ZERO(ゼロ)はOMC(オーエムシー)が製作する、ハイエース標準ボディ標準ルーフをベース車にしたバンコンキャンピングカー。
同社は「銀河」や「北斗対座モデル」と言ったハイエースベースのバンコンを多数ラインアップするバンコンビルダー。
このZEROは2020年に発表されたモデルで、2023年のジャパンキャンピングカーショーでリニューアルされ、発表された。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
ハイエース標準ボディ標準ルーフをベース車にしたバン・コンバージョン キャンピングカー。ハイエースの最も小さいボディに、縦置き2段ベッド、対座ダイネット、ギャレー、横開き式冷蔵庫、電子レンジ、クーラー、簡易個室を装備できる。
一件詰め込みすぎのように見えるが、これは災害時の避難場所としても考えられているため。標準ルーフにしたのは、災害時の街中でも機動性を発揮できるため。充実した装備は、災害時に車内で数日暮らすにはどれも欠かせない。
2023年モデルでは本格的な車載用セパレートクーラー(CoolStar)を採用。夏場の実用性が高まった。また旧モデルでは前部にあった冷蔵庫が後部に統合、調理もしやすくなった。リチウムイオンバッテリーやソーラーシステムもオプションで設置できる。
もちろん災害時だけではなく、日常用途や通常のキャンピングカーとしても活用できる。災害対策を兼ねたファーストカーとして注目の1台と言える。
アピールポイント
・災害時の避難場所としても使える充実装備
・日常にも使えるコンパクトなボディサイズ
・ハイグレードのスーパーGLがベース車
・ベッド展開が不要な常設縦置き2段ベッド
・ベッドにもなる2人対座ダイネット
・ギャレー、冷蔵庫、電子レンジを標準装備
・リチウムイオンバッテリーとソーラーシステムをオプションで設置可能
・実用的な車載用セパレートクーラーをオプション設定
・トイレルームにもなる簡易個室
・ラップポン設置可能
ベース車とエクステリア
ZEROのエクステリア
ベース車はハイエース標準ボディ標準ルーフ。スーパーGLなので、運転席周りは乗用車並みに高い質感になっている。なお、ダークプライムⅡはオプション。
標準ルーフなので高さ制限のある駐車場へも入れる場合が多く、市街地での取り回しが楽。またボディ外側への架装は無く、見た目は通常のハイエースと同じなので、目立つこともない。
災害時の避難所などへキャンピングカー然としたキャブコンで行くのは気が引けるが、これならそのようなことは無い。
インテリア
家具色やシート地はを選択できる
展示車のインテリアカラーはベージュ系を基本としたものだったが、同社のモデルは家具色やシート地を選択できるので、ZEROも同様と思われる。展示車にはオプションのビニールレザーシート地が採用されていた。
2段ベッドがあるのでどうしても狭く感じるが、このサイズのボディで常設ベッドを備えているメリットもまた特筆できる。
レイアウト
後部のレイアウト
前部に縦置き2段ベッドと2名対座ダイネット、後部にギャレーと冷蔵庫が収納されたキャビネットのレイアウト。旧モデルでは、冷蔵庫のキャビネットが前部にあったので、何かまとまりのない感じだったが、新型では後部に集約され、すっきりしたレイアウトになった。
2列目に単座のマルチモードシートがあり、これを前向きにすると、3点式シートベルトを着用して前向き乗車でき、前向きに3名が乗車できる。ベンチシートにも3名乗車できるので、乗車定員は6名。
また、就寝定員は2段ベッドとダイネット展開ベッドで、計3名となっている。災害時のような緊急事態では別だが、一般使用時は3名で使用するのは厳しい。2名と小さな子供1名が限界だろう。
ダイネット
下段ベッドがベンチシートになる
2列目シートを後ろ向きにすると、3列目の簡易シートとで2名対座のダイネットを形成する。また、上段ベッドを背もたれにすると下段ベッドがベンチシートになるので、コの字型のダイネットになり、大勢でテーブルを囲むことができる。
対座ダイネットを利用したリクライニングチェア(写真はnarrow銀河)
対座ダイネットは一人用のリクライニングチェアにもなる。長時間車内で過ごす場合、足を伸ばしてリラックスできるかどうかは非常に重要なポイントだ。
ベッド
ZEROの縦置き2段ベッド
縦置き2段ベッドの大きさは、上段が1830x650mm、下段が1830x700mm。家庭用のシングルベッドの幅は970mmなのでそこまでは広くないが、キャンピングカーのシングルベッドの幅としては平均的だ。
ダイネットを展開したダイネットベッド
ダイネットを展開すると、ここでも大人が1名就寝できる。ただし、ベッドサイズは1830x500mm。幅が十分ではないので、補助ベッドと考えた方が良いだろう。
ギャレー
実用的ななギャレー
ギャレーは後部左側に配置される。天板にはシンクとフォーセットが設置されている。シンクは実用的な大きさのもので、十分に調理ができる。コンロは、ポータブルカセットコンロを使用することになる。
ただし、標準ルーフなので立ち上がることはできない。中腰か椅子に座って調理することになる。クーラーを設置しない場合は、床下収納の底に立つと多少立ち上がれるが、あまり現実的ではないだろう。
各10Lの給排水タンク
ギャレーキャビネットの下には、各10Lの給排水タンクが収納されている。リアゲートを開けて車外から直接出し入れできる。
冷蔵庫/電子レンジ
40L横開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は40L横開き式が、後部右側のキャビネットに標準装備されている。冷凍室があるので、製氷や冷凍食品の保冷も可能だ。限りあるスペースながら冷凍と冷蔵が同時にできる本格的な横開き式冷蔵庫を採用しているのは嬉しい。
電子レンジも標準装備される
電子レンジは冷蔵庫のキャビネットの上に設置されている。家庭用の電子レンジで、本格的に使える。なお、1500Wインバーターはオプションなので、外部100V電源が取れない場合、サブバッテリーで使用するためにはインバーターを装備する必要がある。
多目的ルーム
ポータブルトイレを置くスペースも用意
ZEROに独立した多目的ルームは無いが、後部はカーテンで仕切ると簡易的な個室になる。ポータブルトイレを置くスペースも用意されているので、トイレルームとして実用的に使用できる。ラップポンも電源を含めてオプションで用意されている。
ハイエース標準ボディ標準ルーフで完全な個室を持つモデルはないが、標準ボディハイルーフなら、同社のnarrow銀河とロータスRVのラティーナがある。
災害時で困ることのひとつはトイレだが、このように専用のトイレがあると助かる。特にラップポンなら後処理が不要なので、災害時に限らずお勧めしたい。
収納
下段ベッド下の収納スペース
下段ベッド下は大きな収納スペースとなっている。ベッドボードは重く、ベッド上に寝具などが置いてあるとアクセスし難いのが難点。またロック式のヒンジが欲しいところだ。
3列目シート下の収納
3列目シート下も収納になっている。こちらのシート座は重くないので、比較的楽に開けることができる。
ギャレーキャビネットの収納
ギャレーキャビネットにも収納が設けられている。食器や食料品はベッド下の収納に入れておきたくないので、この収納は有用だ。セパレーターなどを使うと、カトラリーや小さな食器が効率よく収納できる。
空調
車載用セパレートクーラーをオプション設定
2023年モデルで最も進化したのは、旧モデルのスポットクーラーに代え、車載用セパレートクーラー(CoolStar)を採用した点。ただし、これはオプションとなっている。また、FFヒーターもオプションとなった。ベンチレーターはオプション設定が無いが、装備できるだろう。
床下収納に収納される室外機
室外機は床下収納に収納される。家庭用セパレートエアコンに比べて室外機がコンパクトなので、このような設置方法が可能だ。
テレビ/ナビ
ナビはオプション設定されているが、テレビはオプションにない。しかし限られたスペースに無理にテレビを設置するより、スマートフォンやタブレットを使用する方が現実的だろう。
電装系
旧モデルではリチウムイオンバッテリーや1500Wインバーター、ソーラーシステムまで標準装備だったが、新型ではこれらはオプションとなった。標準では105Ahのディープサイクルバッテリーが1個と昇圧式走行充電、外部100V電源入力と充電機能が装備される。
インバーターは350Wと1500Wが選択できるが、電子レンジが標準装備されているので、350Wを選択する理由はない。ソーラーシステムは薄型の215Wがオプションで設置できる。
価格(2023年4月現在:千円台切り上げ:税込)
スーパーGL 2WD/6ATで580万円~、ディーゼル2WD/6ATが653万円~、ディーゼル 4WD/6ATが688万円~となっている。
付けておきたい必需オプションは、FFヒーター(254,800円)、1500Wインバーター(価格不明)が挙げられる。
災害時の避難場所として、夏場も含めて車内で過ごすことを考えると、エアコンとリチウムイオンバッテリー(1,275,000円)、ソーラーシステム(価格不明)も装備しておきたい。
他モデル
レクビィのソラン
ハイエース標準ボディ標準ルーフをベース車にして、エアコン(クーラー)、ギャレー、冷蔵庫、電子レンジ、が装備できるモデルを探すと、レクビィのソラン(737万円~:家庭用エアコンとリチウムイオンバッテリー標準装備)、キャンピングカー長野のスペースキャンパーCOOLs(現在価格不明:一体型クーラー、200Ahリチウムイオンバッテリー標準装備)、ケイワークスのオーロラエクスクルーシブ5star(709万円~:家庭用ポータブルクーラー、計300Ahリチウムイオンバッテリー標準装備)、が挙げられる。
ZEROは後部に簡易的な個室とポータブルトイレを置くスペースが用意されているのが、上記の他モデルと大きく異なる点。災害時のトイレ事情まで考慮されたモデルはZEROのみだ。
レクビィのイゾラ
なお、参考までに、ベース車が少し大きくなるが、トイレルームに加え、温水シャワーまで装備されたモデルがある。レクビィのイゾラ Superior +A/C仕様(818万円~)だ。このモデルは3名が就寝でき、ギャレー、横開き式冷蔵庫、電子レンジ、家庭用エアコン、FFヒーター、リチウムイオンバッテリー、温水シャワーを標準装備する。当然価格は高価になるが、災害時のシェルターとして更に理想的だ。
まとめ
2020年に発表された時のZEROは、FFヒーターこそオプションだったが、ギャレー、冷蔵庫、電子レンジ、ラップポントイレ、リチウムイオンバッテリー、1500Wインバーター、ソーラーシステム、ポータブルクーラーが全て標準装備され、災害時のシェルターのコンセプトに力を入れて打ち出された印象があった。
2023年モデルでは、実用的なクーラーがオプションで設置できるようになったが、ラップポントイレ、リチウムイオンバッテリー、1500Wインバーター、ソーラーシステムはオプションとなった。
3年前から比べるとベース車をはじめ多くのものが値上げされたので、今ではこれらすべてを標準装備にすることができなくなったと思われるが、災害時のシェルターという当初のコンセプトは多少薄れつつあるようにも感じられる。
ベース車にスーパーGLを標準にしていることからも、どちらかというと充実した装備にもできるファーストカーという色合いが強くなった。災害時のシェルターがコンセプトならスーパーGLは重要ではない。
narrow銀河の室内
クルマ旅が中心で車高にこだわらないなら、narrow銀河の方が向いている。ZEROはどうしてもノーマルルーフが必要な場合と、スーパーGLの装備が欲しい場合の選択肢となる。(下の比較表参照)
関連記事