軽キャンパーでは狭すぎるが、ハイエースベースでは大きすぎるというユーザーのために存在するのがコンパクトバンコン(と、ここでは分類する)だ。コンパクトバンコンのベース車は主にトヨタライトエース/タウンエースか、日産NV200バネットに2分される。
なかでもNV200バネットはボンネットを持ち、よりミニバンに近いフォルムを持っている。キャブオーバーのハイエースやセミキャブオーバーのライトエース/タウンエースと異なり、商用車臭さが少ない点が受けているともいえる。
もう一つ、NV200バネットベースのコンパクトバンコンが最近注目されている理由は、2018年1月に4WDが追加されリニューアルが図られたこと。これをベースに各ビルダーからニューモデルが発表されている。
ミニバンに近いスタイルとは言え商用車の広大な荷室も併せ持っており、その意味では日常用途にも使いたいユーザーのベース車としては最適に近いといえる。
そこで今回はこのNV200バネットをベース車にし、更にポップアップルーフかハイルーフを架装した8モデルをピックアップした。
目 次
NV200バネットベースのポップアップ&ハイルーフバンコン
ポップアップルーフモデルの方が圧倒的にモデル数が多いが、これはひとえにルーフを下げると、「普通のクルマ」に見えるからに他ならない。日常用途でも使うことが多いと想定されるので、これは十分理解できる。
しかし、ハードルーフは断熱性や、何よりいちいち開閉しなくてもよいというのが大きな魅力だ。スタイルや高さが問題なければ、ハードルーフの方が格段に使いやすい。
レイアウトで分類すると、2列目にマルチモードシートを持つモデルと、後部に縦置き(横座り)ロングシートを持つモデルの2種類がある。前者は主にファミリー向け、後者は主に二人旅向けと言える。
これについてもファミリー向けのレイアウトを持つモデルが圧倒的に多い。二人旅向けはポップ・コン eEのみ。なお、アンナは対座ダイネットを持つが2名しか就寝できないので二人旅仕様と言える。
ガルボ オートショップアズマ
オートショップアズマは軽キャブコンから、タウンエースベースのライトキャブコンまで小型のキャブコンを主にラインアップしているが、ガルボは同社初のNV200バネットバンベースのモデルで、数少ないバンコンモデルのひとつ。
2列目にマルチモードシートを配置し、前向きに5名が着座してドライブできる。また後ろ向きにすると、最後部の簡易シートと向かい合ってテーブルを囲める。ベッドはフロアベッドとルーフベッドで大人2名と子供2名が就寝できる。

ガルボのインテリア
コンパクトなギャレーを持つが、冷蔵庫や電子レンジの設置スペースは用意されていない。
小さい子供を持つファミリーが、ファーストカーとして通勤や買い物に日常使用し、休日には家族で近距離の車中泊を伴うドライブといった使い方に適している。
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ツェルトNVポップアップ 東和モータース
東和モータースは軽バンコンからスタンダードキャブコン、輸入モーターホームまで扱う総合ビルダーで、「ツェルト」は同社の国産バンコンの総称。このツェルトNVは、NV200 バネットワゴンをベース車にした唯一のモデルで、ポップアップルーフ無しのモデルも選択できる。

ツェルトNVポップアップのインテリア
レイアウトは2列目にマルチモードシートを配置し、3列目シートと対座ダイネットを形作る。2列目と3列目のシートに横方向に座り、脚を投げ出してリクライニングできるように工夫されており、2名が車内で寛げる工夫がされている。
またコンパクトなギャレーがオプションで設置できる。右側のスライドドアを開けると、5Lの給排水タンクを車外から取り出すことができる。
ポータブル冷蔵庫が標準装備されており、後部シートの下に設置場所が用意されている。居住スペースを占有せず、シートを取り外して冷蔵庫にアクセスできる。
収納も充実しており、左側の収納家具には引き出し収納もある。また12V仕様の電子レンジ(Wave Box)もオプション設定されており、左側の家具に収納できる。
日常使用から長期旅にも対応できる全方位のモデル。
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ファミリーワゴンSS-ER アネックス
アネックスはコンパクトバンコンから、カムロードベースのキャブコンまで手掛ける総合ビルダー。「ファミリーワゴン」は同社のバンコンのメジャーブランドで、ハイエースベースが中心だが、ファミリーワゴンSSはNV200 バネットワゴンベースのモデル。
ERはエレベーションルーフの意味で、ERが付かないモデル、即ち、ノーマルルーフバージョンも存在する。ルーフテントはテント生地を下ろしてフルオープンできるのが特長。またバグネットモードや遮光モードにもできる。ワゴンベースなので、スライドドアの内張などがフルトリムされており質感が高い。

ファミリーワゴンSS-ERのインテリア
レイアウトは2列目にマルチモードシート、最後部に簡易シートを持ち、対座ダイネットを形成する。右側の家具はギャレーコンソールになっており、比較的大きな丸形のシンクが特徴。シャワーフォーセットは引き延ばして車外で使えるので、ペットの足を洗ったりするのに便利。シンクの下が斜めに切られているため、大きなシンクがある割には就寝時に足元が窮屈にならない。
冷蔵庫は7Lのものが運転席と助手席の間に標準で設置されている。日常で使用しながら、休日はファミリーでロングドライブ、時には車中泊といった使い方が似合っている。
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フォックス ルソ プラスアップ フジカーズジャパン
フジカーズジャパンは輸入モーターホームから国産バンコンまで取り扱う大手総合ビルダーで、中古車販売としても有名。「FOCS」は同社の国産キャンピングカーのブランドで、ハイエースベースのバンコンを中心に豊富なラインアップを展開する。
その中でFOCSルソプラスアップ(FOCS Luz +up)はNV200 バネットワゴンベースのバンコン。”プラスアップ”はポップアップルーフ装着車を意味し、ノーマルルーフの「FOCSルソ」も存在する。ワゴンベースなので、スライドドアのフルトリムなど、ベース車の質感が高いのも優位点。

FOCSルソプラスアップのインテリア
レイアウトは、2列目にマルチモードシートを設置し、後ろ向きにして最後部のシートと向かい合って対座できる。テーブルは小さめで多くの食器を置くことはできないが、ギャレーを持たないので、車内で食事する想定ではない。
後部両側に薄い家具を配置しているが、小物が多少収納できる程度。バッグなどの大きな荷物は、後部シートの後ろのスペースに置ける。また、後部シートや、これをベッドにした場合は、その下が収納スペースとして使える。
ベッドは家具の部分も含め1200mmの幅。2名で就寝することができ、家具が張り出していないので、足元が窮屈ということはない。ギャレーを持たない割り切ったコンセプトで、日常使用に使いながら、休日は車中泊を伴う近距離のドライブに適している。
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ポップ・コン eE キャンピングカー広島
キャンピングカー広島は小型バンコンを中心に製作するビルダーで、特にポップアップルーフモデルを得意としている。「ポップ・コン(POP.COM)」はNV200バネットバンベースのバンコンで、「ポップ・コン イーイー(POP.COM eE)」と後述の「ポップ・コン キャンパーアール(POP.COM CamperR)」が選択できる。
このポップ・コン eEは二人旅仕様。横座りベンチシートと対面するギャレーコンソールで構成される。なおeEは、each and easy(クルマも装備も気軽に簡単に使える)という意味としている。

ポップ・コン eEのインテリア
ポップ・コン eEの特徴はポップアップルーフの大きな開口部と、スイングしてワンアクションでベッド展開できるシート。ルーフ開口部は後ろ半分が全て開口され、ポップアップルーフの開放感が最大限に満喫できる。
また、スイング式のシートは、文字通りワンアクションでベッドとダイネットをスイッチできる。ただしフロアベッドはギャレーがある分狭く、2名で就寝するには窮屈感がある。ルーフベッドは1880×1030mmで、ここでは2名が就寝できる。寒くない季節なら上下に1名づつ分かれて就寝すると良いだろう。
ギャレーコンソールにはシンクとシャワーフォーセットがビルトインされ、シャワーフォーセットは引き出して車外でも使える。更に14Lのポータブル冷蔵庫の設置スペースも設けられており、冷蔵庫は標準装備される。ただ、電子レンジの設定は無い。二人での長期旅も考えられるので、電子レンジのオプション設定が望まれる。
収納はカセットガスコンロ用の収納スペースと、左側家具の最後方にも収納スペースが設けられている。またスイングシートの下にはバッグを置けるスペースも用意されている。
電装系は105Ahのサブバッテリー、走行充電、外部100V入力/充電、400Wのインバーターが標準装備されており、これも特筆できる。
5名乗車できるので日常使用もできるが、前向きには着座できない。二人旅に向いているが、長期旅には電子レンジが欲しいところだ。
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ポップ・コン キャンパーR キャンピングカー広島

キャンピングカー広島のもう一つのポップ・コンはファミリー向けのポップ・コン Camper R。こちらは、2列目にマルチモードシートを持ち、前向きにセットすると、全部で5名が前向き乗車してドライブできる。他の多くのモデルと異なるのは、後部が横座りシートになっていることと、これに向き合うギャレーコンソールを配置するレイアウト。従ってダイネットは対座ではなくL字型になる。

ポップ・コン Camper Rのインテリア
ポップ・コン Camper Rの特徴は、高さが可変するギャレー。ベッド時にはギャレーコンソールが低くなり、その上にベッドマットを置くので、フロア全体がベッドになる。
ギャレーには大きめの丸形シンクがビルトインされている。ただしフォーセットはシンクに固定されているので、引き出して使うことはできない。
収納は、ロングシート下に多少スペースが用意されており、バッグなどを収納できる。またギャレー後部のシート下も収納スペースとなっている。小物収納は特に用意されていない。
冷蔵庫は14Lのポータブル冷蔵庫がオプション設定されているが、特に置き場所の用意は無い。従って、走行時はダイネットのフロアに、ダイネット時は助手席に置くなど、移動が必要となる。なお、電子レンジのオプション設定は無い。
ポップアップルーフは広い開口部を持ち、ルーフベッドでは2名が就寝できるので、4名のファミリーにも対応できる。日常用途に使いながら、休日はファミリーで車中泊を伴う遠出ドライブといった使い方が向いている。
RIW200-ER アネックス
「RIW(リュウ)」ブランドは、アネックスの中でも独立したブランドとして扱われており、アウトドアを前面に打ち出したイメージのブランドとしている。現在RIWブランドにはNV350キャラバン標準ボディを使用した「RIW350」と、NV200バネットバンベースの「RIW200」の2モデルがあり、RIW200にはノーマルルーフのRIW200とポップアップルーフを持つRIW200-ERがある。

RIW200-ERのインテリア
RIW200-ERは2列目に3人掛けのマルチモードシートを配置、5名が前向き乗車してドライブできる。また運転席、助手席が回転して後ろ向きになり、2列目シートと対座してダイネットになる。従って、ダイネットは広々としており、大きなテーブルも用意されている。
ポップアップルーフは広い開口部を持ち、ダイネットの上は開放感がある。
2列目シートをフラットにするとベッドになり、大人2名が就寝できる。ルーフベッドでも2名が就寝できるので、ファミリーにも対応できる。
ギャレーは、右サイドに広く取られており、1口ガスコンロが一体になった大きめの丸形シンクがビルトインされている。また40リッター上蓋式の冷蔵庫も標準でビルトインされる。なお電子レンジの設定は無い。
RIW200-ERは、車内と車外をシームレスに使うというコンセプトで、車外用のテーブルや椅子も用意されており、他とはコンセプトが全く異なるモデルだ。オートキャンプ場のサイトに乗り付けて、車内と車外を使ったキャンプといった使い方が想定されている。
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アンナ エートゥーゼット
エートゥゼットはボンゴやNV200バネットベースのライトキャブコンから、カムロードベースのスタンダードキャブコンまで、キャブコンを主に展開するビルダーだが、アンナは同社で唯一のバンコンモデル。しかし、ハードハイルーフを架装し、天井高が1670mmのオリジナリティーを持ったモデルになっている。

アンナのインテリア
レイアウトは2列目にマルチモードシートを配置し、後部は横座りのベンチシートと、これに対面するギャレーコンソールで構成される。
ベッドはダイネットを展開するフロアベッドのみでルーフベッドは無い。フロアベッドは1960×1200mmだが、足元はギャレーコンソールが出っ張っているため、二人で就寝すると足元が多少窮屈かもしれない。
ギャレーは、大きめの丸形シンクとシャワーフォーセットがビルトインされており、シャワーフォーセットは車外でも使用できる。
14Lのポータブル冷蔵庫が収納できるスペースがギャレーコンソールに用意されているが、冷蔵庫自体はオプション。電子レンジは設定されていない。
収納はハイルーフを生かして、左右両側と前方にオーバーヘッド収納が設置されている。マルチモードシートを持ち前向き着座ができるのでファミリー用途に見えるが、2名しか就寝できないので、実際は二人旅仕様。ならば固定のL字型ソファでも良いように思えるが、マルチモードシートは日常使用でミニバンと同じように使えるのが目的だ。ただハイルーフなので高さ制限のある駐車場には入れない。
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NVジャック タコス
タコスはカムロードベースのキャブコンからコンパクトバンコンまでラインアップしているが、ハイルーフやポップアップルーフを架装するモデルが多く用意されている。
「NVジャック」もその一つで、NV200バネットにハイルーフを架装している。このハイルーフはアンナのものより一回り高く、ルーフベッドで子供が就寝できるのが特徴。従ってファミリーにも対応できる。

NVジャックのインテリア
レイアウトは、2列目にマルチモードシートを配置し、後部は横座りのベンチシートと最後部のベンチシートでコの字型のダイネットを形成し、横座りシートに対面してギャレーコンソールを設置している。
このギャレーコンソールは、ベッド展開時に格納できるようになっており、従ってフロアベッドはフロア全体を使い1,850x1,350mmの大きさを誇る。なお、冷蔵庫や電子レンジの収納スペースは用意されていない。
電装系は、105Ahのサブバッテリー、走行充電と外部100V入力/充電が標準装備される。
収納は、ハイルーフながらオーバーヘッド収納や小物収納は用意されていないが、バッグなどの大きな荷物はベッドボード下に収納できる。また横座りベンチシート下は長物も収納できる。
ハイルーフなので地下駐車場に入れないなど日常使用には制限が出るが、ファミリーで就寝できるハイルーフモデルとしては唯一のモデルだ。
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最適なモデルは?
ポップアップルーフで最適なモデルは?
まず、用途から分類すると、4~5名が前向き乗車ができるファミリー用としては、ガルボ、ツェルトNV、ファミリーワゴンSS-ER、FOCSルソ+UP、ポップ・コン
キャンパーR、RIW200-ERの6モデル。(ハードルーフモデルは後述)一方、二人仕様はポップ・コンeEのみだ。
前向きシートを持つファミリー用では、RIW200-ERが他とは異なったコンセプトを持つ。土足前提のフロアはペット同伴ユーザーにも使いやすいだろう。長期旅に使いたい場合は、ギャレーが装備でき、冷蔵庫と電子レンジが装備できるツェルトNVが適している。カトラリー引き出し収納など小物収納も充実しており、車内で食事するのに便利だ。
就寝スペース重視なら、ポップ・コン キャンパーRが有利。シンクをベッド下に下げて荷室いっぱいにベッドを展開できる。ファミリーワゴンSS-ERとFOCSルソもギャレーコンソールがあまり出っ張っていないので、就寝時に家具で足元が窮屈になる度合いは低い。ギャレーが不要なユーザーにはFOCSルソがお勧め。
二人仕様のモデルはポップ・コンeE一択。特別仕様のインテリアを持つ「ダークパッケージ」も人気だ。電子レンジが無いが、自由度の高いビルダーなので相談すると良いだろう。
ハードルーフで最適なモデルは?
ハードルーフモデルでは、NVジャックがルーフベッドがあるのに対し、アンナはフロアベッドだけ。従ってNVジャックはファミリーに対応できるが、アンナは二人仕様ということになる。アンナは二人しか就寝できないのに5名が前向き乗車できるマルチモードシートを装備しており、少しちぐはぐな感じがする。二人旅専用のレイアウトも期待したい。