スピナポップアップルーフはナッツRVが製作する、NV100クリッパーあるいはスズキエブリイバンをベース車にした軽バンコン。
同社はセミフルコンやカムロードキャブコンを中心に製作する総合ビルダーだが、ハイエースバンコンや軽キャンパーもラインアップしており、スピナは同社唯一の軽キャンパー。
以前はスピナ キャルルックという派生モデルが存在したが、現在はラインアップから外れている。なお、スピナにはポップアップルーフ無しのモデルも存在する。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
日産NV100クリッパーあるいはスズキエブリイバンをベース車にした軽バンコンキャンピングカー。これにポップアップルーフを架装している。なお、ポップアップルーフ無しのモデルも選択できる。
軽バンコンでは珍しい対座スタイルのダイネットを採用しているのが大きな特徴。もちろんベッドモードにして他のモデル同様ちゃぶ台スタイルで寛ぐこともできる。またギャレー(シンクセット)がオプションで装備できる。
純正の2列目シートは通常畳まれているが、これを起こすと、運転席、助手席を合わせ、4名が前向き乗車できる。ベッドは大人2名が就寝できるが、ポップアップルーフを上げた状態のルーフベッドでも大人2名が就寝でき、計4名が就寝できる。
アピールポイント
・大人4名が乗車、就寝できる
・ポップアップルーフで圧迫感の少ない室内
・軽バンコンでは珍しい対座スタイルのダイネット
・オプションでギャレーを装備可能
・家具色は5種類から選択できる
・洗練されたインテリアデザイン
ベース車とエクステリア
スピナポップアップルーフのエクステリア
ベース車は日産NV100クリッパーGX、あるいはスズキ エブリイ バンJOIN。NV100クリッパーはスズキ エブリイのOEM車なので、内容は同じ。2WDと4WD、5MTと4ATも選択できる。
運転席・助手席エアバッグシステムやデュアルカメラブレーキサポート、踏み間違い衝突防止アシスト等の安全装備も標準装備される。ボディカラーは3色から選択できる。
このベース車にポップアップルーフを架装している。ポップアップルーフはダンパーにより比較的楽に持ち上げることができる。また、左右に窓があり、シェードの他、網戸にもなる。
インテリア
スピナポップアップルーフのインテリア
展示車は上のようなグレーのシート地とローズウッドの家具色を採用していた。なお、家具色は、このローズウッドを含め、ナチュラル、チーク、ブナ、アッシュホワイトの5色から選択できる。
家具は軽量合板に塩化ビニールシートを圧着するPVC加工で作成されており、軽量化と質感を両立させている。また家具の作りも良く、洗練されたインテリアとなっている。
レイアウト
先述の通り、対座スタイルのダイネットを採用。4名が対座して着座することができる。このスタイルは軽バンコンでは珍しく、多くの他モデルはベッド兼ダイネットとしてフラットフロアのみを採用している。
ただし、現実的には大人4名がダイネットで対座するというケースは少ないだろうし、そもそも軽キャンパーに大人4名が乗って寛ぐのは難しい。せいぜい大人2名と小さな子供2名が限界だろう。
なお、後部両サイドの薄い収納家具を配置。右側の家具にはオプションでギャレーを設置できる。
ダイネット
対座ダイネット
先述のように対座ダイネットが特徴。この対座ダイネットは純正シートを使うのではなく、全て架装のシートで構成される。もちろんマルチモードシートではなく固定シートだが、シートバックは適度に角度が付いており、座りやすい。
軽バンコンに対座シートが実現されているだけでも特筆だが、座り心地も含めて秀逸な作りとなっている。ただしドライブ中はこのシートに座ることはできない。
片側だけ前向きシートにすることもできる
もちろん他の多くの軽バンコンのように、ベッドモードでちゃぶ台スタイルのダイネットとすることもできる。また、上の写真のように、純正シートを起こして、片側だけ前向きシートにすることもできる。
ベッド
セミダブルベッドの幅に相当するベッド
ダイネットモードからベッドモードにすると、1950x1020mm(Max1250mm)のベッドになる。後部(足元)は両側に収納キャビネットがあるため、多少狭くなっている。
1250mmは家庭用ではセミダブルベッドの幅に相当し、大人2名が就寝できる。キャンピングカー要件では一人当たり500mm幅を要するので、1020mmでも2名就寝の要件を満たしている。
1060mm幅のルーフベッド
また、ポップアップルーフを上げた状態でルーフベッドがセットできるが、その大きさは1950x1060mm。最高部は900mmの高さがあるので、起き上がっても頭がつかえることは無い。
キャンピングカー要件では、ここでも大人が2名就寝できるが、1060mmは家庭用ではシングルベッドの幅(970mm)より多少広い程度なので、現実的には1名+小さな子供程度だろう。
従って、計4名が就寝できることになるが、実際の車中泊では大人2名と小さな子供2名が限界と考えた方が良い。
ギャレー
オプションのギャレーセクション
ミニギャレーがオプションで設置できる。ミニギャレーと言ってもしっかり水が使え、小さな食器やカップを洗うことができる。車中泊時には洗面や歯磨きもできるので、道の駅やSSA/PAのトイレで歯を磨くといったことを避けることができる。
車外から直接取り出せる給排水タンク
シンクの下には給排水タンクが収納される。これもギャレー(シンクセット)オプションに含まれる。各タンクは、クルマのリアゲートを開けると、車外から直接取り出せるので便利だ。
冷蔵庫/電子レンジ
冷蔵庫や電子レンジのオプション設定は無い。もちろんポータブル冷蔵庫を持ち込むことは可能だが、設置場所は設けられていない。
このモデルは冷蔵庫や電子レンジを必要とするクルマ旅ではなく、近場で短期の移動や車中泊を想定していると思われる。従って、そのような装備よりもシンプルさを重視した作りになっている。
収納
左側のオーバーヘッド収納
スピナの収納は軽バンコンにしては充実している。後部両側のキャビネットは薄型ながら収納箇所が多く設けられている。上の写真は左側のオーバーヘッド収納。
右側のオーバーヘッド収納
右側のオーバーヘッド収納は凝った作りで、収納部全体が傾くので、収納物が取り出しやすい。
キャビネットの左側下収納
キャビネットの左側下は奥行きは薄いものの、全体が収納部になっているので大きな容量がある。収納するものに合わせて、棚や仕切りをDIYすると良いだろう。
最後部の収納スペース
最後部は対座ダイネットにした状態で収納スペースが出現する。最下部の隙間はベッドモードにした場合も収納として使用できる。
空調
暖房はFFヒーターがオプションで設定されている。冷房のソリューションは提案されていない。またポップアップルーフのため、ベンチレーターも取り付けは難しく、オプション設定されていない。
テレビ/ナビ
テレビのオプション設定も無いが、どうしても付けたいという場合には付けられないことは無いだろう。しかし、限られたスペースにテレビを設置するよりも、タブレットなどを使用するほうが自由度があり見やすいだろう。
電装系
80Ahのディープサイクルバッテリーと走行充電が標準装備される。外部100V電源入力とこれによる充電機能はオプション。なお、サブバッテリーはオプションでもう1個追加できる。
ただ、電力消費は照明程度だけなので、1個だけでも問題ないだろう。ポータブル冷蔵庫を持ち込んだり、車内で家電品を使ったりする場合はバッテリーを追加すると良いだろう。特にノートパソコンで仕事をする場合はサブバッテリーの増設をお勧めする。
また、インバーターは正弦波400Wのものがオプション設定されている。外部電源が取れないところで100Vの家電品を使う場合は必要になる。なお、(お勧めしないが)ドライヤーなどの大電力の家電品をサブバッテリーで使いたい場合は、1500Wなどの大型のものが必要になるが、スペース的に設置は難しいかもしれない。
ソーラーシステムもオプション設定は無いが、薄型のパネルならポップアップルーフに張り付けられるかもしれない。
価格(2021年4月現在:千円台切り上げ:税込)
クリッパーGX/エブリイJOIN 2WD/5MTで270万円~、2WD/4ATで282万円~、4WD/5MTで283万円~、4WD/4ATで295万円~となっている。
付けておきたい必需オプションは、家庭の駐車場にAC電源があれば外部電源入力(27,830円)と充電機能(56,320円)を付けておくと充電できる他、自宅の駐車場でテレワークするといった場合も便利だ。
また、外部電源が取れないところで100V電源を使う可能性があるならインバーター(25,410円)が必要となる。サブバッテリーの増設(45,320円)もあれば安心だ。
FFヒーター(261,690円)は高額オプションだが、冬場は欲しいオプションだ。ただし軽バンコンの車内ではFFヒーターは暑くなりすぎるという意見もあり、ポータブルバッテリーと電気毛布で寒さをしのぐという方法もある。
他モデル
軽バンコンは非常に多く存在するが、対座ダイネットができるのは、マリナRVのキャビンⅡミニBASE(365万円~)やメティオのラクネルバンツアー アトレーVer(313万円~)などが挙げられる。
なお、「ポップアップルーフを持つ軽バンコン特集」も参考いただきたい。
まとめ
スピナポップアップルーフはシンクをオプション設定できるので、一見充実した装備のモデルでクルマ旅にも対応できるような印象を受けるが、シンクを設置しなければシンプル装備の部類に入る。
ホワイトハウスのN-VAN Compo Cabin(413万円~)やカーショップスリーセブンのMOCⅡポップアップ(281万円~)のように、冷蔵庫や電子レンジまで想定されたモデルもあるが、スピナポップアップルーフはそうではないので、どちらかと言えば、イベントや登山などで前日に到着して仮眠するとか、テレワーク用の部屋にする等と言った使い方が向いている。
ボーダーやクレアと言ったキャブコンのインテリアを継承し洗練されたインテリアは、趣味の部屋やテレワークの書斎として適している。
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