Wiz(ウィズ) acモデルはアネックスが2022年ジャパンキャンピングカーショーで発表した、ハイエース標準ボディハイルーフをベース車に使用したバンコンキャンピングカー。
同社はリバティシリーズのフルサイズキャブコンと、ハイエースバンコン、NV200バネットベースのコンパクトバンコンをラインアップしている。
ウィズは従来から存在するモデルで、同社唯一の標準ボディハイルーフをベース車にしたバンコンモデル。二人旅仕様に割り切ったレイアウトのため、このサイズでもゆったりとした室内になっている。
今回は、このウィズとリコルソに新たにエアコンオプションが設定されacモデルと名付けられた。これにより、より快適なクルマ旅が期待できる。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
コンセプト
ハイエース標準ボディハイルーフをベース車にしたコンパクトなバンコンモデル。マルチモードシートを持たず、二人旅仕様に割り切ったレイアウトのため、余裕のある室内空間になっている。
更に今回エアコンをオプションで装備できるようになった。このサイズでエアコンを搭載するモデルはまだ多くないため、大きな利点となる。
アピールポイント
・コンパクトで運転しやすいボディサイズ
・二人旅に特化した余裕のある室内空間
・ギャレー、冷蔵庫、電子レンジを備え、クルマ旅にも対応
・ベンチシートのためベッド展開が楽
・多段階に調整できるリクライニング機構
・フルオープンできるスカイライトルーフ
・豊富な収納
・一体型エアコンを装備可能(OP)
・リチウムイオンバッテリーを装備可能(OP)
・80Wソーラーシステムを標準装備
エクステリア
ウィズのエクステリア
ベース車はハイエース標準ボディハイルーフ。全長と全幅はノアやヴォクシーと同等以下なので、スーパーの駐車場やコインパーキングにも問題なく駐車で得きる。また運転席が高いので、運転はむしろしやすい。
ただし、車高は2370mmあるので、立体駐車場にはもちろん入れないし、ほとんどの高さ制限のある駐車場にも入れない。また、一部の高架下を通過できない場合もある。更に、ドライブスルーなどでもひさしなどに接触しないよう常に注意する必要がある。
なお上の展示車はリアゲートの窓がアクリルウインドウになっている。オプションで架装でき、窓を跳ね上げて開くことができる。アクリルウインドウと言えば断熱効果を思い浮かべるが、これはむしろ換気が目的となっている。
インテリア
オプションのダークカラーインテリア
ウィズのインテリアは、このカテゴリーのモデルでは最も洗練されたもののひとつだ。家具やシートの仕上がりも良く、お洒落な室内になっている。
なお、展示車はオプションカラーのダーク色が採用されていた。標準色は下の写真のものだが、アイボリーホワイト系の配色で、明るい室内になっている。
標準色のインテリアカラー
レイアウト
ウィズはネーミングの通り、二人旅仕様のレイアウトとなっている。即ち、マルチモードシートは持たず、乗車定員は5名(DX+GLパッケージは6名)だが、前向き乗車は運転席と助手席のみ。
短距離のドライブなら横座りでも我慢できるが、クルマ旅では前向きシートでないと気分が悪くなる。いずれにせよ、就寝人数は2名なので、車中泊をする場合は2名しか乗車できない。
ダイネット
L字型のダイネット
ウィズのダイネットはL字型になっており、1名は横向き、もう1名は後部のシートに前向きに座りテーブルを囲むことができる。テーブルは大きく、2名なら余裕で食事ができる。
また、ベッドモードでもテーブルを立てることができ、ちゃぶ台スタイルで寛ぐことができる。
多段階にリクライニングできる最後部のマット
そしてさらに、最後部のマットが多段階にリクライニングできるようになっており、二人で足を投げ出して寛ぐことができる。多くのモデルではダイネットで「座る」ことは考えられていても「寛ぐ」ことまで考えられていないので、ウィズのこのコンセプトは真にユーザーの使い勝手を考えたものだ。
ベッド
家庭用ダブルベッドサイズのベッドモード
ベッドモードへの展開はいたって簡単で、シートバックをベッドマットとしてはめ込むだけで良い。テーブルは跳ね上げてロックするだけでよく、どこかへ移動する必要もない。即ちマルチモードシートのように、就寝前に一仕事する必要はない。
ベッドサイズは1900x1400mm。身長方向は十分に長いので長身のユーザーでも窮屈なことは無い。また1400mmの幅は、家庭用ではレギュラーダブルベッドに相当するので、2名でゆったり就寝できる。
ギャレー
エアコン搭載車のギャレーセクション
ギャレーまわりはエアコン搭載車と非搭載車で大きく異なる。ギャレーコンソールにエアコンが収納されるため、電子レンジがカウンターの上に乗る形になる。また電子レンジの下にあった引き出し収納と右側のボトル収納が無くなる。
エアコン搭載車の引き出し収納
更に、左側の縦長の収納は網棚ではなく、下側の引き出しと上側のカトラリーおよび引き出し収納に変更される。
エアコン非搭載車のギャレーセクション
ウィズの大きな特徴だったギャレーコンソールの収納が縮小されるのは残念だが、クーラーの設置スペースが他にないことを考えると、最善の策なのだろう。
各10Lの給排水タンク
なお、給排水タンクは各10Lで、エントランス近くにあり、車外から直接出し入れすることができる。10Lなのでそれほど重くなく、給排水は比較的楽に行うことができる。
冷蔵庫/電子レンジ
30L引き出し式冷蔵庫
冷蔵庫は30L引き出し式が、左側シート下のエントランス横に標準装備されている。冷蔵庫はクーラーが設置されても影響を受けれことは無く標準仕様のままだが、一般的な40Lに比べると、多少物足りない感じはする。
また、冷凍や製氷ができないのも少し残念な点ではある。この冷蔵庫の代わりに大きめのポータブル冷蔵庫を設置するというようなことができればよいのだが。
電子レンジも標準装備される
また電子レンジも標準装備される。家庭用100V仕様のもので、1500Wインバーターも標準装備されるので、外部電源があるところではもちろん、無いところでもサブバッテリーで駆動することができる。
多目的ルーム
ウィズに多目的ルームは無いが、ポータブルトイレを積んでおくことはできる。後部ベッドマット下に収納しておくと、普段目に入らない。
ただし一人なら問題ないが、二人旅の場合は多少工夫が必要だ。車内トイレが必要な場合は、夜中や雨が降っている場合が多い。このような場合に、一時的にでもパートナーに車外に出てもらうのは困難だ。さて、どうするかは各自お考えいただきたい。
収納
右側上部のオーバーヘッド収納
ウィズの収納は、このサイズのバンコンでは非常に充実している。ギャレー収納は先述の通りだが、右側上部には大きなオーバーヘッド収納が設置されている。大きな扉だが片手で開けることができ、もちろん開けた状態でホールドできる。
ベッドマットの下は大きな収納スペース
また反対側上部には、メッシュ地の網棚があり、薄いブランケットやちょっとした衣類などを収納しておける。またベンチシート下にも多少の収納スペースがある。さらに、ベッドモードにすれば、ベッドマットの下は大きな収納スペースになる。
空調
家庭用エアコンがオプション設定されている
暖房はFFヒーターが標準装備される。多くの他モデルではFFヒーターはオプション設定だが、ほぼ必需装備なので、標準装備されているのはありがたい。
また冷房は、家庭用一体型クーラーがオプション設定された。一体型クーラーとは言え、家庭用の100V仕様なので、冷房能力は十分実用的だ。
また、熱排気と水は床下から車外に排出されるように設置してあるが、冬場などクーラーが不要な季節では取り外しが可能となっている。
電源は、外部100Vかサブバッテリー、あるいは電装系の項で後述するポータブルバッテリーを使用することができる。クーラーを実用的な時間使用するためには、リチウムイオンバッテリーを搭載することをお勧めしたい。
その他特筆できるのは、スカイライトルーフが標準装備されること。これは透明のアクリルカバーにより、閉じた状態でも空を見上げることができ、フルオープンにすることもできる。開放感が得られるだけでなく、空調にも貢献する。
更に、スカイライトルーフユニットにはシェードや網戸も組み込まれており、夏場は網戸にして就寝することもできる。防犯上も大変有用だ。更に、やはり標準装備のマックスファンを回すことにより、スカイライトルーフを通して車内の通気をすることができる。
テレビ/ナビ
テレビは特にオプション設定されていないが、必要に応じて付けることは可能だろう。ナビも特にオプション設定されていないが、希望のものを取り付けることができる。
電装系
リチウムイオンバッテリー(OP)を搭載した電装系
標準では75AhのOPTIMAバッテリー(AGMバッテリーのなかでも高性能なもの)を2個装備する。また走行充電、外部100V電源入力と、これによるサブバッテリーの充電機能も標準装備される。
更に、オプションでリチウムイオンバッテリー(100Ah x2個)も搭載することができる。環境にもよるが約3時間〜5時間のエアコン駆動が可能としている。
エアコン駆動のもう一つの選択肢が、ポータブル電源。エアコンオプションを選択すると、ポータブル電源の入力コネクタが装備される。ポータブル電源はユーザーで好みのものを用意するが、1500W以上に対応するものが必要。
ただし、このポータブル電源はエアコン専用。またクルマから充電できないので、家庭で充電する必要がある。即ち、1回きりかRVパークなどで充電することになる。また、ポータブルバッテリーを積むスペースも必要になる。
従って、エアコンを実用的に使うには、コストはかかるがやはりリチウムイオンバッテリーがお勧めだ。
80Wソーラーシステムが標準装備される
80Wソーラーシステムも標準装備される。スカイルーフとマックスファンがあるので大容量のものは設置できないが、日照条件が良ければ微弱ながら常時充電されている。
価格(2021年4月現在:千円台切り上げ:税込)
基本仕様のウィズ(エアコン非搭載)の価格は、特装車ガソリン2WD/6ATで540万円~(暫定価格)、同GLパッケージで547万円~。またディーゼルは同じく、595万円~と603万円~となっている。
エアコン搭載オプションは143,000円、リチウムイオンバッテリー(100Ah x2個)オプションは231,000円となっている。これには充電器の変更も含まれている。
ウィズの場合、必需装備はほとんど標準となっているため、追加で付けておきたいオプションは無い。(ナビ関連を除く)予算に余裕があれば、エアコンとリチウムイオンバッテリーオプションは是非付けておきたい。
他モデル
ハイエース標準ボディハイルーフをベース車にした二人旅仕様モデルは、「ハイエース標準ボディハイルーフの二人旅仕様8選」に詳しく比較したので参照いただきたい。
この中でエアコンを装備できるモデルを抽出すると、リンエイプロダクトの「バカンチェスプライベート」(価格不明)、レクビィの「プラスLV」(520万円~)、MYSミスティックの「マティアスC」(468万円~)、そしてその後に発表されたstage21の「リゾートデュオ レグラス」(496万円~)がある。
また、純然たる二人旅仕様ではないが、OMCの「ナロー銀河」(515万円~)とレクビィの「プラスLV+1」(520万円~)も追加しておきたい。
なお、この中でリチウムイオンバッテリーが選択できるのは、ナロー銀河とリゾートデュオ レグラスの2モデル。
まとめ
ハイエース標準ボディハイルーフの二人旅仕様は競争の激しいカテゴリーだが、ウィズはこの中でもレベルの高いモデルだ。しかし今までエアコンが選択できなかったため、これが弱点になっていた。
今回エアコンとリチウムイオンバッテリーが選択できるようになったことで、一気に競争力を高めたといえる。上質な内装とよく考えられたレイアウトは間違いなくトップクラスだ。
特に多段階にリクライニングする後部ベッドマットで、ダイネットで寛ぐことまで考えられているのは、さすがに経験豊富なビルダーならではの配慮だ。またスカイルーフは他に無い大きなアドバンテージと言える。
あえて弱点を挙げておくと、やはり冷蔵庫だろう。冷凍機能が無いので冷凍食品を保存しておくことができないし、製氷して水割りを飲むこともできない。冷凍機能が必要なユーザーは、冷凍機能がある小型のポータブル冷蔵庫を別途用意する必要がある。
このような点はあるが、ウィズが極めて優れたモデルであることには違いない。エアコンが搭載できるようになり、快適な二人旅仕様モデルの選択肢が増えたのは大きなユーザーメリットだ。
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