シュピーレンNVはフロットモービルが製作する、日産NV200バネットをベース車にしたバンコンキャンピングカー。
同社は長野県に本拠を置くビルダーで、他車モデルや中古モデルの販売を行っているが、自社オリジナルモデルとしてこのシュピーレンがある。
シュピーレンは以前からタウンエースベースが存在するが、これは4ナンバーだった。これに対し2019年に日産NV200バネットワゴンをベース車にした5ナンバーのシュピーレンNVが発売された。
この記事はシュピーレンNVをメインに紹介しているが、タウンエースベースの情報も記載している。タウンエースベースのバリエーションやオプションがNV200バネットベースにも適応されるかは未確認。なお現時点でNV200バネットベースは同社のサイトには記載されていない。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
軽バンコン以上ハイエースバンコン以下で「ちょうどよいサイズ」のバンコンキャンピングカー。タウンエースとNV200バネットベースを選択できる。日常用途にも違和感なく使用でき、マルチユースに対応できる。
2列目シートに2人掛けバタフライシートを配置している。なお、タウンエースベースでは1人掛け、2人掛け、3人掛けおよび1+1人掛けを選択できる。一人使用から5名乗車まで、用途に合わせ幅広く対応できる。
後部は跳ね上げ式のベンチシートになっており、跳ね上げると広い荷室になり、自転車等を積むこともできる。
アピールポイント
・タウンエースとNV200バネットを選択可能
・軽バンコン以上ハイエースバンコン以下で運転しやすいサイズ
・2列目シートに1人掛け、2人掛け、3人掛け、1+1人掛けを選択できる(タウンエースベース)
・ギャレーを標準装備
・ポータブル冷蔵庫や電子レンジを設置可能(タウンエースベース)
・後部は大きな荷室になる
エクステリア
シュピーレンNVのエクステリア
ベース車は日産NV200バネットワゴン。ワゴン仕様なので、運転席周りは乗用車に近いグレード感を持つ。また、5ナンバー登録となる。
外観は、ボディ外側への架装が無いため、ノーマルと変わらず、従って日常に通勤や買い物に使用しても目立つことはない。
NV200バネットのボディサイズはセレナとほぼ同じ程度なので運転しやすく、またハイエースのようなキャブオーバースタイルではなくボンネットタイプなので、違和感なく運転できる。
インテリア
シュピーレンのインテリア
展示車は上の写真のようなインテリアだった。家具やシート地については情報が無いが、タウンエースベースでは家具色とシート生地の変更はオプションとなっている。
レイアウト
展示車のNV200バネットベースでは、2列目に2人掛けのバタフライシート、右側にベンチシート、後部にギャレーキャビネットを配置している。
タウンエースベースでは先述のように2列目のバタフライシートが選択できるため、レイアウトは様々。1人掛けと2人掛けシートの場合は、右側にベンチシートが設置される。
1人掛けシートとベンチシート(タウンエースベース)
比較的長距離をドライブする場合は、乗車人数に応じた前向きシートがあるレイアウトをお勧めする。横座りシートは体が安定せず疲れる。前向き乗車は、1人掛けシートの場合は3名、2人掛けと1+1人掛けシートの場合は4名、3名掛けシートの場合は5名となる。(各シートのビデオはこちら)
いずれの場合も就寝人数は2名だが、1人掛けシートの場合は、右側だけフラットにして1人用ベッドにすることもできる。なお、フルベッドにした場合、子供が小さければ一緒に就寝することができるだろう。
ただし車中泊する場合は、基本的に二人就寝と考えた方が良い。子供がいる3名以上のファミリーの場合は、やはりポップアップルーフやハイルーフでルーフベッドが付いているモデルをお勧めする。
ダイネット
L字型のダイネット
2列目シートを後ろ向きにすると、後部の横座りベンチシートとでL字型のダイネットが形成される。
このレイアウトが良いところは、2列目シートを後ろ向きにしないでも、ベンチシートだけでダイネットが形成できる点。2名なら、ドライブ中に休憩する場合、いちいち2列目シートを後ろ向きにしなくても、食事したりできる。
テーブルはギャレーキャビネットに引っ掛ける形で固定する。足が無いので便利だが、不意に手をついたりして重量をかけすぎないよう注意が必要だ。
足を投げ出してリクライニングできる
このダイネットで特筆できるのは、2列目シートを残し後部をベッド状態にすると、足を投げ出してリクライニングできる点。このスタイルでテレビを観るなど車内で寛ぐことができる。
ベッド
セミダブルベッドの幅のダイネットベッド
シートを全てフラットにすると、家庭用ではセミダブルベッド相当の大きさのベッドになり、大人が2名が就寝できる。タウンエースベースでは2050x1200mm(最大幅1300mm)と記載されている。なお2列目シートの部分は幅が多少広いが、足元はギャレーキャビネットが出っ張っているため少し狭くなる。(ベッド展開の動画はこちら)
1人用のベッドを作ることができる
タウンエースベースで1人掛けシートの場合は右側のベンチシートを使用して、1人用のベッドを作ることができる。この場合のベッドサイズは2050x500mm(最大幅600mm)となる。
ギャレー
ギャレーキャビネットとシンク
左側にギャレーキャビネットが配置されており、シンクがビルトインされている。電動のフォーセットは無く、ウォーターサーバーが置かれた簡易的なギャレーだ。ウォーターサーバーは特に固定されているわけではないので、ドライブ時にはどこかに固定する必要がある。
シンク下の5Lの排水タンク
シンクの下には4Lの排水タンクが収納されている。キャビネットの下には扉が2枚付いており、収納になっている。
冷蔵庫/電子レンジ
14Lのポータブル冷蔵庫
タウンエースベースの場合は、冷蔵庫は14Lのポータブル冷蔵庫がオプションで用意されており、ギャレーキャビネットに収納できる。ただし、冷蔵庫を収納する場合は、ギャレーキャビネットが変更され、この部分のみ奥行きが長くなる。
電子レンジも装備できる
また電子レンジは12V仕様のポータブル電子レンジ「WAVE BOX」がオプションで設置することができる。これも設置時はギャレーキャビネットが変更される。(注:WAVE
BOXは現在販売中止となっている)
大型のギャレーキャビネット
なお、やはりタウンエースベースの場合には、大型のギャレーキャビネット(165,000円:シンク付き)も選択でき、この場合は薄型の16L冷蔵庫と、大き目のシンクがビルトインできる。
多目的ルーム
シュピーレンに多目的ルームは無いが、ポータブルトイレをベッドボードの下に収納しておくことができるだろう。小さな子供がいるときは有用だ。
収納
両側にも扉付きの収納が用意されている
シュピーレンはコンパクトなバンコンながら、収納が比較的多く用意されている。前述のギャレーキャビネットの収納の他、後部ベッド下は大きな収納スペースとして使え、両側にも扉付きの収納が用意されている。
右側のスライドドアを開けるとアクセスできる
右側のスライドドアを開けると、車外からもアクセスできる収納がベンチシート下に用意されている。
空調
FFヒーターはエントランスステップに設置される(写真はタウンエースベース)
暖房はFFヒーターがオプションで用意されている。またベンチレーターもオプションで設置できるが、冷房のソリューションは用意されていない。
テレビ/ナビ
13.3型フリップダウンモニターがオプション設定される(写真はタウンエースベース)
テレビは13.3型フリップダウンモニターがオプション設定されており、前方と後方どちらにも取り付けることができる。ナビはパイオニア製が推奨でオプション設定されているが、好みのものを取り付けることができるだろう。
電装系
105Ahのディープサイクルバッテリーが1個標準装備される
105Ahのディープサイクルバッテリーが1個標準で装備される。また走行充電と外部100V電源入力、および充電機能も標準装備される。一般的に外部電源の充電機能はオプションになっていることが多いが、シュピーレンでは標準装備されているのは嬉しい。
サブバッテリーは増設して計2個にすることや、リチウムイオンバッテリーの選択もできる。エアコン等の大電力を必要とする家電品が無いので、標準のままでも問題ないが、デュアルバッテリーにしておくと安心感はある。リチウムイオンバッテリーまで付ける必要性はあまりないだろう。
インバーターは400Wと1500Wがオプション設定されているが、特に大電力の家電品を使わないなら400Wでも問題ない。ただしパソコンなどの精密機器に使用する場合は正弦波対応を選択する必要がある。
ソーラーシステムは180Wと120W、さらにフレキシブルタイプ(個別対応)がオプション設定されている。
価格(2022年2月現在:千円台切り上げ:税込)
NV200バネットベースに関しては2022年2月の展示会時の価格情報しかないが、2WD/CVTは車両本体価格370万円~となっていた。NV200バネットは2WDのみとなる。
タウンエースベースの場合は2WDと4WDが選択でき、それぞれに5MTと4ATが選択できる。価格は2列目シートの使用によって異なり、一番低価格な1人掛けシート仕様の2WD/5ATで326万円~、最も高価な1+1人掛けシート仕様の4WD/4ATで387万円~となっている。
付けておきたい必須オプションは、FFヒーター(236,500円)、400Wインバーター(60,500円)が挙げられる。(ナビ関連は除く:価格はタウンエースベースのもの)
また予算に余裕があれば、ベンチレーター(60,500円)、ソーラーシステム(132,000円)、ツインサブバッテリー(51,700円)などが挙げられる。(同)
なおタウンエースベースの価格は同社のサイトには記載されていないので、2022年2月現在のパンフレットの価格を参照している。
他モデル
2列目にマルチモードシートを持ち、3列目に前向きシートを持つNV200バネットベースのバンコンは多く存在するが、後部に横置きベンチシートを配置するモデルはリンエイプロダクトのコンパクトバカンチェスNサンティ(価格不明)くらいしかない。
また、タウンエースベースでも状況は同じで、やはり3列目に前向きシートを持つモデルしか存在しない。即ち、シュピーレンはこのスタイルのレイアウトを持つユニークな存在で、しかも2列目シートの様々なバリエーションから選択できる。
なおノーマルルーフのNV200バネットベースでギャレーを持つモデルは、アネックスのリュウ200 (394万円~)とノニデルのベースキャンプソロ (328万円~)があるが、それぞれコンセプトは異なる。
またタウンエースベースでは、エートゥーゼットのアンナ model L(372万円~)、キャンパーアシストのペコラ(価格不明)、ステージ21のリゾート・デュオ ルクシオ(345万円~)がある。
まとめ
シュピーレンNVは、日常ではミニバンのように使い、休日には一人、二人、あるいは小さな子供連れで車中泊をするユーザーに適したモデルだ。NV200バネットはボンネットが付いているため、商用車臭くないところも日常用途で違和感がない。
通常のミニバンのように使え、かつ車中泊できるモデルが欲しいとか、災害時を考慮して車中泊ができる日常車にしたいと考えているユーザーには適した1台だ。
ただし、ノーマルルーフのNV200バネットベースバンコンでは、1人もしくは二人での車中泊が適している。子供がいるファミリーなら、できればポップアップルーフ付きのモデルをお勧めしたい。
「NV200バネットベースのポップアップ&ハイルーフバンコン」と「タウンエースベースのバンコン特集」もご参考いただきたい。
関連記事