新しくなったタウンエース
タウンエースは2020年6月にマイナーチェンジが行われた。主な変更点は「スマートアシスト」機能の追加で、衝突回避支援ブレーキ、車線逸脱警報、誤発進抑制(AT車のみ)などが追加された。また新エンジンを搭載し、燃費も向上している。
エクステリアもヘッドライト周りが変更され、多少精悍なイメージになった。なお、このマイナーチェンジから「ライトエース」の名前が消え「タウンエース」に一本化される。ちなみにダイハツも「グランマックス」というネーミングで発売する。
今後、キャンピングカーにもベース車として採用されるが、新しくなったベース車で注目されるだろう。そこでこの機会にタウンエースベースのバンコンを特集する。
目 次
上記(N)はノーマルルーフ、(P)はポップアップルーフ、(H)はハイルーフを表す。
コンパクトバカンチェスL MoMo:リンエイプロダクト
リンエイプロダクトは、埼玉県川越市を拠点にするバンコン専門ビルダー。軽キャンパーからハイエースまで非常に多くのレイアウトをラインアップする。
コンパクトバカンチェスLはタウンエースをベース車にするバンコンシリーズで、MoMoは40L冷蔵庫と100V仕様電子レンジ、2000Wインバーター、ソーラーシステムなど装備を充実させたモデル。
2人掛けのマルチモードシートを配したレイアウト
ルーフ形態はノーマルルーフのみで、就寝は2名の二人旅仕様車。ただし2列目にマルチモードシートを持ち、日常はミニバンのように使える。
2列目シートを後ろ向きにするとダイネットモードになり、シートに座って標準装備のテレビを観ることもできる。シートを全てフラットにすると2名が就寝できるベッドモードになる。
シンクが無いので水は使えないが、ポータブル冷蔵庫ではない埋め込み式の冷蔵庫や100V仕様の家庭用電子レンジで実用的な調理が可能。
冷蔵庫と電子レンジが標準装備される
日常はミニバンのように使い、休日は二人で車中泊を伴う小旅行に出かけるといったユースケースが考えられる。
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シュピーレン:フロットモービル
フロットモービルは長野県に拠点を置くビルダーで、キャンピングカーのオリジナルモデルはこのシュピーレンのみだが、福祉車両や業務用車両も手がけている。
同社で製作のすべてを行うため、レイアウトやインテリアの自由度が高く、シュピーレンも基本形はあるが、ユーザーの希望に合わせたカスタマイズができる可能性が高い。
シュピーレンはノーマルルーフのみで、2列目にマルチモードシートを配置するが、単座と2人掛けのどちらかを選択することができる。単座を選択すると、右サイドには横座りシートが配置され、後部への移動が容易になる。
単座とロングシートを組み合わせたレイアウト
2人掛けシートを選択すると計4名が前向きに乗車でき、日常でもミニバンのように使用できる。
後部にはギャレーが設置されるが、給水はタンクからの自然落下による簡易的なもので、下には5Lの排水タンクが収納されている。簡易型だが小さな食器や手を洗う程度なら、これでも十分役に立つ。
左後部にギャレーを持つ
装備の自由度も高く、エンゲルの14Lポータブル冷蔵庫と12V仕様の電子レンジWaveBoxをギャレーコンソールに装備することもできる。
ベッドはシートをフラットにして大人2名が就寝できるが、オプションで後部に上段ベッドボードを設置できるので、小さな子供がいるファミリーにも対応できる。様々な用途に対応できる、柔軟性の高いモデルだ。
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HANA:タコス
タコスは東京都立川市に本拠を置くビルダーで、バンコンをはじめ、ハイエースベースのキャブコン「ベリー」やカムロードベースのキャブコンまでラインアップしている。
HANAは同社では最も小型のバンコンで、特徴はタウンエースボディにFRP製のハイルーフを架装していること。またポップアップルーフを架装した「HANA EVE」もある。
HANA EVE
更にハイルーフを架装したモデルにはHANA、HANA2、HANA1.5があり、HANAは子供用バンクベッドと、冷蔵庫およびシンクをビルトインしたギャレーを持つ。またHANA2はバンクベッドのスペースは収納になり、ギャレーに冷蔵庫は付かないがベッドが多少広くなっている。
HANA1.5は両方の中間で、子供用バンクベッドは持つが、HANA2と同じく冷蔵庫はビルトインしていない。
HANA1.5の室内
いづれも2列目に3人掛けマルチモードシートを持ち、計5名が前向き乗車できる。後部はギャレーがあり、全てのモデルがシンクとフォーセットを持つが、前述のとおり、HANAのみ冷蔵庫をビルトインできる。
HANAには冷蔵庫とシンクがある
また、HANA EVEのギャレーは就寝時に邪魔にならないよう跳ね上げられるのがユニークだ。
HANAの優位点はハイルーフやポップアップルーフによる余裕ある室内高で、圧迫感が少ない。ハイルーフ架装モデルは、高い断熱性があるが高さ制限のある駐車場には入れない。
また、ポップアップルーフモデルは高さ制限のある駐車場にも入れ高い室内高もあるが、ポップアップルーフ部の断熱性は劣る。
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ピコ:キャンピングカー広島
キャンピングカー広島は広島県安芸高田市に本拠を置くビルダーで、同社の代表モデル「ポップ・コン」のようなポップアップルーフを架装したバンコンを多数ラインアップしている。
ピコはタウンエースにポップアップルーフを架装したモデルで、ポップアップルーフが標準装備される。
即座にベッド展開できるスイングシート
同社のもう一つのアドバンテージは「スイングシート」で、横座りのロングシートをまさにワンタッチでベッドに展開することができる。
ピコは、前向きシートは運転席と助手席のみなので、主に二人旅に向いたモデル。もちろん横座りシートにも乗車でき乗車定員は6名だが、横座りシートは長距離ドライブや長期旅には向かない。
ギャレーにはシンクと冷蔵庫が標準装備される
横座りシートを採用しているので、前後の動線が通り車内の移動はスムースにできる。装備も充実しており、ギャレーコンソールには実用的な大きさのシンクと14Lのポータブル冷蔵庫が標準でビルトインされる。
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ペコラ:キャンパーアシスト
キャンパーアシストは奈良県大和郡山市に拠点を置くビルダーで、現在はこのペコラのほか、ハイエースベースの「リチ」とボンゴトラックベースの「ジョクト」をラインアップする。なお神奈川県相模原市のフレンドリーも取り扱っている。
大きなテーブルのダイネット
ペコラはノーマルルーフのモデルで、2列目にマルチモードシートを配置、4名が前向きに乗車できる。従って日常ではミニバンと同じように使える。
後部はシンプルで、薄型の家具が両側据え付けられており、従って室内はできるだけ広くなるよう考えられている。左側の家具には18Lのポータブル冷蔵庫が標準でビルトインされている。
冷蔵庫が収納されている
シートを全てフラットにすると2名で車中泊ができる。シンプルな構成で、気軽に車中泊を織り交ぜたドライブができる。
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メリル:カトーモーター
注:メリルにはニューモデルがあります。
カトーモーターは新潟県燕市に本拠を置くビルダーで、ハイエースベースのバンコンを中心に、キャブコンやバスコンモデルも手がけている。
メリルは同社の中では最小のモデルで、ノーマルルーフ、ポップアップルーフ、そしてルーフ全体が持ち上がるエレベーションルーフの選択ができる。
エレベーションルーフも選択できる
また、レイアウトも2列目にマルチモードシートを持つファミリー向け(メリルⅠ/Ⅱ)と、横座りロングシートの二人旅向け(メリルⅢ/Ⅳ)を選択することができる。
従って、ルーフ形態とレイアウトの組み合わせで、ノーマルルーフのファミリー向け(メリルI)、エレベーションルーフのファミリー向け(Ⅱ)、ノーマルルーフの二人旅向け(Ⅲ)、そしてポップアップルーフの二人旅向け(Ⅳ)の4種類から選択できる。
MERILⅠの室内
またメリルⅠとⅡはシンクを持たないが、ⅢとⅣはシンクとシャワーフォーセットを持ち、車内で水が使える。ギャレーは広く、調理もやりやすい。どちらのモデルも18Lのポータブル冷蔵庫が標準装備される。
メリルⅣの室内
日常はミニバンのように使いたい場合は、メリルⅠとⅡが適しており、特にエレベーションルーフを持つⅡはファミリーでの車中泊もこなせる。一方、二人旅をメインに使いたいならメリルⅢとⅣが適するが、ポップアップルーフのⅣを選択するとゆったり就寝できる。
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リゾートデュオルクシオ:stage21
stage21は神奈川県相模原市に拠点を置くビルダーで、軽バンコンから、「リゾートデュオバンビーノプラス」といったライトキャブコンまでラインアップしている。
同社のモデルの特徴は、二人旅仕様のレイアウトが充実していること。もちろん横座りシートで4名乗車でき、ポップアップルーフが架装されておれば4名就寝も可能だが、これらのレイアウトはやはり二人旅に向いている。
ロングシートで広い室内
リゾートデュオルクシオもやはり横座りシートを採用したノーマルルーフのコンパクトバンコンで、乗車、就寝とも2名と割り切られている。それだけに車内は広く、動線も保たれており、フロントシートから後部まで難なく移動できる。
装備が充実しているのも特筆でき、ギャレー、15Lポータブル冷蔵庫、100V仕様電子レンジ、2000Wインバーター、カーナビと15型フリップダウンモニター、そして180Wソーラーシステムまで標準装備されている。
車外からも使えるギャレー
更に冷房ソリューションとして同社オリジナルの「冷え蔵X」(リンク先は冷え蔵Ⅱ EX)が標準装備される。これは氷を使う簡易型のクーラーで、家庭用エアコンのような強力な冷却機能はないが、夜に多少車内温度を下げる効果はある。
開放的な広い室内とこれだけの装備があれば、コンパクトバンコンでも十分長期旅が可能だろう。二人で(あるいは一人で)長期旅がしたいユーザーにはお勧めのモデルだ。
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ハーフ:マリナRV
ハーフ(写真:マリナRV)
マリナRVは滋賀県野洲市に拠点を置くビルダーで、「キャビン2ミニ」などの軽バンコンからバスコンまで手がけている。
ハーフは同社のコンパクトバンコンで、タウンエースとNV200バネットを選択できる。どちらもノーマルルーフのみだが、NV200バネットバージョンは2列目シートにマルチモードシートを配しているのに対し、タウンエースバージョンは純正シートが残されたシンプル設計になっている。
2列目シートはオリジナルを利用
タウンエースバージョンでは後部両側にベンチシートがあるが、テーブルはなく、ダイネットと言うよりは荷室として想定されている。この両側のシートにベッドボードを渡してベッドにすると1800x1300mmのベッドになり、2名が就寝できる。
電装系は標準装備されており、シンプルな車中泊が可能となっている。日常はミニバンや荷室のあるバンとして使い、休日は後部にキャンプ用品を積み込んで、2名で車中泊を伴うキャンプをするといった使い方が考えられる。
2名が就寝できるベッドモード
Anna(アンナ) Model M:AtoZ
AtoZは埼玉県春日部市に本拠を置くビルダーで、キャブコンから軽バンコンまでラインアップする。
同社のコンパクトバンコンにはNV200バネットをベース車にした「アンナ」があるが、「アンナ Model M」はジャパンキャンピングカーショー2021で登場したタウンエースベースのバンコン。
外観はNV200バネットバージョンと同様、ハイルーフが架装されている。
アンナModelMには子供用ルーフベッドがある
なお、NV200バネットバージョンの「アンナ」では、ハイルーフではあるがルーフベッドの設定はなく、天井高を稼ぐ目的だった。従って基本的には2人仕様だったが、「アンナModel
M」は子供用ではあるがルーフベッドが用意されている。
インテリアは同社お得意のデザインコンセプトを謳った2種類のインテリアバージョンが用意されており、選択できる。
アンナmodelMの後部のレイアウト
ギャレーはコンパクトなシンクと18Lのポータブル冷蔵庫がビルトインされているが、電子レンジは用意されていない。
小さな子供がいるファミリーに向けたモデルと言える。
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まとめ
ファミリーで車中泊する目的なら、2列目にマルチモードシートを備えたHANA/1.5/EVE、シュピーレン、メリルⅡ、アンナModelMが候補になる。
このうち、HANAとHANA1.5、それとアンナModelMのみがFRPハイルーフを架装しているので、断熱性を重視する場合は、この3モデルがお勧め。なお、HANAとアンナModelMには冷蔵庫が搭載される。更にアンナ
Model Mには子供用のルーフベッドが装備できるので、有利な存在だ。
残りのHANA EVE、シュピーレン、メリルⅡはポップアップルーフやエレベーションルーフを架装する。HANA EVEは冷蔵庫を搭載しないがシンクがある。メリルⅡは冷蔵庫を搭載し、シュピーレンは冷蔵庫、電子レンジ、シンクもビルトインできる。
車中泊は二人で良いが日常もミニバンのように使いたいなら、上記に加え、就寝人数は2名ながらマルチモードシートを備えた、コンパクトバカンチェスL
MoMo、HANA2、ペコラ、メリルⅠがある。
HANA2を除きいずれも冷蔵庫がビルトインできるが、コンパクトバカンチェスL MoMoはさらに電子レンジも搭載される。またHANA2は冷蔵庫や電子レンジは持たないがシンクを持つ。
二人旅に割り切ったモデルは、ピコ、リゾートデュオルクシオ、ハーフが挙げられる。この中ではリゾートデュオルクシオが冷蔵庫、電子レンジ、ギャレーを持ち装備が充実している。ピコは電子レンジのオプションが無いがポップアップルーフを持つ。なおハーフはシンプル装備で、他2モデルとはコンセプトが異なる。
ケース別に考えると、例えば小さい子供のいるファミリーが車中泊旅行をするという場合には、4名が前向き乗車および就寝でき、ギャレー、冷蔵庫を備えるHANAとアンナModelMが適している。FRPルーフなので雨や風が強くても安心して就寝できるし、ポータブルトイレの収納が考えられているのも小さな子供がいるファミリーにはありがたい。
もう一つのケースとして年配の夫婦が長期旅をするなら、二人仕様のレイアウトでギャレー、冷蔵庫、電子レンジが装備されたリゾートデュオルクシオがお勧めだ。暑くて寝苦しい夜には「冷え蔵X」が役に立つだろう。
なお、上記は一例として分類したもので、もちろんこれに固執して選択する必要はない。例えば常にベッドモードでちゃぶ台スタイルのダイネットにするなら、どのモデルでも二人旅に適する。