V60 SP Familyは、フィアット デュカトをベース車にした、Sun Living(サンリビング)ブランドの輸入バンコンキャンピングカー。サンリビングはスロベニアを本拠地にするアドリアモービルのサブブランドで、製造はアドリアが行っている。
アドリアにはアドリアブランドのラインアップがあるが、サンリビングブランドはより普及価格帯のモデルをラインアップしている。
本国ではキャブコンのCシリーズとSシリーズ、アルコーベンのAシリーズ、そしてバンコンタイプのVシリーズがあるが、日本へは現在Aシリーズと、VシリーズのFamily仕様のみが輸入されている。日本へはデルタリンクが輸入している。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
「V60 SP Family」は、フィアット デュカトをベース車に使用したバンコンキャンピングカー(キャンパーバン)。サンリビングはアドリアのセカンドブランドで、製造はアドリアが行っている。
全長は6m以下で、日本でも比較的運転しやすい。Family仕様は後部に各2名が就寝できる2段ベッドを標準装備し、計4名が就寝できる。
普及価格帯ではあるが、欧州モデルの例に漏れず、温水シャワーまで含め充実した装備を持っている。
アピールポイント
・6mを切るサイズで、日本でも比較的運転しやすい
・4名が就寝できる2段ベッド
・温水シャワーや2口コンロ、大型冷蔵庫など充実した装備
・セパレートエアコン装備可能(OP)
・リチウムイオンバッテリーを選択できる(OP)
ベース車とエクステリア
V60 SP Familyのエクステリア
ベース車は欧州モデルでは大きなシェアを持つフィアット デュカト。2.2L/160HPディーゼルエンジンが標準だが180HPもオプションで選択できる。なお、デュカトは2WDのみで4WDは無い。ミッションは9速。
後部ウインドウはアクリル2重窓になっている。ボディカラーは写真のシルバーの他、ホワイトとブラックが選択できる。
インテリア
木目の家具を採用したインテリア
アドリアのツインに比べると、多少地味な印象があるが、欧州モデルらしく洗練されたインテリアであることには変わりない。
国産モデルのような、無垢の木材を使用した重厚感のようなものは無く、実際使われている家具の扉などは厚みが少なく、軽量化を図っていることが分かる。
家具色は木目か白が選択でき、シート地も数種類から選択できるようだ。
レイアウト
前部にダイネット、右側にギャレー、左側にサニタリールーム、最後部にベッドルームと、欧州車によくあるレイアウトを採用している。
乗車定員は運転席、助手席と、2列目シートに2名で計4名。また就寝人数は後部2段ベッドで各段2名が就寝でき、計4名となっている。多くの欧州バンコンモデルでは、2名での使用を想定したレイアウトが多いが、この40SP
Familyは車名通り4名で使用することを想定している。
ダイネット
運転席、助手席が回転するダイネット
これも欧州車の例に漏れず、運転席、助手席が回転して、2列目の前向きシートと対座ダイネットを形成する。室内が広いので、シートの回転も難なく行える。
2列目シートは2名が座れるが、大人2名だと多少窮屈差を感じる。2列目シートには2名分の3点式シートベルトがあり、乗車定員の4名全員が3点式シートベルトを使える。
ベッド
ウッドスプリングを採用した2段ベッド
V60 SP Familyの特徴はベッドで、後部に各2名が就寝できる2段ベッドが標準装備される。上段は1850x1300mm、下段は1950x1400mmの大きさ。1400mmは家庭用ではダブルベッドの幅に相当する。
上下段ともウッドスプリングを採用しており、寝心地は期待できる。
ギャレー
常設2口コンロのあるギャレー
常設2口コンロとシンクが装備されている。欧州では長期滞在型の使い方が多く、ギャレーも普通に料理ができる広さと設備が整っている。広いギャレーキャビネットではあるが、跳ね上げ式の調理台が無いので、調理面は多少狭いかもしれない。
ギャレーの大きな引き出し収納
ギャレーキャビネットには3段の大きな引き出し収納が用意されており、食器や調理器具を収納しておくことができる。
ギャレー上のオーバーヘッド収納
ギャレーの上には大きなオーバーヘッド収納が備えられており、食材や食器を収納しておくことができる。
冷蔵庫/電子レンジ
138L横開き式冷蔵庫
冷蔵庫は84Lの横開き式が標準装備されるが、写真の展示車にはオプションの138Lの大型冷蔵庫が設置されていた。ファミリーで使用する場合は食材も多くなるため、大型の冷蔵庫が必要になる。
なお、この冷蔵庫は3wayではなく12Vで動作する製品なので、バッテリーは強化しておいた方が良いだろう。
不思議なことに、輸入モデルでは電子レンジが付いていないことが多い。また、大型モデルではガスオーブンレンジが付いていることがあり、日本のユーザーはあまり使わないと思われる。
このV60 SP Familyにはオーブンレンジは付いていないが、日本で電子レンジを装備することはできる(OP)。ただし、置くスペースが想定されていないので、オーバーヘッド収納などのスペースに置くしかない。
サニタリールーム
洗練されたデザインのサニタリールーム
欧州モデルでは一様にサニタリールームが充実しており、バンコンモデルでも、温水シャワー、カセットトイレ、専用手洗いが設置されている。室内も上の写真のようにお洒落なインテリアで、収納も用意されている。
給水タンクは100Lの容量があり、ボイラーはTRUMA COMBI 4Dで連続的に湯を供給することができる。このボイラーは”D”が付いていることで分かるように、軽油を使用する。即ち、クルマの燃料タンクの燃料を共用する。
TRUMA COMBIにはガスと電気を熱源とするモデルもあるが、日本では旅行先でプロパンガスボンベの充填ができない問題があるため、軽油を燃料にするモデルが選択される場合がある。
収納
ダイネット上のオーバーヘッド収納
オーバーヘッド収納は先述のギャレー上他に、ダイネット上とベッドルーム左側に設置されている。いずれも大きな容量で、収納力が高い。
ベッド下の収納スペース
ベッド下も大きな収納スペースとして使える。かさばるキャンプ用具などを積むことができる。
最後部の大きなカーゴスペース
更にベッドマットを跳ね上げると、自転車も積めるカーゴスペースとなる。ただし、この場合はベッドが無くなってしまうので、現地に着いたら自転車を下す必要がある。
空調
欧州モデルの弱点と言えるかもしれないが、現地では冷房装置はルーフエアコンしか想定されていない。国産モデルのように家庭用エアコンを搭載するという考えはなく、従って外部電源があるところでのみ使用できる。
しかし、国内では家庭用エアコンがオプション設定されており、設置することができる。少し前まではキャブコンタイプのみ設置できたが、V60 SP Familyでは国産セパレートエアコンのオプションが設定されている。
どの位置にどのように取り付けられるのかの詳しい情報は無いが、展示車には是非エアコンを取り付けて欲しい。
テレビ/ナビ
19型のリアテレビと地デジチューナー、そして自動追尾式BSアンテナがオプション設定されている。ナビもオプションで用意されているが、好みのものも取り付けることができるだろう。
電装系
欧州ではキャンピングカーのインフラが充実しているため、通常は外部電源でシステム電源を賄う。そのため、標準では100AhのAGMサブバッテリーが1個のみ装備されている。日本ではこれでは心もとないので、追加AGMバッテリー、走行充電、インバーター、ソーラーシステムがオプションで用意されている。
しかし、このクラスのモデルにはやはり家庭用エアコンを装備するだろうし、そうすると、オプションで用意されている400Ahリチウムイオンバッテリー、2000Wインバーター/チャージャーの装備をお勧めする。
250Wのソーラーシステムもオプションで用意されているので、これも付けておくと良いだろう。
価格(2021年4月現在:千円台切り上げ:税込)
2.2Lディーゼル2WD/9ATで956万円~となっている。なお、253,000円追加で、エンジンを180HPにアップグレードできる。
付けておきたい必需オプションは、セパレートエアコン(715,000円)、リチウムイオンバッテリー+2000Wインバーター/チャージャー+走行充電(1,760,000円)、電子レンジ(66,000円)が挙げられる。
他モデル
欧州の輸入バンコンは、アドリアのツインシリーズ、サンライトのクリフシリーズ、ローラーチームのリビングストンシリーズがある。6m以下でファミリーで就寝できる(4名が就寝できる)モデルに絞ると、クリフアドベンチャーエディション601(1111万円~)とリビングストン5(998万円~)、およびリビングストンKJ(975万円~)がある。ツインは4名就寝できるモデルは640SBP Familyで、これは6363mmで6mを超える。
ただし、リビングストンKJと5はエンジンが140HPで、160HPにアップグレードするには326,700円の追加となる。こうしてみると、V60
SP Familyは160HPで1000万円を切り、「最もコストパフォーマンスに優れている」という謳い文句はウソではないことが分かる。
まとめ
輸入バンコンは少し前まで2名就寝が多かったが、最近になって、各段2名が就寝できる2段ベッドを採用した4名就寝モデルが出現した。以前はファミリーで使える輸入モデルはプルダウンベッドを持つ大型のフルコンモデルに限られていたが、最近ではバンコンでも可能になった。
バンコンモデルなら比較的コンパクト(と言っても6m近くあるが)で、日本国内でも運転しやすい。また、カムロードの価格が上がったことで国産キャブコンが高価になり、相対的に輸入モデルが安価に見えるのも追い風となった。(ただし最近の円安の影響で、今後輸入モデルの価格が高騰する可能性はある。)
また、デュカトが正式に輸入されることになったことで国産ビルダーがデュカトベースのモデルを発売する可能性もある。今後デュカトベースの国産モデルも含め、選択肢が増えることが予想される。
関連記事