ハイエース標準ボディハイルーフの可能性
ハイエースには大きく分けて4種類のボディサイズがある。標準ボディ標準ルーフ、標準ボディハイルーフ、ワイドボディミドルルーフ、そしてスーパーロングだ。(正確には市販されていないスーパーハイルーフというのもある)
この中で、標準ボディハイルーフは、コンパクトなサイズと高い天井高を持つことにより、運転しやすさと居住性を併せ持つボディだ。
この利点を生かし、標準ボディハイルーフは二人旅仕様車が数多く発売されている。標準ボディなので通常の駐車枠に駐車できるうえ、ハイルーフなので圧迫感が少ない。またオーバーヘッド収納が付けやすく、収納が豊富に取れるので長期旅にも使える。
更に室内高が1590mmというのもポイントで、あと1cmあればギャレー前に1600mm必要というキャンピングカー要件を満たせる。ギャレー前のルーフを見ると、少し凹ませてあるが、これはその意味がある。
そこで、今回はハイエース標準ボディの二人旅仕様車を特集、比較する。以下がリストアップしたモデル。
目 次
No.1 Wiz(ウィズ):アネックス
アネックスはキャブコンからバンコンまでラインアップしているが、バンコンではファミリーワゴンがワイドロングボディを使用しファミリー向け、リコルソがワイドロングボディを使用した二人旅向け、コンポーザーが標準ボディ(NV350)を使用したファミリー向け、そしてウィズが標準ボディの二人旅向けとなっている。
ウィズの室内
ウィズの特徴は、充実した標準装備と洗練されたインテリア。同社のキャンピングカーはいずれも洗練されたインテリアを持つが、ウィズは二人旅に相応しく落ち着いた質感を持っている。
FFヒーター、ツインサブバッテリー、外部充電機能、ベンチレータ-、インバーター、ソーラーシステムが標準装備され、追加オプションはほとんど必要ない。また、小型ながらスカイライトルーフと名付けられたサンルーフも標準装備している。
スカイライトルーフを標準装備
リクライニングできるダイネットシートエンドや、ギャレーコンソールの豊富な収納、大きなオーバーヘッド収納、標準装備の電子レンジなど、長期旅に必要な装備も揃っている。ダイネットテーブルが窓際に寄せられ掘りごたつ風に座れるのも独特で、一人ならテーブルを片付けずに就寝できる。
これだけ標準装備が付いているので、価格的には他モデルより高価だが、いずれの標準装備も必要なものなので、とびぬけて高価という訳ではない。長期旅用に横開き式冷蔵庫が望まれるところ。また、ハイエンドモデルだけに冷房機器のオプションも望まれる。
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No.2 ウォークIIタイプC:ドリーム・エーティ
ドリーム・エーティーはハイエースとNV350キャラバン専用のバンコンビルダーで、WALK(ウオーク)は同社モデルの統一ブランド。「WALK」はハイエーススーパーロング、「WALKⅡ」は標準ボディハイルーフ、「WALK-MC」はワイドロングボディとなっている。
「WALKⅡ」には「Type-A」と「Type-C」があり、「Type-A」は2列目にマルチモードシートを持つファミリー用、「Type-C」はロングシートで横置き対座の二人旅仕様となっている。
ウオークⅡタイプCの室内
インテリアは特に凝ったものではなく、冷蔵庫は標準装備だがポータブル冷蔵庫であったり、電子レンジのオプション設定が無いなど簡易的なところもあるが、オーバーヘッド収納やシート下の収納が充実しているのは特筆できる。
なお、後部が収納になっているレイアウトと、最後部のシートを跳ね上げて大きな荷物を積載できるようにしたレイアウトの2種類が選択できる。
最後部のシートが跳ね上げられるレイアウトも選択できる
価格も安価な方に入る。もちろん様々なオプションを付けると高価になってしまうが、シンプルな装備のエントリーモデルとして使える。
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No.3 ハウベル:ビークル
ビークルはハイエースとNV350キャラバンをベース車にしたバンコンの専門ビルダー。スーパーロングと標準ボディをラインアップしている。
同社は家具の作りにこだわりがあり、質感の高い家具が特長。それに伴って、インテリアもシンプルながら高品質感のある室内になっている。
ハウベルは同社のスーパーロングベースバンコン「デュオTypeS」を、標準ボディハイルーフに展開したもので、運転しやすく取り回しの良い二人旅モデルの需要に応えている。
ハウベルの室内
ハウベルで目を引く装備はギャレーで、引き出すとカウンターキッチンのようになり、ギャレーの調理スペースが広くなるため、旅先の食材を調理して楽しむことができる。
両側にオーバーヘッド収納を持ち、シート下収納も広く取られているので、長期旅の荷物も二人分なら楽に収納できる。ただ、ギャレーコンソールに小物収納が欲しいところ。
カウンターキッチンになるギャレー
また冷蔵庫が40Lながら上蓋式なので、製氷と冷蔵が同時にできない。もちろん、各ユーザーの使い方によるが、長期旅にはできれば横開き式冷蔵庫が欲しい。また同社はスーパーロングでもエアコンの搭載をしていないので期待薄ではあるが、やはりエアコンのオプション設定が望まれる。
高品質な家具や落ち着いたインテリアながら、価格は比較的安価な方に位置しており、品質にこだわるユーザーに適している。
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No.4 バカンチェスプライベート リンエイプロダクト
リンエイプロダクトはバンコン専門のビルダーで、ハイエースやNV350キャラバンのスーパーロングから軽キャンパーまでラインアップしているが、特にハイエースのレイアウトバリエーションは数えきれないほど存在する。
バカンチェスプライベートは、特に二人旅に向けて製作されたレイアウトだが、今回リストアップした他のモデルとは全く異なったアプローチのレイアウトとなっている。その代表的なところは前部に2名の対座ダイネット、後部にロングシートのダイネットを持つこと。
それぞれ展開すれば独立したベッドになり、カーテンで仕切ればパートナーに気兼ねすることなく明るくして本を読んだりできる。
バカンチェス プライベートの室内
また大きなクローゼットもこのクルマの特徴で、エントランスの半分程度まで進出している。そのためエントランスの幅が狭くなっているが、これは逆に車外から室内が丸見えにならないことを考慮したアイデア。確かにそれほど広いエントランスは不要で、その分収納スペースに割いた方が効率が良い。
オプションで搭載できるセパレート式クーラー
同社はまたエアコンの搭載にもチャレンジしており、2020年ジャパンキャンピングカーショーで「COOLSTAR」を搭載した展示車を発表した。小型ながら家庭用エアコンと同じほどの冷却能力があり、バンコンにもエアコンが実用的になってきた。参考価格は60万円(税別)と高額だが、これがあれば夏場も快適に過ごせる。
ツインサブバッテリー、2000Wインバーター、ソーラーシステム、冷蔵庫、電子レンジが標準装備されており、その分価格も高価な方だ。ただFFヒーターと外部充電システムはオプションなので、これらも追加する必要がある。
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No.5 フォックスDsコンパクト フジカーズジャパン
フジカーズジャパンは輸入モデルも多く扱うビルダーだが、オリジナルモデルも制作しており、オリジナルの全モデルに「FOCS」を冠している。ベース車はハイエースとNV350キャラバンが中心で、NV200バネットベースも存在する
FOCS Ds コンパクトはその名の通り、ワイドロングベースのFOCS Dsを小型化したモデル。ただし、FOCS DsにはL-StyleとF-Styleがあり、FOCS
Dsコンパクトはそのどちらとも異なり、標準ボディに適したレイアウトとなっている。
FOCS Dsコンパクトの室内
同社のこだわりは家具の製法にあり、宮大工工法を使用している。そのため長年使用していても軋みや歪みが発生しないのが特長。FOCS Dsコンパクトのインテリアは、同社独特のメープルカラーを基調にしたものだが、最近オフホワイトのシートとダーク色の家具を組み合わせたFOCS DsコンパクトHが追加された。クールな印象の室内になっている。
FOCS DsコンパクトHのインテリア
装備的に特に際立ったものは無いが、冷蔵庫は製氷と冷蔵が同時にできる49L横開き式が標準装備されている。価格的にも安価な方だ。
ただし、折角のハイルーフなのにオーバーヘッド収納が全く無いのは残念なところ。またギャレーは広いのにシンクが不似合いに小さいのは不思議なところだ。
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No.6 プラスLV レクビィ
レクビィはハイエースを中心にバンコンを製作しているバンコン専門ビルダー。スーパーハイルーフをベースにするフラグシップのシャングリラをはじめとする同社のモデルは、どれも洗練されたインテリアを持つ。
Placeはプラスと読むが、同社の中核を担うシリーズネームで、スーパーロングのプラスSLやプラスDDと、標準ボディハイルーフのプラスLV、プラスLV+1がラインアップされている。プラスLV+1はプラスLVに前向き単座シートを追加したファミリー兼用モデル。
プラスLVの室内
一方プラスLVは運転席、助手席以外は前向きシートを持たない二人旅専用モデル。プラスシリーズの特徴は、網代仕立ての家具を装備したアジアンなテイストを持つインテリア。シートエンドがリクライニングして寛げる機能もあり居心地の良いダイネットになっている。
グレードは標準仕様と「Superior」と名付けられた上級仕様があり、Superiorには49L横開き式冷蔵庫、外部電源入力とそれによる充電機能、ベンチレーター、19インチテレビ、カーテンが標準装備される。
オプションで家庭用エアコンを設置できる
更にSuperior仕様にはオプションでA/C仕様が用意されており、これには家庭用エアコン、電子レンジ、トリプルサブバッテリー(115Ah×3)、CTEK強化型走行充電、
外部AC入力&充電装置(25A)、1500W正弦波インバーター、215Wソーラーシステムが追加される。
Superior仕様は456万円~(税別)なので高価な部類に入るが、高品質なインテリアと両側にオーバーヘッド収納が装備され充実した収納などハイエンドモデルに相応しい仕上がりになっている。A/C仕様は551万円~(同)とさらに約100万円高くなるが、コンパクトなバンコンでも最高を求めるユーザーには価値あるモデルだ。
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No.7 マティアスC MYSミスティック
MYSミスティックはトラックキャンパーで有名なビルダーだが、キャブコンやバンコンも製作している。バンコンではハイエーススーパーロングを使用した「マティアス」があるが、マティアスCはマティアスのレイアウトをハイエース標準ボディハイルーフに展開している。Cはコンパクトを表している。
また「災害時のシェルターの役目もするキャンピングカー」というコンセプトも併せ持っており、そのため80Wのソーラーシステムも標準装備し(オプションで120W)、サブバッテリーはオプションで計3個まで搭載することができる。
更にマティアスCの特長は小型クールーラーをオプション(149,600円:税別)で設置できること。同社は早い段階からトラキャンやバンコンにもクーラー搭載を進めており、マティアスにも当初から装備されている。
マティアスCの室内
横開き式の冷蔵庫や電子レンジも標準装備されており、レジャーはもちろん、万一災害に遭った場合でも食事や就寝が確保できるほか、ソーラーパネルとバッテリーで停電時でも電気が確保できる。またクーラーがあるので快適に過ごすことができる。なおFFヒーターはオプションなので装備しておきたい。
オプションで小型クーラー(右側)が設置できる
価格的には多少高価な部類に入るが、標準装備が充実しているので、同じ装備にした場合、他車とあまり変わらない。むしろ、災害時に実用になることを考えるなら、追加で50万円以上かかるが、クーラーやトリプルバッテリーまで装備されたパッケージとして備えておくのが良いだろう。
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No.8 ロングトレイン カトーモーター
カトーモーターはハイエースベースのキャブコンやタウンエースベースのバンコンもラインアップしているが、ハイエースを使ったバンコンのラインアップが充実している。WANAKAやDDのようにFRPルーフを架装したモデルが多くあるのも特徴。
また、同社のモデルは全て木材をふんだんに使った家具と豪華なインテリアで、一目見ただけで同社のモデルと分かる。収納やオーバーヘッド収納の扉に施されたデザインも凝っており、普通のインテリアでは飽き足らないユーザーに広く支持されている。
その中でロングトレインは標準ボディハイルーフを使用した、同社の中では数少ないモデルだが、インテリアは他のモデル同様、窓枠まで木材で縁取りされた、アンティーク風ともいえる豪華なものとなっている。
ロングトレインの室内
ロングトレインのギミックは、オプションの「縮小できるダイネット」。「延長できる」のではなく「縮小できる」というのは、最後部までの長い状態が標準で、この場合ダイネットを展開すると1800mmのベッドになる。
「3Wayソファーベッド」オプションを選択すると、ソファ後部が縮小され、最後部に広い収納スペースが出現する。ただし、この場合ベッド長は1400mmになるので、大人は就寝できない。
例えばキャンプ道具や自転車を積んで行き、就寝時はこれらのものを車外に出すといった使い方ができる。
オプションでダイネットを縮小し収納スペースにできる
価格的には高価な方に入る。FFヒーター、外部電源による充電機能、インバーターはオプションなので更に出費が上積みされることになる。インテリアを考えるとそれも納得できるが、やはり高級モデルなのでルームエアコンの設置は今後期待したいところだ。
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その他のモデル
上記以外にも、下記のようなハイエース標準ボディハイルーフを使用した二人旅専用モデルがある。これらについては画像データが無いため、今回はビデオで取り上げていないが、各モデルへのリンクを張っておくので参照いただきたい。
・クエストミヤビ バンテック新潟 600万円~
・バース Type1 キャンパー鹿児島 345万円~
・ロードセレクトNH カスタムセレクト 441万円~
まとめ
今回取り上げたモデルは、バカンチェスプライベートを除き、レイアウトがあまり変わらないので、装備とインテリア、価格が各モデルの特徴となる。
大きな違いはエアコンやクーラーなどの冷房装備を用意しているかそうでないかで、バカンチェスプライベート、プラスLV、マティアスCの3モデルはその点においてアドバンテージがある。
しかしエアコンを装備すると高価になるのも事実で、小さなキャンピングカーにそこまで投資すべきか迷うかもしれない。その意味ではシンプルな装備で低価格に抑えるユーザー層と高級モデルに更にエアコンを付けたいというユーザー層に分かれるのかもしれない。
このセグメントのユーザーは、比較的年配で長期旅を考えているケースが多いと思われる。スーパーロングやキャブコンのような大きなモデルは取り回しが面倒なので、標準ボディクラスで良いのだが、装備やインテリアは妥協したくないというユーザーも多いだろう。
このようなユーザーは快適性も求めるので、高級モデルに分類されるモデルは特にエアコンのソリューションが必要になってくるのではないだろうか。コンパクトでも高級感があり、快適なモデルが求められる。