジェンドとダーウィンQ3がお勧めだ。
これらはどちらも横開き式冷蔵庫を標準装備し、家庭用エアコンも装備できる(オールインレジェンドは標準装備)。ダーウィンQ3では、FFヒーター、家庭用エアコン、追加サブバッテリー、ソーラーシステムなどがオプションなので、これらを装備するとオールインレジェンドとだいたい同じ価格になる。
今回特集したレイアウトの弱点は、リア常設ベッドの身長方向の長さ(車幅方向)を十分に取れないこと。長身のユーザーは、バーデン(1900mm)やロードセレクトSL(2100mm)の選択肢がある。
他の特長的な面では、レカロシートを持つTRAVOIS LBD200SL-R、リチウムイオンバッテリーが選択できるツェルトキリマLiとロードセレクトSL、Casa仕様を選べるバーデンCasa等が挙げられる。
価格的にはアメリア、リークⅡ、ロードセレクトSLが比較的安価だ。ただし、他のモデルを含め、この比較表の価格は2022年11月に各ビルダーのサイトに記載されたものだが、今後の価格変更にも注意いただきたい。