Zeroはオーエムシーが製作する、ハイエース標準ボディ標準ルーフをベース車にしたバンコンキャンピングカー。同社は主にハイエースベースのバンコンを製作しているが、Zeroはジャパンキャンピングカーショー2020で発表されたニューモデル。
キャンピングカーが災害時に有用ということは言われて久しいが、災害時を意識して作られたキャンピングカーは意外に少なかった。Zeroはクルマ旅にはもちろん、災害時にも必要な装備をほとんど標準装備にした今までにないキャンピングカーだ。

縦置き2段ベッドを採用したレイアウト
コンセプト:災害時でも機敏に動き回れるようにハイエース標準ボディを選択。高さ制限のある駐車場でも駐車できるようにハイルーフにはしていない。足を伸ばして就寝できるベッドはもちろん、炊事のためのギャレー、太陽光で電気が作れるソーラーシステム、電気の心配が少ないリチウムイオンバッテリー、そして処理が簡単なトイレ「ラップポン」まで標準装備している。
エクステリア:ハイエースの外観そのままで、目立つことは無い。災害時にキャンピングカー然としたクルマが走っていると違和感があるかもしれないが、Zeroに乗っている分には全く気にすることはないだろう。

ラップポンを標準装備
レイアウト:基本的には2名対座のダイネットと縦置き2段ベッドの構成。2段ベッドの前部に冷蔵庫が収納された家具があり、最後部にはギャレーが配置されている。また、ベッドの後部にはラップポンが置かれている。
一応カーテンはあるが、実際に用を足す場合は多少においが気になるかもしれないので、小さな換気扇があると良かったかもしれない。しかし災害時にこのトイレがあると非常に心強い。

2名が対座できるダイネット
ダイネット:2名対座のダイネットだが、2段ベッドの上段ベッドボードが下段の背もたれになり、ロングシートが出来上がる。従って、ファミリーでテーブルを囲むことができる。

3名が就寝できるベッド
ベッド:2段ベッドが常設されており、2名で使うならダイネット展開の労力無しに就寝することができる。3名の場合はダイネットを展開するが、ダイネットベッドと下段ベッドの間を埋めるマットがあると、子供ならもう1名就寝できるのだが。

電子レンジが標準装備されたギャレー
ギャレー:最後部に設置されたギャレーコンソール上部にはシンクと蛇口が埋め込まれている。シンクの下には各10Lの給排水タンクが収納されている。これだけのギャレーでも災害時に水が使えるのは非常に助かる。

冷蔵庫/電子レンジ:40Lの横開き冷蔵庫と電子レンジも標準装備。冷蔵庫で食材をキープして、電子レンジで手軽に調理できる。冷凍庫付きなので冷凍食品も保存しておける。限りある室内ながら上蓋式冷蔵庫で妥協せず、本格的な横開き冷蔵庫が搭載されているのは嬉しい。上蓋式冷蔵庫だと、製氷と冷蔵が同時にできない。
収納:さすがに大きなバッグのような荷物を収納しておけるスペースは無いが、昼間はベッド上に、就寝時はフロントシートや後部に移動すると良いだろう。
後部ギャレー前には床下収納庫も用意されている。これはギャレー前の高さ1600mmを確保して8ナンバー登録するためのものだが、もちろん収納庫として使える。野菜などの食材を収納しておくのも良いだろう。

スポットクーラー「ゼロブリーズ」を標準装備
空調:FFヒーターはオプション。ここまで標準装備が充実しているなら、ほぼ必需品のFFヒーターも標準装備にして欲しかったところ。
冷房はポータブルクーラーが標準装備される。これはコイズミのスポットクーラー「ゼロブリーズ」という製品で、その名の通りスポット的に冷やすもの。車内全体が冷えることは期待しない方が良い。夜、寝る前に多少温度を下げるといった使い方になる。排気ダクトも繋がっている。
テレビ/ナビ:テレビはオプションで用意されている。ナビもオプション。テレビを設置するスペースが厳しいが、スマートフォンやタブレットでテレビを観ることができるので、特に問題ないかもしれない。

215Wのソーラーシステムも標準装備
電装系:特筆できるのは200Ahのリチウムイオンバッテリーが標準装備されること。実質的には100 Ahディープサイクルバッテリーの3~4本に相当する。また、215Wのソーラーシステムが標準装備されるので昼間は充電することができる。電気容量的には全く心配ないので、電子レンジや冷蔵庫、あるいはFFヒーターを実用的に使用することができる。
なお、1500Wのインバーターも標準装備されているので、電子レンジはバッテリーで使用できる。

価格:ガソリン2WDで557万円~。ハイエース標準ボディのバンコンは、ほとんどが300万円台であることを考えるとかなり高価だが、これだけの装備が標準なので仕方がないだろう。追加すべきオプションはFFヒーターくらいだ。
他車:これだけ実質的に災害時のことを考えたキャンピングカーは少ない。しかもハイエース標準ボディのバンコンとなると他には無い。更に、縦置き2段ベッドを持つ標準ボディベースのバンコンも他にはない。
まとめ:ZEROは災害時に「実質的」に使えるキャンピングカーとして考えられており、他にはないモデルだ。しかし、もちろんこれだけ装備が充実していれば、通常のクルマ旅なら何の不自由もない。あえて短所を探すとすれば、車内の狭さと圧迫感だろう。ポップアップルーフがあれば多少解消されると思われるが、更に高価になる。むしろ、日常用途に使え、クルマ旅はもちろん、災害時にはシェルターになるファーストカーと考えると良いだろう。
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