ポップ・コン キャンパーRは、キャンピングカー広島が製作する、日産NV200バネットをベース車に使用したバンコンキャンピングカー。
同社はハイエース、NV350キャラバン、NV200バネット、タウンエースなどのバンコンを専門にしているが、特にポップアップルーフモデルが充実している。
同社の看板モデルで二人旅仕様のポップ・コン eEが有名だが、ポップ・コン キャンパーRは同じベース車ながらファミリー対応のレイアウトを持つ。
(記事中の価格は全て税込です)
コンセプト
ボンネットを持つミニバンスタイルで運転しやすいNV200バネットをベース車に使用。これにポップアップルーフを架装して、高い天井高とルーフベッドを追加している。
スペースに限りがあるコンパクトバンコンでは、ギャレーとベッドスペースのせめぎあいが常に存在する。ギャレーコンソールが大きくなれば、ベッドが狭くなるわけだ。
そのため、ギャレーコンソールの下部を狭くしたり、ギャレー全体を薄型にしたりと、いろいろな手段が講じられている。
ポップ・コン キャンパーRでは、これを「収納できるギャレー」で解決している。就寝時はギャレーが低くなり、ギャレー上部もベッドスペースとして使えるのだ。これにより、フロア全体がベッドとして使えるようになる。(収納方法は動画参照
1:47)
エクステリア
ポップ・コン キャンパーRのエクステリア
ベース車は日産NV200バネットで、これにポップアップルーフを標準で架装する。ルーフを閉じれば、ほぼノーマル車と変わらないので、日常用途にも違和感なく使うことができる。
なお、NV200バネットには4WDが選択できるようになり、また最近ではエマージェンシーブレーキなど先進の安全技術が搭載されている。
ポップアップルーフはダンパーでサポートされており、簡単に昇降できる。なお、白以外のボディを選択した場合は、ポップアップルーフを同色にするのは有料(49,500円~59,400円)となる。
また、ルーフテントは窓部分をバグネット、あるいはオープンにすることができる。ルーフテントの生地は特に風雨や防寒に対策されたものではないため、冬場はキルティング素材のカバーが必要だろう。もちろん風雨の強い場合は、ポップアップルーフは使用しない方が良い。
インテリア
シートは様々な色の組み合わせを選択できる
シートは2色の組み合わせで構成されており、7種の組み合わせから選択できる。家具色は濃い木目調のパネルが使われており、こちらは選択肢は無いようだ。
シート色は7種の組み合わせが用意されている
レイアウト
キャンパーRではファミリー仕様に対応するため、2列目にマルチモードシートを配置、3列目には2人掛けの横座りシートを配置している。
2列目シートを前向きにすることにより、計5名が前向き乗車できる。2列目シートは両側は3点式、中央は2点式のシートベルトが付いている。シートは座り心地が良い「モールドハイバックシート」を採用。ワゴン車のような座り心地を実現している。
乗車定員は運転席、助手席を含めて計5名。また、就寝人数は、ダイネット展開ベッドで2名、ルーフベッドで2名で、計4名となっている。
ダイネット
L字型 ダイネット
2列目シートを後ろ向きにすると、3列目シートとでL字型ダイネットを形成する。また、後述のようにギャレーを収納すると、右サイドも横座りシートになり、コの字型ダイネットになる。
なお、ベッド時に中央を埋めるマットはシートバックになるわけではなく、上の写真のように積み重ねた状態で収納する。うまく立てかければシートバックにできないことは無いように思われるが、何か固定する方法が欲しいところではある。
ベッド
ダイネットを展開したベッド
ダイネットを展開すると、1990x1200mmのベッドになる。1200mmは家庭用ベッドではセミダブルの幅で、2名が就寝できる。
ベッド展開は、2列目のマルチモードシートをフラットにするのが多少労力が必要だ。特に雨が降っていて車外に出られない場合は苦労する。
ポップアップルーフを挙げた状態のルーフベッド
ルーフベッドは1880x1030mmの大きさ。これは家庭用ではシングルベッドより少し広い程度。キャンピングカーの規定上は大人2名が就寝できる幅だが、大人1名、あるいは子供2名用と考えた方が良いだろう。
ギャレー
前面が広く取られたギャレーセクション
ポップ・コン キャンパーRでは、このギャレーが最も注目されるところだ。先述の通り、多くのコンパクトキャンピングカーでは、ギャレーとベッドはスペース確保のせめぎあいをするが、キャンパーRでは、ギャレーが低くなって収納されることで見事に両立させている。
具体的な収納動作はビデオを見ていただきたいが、簡単に瞬時に収納することができる。2列目シートの展開よりはるかに簡単だ。
これにより、ギャレーコンソールを小さくする必要が無くなったため、ギャレー上部には大き目の丸形シンクが与えられている。また、跳ね上げ式の調理台も用意されている。
ポータブルカセットガスコンロが標準装備されており、これを調理台に乗せて使用する。また、下には5Lの清水タンクが2個収納されている。なお、12Lの排水タンクが床下に用意されている。(
4WD は 20L)
冷蔵庫/電子レンジ
フロントシート間に設置できる7L保冷温蔵庫
運転席と助手席の間に収まる7L保冷温蔵庫がオプション設定されているが、さらに大きな容量のものを望む場合は、ポータブル冷蔵庫を持ち込む。ただしポップ・コンeEのような設置場所は特に用意されていないので、適当なところに置くしかない。
電子レンジはもとよりオプション設定は無いが、いずれにせよ設置スペースは難しい。
収納
単座シート下の収納
最後部右側に単座シートがあり、この下が収納スペースとして利用できる。なお、収納スペースはこれだけで、やはり物足りない。
ベッド下の大きな収納スペース
ベッド状態にすると、ベッド下が大きな収納スペースになるので、荷物が多い場合は常にベッド状態にしておくと良いかもしれない。ただし出し入れは中央のベッドボード全体を持ち上げる必要があるので、簡単ではない。
空調
暖房はFFヒーターがオプションで用意されている。冷房のソリューションやベンチレーターのオプション設定は無い。
テレビ/ナビ
19型のテレビがオプションで用意されている。また、7型か10型のディスプレイを持つナビもオプションで選択できる。
電装系
シート下に収納された電装系
電装系は左側の横座りシート下に収納されている。このシートにはロックが付いており、上部を開けたまま固定できるので大変便利だ。
100AhのAGMバッテリーが1個と走行充電、それに外部電源入力が標準装備される。外部電源による充電機能(充電器)はオプションだ。
電子レンジなど大電力を必要とする家電品が無いため、電装系はこれで十分だろう。外部電源が無い場合でも、サブバッテリーで100V家電品を使いたい場合は、350Wのインバーターがオプションで用意されている。
テレビなどを設置して電気容量が心配な場合は、バッテリーを追加するオプションが用意されている。
価格(2021年8月現在:千円台切り上げ:税込)
自動ブレーキ付き2WD/4ATで431万円~。4WDでは467万円~となっている。付けておきたい装備は外部電源による充電機能(38,500円)、FFヒーター(198,000円)、350W正弦波インバーター(61,600円)が挙げられる。
また必要に応じて160Wソーラーシステム(217,800円)を搭載しておくと、マンションなどで屋外に外部電源が無い場合に、駐車中に充電しておける。
他モデル
NV200バネットベースでポップアップルーフを架装するモデルは、アネックスのファミリーワゴンSS-ER(423万円~)、同RIW200 ER(478万円~)、ダイレクトカーズのリトリートNV PopⅡ(379万円~)、東和モータース販売のツェルトNV(436万円~)、フジカーズジャパンのFOCSルソプラスアップ(393万円~)が挙げられる。
このうち、ポップ・コン キャンパーRとコンセプトが似ているのはファミリーワゴンSS-ERだ。RIW200ERも実用的なギャレーを持つが多少コンセプトが異なる。また、ツェルトNVはギャレーを持つがかなりコンパクトだ。その他のモデルはギャレーを持たない。
まとめ
ポップ・コン キャンパーRは、ポップアップルーフモデルを得意とするキャンピングカー広島の、期待を裏切らないコンパクトバンコンだ。ファミリー使用を想定し、できるだけ広いベッドを実現するための収納式のギャレーは素晴らしいアイデアだ。
コンパクトバンコンなので、ファミリーと言っても大人2名と小さな子供2名程度が限界だが、そのようなファミリーならこのクラスでも車中泊できるだろう。
ただし、実用的なギャレーがあるといっても、冷蔵庫や電子レンジが無いので、簡単な調理しかできない。従って、長期旅と言うよりは、車中泊を伴うドライブや、遊園地に前日の夜に到着し、朝から遊ぶといった使い方が適している。
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