普通車8ナンバー登録の軽キャブコンとは?
軽キャブコンと言えば、軽トラックをベース車にして、シェルを架装した形態のキャブコンで、一般的には軽8ナンバー登録と思っておられる読者も多いだろう。
しかし、普通車8ナンバー(白8ナンバー)登録の軽キャブコンも存在する。これは、シェルがキャブ(運転席部分)部の幅より広く、軽8ナンバーの枠に収まっていないモデルだ。
軽キャンパーは税金面で有利なのに、なぜそのメリットを放棄しているのか不思議に思われるかもしれないが、これは単純に居住性を高めるため。それならタウンエースベースのライトキャブコンにすれば、との意見もあると思うが、それはそれでさらに大きく、高価になる。
すなわち、ライトキャブコンと軽8ナンバーキャブコンの中間にあり、多少税金面が高価になるが広い居住性を持ち、かつ扱いやすいというメリットがある。
ただし、このカテゴリーのモデルはそれほど多くなく、今回紹介する6モデルに留まる。しかし、昨年はstage21からリゾートデュオバンビーノオハナ、今年はキャンピングカーオーゼットからKANOA(カノア)が発売され、注目が集まっているカテゴリーでもある。
そこで、今回は普通車8ナンバー登録の軽キャブコンを特集した。軽8ナンバー登録のキャブコンやタウンエースベースのキャブコンとの税金面も含めた比較もしている。
*記事中の価格は全て税込です。
クローズドシェルのメリット
今回特集したモデルは全てクローズドシェル(ポップアップではない)を架装している。軽キャブコンはポップアップルーフモデルとクローズドシェルモデルで大きく2種類に分けられるが、軽8ナンバーは多くがポップアップルーフ、クローズドシェルモデルはほとんどが普通車8ナンバーモデルとなる。
もちろんどちらも一長一短があり、どちらが良いというものではないが、クローズドシェルモデルの長所と短所を挙げてみる。
長所
・本格的なシェル構造
・断熱性、防音性に優れる
・いちいちポップアップする必要が無い
・天候に影響されない
・結果として車幅が広いので、居住性に優れる
・常にルーフが高いので、オーバーヘッド収納が設置できる
・シェルに可動部分が無いので、構造的に堅牢
短所
・高さ制限のある駐車場に入れない
・常に高さを気にしながら運転する必要がある
・ポップアップルーフを全開にして得られる爽快さは得られない
・結果として車幅が広いので、税金面で高くなる
なお、ポップアップルーフは道の駅やPA/SAで「心理的に」ルーフを上げ難い、という声があるが、この点においては、クローズドシェルのキャブコンは最初から目立っているので、「迷わなくてよい」というのはメリットかもしれない。
目 次
KANOA(カノア):キャンピングカーオーゼット
キャンピングカーオーゼットは東京都あきる野市を拠点とするビルダーで、「ラミータ」などのハイエースベースのバンコンをラインアップしている。カノアは同社では初の軽キャンパーとなる。
カノアは2021年6月に開催された東京キャンピングカーショーで発表された最新モデルで、現代のモデルらしく、最新の装備が用意されている。
しかし装備の前にまず目に入るのが、間接照明を使ったお洒落なインテリア。軽キャンパーはどうしてもコスト優先になるところがあり、今まであまりインテリアに重点を置いたモデルは無かったが、カノアは洗練されたインテリアを持つ数少ない軽キャンパーの一つだ。
カノアのインテリア
また装備面では、本格的な46L横開き式冷凍冷蔵庫をオプション設定している。ハイエース以上のモデルでは珍しくはないが、軽キャブコンで横開き式冷蔵庫を装備できるモデルは今のところカノアだけだ。
更にエアコンとリチウムイオンバッテリーがオプション設定されており、実用的な冷房が可能。冷房は軽キャブコンでも搭載できるモデルが増えてきたが、リチウムイオンバッテリーが搭載できるモデルはまだ数えるほどしかない。
運転しやすいコンパクトな車体ながら、洗練されたインテリアと充実した先進の装備を望むユーザーが待っていたモデルだ。
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ディアラジュニア:マックレー
マックレーは京都市左京区に本拠を置くビルダーで、カムロードベースの大型キャブコンから軽キャンパーまで幅広く製作している。その技術力で製作したディアラジュニアは、早くからエアコンを搭載できるモデルとして注目されていた。
同社の考え方の一つに発電機があり、ディアラジュニアにも搭載できるようになっている。ビデオの展示車では単に収納してあるだけだが、排気処理も可能だ。発電機があれば、どこにいても電気の心配は無い。エアコンも問題なく運転できる。
ただしもちろん場所的に使えない場合もあるので、うまくスケジュールを考えて発電機を使う必要がある。例えば、昼間に使用しても問題ない状況で発電機からサブバッテリーに充電し、夜はサブバッテリーの電気を使うといった使い方が考えられる。
ディアラジュニアのインテリア
ディアラジュニアのレイアウトがユニークなのも特筆できる。ギャレーは最後部に置かれており、そのためベッド幅を車幅いっぱいに使用できる。ギャレーコンソールには冷蔵庫や電子レンジの搭載も想定されており、長期旅にも対応できる。
ディアラジュニアには「リミテッドパッケージ」というフル装備バージョンが用意されており、これには、運転席助手席レカロシート、200Ahリチウムイオンバッテリー、1500Wインバーター、ウインドウエアコン、15L上開き式冷蔵庫、電子レンジ、19インチテレビ、100Wソーラーパネルが標準装備される。
ウインドウはガラススライド式で、近年ではスタンダードになりつつあるシェードと網戸が内蔵されたアクリルウインドウではないが、エアコンやリチウムイオンバッテリーなど先端の設備にも対応している。
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ラ・クーン:オートショップアズマ
オートショップアズマは埼玉県越谷市に本拠を置くビルダーで、タウンエースベースのライトキャブコンと軽キャブコンをラインアップする。コンパクトモデルのみを製作しているが、NV200バネットベースの「ガルボ」を除き全てキャブコンで、コンパクトなキャブコンを製作する老舗だ。
ラ・クーンは普通車8ナンバーの軽キャブコンだが、軽8ナンバーの「K-ai(ケイ・アイ)」と双璧の軽キャブコンラインアップを誇る。またラ・クーンⅡも加わり、更に選択肢を広げた。
ラ・クーンは普通車8ナンバー登録の軽キャブコンとしては早期に発表され、ベース車がTypeDと名付けられたダイハツ ハイゼットトラックベースも加わった。FRP一体成型のシェルには、前方にウインドウ風(ウインドウではない)のデザインも施されている。
ラ・クーンのインテリア(対座タイプ)
レイアウトはロングシートタイプと対座タイプが選択でき、対座タイプの2列目シートは前向き乗車も可能。従って対座タイプはファミリーにも対応できる。一方ロングシートタイプは二人旅に向いたレイアウトだ。
ただし装備面はシンプルだ。冷蔵庫はポータブルタイプを持ち込み、電子レンジの設定は無い。またエアコンやリチウムイオンバッテリーの設置も発表されていない。
なお、ウインドウはシェードや網戸が組み込まれたアクリルタイプではなく、ガラスの引き戸となる。この点はラ・クーンⅡで改善されている。
ラ・クーンⅡ:オートショップアズマ
ラ・クーンとラ・クーンⅡの大きな相違点は、シェルがFRPパネルになったこと。一体成型とどちらが良いというものではないが、ラ・クーンⅡでは「走行性能・燃費・居住性全てが向上」とあるので、軽量化も図られたようだ。
ラ・クーンのトレードマークともいうべきフロントの窓風デザインは無くなり、ラ・クーンに比べ少し個性が薄れた感はある。しかし、ダイネットサイドのウインドウは大きなアクリルウインドウになり、シェードや網戸も組み込まれた。
ラ・クーンⅡのインテリア(ロングシートタイプ)
レイアウトはラ・クーンと同様、ロングシートタイプと対座タイプが選択できる。ギャレーやオーバーヘッド収納などの配置もラ・クーンと変わらないが、インテリアが洗練された感じだ。ただしラ・クーンでも同様のインテリアにできるかもしれないので、ラ・クーンを考えている方はビルダーにご確認いただきたい。
ただ、装備面はラ・クーンと同様で充実しているとは言い難い。冷蔵庫はポータブルタイプを持ち込み、電子レンジの設定は無い。またエアコンとリチウムイオンバッテリーの設置も想定されていない。
ただし、価格的には他のモデルより安価だ。価格を重視する場合は有力な選択肢になる。
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リゾートデュオ バンビーノ オハナ:stage21
stage21は神奈川県相模原市を拠点とするビルダーで、軽バンコンから「リゾートデュオバンビーノプラス」といったタウンエースベースのライトキャブコンまで、コンパクトモデルをラインアップしている。
リゾートデュオバンビーノ オハナは2020年に発表された軽キャブコン。従来まで「リゾートデュオバンビーノ」というポップアップルーフの軽8ナンバーキャブコンはあったが、リゾートデュオバンビーノ オハナは同社初のクローズドシェルのキャブコンとなる。
同社のモデルの特徴は、必要なアイテムがほぼ標準装備されていること。冷蔵庫、電子レンジはもちろん、カーナビや20型テレビも標準装備。電装系では、外部電源入力と充電機能、2000W正弦波インバーター、180W
x2のソーラーシステム、そして家庭用ウインドウエアコンと200Ahリチウムイオンバッテリーまでも全て標準装備だ。
リゾートデュオバンビーノ オハナのインテリア
各装備品のスペックを見ても、見せかけだけの標準装備ではなく、全て実用性を重視した機材であることも注意いただきたい。
レイアウトはコの字型ロングシートダイネットとギャレーコンソールの組み合わせ。前部にシンクと電子レンジをビルトインしたコンソールと、左サイドに冷蔵庫を収納するコンソールに分かれている。
収納はシート下が大きな収納スペースになっているが、オーバーヘッド収納は後部と右側前方のみにとどまっているのが残念なところ。
価格は当然、エアコンなどが標準装備されていない他モデルに比べると高価だが、エアコンやリチウムイオンバッテリーをオプションで追加した他モデルとの比較ではむしろ安価だ。
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レジストロ:MYSミスティック
MYSミスティックは山梨県甲斐市を本拠にするビルダーで、何よりも「Jキャビン」シリーズに代表されるトラックキャンパーのビルダーとして有名。
軽トラックに積載できるトラックキャンパーの「Jキャビンミニ」、ポップアップルーフを追加した「ミニポップ」、そしてミニポップの形態でキャブをベース車に固定したキャブコン「ミニポップBee」など独特のラインアップを誇る。
レジストロは、これらのデザインコンセプトを引き継ぎ、普通車8ナンバー枠で制作された軽キャブコンで、同社独特の波型アルミパネルを採用し、大きなバンクを持ったエクステリアは今回取り上げたモデルの中では異色だ。
ダイネットはL字型ロングシートとギャレーコンソールの組み合わせで、対座ダイネットスタイルも選択できる。インテリアは板張りをイメージした壁紙で、山小屋の雰囲気を出している。
レジストロのインテリア
レジストロの室内は非常に広く見えるが、それは大きなバンクベッドも影響している。外観からも分かるように、フロントまで同じ高さで伸びたルーフにより、バンクベッドは極めて広い。
バンクベッドは手前にスライドさせると更に広くなる。ただし大人も十分就寝できるように見えるが、子供用とされている。
同社のモデルはトラックキャンパーを含め、以前から軽キャンパーでも小型クーラーを搭載するソリューションが用意されていた。レジストロにも「快適OPパック(377,000円)」として、FFヒーター、スポットクーラー、ファンタスティックファンのセットが用意されている。
ただし、リチウムイオンバッテリーはオプション設定が無く、ツインバッテリーに留まっている。上記のスポットクーラーの仕様が分からないが、実用的な冷房は制限があるかもしれない。
また、冷蔵庫はポータブル冷蔵庫の持ち込み、電子レンジは12V仕様のものをギャレーコンソール上に置くことが想定されており、この点でも多少見劣りがする。また独特のルーフ形状の影響か、オーバーヘッド収納は後部のみの設置に留まっている。
しかし、独創的なフォルムと広い室内は、他と異なる軽キャンパーを求めるユーザーには人気が高い。
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軽8ナンバーキャブコンとの比較
先にも書いたが軽8ナンバーキャブコンのほとんどはポップアップルーフを持つ。対して普通車8ナンバー軽キャブコンはクローズドシェルのモデルがほとんどだ。
車体の大きさは、普通車8ナンバー軽キャブコンの方が当然大きい。例えばオートショップアズマの軽8ナンバーキャブコン「K-ai」は全長 3,390mm、全幅
1,470mm、全高 1,990mmで、「ラ・クーン」は全長3,700mm、全幅1,720mm、全高2,500mmだ。
オートショップアズマのK-ai
また、stage21の「リゾートデュオバンビーノ」は全長3,395mm、全幅1,475mm、全高1,980mmに対して、「リゾートデュオバンビーノオハナ」は全長3,830mm、全幅1,820mm、全高2,430mmだ。いずれも車幅が広くなるところが気になるかもしれない。
stage21のリゾートデュオバンビーノ
しかし天候に影響されない環境や断熱と防音に優れたシェルはやはり安心感がある。常にハイルーフなのでオーバーヘッド収納が設置できるのもメリットだ。
ただし、クローズドシェルは常に高さに注意する必要がある。高さ制限のある駐車場に駐車する機会が多い場合はポップアップルーフの方が便利だ。
タウンエースキャブコンとの比較
軽キャブコンでも普通車8ナンバーなら、動力性能に余裕があるタウンエースベースのライトキャブコンの方が良いのでは、という考え方もある。そこで、タウンエースベースでクローズドシェルを持ち、比較的安価なモデルであるAtoZの「アレン」と比較してみる。
アレンの室内
まずアレンの車体の大きさは全長4620mm、全幅1880mm、全高2500mmだ。これは4m未満に収まっている軽キャブコンより1m程度長くなる。また車幅も広くなり、1880mmというのはハイエースのワイドボディと同じだ。軽キャブコンがかなりコンパクトで運転しやすそうなことが分かる。
室内の余裕から、後部には常設2段ベッドを持つことができ、ダイネットも展開すると3名が就寝できる。更にバンクベッドで子供2名が就寝できる。常設ベッドを設置できるのは大きな違いだ。
また、もう一つの大きな違いは、トイレルームを設置できること。アレンはトイレルームを持たないが、オートショップアズマの「フィール」はトイレルームを持つ。軽キャブコンではトイレルームが無いため、夜中にトイレに行きたくなった場合は車外に出る必要があった。しかし、トイレルームがあればその必要は無い。
税金面を含めたコスト比較
価格的には、例えばstage21のリゾートデュオバンビーノオハナは410万円~、軽8ナンバーのリゾートデュオバンビーノは327万円〜で、83万円の差だ。ただしリゾートデュオバンビーノオハナにはクーラーとリチウムイオンバッテリーが標準装備されるので50万円程度は差し引く必要がある。
オートショップアズマのラ・クーンⅡは313万円~、軽8ナンバーのK-aiは289万円~で24万円の差だ。
またタウンエースベースのアレンは446万円~、フィールは494万円~なので、エアコンとリチウムイオンバッテリーを含めたフル装備のリゾートデュオバンビーノオハナ(410万円~)よりも高価だ。
自動車税は普通車8ナンバー軽キャブコンが23,600円に対し、軽8ナンバーキャブコンの自動車税はたった5,000円なので、普通車8ナンバー軽キャブコンは18,600円も高価になる。また、タウンエースキャブコンは27,600円で普通車8ナンバー軽キャブコンより4,000円高価。
重量税(2年)は普通車8ナンバー軽キャブコンが1トン以下で16,400円なのに対し、軽8ナンバーの重量税(2年)は6,600円なので、普通車8ナンバー軽キャブコンは9,800円高価になる。タウンエースキャブコンは2トン以下で32,800円で16,400円高価だ。
自賠責保険(24か月)は普通車8ナンバー軽キャブコンとタウンエースキャブコンはどちらも30,210円。軽8ナンバーは15,190円なので、普通車8ナンバーは軽8ナンバーに比べて15,020円高価になる。
すなわち、税金と保険だけなら、普通車8ナンバー軽キャブコンは年間46,905円、軽8ナンバーキャブコンは15,895円、タウンエースキャブコンは59,105円となる。
軽8ナンバー キャブコン |
普通車8ナンバー 軽キャブコン |
タウンエース キャブコン | |
---|---|---|---|
自動車税 | 5,000円 | 23,600円 | 27,600円 |
重量税(2年) | 6,600円 | 16,400円 | 32,800円 |
自賠責保険(2年) | 15,190円 | 30,210円 | 30,210円 |
計(年間) | 15,895円 | 46,905円 | 59,105円 |
まとめ
普通車8ナンバー軽キャブコンと軽8ナンバーキャブコンの車両価格差は、上記の通りビルダーによって異なるので一概に言えないが、大体20万円~30万円の差だ。税金+自賠責の差は年間31,000円程度高くなる。
この価格差でより広い室内を手に入れる価値があるかどうかの判断になる。もちろんこれは個人の判断によるが、軽ベースで普通車8ナンバー登録の存在意義もお分かりいただけると思う。
今回比較したモデルの中では、やはりカノアが目を引く。ただし価格もそれなりに高価だ。エアコンシステム(66万円)を装備すると442万円~になり、これはエアコンを標準装備するリゾートデュオバンビーノオハナより高価になる。更にインバータ、ソーラーシステム、ナビもリゾートデュオバンビーノオハナには標準装備されているので更に差は開く。
従って、最高のものを求めるユーザーにはカノア、フル装備をできるだけ安価に求めるならリゾートデュオバンビーノオハナかディアラジュニア、個性的なモデルならレジストロ、価格重視ならラ・クーン/Ⅱがお勧めとなる。