ナロー銀河はOMC(オーエムシー)が製作する、ハイエース標準ボディハイルーフをベース車に使用したバンコンキャンピングカー。同社は多くのバンコンモデルをラインアップしているが、ナロー銀河は同社の人気モデル「銀河」をスケールダウンしたレイアウトを持つ。
ナロー銀河は、2019年2月のジャパンキャンピングカーショーで発表されたモデルで、当初から家庭用エアコンがオプション設定されていた。しかし、これを設置した場合、冷蔵庫が15Lの引き出し式となってしまうのが残念なところだった。(以前の記事はこちら)
2021年版の新しいナロー銀河では12Vの車載用クーラー「CoolStar」を採用。本格的なクーラーながら小型なのでスペースに余裕ができ、40Lの横開き式冷蔵庫の搭載が可能になった。コンパクトなハイエースにトイレルームも備えており、装備重視のユーザーには理想に近い1台だ。
(記事中の価格は全て税別です)
コンセプト
同社のハイエーススーパーロングベースの「銀河」のレイアウトを、標準ボディハイルーフに凝縮したモデル。2名対座ダイネットと2段ベッドの二人旅仕様ながら、4名が前向き乗車でき、3名が就寝できるので、3名までのファミリーにも対応できる。
エクステリア
ナロー銀河のエクステリア
ベース車はハイエース標準ボディハイルーフ。外観への架装は特に無いので、外観は通常のハイエースと変わらない。ただし、エアコンオプションを装着すると、室外機の排気口がボディ右側に架装される。
インテリア
インテリアは様々な素材や色を選択できる
展示車は写真のようなインテリアだが、同社は極めて柔軟にオーダー対応できるため、好みの家具色やシート生地が選択できる。
レイアウト
「銀河」のレイアウトを凝縮
前部にギャレー、後部に2名対座ダイネットと2段ベッド、そして最後部にトイレルームを配置する。
このレイアウトは二人旅の場合は、二人用のダイネットと常設2段ベッドで、ベッド展開の必要が無い。また2列目シートを前向きにすると4名が前向き乗車してドライブでき、ダイネットを展開すると3名が就寝できる。すなわち、二人旅にもファミリーにも無理なく対応できるレイアウトだ。
なお、就寝人数が3名なので、ファミリーと言っても3名までだが、小さい子供なら下段ベッドで2名就寝することは可能だろう。また3列目シートはリクライニングが無く、あまり座り心地が良くないため、長距離ドライブには向かない。
ダイネット
2名対座にロングシートを加えたダイネット
二人旅の場合は単座の対座ダイネットで寛ぐことができる。ファミリーの場合は上段ベッドのベッドボードを下段ベッドのシートバックにすることにより、全員でテーブルを囲める。
一人用カウチソファにもなる(写真:オーエムシー)
なお、2列目シートを後ろ向きにして3列目をフラットにすると、一人用のカウチソファになる。車内で寛ぐには最適のモードだ。
ベッド
2段ベッドには各段に読書灯が備わる
2段ベッドの大きさは、上段が1850x650mm、下段が1850x700mm。家庭用ならセミシングルベッド(70mm幅)に相当する。必要最小限の幅ではあるが、寝返りは十分できる。
また、どちらのベッドにも読書灯が用意されており、パートナーが就寝しても本を読んだりプライベートな時間を楽しむことができる。
フルベッド状態では下段に3名就寝できる
また、ダイネットを展開してできるベッドは1850x500mmの幅で、こちらはキャンピングカー要件を辛うじて満たす大きさ。同社ではこれは補助ベッドの位置付けにしている。
ギャレー
前面が広く取られたギャレーセクション
ギャレーコンソールはエントランスの対面に置かれており、ギャレー前のスペースは十分広い。コンロはポータブルカセットコンロが標準装備されるが、使用する度にセットする必要がある。
ギャレーコンソール上面には比較的大き目のシンクがビルトインされており、中皿程度なら洗える大きさだ。また、調味料棚も用意されている。
シンクの下には各13Lの給排水タンクが収納されている。エントランスの前なので、タンクの出し入れは楽にできる。
冷蔵庫/電子レンジ
40L冷蔵庫と電子レンジが標準装備される
冷蔵庫は40L横開き式が標準装備される。従来のナロー銀河では家庭用エアコンを搭載すると冷蔵庫は15Lの引き出し式のものしか搭載できなかった。新しいナロー銀河では十分な容量と、冷蔵/製氷ができる冷蔵庫になった。
また電子レンジも標準装備される。100V仕様の家庭用のもので、パワーも十分あり調理時間も短くて済む。ただし、オプションのインバーターを搭載しないと、外部電源があるところでしか使えない。
ユーティリティールーム
ポータブルトイレは標準装備される。
最後部の扉を開けると、ユーティリティールームが出現する。ポータブルトイレが標準装備されているので、トイレルームとしてそのまま使用できる。このサイズのバンコンでトイレルームを持つモデルは極めて少なく、ナロー銀河のほかにはロータスRVセールスの「ラティーナ」があるくらいだ。
夜トイレに行くため車外に出るのは大変億劫だ。雨が降っていたり寒かったり、トイレが遠いところにある場合など、車内にトイレがあると大変助かる。特に女性や年配のユーザーにはありがたい仕様だ。
また、リアゲートを開けると車外からトイレのタンクを取り出すことができるので、処理をする場合も大変便利だ。
収納
3列目シート下の収納
3列目シートの下に収納スペースがある。またダイネットをベッドに展開時は、シートの間も収納スペースとして使える。
下段ベッドの奥の下の収納スペース
更に、下段ベッドの奥の下にも大きな収納スペースが用意されている。ベッドの奥まったところなので少しアクセスし難いかもしれないが、有用な収納スペースだ。なお、この収納には、リア車外からもアクセスできる。
左サイド上部
ただ残念ながら食器やカトラリーなど清潔なものを入れておけるオーバーヘッド収納やギャレーの引き出し収納が無い。折角のハイルーフなので、左サイド上部(ダイネットの上)のスペースにオーバーヘッド収納が欲しいところだ。
空調
12Vクーラー「CoolStar」がオプション設定されている
暖房はFFヒーターがオプション設定されている。また冷房オプションは、従来の家庭用エアコンに加え12Vクーラーの「CoolStar」が選択できるようになった。なお、従来の家庭用エアコンも選択できる。この場合は従来同様15Lの引き出し式冷蔵庫になる。
CoolStarは家庭用エアコンより小型なので、その分スペースに余裕ができ40L横開き冷蔵庫が設置できるようになった。室外機はギャレーコンソールの奥に設置されている。
エアコンの室外機はボディ右側に設置される
車外から見るとボディ右側に排気口が設けられているのが分かる。この位置も「銀河」と同じだが、室内機と室外機の距離を最短にできるという意味では最も理想的な位置だ。特にCoolStarは12Vで引き回すため大電流が流れ、その意味でも近い方が良い。
なお、ベンチレーターは標準装備される。
テレビ/ナビ
ナビセットがオプションで用意されているが、希望のナビを持ち込んで取り付けも可能だろう。テレビは19型テレビがオプション設定されている。ナビのテレビ映像を19型の画面で見られるようになる。
電装系
下段ベッド下に収納された電装系
105Ahのディープサイクルバッテリーが1個標準装備される。また走行充電と外部100V電源入力、および充電機能が標準装備される。更にエアコン装着時にリチウムイオンバッテリーが選択できる。
ただしインバーターはオプションで、350Wと1500W(正弦波)のものがオプション設定されている。しかし電子レンジが標準装備されているので、1500Wインバーターを選択するとサブバッテリーで電子レンジが使える。
電装系ではそのほか、200W(100W x2)のソーラーパネルがオプションで設置できる。
価格(2021年3月現在:千円台切り上げ:税別)
ガソリン 2WD/6AT特設車で436万円~。必要なオプションはFFヒーター(価格不明)、1500Wインバーター(147,000円)が挙げられる。
また予算が許せばエアコンは付けておきたい。エアコンが無いと、暑い夏場で結局出かけなくなり、折角購入したキャンピングカーが駐車場で眠ってしまうからだ。
エアコンは、CoolStar+ディープサイクルバッテリー3個、CoolStar+リチウムイオンバッテリー(200Ah)、家庭用エアコン+リチウムイオンバッテリー(200Ah)の3種類の組み合わせの選択肢がある。価格はそれぞれ、70万円、110万円、90万円となっている。
上記の選択肢では、やはりリチウムイオンバッテリーを選択したい。経年変化が少なく、効率よく使用できるからだ。容量は200Ahでも実用的に使える。ディープサイクルバッテリー3個で315Ahだが、効率を考えると200Ahのリチウムイオンバッテリーと同程度で、ディープサイクルバッテリーは経年変化で年々使える容量が減っていく。
またCoolStarと家庭用エアコンでは、バッテリーでの運転がメインならCoolStar、キャンプ場などに行く機会が多く外部100V電源が取れる場合が多いなら家庭用エアコンが適している。家庭用エアコンは100Vなのでバッテリーに負荷をかけることなく外部電源で直接運転できるからだ。
ただし家庭用エアコンの場合は冷蔵庫が15Lになってしまうことを考えると、いずれにしてもCoolStarの方がメリットが大きい。
他モデル
ハイエース標準ボディハイルーフのモデルは非常に多く存在するが、エアコンが選択できるのは、このナロー銀河のほか、ホワイトハウスのコンパスビッツハイルーフ(405万円~)とレクビィのプラスLVおよびプラスLV+1(426万円~)のみ。
コンセプトが似ているのはプラスLV+1だろう。これも二人旅だけでなく、2列目単座シートが前向きになり3人が前向き乗車できる。ただしベッドは異なり、プラスLV+1は2段ベッドではなく、ベッド展開が必要となる。
ただしプラスLV+1のベッド展開は比較的簡単で、2段ベッドが無い分室内は広々感がある。ここは好みの問題になるが、どちらも優れたモデルだ。
まとめ
まずは素晴らしいパッケージングと言える。もちろん、キャンピングカーの使い方は様々なので、全てのユーザーに適しているとは言わないが、このコンパクトなボディに、2段ベッド、対座ダイネット、ギャレー、横開き冷蔵庫、電子レンジ、エアコン、そしてトイレルームまでが装備されているのには感心する。
従来のナロー銀河はエアコンを装備すると冷蔵庫を妥協せざるを得なかったが、これが見事に解決され、本格的な横開き式冷蔵庫が標準装備され、しかもリチウムイオンバッテリーまでも用意されている。装備においてはほぼ死角はなくなったと言える。
ただあえて希望を言うとすれば、オーバーヘッド収納が欲しい。左サイドにはこれを付けるスペースがあるので、オプションでもよいので設定があれば選択肢が増える。食器や食料品、タオルなど清潔に保っておきたい荷物は、床に近い収納に入れておくのは避けたい。
なお同社にはハイエースワイドミドルをベース車にした「北斗対座モデル」もある。こちらもナロー銀河と似たレイアウトを持ち、ワイドボディなので更に車内スペースに余裕がある。もちろんエアコンをはじめ装備も充実している。
これでスーパーロングの「銀河」、ワイドミドルの「北斗対座モデル」、そしてこの「ナロー銀河」で各ボディサイズでこのレイアウトが選択できるようになった。強力なラインアップと言える。
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