進化する軽キャブコン
軽キャブコンには2種類のスタイルが存在する。一つは以前特集したクローズドシェルの普通車8ナンバーの軽キャブコン、もう一つが今回特集するポップアップルーフを持つ軽キャブコンだ。
軽キャブコンは、しかしながら、微妙なポジションにいる。非力で小さい軽トラックをベース車にしており、どうしても走行性能が良くないうえ、シェルを持つとはいえライトキャブコンには及ばない広さだ。そして価格は、場合によってコンパクトバンコンに手が届いてしまう。
そんな軽キャブコンだが、別の見方をするとそのメリットも見えてくる。まず、断熱性、防音性のあるシェルを持つことにより、居住性はバンコンに比べると格段に良い。もちろんライトキャブコンと比べるとはるかに安価だ。
即ち、小さいながらもれっきとしたキャブコンで、優れた居住性を持つ最もコンパクトで手ごろな本格的キャンピングカーだ。なお、クローズドシェルを架装する軽キャブコンと比べると軽量であるとともに、税金面でも有利となる。
今回ピックアップした9モデルのポップアップルーフを持つ軽キャブコンは、クローズドシェルを持つ軽キャブコンと違い、全て軽8ナンバー登録となる。
目 次
アマホ :ダイレクトカーズ
ダイレクトカーズは、当初ハイエースバンコンを中心にしたバンコンビルダーだったが、2019年にハイエースベースのキャブコン「モビリティホーム」を発表、2020年にはカムロードベースのキャブコン「トリップ」を発売し、大手総合ビルダーとなった。
そして2021年には同社初の軽キャブコン「AMAHO(アマホ)」を発表した。アマホは今までベッドとしてしか認識されていなかったポップアップルーフを、フルオープンにできるルーフテラスとしてポップアップルーフの新しい使い方を提案した。
アマホのインテリア
女性ユーザーを意識したインテリアやカラーリング、あるいは車外にセットできるテーブルは斬新で、新しい顧客層を狙う目的も見え、軽キャンピングカーの新しいカテゴリーを開拓するモデルと言える。
リチウムイオンバッテリー2個(200Ah)を標準装備する
もう一つの特徴は、同社が得意とする強力な電装システムを軽キャブコンに持ち込んだこと。100Ahのリチウムイオンバッテリー2個(=200Ah)を標準装備し、2000Wインバーターや185Wのソーラーパネル2枚(=370W)も標準装備する。
これだけの電装システムがあればクーラーも余裕で駆動できるが、残念ながらクーラーの提案はポータブルクーラーを持ち込むことに留まっている。しかし、電源のポテンシャルは十分にあるので、12Vの車載クーラーの搭載が期待される
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アマホ Ⅱ:ダイレクトカーズ
ダイレクトカーズは2021年に関東地区の直営店として神奈川県厚木市に同社の厚木ショールームをオープン、その時に同時発表されたのが「アマホⅡ」だ。先のアマホが女性ユーザーを意識したコンセプトだったが、アマホⅡは一転して男性的なイメージとなった。
アマホⅡのインテリア
レイアウトはアマホ同様にベンチシートとギャレーの構成だが、ベンチシートは後部が折れ、壁になる仕掛け。そうして空いた後部のスペースが大きな荷室になる。
後部の荷室は自転車も積むことができる
リアに設けられた大きなゲートと、後部の大きな荷室は自転車も積むことができる大きさで、キャンプ用具等を積み、アウトドアアクティビティに向けたアプローチとなっている。
アマホで打ち出したルーフテラスのコンセプトも継承されており、ポップアップルーフはフルオープンになる。また、強力な電装系も健在でリチウムイオンバッテリー、2000Wインバーター、185Wソーラーパネル2枚も標準装備される。
ただし、リチウムイオンバッテリーは1個が標準装備され、もう1個はオプションとなった。クーラーはポータブルクーラーを持ち込む想定なのはアマホと変わらない。
今までにないコンセプトやレイアウトで、軽キャブコンの新しい使い方を提案しており、新しい顧客層を作り出しているモデルだ。
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インディ727:インディアナ・RV
インディアナ・RVはキャンピングトレーラを多数ラインアップしているが、唯一自走式のキャンピングカーを製作しているのがこのインディ727。軽キャブコンの創成期から存在するモデルで、軽キャブコンの代表的モデルのひとつ。
特徴はアルミパネルを採用したシェルを架装することにより、軽量化を図っていること。非力な軽トラックをベース車にする軽キャブコンでは、シェルの架装重量が大きく影響するため、シェルは軽快な走りに貢献する重要な要素だ。
インディ727のインテリア
対座ダイネットタイプの「S」とL字型ダイネットタイプの「L」の2種類のレイアウトから選択できる。また4種類の外装色(シェル)から選択できる。
3面に設置されたオーバーヘッド収納
左右と前方の3方向にオーバーヘッド収納を設置し、またシート下収納など収納面も充実している。オーソドックスな構成だが、カジュアルなインテリアと実用的な装備を搭載している。
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インディ108 :東和モータース販売
東和モータース販売は輸入モーターホームから「ヴォーン」シリーズのカムロードキャブコン、そしてこの「インディ108」の軽キャブコンまで幅広く販売している。
インディ108はインディアナ・RVのインディ727の姉妹車。東和モータース販売が、外装色やインテリアに独自のアレンジを加えているが、インディ727Sタイプと同様のレイアウトを持つ。なおLタイプは存在しない。
インディ108の特徴は、多様な外装色を選択できること。4色のカラーの他、4パターンの迷彩デザインから選択できる。(現在迷彩色の写真は同社のサイトにはない)
インディ108のインテリア
また、インテリアカラーもインディ727とは異なっており、モカブラウンでコーディネートしたインテリアはインディ727とは違った選択肢を提供している。
なお、インディ108のオーバーヘッド収納はインディ727よりも多く設置されている。上の写真でもわかる通り、ダイネット横のウインドウ上部にも設置され、計4ブロック設置されているが、インディ727は2ブロックになっている。
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ケーアイ: オートショップアズマ
オートショップアズマは、軽キャブコンやタウンエースベースのライトキャブコンをラインアップするビルダーだが、普通車8ナンバーの「ラ・クーン」や「ラ・クーンⅡ」と、軽8ナンバーの「ケーアイ」を選択できる。
ケーアイは、従来はマツダ スクラムかスズキ キャリイがベース車だったが、現在はダイハツ ハイゼットをベース車にしたタイプDも追加されている。
車内から見たエレベーションルーフ
ケーアイの特徴はルーフ全体が持ち上がるエレベーションルーフで、ポップアップルーフを架装する軽バンコンでエレベーションルーフを持つのはケーアイと、後述のミニポップ
ビーのみ。
エレベーションルーフの良いところは、ルーフ全体が昇降するので、全体的に広い空間が可能になる点。しかし一方、ケーアイのルーフベッドは子供用となる。
ケーアイのインテリア
レイアウトはL字型ダイネットの「ベンチタイプ」と、対座ダイネットの「対座タイプ」の2種類が用意されている。同社のサイトには、タイプDでは「ベンチタイプ」のみが掲載されているが、「対座タイプ」も可能だろう。
同社は製作に関しては自由度が高いビルダーなので、カスタマイズやインテリアカラーを柔軟に選択できる。外装色に関しても、様々なパターンや配色が可能だ。
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テントむし:バンショップミカミ
バンショップ ミカミは「テントむし」シリーズを中心に、タウンエースをベース車にした「Dテントむし」もラインアップしているビルダー。
テントむしはポップアップ軽キャブコンの元祖ともいうべき存在で、そのかわいらしいスタイリングと豊富なカラーリングで一躍有名になり、トミカにもなっている。
上の写真は計400Wのソーラーシステムや、計200Ahのリチウムイオンバッテリーを搭載した「Eパッケージ」仕様車で、電装系を強化したモデル。
テントむしのインテリア
レイアウトはFASPシートを配置した「Fタイプ」と、ベンチシートの「Sタイプ」が選択できる。また、後部に大きな荷室を持つ2シータータイプ(貨物4ナンバー)もラインアップしている。
COROを牽くテントむし
テントむしで特筆できるのはコンパクトなキャンピングトレーラー「CORO」の存在。同系統のカラーで統一した「連結スタイル」は目を引き、また軽キャンパーとトレーラーの組み合わせは軽キャンパーのひとつの可能性を提案している。
⇨ テントむしの詳しい記事と動画はこちら
バロッコ:フィールドライフ
フィールドライフは国産最高峰で7mに迫るセミフルコン「シリウス」と3.5m弱の小さな軽キャンパーの両端のモデルをラインアップしているユニークなビルダー。セミフルコンのクオリティを軽キャブコンにもフィードバックしている。なお、最近ではダイハツ
グランマックスベースのバンコン「ロビー」を発表した。
バロッコは同社唯一の軽キャブコンで、コンパクトながらもセミフルコンと同様の高い質感で製作されている。その一つが「ハイドロパックパネル」と呼ばれるFRP製の高断熱パネルや家具、あるいはアクリル2重窓だ。
バロッコのインテリア
ボディカラーは8色から選択でき、インテリアは標準仕様の他、特別限定仕様やKパッケージ仕様も選択できる。なおKパッケージではワンアクションで展開できるベッドや16Lの引き出し式冷蔵庫、大型のタワー収納等が標準装備される。
ルーフベッドに装備された「FFヒータールーフダクト」(OP)
バロッコで特筆されるのは、FFヒーターの温風をルーフベッドに導くことができる「FFヒータールーフダクト」のオプションが用意されていること。冬場では寒いルーフベッドでも暖かく就寝できる。
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ミニポップ ビー:MYSミスティック
MYSミスティックは、トラックキャンパーを多数ラインアップするビルダーだが、カムロードキャブコン「アンセイエ」や、ライトキャブコン「レジストロ アウル」も製作している。
軽キャブコンは普通車8ナンバーの「レジストロ」と、軽8ナンバーの「ミニポップ ビー」を選択することができる。「ミニポップ ビー」は一見するとトラックキャンパーのように見えるが、シェルが固定され運転席とシェルが貫通したキャブコンだ。
ルーフ全体が昇降するポップアップルーフ
ミニポップビーの特徴はキャブ上部まであるルーフ全体が昇降するエレベーションルーフ。非常に広い開放的な空間ができるとともに、広いルーフベッドも可能になっている。
前向きシートのレイアウト
レイアウトは横座り対座と、前向きシートのレイアウト(Bee-i バージョン:OP)の2種類が選択できる。また、外装色やインテリアカラーの変更などのカスタムもオプションで受け付けている。
荷台のサイドゲートを倒したテーブルと、サイドオーニングでアウトドアダイネットができるのもユニークな機能だ。
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リゾートデュオ バンビーノ:Stage21
Styage21は軽バンコンからライトキャブコンまでを製作するビルダーで、「リゾートデュオ」は同社のモデルに共通して付けられているブランドネーム。
「リゾートデュオバンビーノ」は同社の創成期から製作されていた「リゾートデュオ」の継承モデルに当たる。初代リゾートデュオでは凝ったマホガニー材の家具が装備されていたが、現在ではオプションでオーダーすることができる。
シェルは内側に断熱材を添付したアルミパネル製で、断熱性と軽量化を両立させている。シェル部のウインドウは全てアクリルウインドウだが、側面は出っ張らないスライド方式を採用。後部はプッシュアウト式を採用している。
リゾートデュオバンビーノのインテリア
レイアウトはL字型のダイネットとギャレーキャビネットの構成。ベンチシートが簡単にベッド展開できる機構を備えているのも特徴のひとつとなっている。(ビデオはこちら)また内外色は多くのサンプルから選択できる。
同社のモデルは総じて電装系の標準装備が充実しているが、このリゾートデュオバンビーノも105Ahディープサイクルバッテリーはもちろん、インバーター、外部電源と充電機能、180W薄型ソーラーパネル、カーナビが標準装備される。
車載用クーラー「One Cool 21」
また、冷蔵庫と電子レンジもオプションで設置できるほか、2022年モデルからは簡易クーラー「冷え蔵Ⅱ EX」の標準装備が無くなった代わりに、本格的な車載用クーラー「One Cool 21」とリチウムイオンバッテリーがオプションで選択できるようになった。
⇨ リゾートデュオ バンビーノの詳しい記事と動画はこちら
まとめ
今回特集した軽キャブコンの中で一押しというものは特にないし、お勧めしないモデルも特にない。いずれもそれぞれ特徴があり、どのモデルを選択しても後悔することは無いだろう。
ただし、もちろん自分の使い方に適したものを選ぶ必要があるのは言うまでもない。例えばアマホⅡは後部に大きな荷物を積みたい場合有用だし、大電力に対応するアマホはヘアドライヤーを使いたい女性にはお勧めしたいモデルだ。
また、できるだけ開放的な空間を求めるなら、ミニポップ ビーのルーフを上げると、軽キャンパーとは思えないくらいの空間が広がるし、快適な空間を求めるなら、クーラーを装備できるリゾートデュオバンビーノが候補に上がる。
リゾートデュオバンビーノは、冷蔵庫や電子レンジを搭載し、すっきりと収納できるので、クルマ旅を目的とするユーザーにお勧めだ。またバロッコはクラスを超えた上質感があり、インディ727、インディ108は外観が軽快なだけでなく、軽量シェルで軽快な走りも期待できる。
ケーアイはもちろんエレベーションルーフが特徴だ。ミニポップ ビーほどではないが、開放感のある車内が実現する。ミニポップ ビーのスタイリングに抵抗がある場合は、ケーアイも良い選択肢だろう。
最後に、テントむしはポップアップ軽キャブコンの代表格だけあって、多くのバリエーションを揃え、様々なユーザーの要求に対応している。COROを含めた遊び心は、発表時から変わっていない。
ポップアップ軽キャブコンの今後の進化を考えると、2つのことが考えられる。一つはアマホに見られるような付加価値のアイデアだ。アマホのルーフテラスの提案は、今までなかった斬新さがある。
もう一つはクーラーの搭載だ。高性能な小型クーラーとリチウムイオンバッテリーの実用化で、軽キャブコンにもクーラーの搭載が現実的になってきた。もちろん価格は上がるが、軽キャンパーを単に低価格なキャンピングカーと見ないユーザー層には普及するだろう。
なお、クーラーやリチウムイオンバッテリーは、カタログやウエブサイトに載っていなくても搭載できる可能性もあるので、必要に応じてビルダーにお問い合わせいただきたい。