ポップアップルーフを持つ軽バンコン特集
軽バンコンはコンパクトで取り回しもよく、安価なので比較的手軽に購入できるキャンピングカーだ。しかしそのサイズゆえ二人で旅するには狭く、就寝もゆったりとは程遠い状況となってしまう。
これを解決するのがポップアップルーフで、フロアベッドとルーフベッドに分かれて就寝すると十分な大きさのベッドサイズが得られる。また、必要に応じてプライバシーも守られ、一人で本を読んだりすることもできる。
ノーマルルーフの軽バンコンは、スペック的には2名就寝であっても、実用上は一人向けと考えた方がよく、二人旅ならポップアップルーフをお勧めしたい。はるかに優雅な時間を過ごせるだろう。
そこで、今回はポップアップルーフ付きのバンコンを特集する。
目 次
N-VANコンポキャビン:ホワイトハウス
ホンダがN-VANを発表したのは2018年夏で、2019年2月のジャパンキャンピングカーショーでは早くも数モデルが発表され、その後多くのビルダーがN-VANベースの軽キャンパーを作っている。
愛知県名古屋市に本拠を置くホワイトハウスもその一つで、N-VANベースキャンパーのラインアップが最も充実しているビルダーのひとつだ。現在N-VAN Compo Pop、HotPackage、Style ONEとStyle TWO、そしてこのCabinをラインアップしている。
後部のラックにはギャレーが標準装備される
このうちN-VAN Compo Pop、HotPackage、Cabinはポップアップルーフを架装する(HotPackageとCabinはオプション)が、Cabinは最も充実した装備を持つモデルで、ギャレーを標準装備し、ポータブル冷蔵庫と電子レンジもオプション設定されている。更にこれらを収納できるようになっている。
電子レンジも装備できすっきり収納できる
収納も充実しており、両サイドに収納棚が並ぶ。またベッド下にも高さのある収納スペースが用意されており、車外からもアクセスできる。軽バンコンのベッド下収納は高さが低いものが多いが、N-VAN
Comp Cabinのそれは十分な高さがある。
N-VANのピラーレス構造を生かして、エントランスは非常に広く、夏にオープンにして涼むのには適している。またオプションだが運転席が回転して後ろ向きになり、足を投げ出して寛げるのはユニークなアイデアだ。
設計が新しいベース車だけに動力性能も期待でき、長距離、長期旅にも対応できる数少ない軽キャンパーと言える。なお、FFヒーターが標準装備されているのは特筆できる。
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N-Box Neo Pop:ホワイトハウス
同じくホワイトハウスのモデルだが、N-Box Neo Popはその名の通りN-Boxをベース車に使用している。N-Boxは商用車ではないのが魅力。運転席周りや室内、そして乗り心地も一般車らしく洗練されている。
N-Box Neo Popには「Pop」と「Pop Hot Package」が選択でき、Pop Hot Package ではFFヒーターやサブバッテリーが標準装備される。
運転席が回転する(OP)
ユニークなのは、N-VAN Compo Cabinと同様に、運転席が回転して後ろ向きにセットできること(OP)。これにより、後部シートと3名が対座してテーブルを囲むことができる。
また、ベッドボード(左側オプション)を使用するとフラットなベッドになり、ルーフベッドと合わせて4名が就寝できる。もちろん実質的には大人2名子供2名のファミリー程度が適当で、大人4名が就寝するには多少窮屈だ。
なお、N-VANコンポキャビン同様FFヒーターが標準装備される。またオプションだがヒーターダクトがポップアップルーフ内に引き入れられるのも細かい配慮がされている。
ただし、キャンピングカーらしい機能はこれだけで、ギャレーや収納などキャンピングカーの装備はほとんど付いていない。N-Boxにポップアップルーフを架装し、一般車に車中泊の要素を加えたものがこのモデルのコンセプトと言える。
一般車ベースながら対座ダイネットが形成できる
N-Box Camper Neoは、ちょっと遠出して車内で寛ぎ、場合によっては車中泊もするという使い方が似合っている。これだけでも休日の行動範囲が広くなる。
給電くんポップアップ:オートワン
オートワンは神奈川県藤沢市を拠点にする軽バンコン専門ビルダーで、多くのモデルをラインアップする。中でも「給電くん」は同社の代表的モデルで、充実した電装系が特徴。
モデルネームの「給電くん」は、ソーラーパネルで発電し、サブバッテリーに蓄電した電気をインバーターで100Vにして、車外のコンセントで使用することができることから名付けられている。
もちろん車内で使用することも可能で、オプションの2000Wインバーターで消費電力の大きい家電品を使うことができる。ただしサブバッテリーの容量は55Ah(オプションで100Ah)なので、それほど長時間は使えないし、大電力を取り出すとバッテリーの寿命を縮めてしまう。
給電くんのインテリア
給電くんの特徴は、同社のモデルに共通する飴色の重厚な家具と、これによる充実した収納で、両側に備えられたオーバーヘッド収納は大きな収納スペースを提供する。軽バンコンでは収納は重要で、収納スペースが小さいと車内はすぐに煩雑になってしまう。
給電くんにはミニギャレーが標準装備されており、車内で水が使える。不要な場合は折り畳んで収納できるので、就寝時に邪魔にならない。
豊富な収納スペース
なお、電子レンジ(WaveBox)がすっきり収納でき、ちょっとした温め物に便利だ。ただ残念ながら、冷蔵庫の設置スペースは特に用意されておらず、ポータブル冷蔵庫を持ち込む場合は、走行時は後部のどこかに固定し、停泊時は助手席に置くなど移動が必要になる。
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ココ スマート :フィールドライフ
フィールドライフは群馬県渋川市に本拠を置くビルダーで、「バロッコ」等の軽キャンパーが有名だが、セミフルコンも製作している異色のビルダー。現在は生産終了になっているが、「ROOTS」という有名なセミフルコンも製作していた。
「ココ スマート」は、同社軽キャンパーのラインアップの中でもシンプル装備で、標準で装備されるのはポップアップルーフとルーフベッドのみ。フロアベッドもオプションになる。
フロアベッド(OP)展開時
2名で使用する場合は、フロアはそのままにして就寝はルーフベッドで、という使い方もできる。ベッドマットとベッド下に収納スぺースができる収納庫を追加すると、フロアでも2名が就寝でき、荷物を収納するスペースもできる。
フロアベッドの大きさは1800x1200mmで、家庭用ベッドならセミダブルベッドの大きさを確保している。またルーフベッドは1800x1000mmでここでも2名が就寝できる。計4名が就寝できるので、ファミリーでの車中泊も可能だ。
家具が無いので広いベッドスペースを確保できる
この他にもサブバッテリー等の電装系やFFヒーター等のオプションが用意されているので、必要なオプションを加えて自分好みの仕様にシステムアップできる。収納家具などは無く、車内を広く使いたいユーザー向け。
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ココ ワゴン:フィールドライフ
ココワゴンは同じくフィールドライフが製作する軽キャンパーで、その名の通りエブリイワゴンをベース車にしたモデル。商用車ではないため、外観はフロントグリルがメッキされるなど多少体裁よく作られている。ナンバー登録は軽5ナンバーになる。
ワゴンなので室内はフルトリムされており、バンベースのように鉄板がむき出しということはない。荷物を載せるのではなく人を乗せるのが前提のクルマなので、シートの質感や乗り心地も洗練されている。
エレベーションルーフも選択できる
ココワゴンのルーフはポップアップルーフとエレベーションルーフの選択ができる。価格は同じなので好みの方を選べばよいが、エレベーションルーフは全体が持ち上がるので開放感が大きい。
フロアベッドはココスマート同様にオプションとなるので、標準ではルーフベッドで2名が就寝できる。フロアベッドを装備すると1800x1200mmのベッドになり、フロアでも2名が就寝でき、ファミリーでの車中泊が可能となる。
フロアベッドはオプション
またオプションでリア上部に扉付き収納を設置することもできる。食器やカップといった清潔に収納しておきたいものを入れておける。そのほか、ベッド下にも収納スペースが用意されている。
ただしそれ以外に収納スペースはなく、ギャレーや電子レンジなどの装備も想定されていないので、基本的にはシンプルな室内となっている。商用車のバンベースには抵抗があるが、広い室内を望むユーザーにお勧めのモデルだ。
コング:フィールドライフ
コングはフィールドライフの軽バンコンモデル中では最も装備が充実したモデルで、ギャレーが標準装備されるのが特徴。ナンバー登録は軽8ナンバーで正式なキャンピング仕様車だ。なお、ポップアップルーフに加え、エレベーションルーフも選択できる。
専用の2列目シート
右側に設置されたギャレーコンソールには、ミニシンクとシャワーフォーセット、またシンクの下には各5Lの給排水タンクが収納される。カセットコンロを置いてちょっとした調理もできる。
もう一つの特徴は、「3Wayマルチシート」がエブリイの純正シートに代えて採用されており、展開するとフラットベッドになる。
ソファーモードのダイネット
特筆できるのが、ソファーモードにするとシートバックを背にして足を投げ出して寛げること。車内でどのような姿勢で寛げるかは重要なことで、これなら車内で長時間過ごことができる。
ベッドモードにすると、1800x900mmのフロアベッドとなる。これは家庭用のシングルベッドの大きさ。またルーフベッドは1830x1000mmの大きさとなっている。
サブバッテリーと走行充電も標準装備されており、車中泊時の電気も心配ない。またオプションのインバーターを搭載すればバッテリーで100Vの家電品が車内で使える。
ただ残念ながら冷蔵庫や電子レンジの設置は想定されていない。ポータブル冷蔵庫を持ち込む場合は、運転時や就寝時に邪魔にならない位置に移動する必要がある。
収納はギャレーコンソールに多少用意されているがオーバーヘッド収納などはなく、それほど大きな収納力があるわけではない。
二人使用か、小さな子供1名を持つファミリーが車中泊を伴うドライブをするのに適したモデルと言える。
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スピナ ポップアップ:ナッツRV
ナッツRVは福岡県に本拠を置く総合ビルダーで、セミフルコンから軽バンコンまで広くラインアップしている。スピナは同社が販売するモデルでは最も小型のキャンピングカーで、ノーマルルーフ車も選択できる。
ベース車は日産NV100クリッパーかスズキエブリイ。なお、内外装をキャルルック仕様にした「スピナ キャルルック」もラインアップしているが、現在は受注停止中となっている。
洗練されたインテリアの室内
スピナの特徴は、洗練されたインテリアと、軽バンコンには珍しい対座ダイネット。テーブルを挟んで4名が対座できる。大人2名+子供2名のファミリーで、テーブルを囲んでの食事もできる。
ダイネットを展開すると、1920x1020mmのフラットなフロアベッドになり、大人が2名就寝できる。両側に家具があるので足元が多少狭くなっている。また、ルーフベッドは1950x1060mmの大きさでここでも2名が就寝できる。
軽バンコンでは珍しい対座ダイネット
後部両側にルーフまで立ち上がった収納家具があり、右側にはギャレーも標準装備される。下には各5Lの給排水タンクが収納されており、リアゲートを開けて車外から出し入れすることができる。
なお、冷蔵庫や電子レンジの設定はなく、冷蔵庫はポータブル冷蔵庫を持ち込むことになるが設置場所は特に用意されていない。
収納は後部両側にオーバーヘッド収納が用意されており、食器や食品を清潔に収納しておくことができる。またベッド下も収納スペースとして使用できるが、高さがあまりない。
スピナのインテリアは、最高級のセミフルコンを手がける同社のモデルらしく洗練されたもので、軽キャンパーでもセンスの良い車内を求めるユーザーに適したモデルとなっている。
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ピッコロキャンパープラス ポップアップルーフ:オートワン
ピッコロキャンパープラスはオートワンの軽バンコンラインアップの一つで、先述の「給電くん」のシンプルバージョンのような位置付けになっている。装備はベッドマットとサブバッテリーおよび走行充電のみ。しかし後部には給電くんと同じ材質の収納家具が装備されている。
後部に収納家具が設置された室内
収納家具は右側は給電くんとほぼ同じだが、左側は省略されており、ここにはテーブルを立てかけて収納できるようになっている。
しかし、両側のオーバーヘッド収納は標準装備されており、収納の充実度は依然高い。ただし、エントランス上のオーバーヘッド収納はオプションとなっている。
オプションでFFヒーターやギャレーセットが装備できるようになっているが、ピッコロキャンパープラスはむしろシンプルさを求めるユーザに適している。
自転車を積んでも2名がルーフベッドで就寝できる
なお、価格的には給電くんが220万円、ピッコロキャンパープラスポップアップルーフが211万円~。その差9万円なので給電くんのお得感が大きい。
自転車を積んで二人で車中泊を伴う遠出をするとか、自分好みの仕様に作り上げるベース車にするといったユーザーに適している。
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MOCⅡポップアップ:カーショップスリーセブン
カーショップスリーセブンは福岡県柳川市を拠点とするビルダーで、軽バンコンを専門に製作している。MOCⅡは同社の主力モデルでもあり、シリーズにはノーマルルーフのMOCⅡやシンプルラック仕様のMOCⅡ-Sも用意されている
MOCⅡポップアップはネーミング通りポップアップルーフを標準装備するタイプで、後部の収納家具はルーフまで立ち上がったフルサイズ。両側にはオーバーヘッド収納や棚も標準装備されている。
畳敷きのダイネット兼ベッド
MOCⅡポップアップの特徴は、畳敷きフロアが選択できること。汚れにくく耐久性がある「和紙畳」を使用しており、天然木の家具と調和して落ち着き感があり、和室好きのユーザーには嬉しい選択肢となっている。
大きなテーブルが標準装備されており、パソコンなどを置いて作業することができる。またリアゲートを開けて車外で使用できる引き出し収納や上部の棚も収納に有用だ。
車内で使える引き出し収納
なお、ギャレーはオプションで用意されており、各5Lの給排水タンクも装備できる。また電子レンジもすっきり収納できるが、冷蔵庫の設置は想定されていない。これもまたポータブル冷蔵庫を持ち込むと設置場所に困ることになる。
収納は後部両側の収納家具が用意されており、上部には両側にオーバーヘッド収納が設置されている。食器などを清潔に収納しておくのに便利だ。またエントランス上部には棚が設置されている。
ゆったりした二人旅がイメージされるインテリアだが、4名が乗車、就寝できるので、子供連れのファミリーにも対応できる。
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まとめ
大きく分けてシンプル装備のモデルと、充実装備のモデルに分けられる。シンプル装備のモデルは、近場へ車中泊を兼ねてドライブするとか、自転車を積んで遠出するなどの用途が考えられる。
一方、充実装備のモデルは、比較的長期のクルマ旅に使用し、車内でちょっとした調理をしたり食事をしたりするような使い方が考えられる。
シンプルながら収納が従事値しているピッコロキャンパープラス
人数的にはポップアップルーフがあるのでファミリーでも就寝できるが、やはりファミリーには軽バンコンでは狭く、数日間以上の旅なら少なくともタウンエースやNV200バネットベースのコンパクトバンコンをお勧めしたい。理想的にはハイエース標準ボディ以上を選択したい。
今回リストアップされたモデルでは、シンプルモデルがN-Box Neo、ココスマート、ココワゴン、ピッコロキャンパープラス、それ以外は充実装備モデルに分けられる。
更にシンプル装備モデルではN-Box Neoとココワゴンは、一般車にポップアップルーフを付けた感覚で、特にN-Box Neoはより一般車に近い味付けになっている。
また、ココスマートとピッコロキャンパープラスでは、後者の方が収納が充実している。ココスマートは最もシンプルで、今回取り上げた中では最も低価格なモデルだ。
装備と収納が充実しているN-VANコンポキャビン
一方、充実した装備を持つモデルでは、どれもギャレーを持つが、N-VANコンポキャビン、給電くん、MOCⅡポップアップは更に電子レンジも想定されている。そしてさらにN-VANコンポキャビンはポータブル冷蔵庫の設置スペースまで考慮されている。
このあたりは小さなことに思えるが、設置スペースが用意されていないと重い冷蔵庫を狭い車内で移動させなければならず、非常に不便な思いをする。N-VANコンポキャビンは収納も豊富に用意されておりカトラリー収納まで用意されているのは感激する。長期旅に使用するならN-VANコンポキャビンが一歩勝っている。
もちろん、給電くんは非常に充実したオーバーヘッド収納を持つし、MOCⅡポップアップは畳敷きという他車にない特徴を持っている。またコングは独自のシートで車内での寛ぎ方を提案しているし、スピナは対座ダイネットを特徴としている。
各車それぞれユーザーの使い方や好みを想定し、それに沿った特徴で商品企画されている。是非自分に合ったモデルを見つけていただきたい。