ピコはキャンピングカー広島が製作する、タウンエース バンをベース車にしたバンコンキャンピングカー。
同社はタウンエース、NV200バネットからハイエース、NV350キャラバンまで各種バンコンをラインアップするバンコン専門ビルダー。
ラインアップの中では特にNV200バネットベースのポップ・コンが有名だが、ピコは更にコンパクトなボディサイズで、同社オリジナルのポップアップルーフを架装する。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
コンセプト
タウンエースをベース車にし、これにポップアップルーフを架装することにより、コンパクトながらも圧迫感の少ない室内を実現。ルーフを下げるとノーマル車と変わらないため、普段使いにも違和感なく対応する。
最大の特徴は同社オリジナルのスイングシートで、瞬時にダイネットからベッドへ、あるいはその逆の展開ができる。
乗車定員は6名だが、前向きシートは運転席と助手席だけなので、クルマ旅の場合は二人使用(あるいは一人使用)に向いている。
アピールポイント
・コンパクトなボディで取り回しが楽
・日常用途にも違和感なく使える
・ポップアップルーフで圧迫感のない室内
・スイングシートで、瞬時にベッド展開が可能
エクステリア
ピコのエクステリア
ベース車はタウンエース バンGL。2020年にマイナーチェンジされ、安全装備が強化された。自動ブレーキや、車線逸脱警報機能、誤発進抑制機能を含む「スマートアシスト」を標準搭載するとともに、ヘッドランプやリアコンビネーションランプはLED化された。
グレードはGLが標準なので、カラードバンパー、パワードアロックなどが標準装備されるほか、2020年のマイナーチェンジから電動格納式ドアミラー(サイドターンランプ付きカラード)、LEDヘッドランプなど多くの機能が追加されている。
ポップアップルーフは前方を持ち上げるタイプで、3方向に窓がある。窓はシェード、メッシュ(バグネット)、窓部の全開が可能。テント地は撥水性のある布地を採用している。
なお、外観をドレスアップできるi-パッケージ(278,300円)が用意されている。これにはフロントスポイラー、グリル/リアガーニッシュ、カラードドアミラー、アルミホイールなどが含まれる。
インテリア
5色から選択できるシートカラー
家具やシートは特別に高級感は無いが、しっかりとした造りになっている。上の写真のシート地はレザーモカ(OP:41,800円)と言う新色だが、これを含め5色から選択できる。(ビデオはこちら)
ピコのポップアップルーフは開口部が大きいのが特徴で、全体的に高い天井高が爽快だ。ポップアップルーフの開口部が広いため、照明はルーフサイドに取り付けられているがプッシュ式で使いやすい。
レイアウト
後部は4名掛け横座りシートと、それに対面するギャレーで構成されており、中央に通路があるため、前後の移動はスムースにできる。
乗車定員は6名だが、前向きに乗車できるのは運転席と助手席の2名だけなので、クルマ旅や長距離移動では二人使用に適している。
ダイネット
テーブルをセットしたダイネット
ダイネットは対座ではなく、並んで座ることになるが、テーブルは大きく4人分の長さがあるため、二人が食事するには全く問題ない。
テーブルはギャレーキャビネットに固定されるので、テーブルを付けてしまうとギャレーが使い難いという難点はある。またシート状態で足を投げ出して寛ぐのは二人では難しいので、ベッド状態にして寛ぐことになる。
ベッド
瞬時に展開できるダイネットベッド
ベッド展開は、おそらくピコの最も大きな特徴と言える。これはビデオを見ていただきたいが、シートバックが瞬時に中央の通路を埋めるベッドマットになる。これならベッド展開やシート状態への復帰も面倒な作業ではなくなる。
またダイネット時に使っていたテーブルは、ギャレー上の窓部分に収納できる。
ベッドサイズは1850x1080mm。キャンピングカーの要件では2名が就寝できるが、家庭用ではシングルベッドより多少広い程度なので、実質的には1名用と考えた方が良い。
従って2名で就寝する場合はポップアップルーフを上げて、1名はルーフベッドで就寝することになる。ただし、風雨が強くポップアップルーフが使えない場合は、ダイネットベッドで2名が就寝せざるを得ない。
ポップアップルーフ内のルーフベッド
ルーフベッドは2,270x1,000mmとされている。身長方向は十分だが、こちらも幅は実質的には一人用と考えた方が良いだろう。
ギャレー
後部左サイドに設置されたギャレー
ピコのギャレーは後部左側にあり、広いスペースを割いている。ギャレーキャビネットにはシンクとポータブル冷蔵庫をビルトインしており、上蓋を閉じると、広いカウンターになる。
更に、跳ね上げ式調理台も用意されているので、ポータブルカセットコンロを置いても調理スペースは確保されている。
車外で使えるシャワーフォーセット
シンクの横にはシャワーフォーセットがあり、これは引き延ばして車外で使用することもできる。
各10Lの給排水タンクは車外から出し入れできる
シンクの下には各10Lの給排水タンクが収納されており、リアゲートを開けて車外から直接出し入れすることができる。
冷蔵庫/電子レンジ
14Lのポータブル冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は14Lのポータブル冷蔵庫が標準装備され、ギャレーキャビネットにすっきり収納されている。収納場所が用意されているので、就寝時などに冷蔵庫を移動させる必要が無い。
この冷蔵庫は冷蔵はもちろん、冷凍や製氷もできるが、冷蔵と冷凍を同時にすることはできない。
なお、電子レンジのオプション設定は無い。軽キャンパーでも電子レンジを装備するモデルがあるので、それより大きなピコでも電子レンジのオプションが欲しいところだ。
多目的ルーム
ピコには多目的ルームは無いが、ポータブルトイレを積んでおくことは可能だ。ただ、結構邪魔になるし、実用的な使用は難しい。
収納
ギャレーコンソールの引き出し収納
ギャレーキャビネットに引き出し収納が用意されている。コンパクトなボディながらこれらの収納が用意されているのは嬉しい。ここにカトラリーやちょっとした食器を収納しておける。
ギャレーコンソールの下の収納
また、ギャレーコンソールの下には扉付きの収納が用意されている。ここも有用な収納スペースとして使用できる。
更に上部には、広い棚が用意されている。扉が無いので走行中に落ちないもの(あるいは落ちても大丈夫なもの)を選ぶ必要があるが、タオルなどを収納しておくのに便利だ。
シート下には大きな収納スペースがある
またシート下は大きな収納スペースになっている。ここには比較的大き目のバッグなども収納できる。またこの収納には、右側のスライドドアを開けると車外からもアクセスできる。
空調
FFヒーターは右サイドのステップに設置されている
暖房はFFヒーターがオプションで用意されている。FFヒーターは右のスライドドアを開けたステップに設置されている。温風の吹き出し口はフロントシートの後部に上向きに設置されており、ベッド状態にしても温風がベッドの下にこもってしまうことは無いよう配慮されている。
テレビ/ナビ
DVD内蔵19型テレビがオプション設定されている。ナビは7インチモニター付きがオプション設定されている。
電装系
シート下に収納される電装系
100AhのAGMサブバッテリーが1個と走行充電が標準装備される。また外部100V電源入力も標準装備されるが、これによる充電機能はオプション。サブバッテリーはもう1個増設できる。
インバーターは350Wと1500Wのものがオプション設定されている。電子レンジやエアコンが無いので350Wでも問題ないだろう。電気ポットなどを使う場合は1500Wのインバーターが必要だが、バッテリー容量を考えるとあまりお勧めではない。
ソーラーシステムは160Wがオプションで装備できる。
価格(2021年4月現在:千円台切り上げ:税込)
2WD/4ATで387万円~、4WD/4ATで411万円~となっている。マニュアルミッションも選択できる。
付けておきたいオプションは、外部電源による充電機能(38,500円)、FFヒーター(198,000円)、350W正弦波インバーター(61,600円)が挙げられる。
他モデル
タウンエースをベース車にしポップアップルーフを架装するモデルは意外に少なく、カトーモーターのメリル(339万円~:ポップアップルーフオプション)と、タコスのハナ イブ(443万円~)が挙げられる。
どちらも2列目にマルチモードシートを持ち、ハナイブは計5名、メリルは計4名が前向き乗車できる。従ってこれらはよりファミリーでの移動と就寝に対応している。もちろんマルチモードシートによる面倒なベッド展開とのトレードオフとなる。
まとめ
ピコは上の2モデルと異なり、後部に前向きシートを持たないレイアウトで、二人旅や一人使用に特化したモデルだ。この点で、他のモデルとは大きく異なったコンセプトであることが分かる。
また、ピコの最大の特徴であるスイングシートにより、上の2モデルとは比較にならないくらい簡単にベッド展開できるのも強みだ。ただし、ダイネットベッドがあまり大きくないのが弱点ではある。
また、電子レンジがオプション設定されていないのは、クルマ旅に使用したいユーザーにとっては悩ましい点だ。このようなユーザーのために、電子レンジをすっきり収納できるソリューションを提案して欲しい。
なお、タウンエースベースのバンコンについては、ポップアップルーフだけでなく、ノーマルルーフやハイルーフを架装したモデルも含めた「タウンエースベースのバンコン特集」も参考いただきたい。
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