フォルトナはナッツRVが製作する、フィアットデュカトをベース車にするバンコンキャンピングカー。
同社は国内最大の総合ビルダーのひとつで、セミフルコンから軽キャンパーまで幅広くラインアップしている。2022年に国内に正式輸入されることになったフィアットの商用車デュカトをいち早く採用し、2023年ジャパンキャンピングカーショーで「FORTUNA:フォルトナ」を発表した。
なお、東和モータース販売からも同じレイアウトを持つ姉妹車、「スペランツァ540M」と「スペランツァ540C」が発表された。
「国産デュカトベース全12モデル特集」の記事も参考ください。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
デュカトL2H2をベース車に使用した国産バンコン。多目的ルームを持つType Mと、クローゼットを持つType Cの2種類のレイアウトが用意されている。
フロントシートが回転するフロントダイネットと、後部ベッドがダイネットになる2ダイネットが特徴。更にオプションで後部ベッドに上段電動プルダウンベッドが装備できる。
Type Mには多目的ルームがあり、オプションで温水シャワーやラップポントイレを設置できる。また、家庭用エアコンがオプションで設置でき、200Ahのリチウムイオンバッテリーが標準装備(オプションで200Ahを追加)される。
アピールポイント
・スタイリッシュでハイエースより大きなボディのバンコン
・フロントシートが回転してダイネットになる効率の良いレイアウト
・後部ベッドはセカンドダイネットになる
・オプションで電動プルダウンベッドを設置できる
・各段2名が就寝できる広い後部常設ベッド
・家庭用エアコンをオプションで設置可能
・200Ahリチウムイオンバッテリーを標準装備(オプションで最大400Ah)
・Type Mはオプションで温水シャワーを設置可能
ベース車とエクステリア
フォルトナType Mのエクステリア
ベース車はフィアット デュカトL2H2。輸入されるデュカトでは最も小型のボディサイズだが、全長は5410mmで、ハイエーススーパーロングよりも30Cm長い。また全幅は2050mmで、これもハイエースワイドボディより17cm広い。
しかしこの差は大きく、デュカトでは室内幅が1870mm取れるため、ハイエース(1730mm)のようにエクステンションウインドウを架装しなくても、横置きで上下段ともベッド長1800mmを確保することができる。
インテリア
10種類の家具色を用意
家具にはPVCシートを貼りつけた軽量素材を採用することにより、全体の軽量化を図っている。フォルトナでは10種類の家具色、16種類のシート地、4種類の天板を用意し、選択肢の幅を広げた。
レイアウト
フォルトナ Type Mのレイアウト
レイアウトはType MとType Cの2種類を用意。Type Mは右側中央に多目的ルームを設置する。一方Type Cは、この位置にクローゼットを配置。その分、ダイネットが広くなっている。
乗車定員は6名だが、前向き乗車は運転席、助手席と2列目シートの2名で計4名。就寝定員はType Mが後部ダブルベッドで2名、オプションのプルダウンベッドで2名で、計4名。またType
Cはダイネット展開ベッドが可能で、ここで子供が1名就寝できる。
ダイネット
運転席と助手席が回転してダイネットシートになる
デュカトではおなじみだが、運転席と助手席が回転して後ろ向きのダイネットシートになり、2列目シートとで対座ダイネットを形成する。テーブルは2重になっており、スライドして広くすることができる。
後部のセカンドダイネット
フォルトナの魅力のひとつはこのセカンドダイネット。後部のダブルベッドを展開すると、4名が横座り対座できるセカンドダイネットになる。
ファミリーでも二人旅でも常にパートナーと一緒にいるのは疲れるもので、時には各自が好きなことをする場所として、非常に有用だ。
ベッド
後部下段ベッド
標準装備されるベッドは後部の下段ベッドと、Type Cではダイネットを展開した子供用ベッド。後部下段ベッドの大きさは1860x1220mm。家庭用ではセミダブルベッドの幅(1200mm)よりも広く、2名が就寝できる。
3名が就寝できるダイネットベッド
フォルトナのもう一つの魅力は、電動で上下するプルダウンベッド。これはオプションだが、搭載することにより、就寝人数が2名追加される。即ち、ファミリーでの車中泊に対応できるようになる。
もちろん二人旅では上下段に分かれて就寝すると、就寝時間をパートナーに合わせることなく、読書をしたりして就寝前にプライベートな時間を持つことができる。
プルダウンベッドのウッドスプリング
プルダウンベッドの大きさは、1920(最大)x1100mm。可動部の幅(身長方向)は1640mmとなっている。プルダウンベッドにはウッドスプリングが仕込まれているので、快適な寝心地が期待できる。
子供1名が就寝できるダイネットベッド(Type Cのみ)
Type Cではダイネットをベッド展開することができ、長さ1500mmの子供用ベッドになる。なお、Type Mは不可。
ギャレー
広い調理台があるギャレーセクション
左側中央に設置されるギャレーキャビネットにはシンクとフォーセットが備わっている。クレソンジャーニーと同様、常設コンロはない。このクラスには、シンク一体型で良いので常設コンロが欲しい。
キャビネットには引き出し式の調理台も用意されており、広い調理スペースが用意されている。各12Lの給排水タンクがキャビネット下に収納される
冷蔵庫/電子レンジ
70L両開き式冷蔵庫が標準装備される
70L冷蔵庫が標準装備される。この冷蔵庫は左右両開きになっており、車内からも車外からも開けることができる。
電子レンジも標準装備される
家庭用の100V仕様の電子レンジが標準装備され、ギャレーキャビネットにビルトインされている。 1500W(正弦波)インバーターも標準装備なので、外部電源が取れないところでも、サブバッテリーで電子レンジが使える。
多目的ルーム
温水シャワー(OP)も装備できる多目的ルーム
Type Mには多目的ルームが設置されている。ポータブルトイレやラップポンを置いてトイレルームにすることも可能だ。ラップポンを設置する場合は、電源コンセントも設置される。
温水シャワーは、68L給水タンク、85L排水タンク、給水タンク残量計、排水タンク残量計、ガスボイラー、シャワーキット、小型ベンチレーターがセットでオプション設定されている。上の写真のようにシャワーフォーセットは標準装備されているようだ。
収納
ダイネット上のオーバーヘッド収納
オーバーヘッド収納はダイネットの上に設置される。オーバーヘッド収納はここだけで、ギャレー上にはエアコンの室内機があり、ベッドルームにも設置されていないので、収納の少なさが気になるところだ。
リアダイネットシート下の収納
後部ダイネットの左右シート下が収納スペースになっている。シートクッションを持ち上げなければならないので、あまりアクセス性が良いとは言えないが、大きな収納スペースではある。リア扉を開くと、車外からもアクセスできる。
フロントシート上のスペース
フロントシート上にも収納スペースが用意されている。あまり大きくないが、シュラフなどを収納しておくのに便利そうだ。
Type Cに設置されるクローゼット
Type Cには多目的ルームが無いが、この位置にクローゼットが設置されている。コートやジャケットなどシワにならないように収納しておくことができる。
空調
オプションで家庭用エアコンを設置できる
冷房用の家庭用クーラー、暖房用のFFヒーター、換気用のマックスファンは、全てオプションとなっている。これらの装備はほぼ必需品なので、このクラスのモデルには標準装備として欲しいところだ。
テレビ/ナビ
19型のテレビがオプション設定されている。ナビはデュカトの装備として標準装備されている。
電装系
200Ahのリチウムイオンバッテリーと、EVOLITE急速走行充電システムが標準装備される。また、外部100V電源入力と充電システム、1500W正弦波インバーターも標準装備。オプションで更に200Ahのリチウムイオンバッテリーが追加できる。
280Wのソーラーシステムがオプションで用意されている。
価格(2023年3月現在:千円台切り上げ:税込)
デュカトはFF2WDのみで、Type M、Type Cとも979万円~となっている。
付けておきたい必需オプションは、FFヒーター(350,000円)、家庭用エアコン(440,000円)、ベンチレーター(152,900円)が挙げられる。
予算に余裕があれば、プルダウンベッド、家庭用エアコン、追加200Ahリチウムイオンバッテリーがセットになったコンフォートパッケージ(1,400,000円)、ラップポントイレ(189,200円+コンセント24,200円)、280Wソーラーシステム(236,000円)を装備しておきたい。価格表はこちら。
他モデル
デュカトをベース車にしたモデルは、国産ではトイファクトリーのダヴィンチ5.4(1353万円~)と岡モータースのグランクルーズWDが、どちらも多目的ルームを持つモデルだ。
東和モータース販売はフォルトナの姉妹車「スペランツァ」を発表したが、これはフォルトナと全く同じレイアウトで、価格も同じだ。ヴォーンシリーズもクレアシリーズの姉妹車だが各所に特徴があり、あえてヴォーンを選択する意味があった。
東和モータース販売はデスレフやサンライトを扱っているので、スペランツァにはそれほど力が入っていないのかもしれないが、ヴォーンのような「違い」を期待したいところではある。
輸入車では、アドリアモービルのツインPLUS 540SP(1216万円~)、サンライトのクリフ540アドベンチャーエディション(1067万円~)、サンリビングのV55 SP(1182万円~)、ローラーチームのリビングストン KJ(974万円~)、同リビングストン K2(965万円~)がある。いずれもフォルトナ Type Mとほぼ同じレイアウトだが、フォルトナのようなセカンドダイネットはなく、電動プルダウンベッドも、このサイズにはない。
まとめ
上に挙げた他モデルは、グランクルーズWDを除いて、全てフォルトナと似たレイアウトだが、フォルトナはこれらのモデルと競合しないように思われる。唯一比較対象になるとすれば、国内向けに改良したというリビングストーンKJだろうか。
これらの他モデルは、特に輸入モデルは、装備の充実度が高いのに対し、フォルトナはかなりシンプルに見える。即ち、日本の環境を考えれば、トイレはいたるところにあるし、温水シャワーも温泉があるのでほとんど不要という考え方だ。
その代わり、家庭用エアコンや強力な電装系を採用し、レイアウトはファミリーにも対応するようにしている。欧州モデルに魅力を感じるユーザーはフォルトナは対象外だろうし、その逆もあるだろう。
東和モータース販売はデスレフやサンライトを扱っているが、フォルトナの姉妹車スペランツァを発表したのも、食い合いにならないとの思惑があるからだろう。
フォルトナはむしろ、クレソンジャニーのようなカムロードキャブコンを考えているユーザーの選択肢を増やすモデルのような気がする。クレソンジャーニーの価格帯のキャブコンを考えているが、トラックベースなのが気に入らないユーザーだ。
かと言ってハイエーススーパーロングでは狭い。スタイリッシュでキャブコンにも劣らない広さのフォルトナは、このようなユーザーの受け皿になるのではないだろうか。ややもするとハイエースユーザーも移行してくるかもしれない。
フォルトナは日本のキャンピングカーとして必要十分な機能を備えたモデルだ。しかし、いくつか不満点もある。ひとつは収納の少なさ。二つ目は家庭用エアコン、FFヒーター、ベンチレーターがオプションであること。そして、常設コンロが無いこと。このクラスのモデルならいずれも標準で欲しい装備だ。
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