Anna(アンナ)Model LはAtoZが製作する、マツダボンゴバンあるいはトヨタタウンエースバンをベース車に使用したバンコンキャンピングカー。
同社はカムロードキャブコンのアンソニー、ハイエースバンコンのアメリア、軽キャンパーのアメリア ワンまで多彩なラインアップを誇るが、「アンナ」はボンゴバン(あるいはタウンエースバン)とNV200バネットベースのコンパクトバンコンに与えられたシリーズネーム。
アンナには、このアンナModel Lの他、FRPハイルーフを架装したアンナModel MとNV200バネットベースにハイルーフを架装したアンナModel Nがある。
ハイルーフを架装したアンナModel Mとは同じレイアウトを持つが、Model Mにはルーフベッドがあり、大人2名と子供2名が就寝できる。一方このModel
Lは就寝人数は2名となっている。
即ち、ファミリーで車中泊するならModel M、二人ならModel Lでも対応できる。もちろんModel Mで、二人で車中泊する場合は、上下段でゆったり就寝できる。
一方、Model Lは車高が低いので、高さ制限のある駐車場でも駐車することができ、機動性に優れる。日常使用でも使用するなら、Model Lがお勧めだ。
(記事中の価格は全て税込です)
コンセプト
アンナModel Lは全高が低いため日常使用もできるコンパクトなバンコンながら、ギャレーや冷蔵庫、サブバッテリーも装備し、快適な車中泊が可能。
2列目にマルチモードシートを配置することにより、5名が前向き乗車できる他、後ろ向きにすると対座ダイネットを形成する。
平日は仕事や通勤、買い物に、休日は二人で車中泊を伴うドライブにと言った使い方が想定され、車中泊のエントリーモデルとしても適している。
エクステリア
アンナModel Lのエクステリア
ベース車はマツダボンゴバンを使用。オプション(55,000円)でトヨタタウンエースバンも選択できる。ボンゴバンはトヨタタウンエースのOEMバージョンなので、基本的には同じ車種。
また、衝突回避支援システム(スマートアシスト)も標準装備される。
Model MにFRPハイルーフが架装されているのと異なり、Model Lのボディ外側には何も架装されない。そのため、外観は通常のボンゴやタウンエースと変わらず、日常使用で目立つことは無い。
インテリア
A styleのインテリア
AtoZは他のモデルでも専任のインテリアコーディネーターによるインテリアを前面に出しているが、アンナModel Lでも「A style」と「B style」の2種類を選択できる。
B styleのインテリア
どちろもナチュラルトーンの落ち着いたカラーだ。
レイアウト
1200mm幅3名掛けのマルチモードシート
2列目に1200mm幅3名掛けのマルチモードシートを配置しており、前向きにすると計5名が前向き乗車できる。2列目シートでは両側の乗員は3点式シートベルトが用意されている。
また、2列目シートを後ろ向きにすると、後部の簡易シートとで対座ダイネットが形成される。
このレイアウトはコンパクトバンコンでは一般的なもので、日常モードでも休日モードでも使用できる、便利なレイアウトだ。ただしこのレイアウトの弱点は前後の移動が難しいこと。室内が狭いうえに車幅いっぱいにとった2列目シートで動線が切られる。
車内で移動できないので一旦車外に出てエントランスから車内に入るが、雨の日は濡れてしまうことになる。そのような場合は、2列目シートをあらかじめフラットにしておくと良い。
ダイネット
2列目シートを後ろ向きににした対座ダイネット
2列目シートを後ろ向きににすると対座ダイネットになる。Model Mのようにファミリーで使うわけではないので、2名でゆったりくつろぐことができる。テーブルはそれほど大きくないが2名での食事なら特に問題ないだろう。
なお、2列目シートを前向きから後ろ向きに変更するのも、先と同様に、車内で行うのは労力がいる。特にModel Lは天井高も低いため、中腰で行う必要がある。
ダイネットの広さ自体はModel Mと変わらないが、天井高の高さが高いModel Mと比べるとどうしても圧迫感を感じる。特に車内で立ち上がれないというのはストレスにもなる。
ベッド
最大2080×1200mmのベッド
2列目シートと後部ベッドマットをフラットにすると、最大2080×1200mmのベッドになる。ただし足元はギャレーコンソールが出っ張っているため、1020mmの幅になる。1200mmは家庭用ベッドでセミダブルに相当する。
ギャレー
本格的なギャレーセクション
ギャレーは左側後部に配置されている。実用的な大きさのギャレーで中皿程度なら洗うことができる。またシャワーフォーセットも本格的なもので、引き出して車外で使うこともできる。
タウンエースベースのバンコンで実用的なギャレーを持つモデルは少なく、アンナModel L(Model Mも含めて)はこの点で貴重な存在だ。
各12Lの給排水タンク
給排水タンクは各12Lで、シンクの下に収納される。ただしシンクのすぐ下は収納スペースになっており、給排水タンクは更にその下になる。即ち、ベッドボードの下に位置するので、出し入れは少し手間がかかる。車外から直接取り出すのも難しい。
冷蔵庫/電子レンジ
18Lのポータブル冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は18Lのポータブル冷蔵庫が標準装備され、すっきり収納されている。また、収納部の上蓋を占めると、平らになり、カウンターテーブルとして使用できる。
電子レンジは搭載できない。車内で簡単な調理をして食事をしたいというユーザーには残念な点だ。
多目的ルーム
アンナModel Lに多目的ルームは無いが、ベッドボード下に入る小型のポータブルトイレがあれば積んでおくことは可能だ。(ただしクリアランスはかなり厳しい)しかしModel
Mのように小さい子供が乗っている可能性は少ないので、あまり問題ではないだろう。
収納
移動中は後部ベッドの上も荷物を置いておける
車内のスペースに限りがあるので、収納も限られたものになるが、後部ベッド下は大きな収納スペースになる。また、移動中は後部ベッドの上も荷物を置いておける。
ギャレーコンソールの収納スペース
食器などの収納スペースは、ギャレーコンソールのシンクの下に用意されている。
右側後部の収納ポケット
また、右側後部にも収納ポケットが用意されている。
空調
暖房はFFヒーターがオプション設定されているが、冷房のオプションは無い。氷による簡易的な冷房装置を搭載しているモデルもあるが、タウンエースベースのモデルで冷房機器を搭載できるモデルは無い。
ただし、NV200バネットベースのバンコンでは、ダイレクトカーズのリトリートNV popが本格的なセパレートクーラーを搭載しているので、将来的にはタウンエースベースのバンコンにも搭載されることを期待したい。
テレビ/ナビ
テレビのオプション設定は無いが、ナビは好みのものを付けることができるだろう。
電装系
後部右側に収納された電装系
電装系は後部右側に収納されており、105Ahのディープサイクルバッテリーが1個と走行充電が標準装備される。また外部100V電源入力も標準装備されるが、これによる充電機能はオプション。またインバーターもオプションで用意されている。(容量不明)
価格(2021年7月現在:オプションの価格は6月現在:千円台切り上げ:税込)
2WD/4ATで372万円~。その他の価格は表示されていないので分からないが、5MTや4WDも選択できるだろう。
付けておきたいオプションは、外部電源による充電機能(52,800円)、インバーター(165,000円)、FFヒーター(価格不明)、ナビ関連が挙げられる。
他モデル
タウンエース(あるいはそのOEM車)ベースのバンコンモデルは多数存在する。「タウンエースベースのバンコン特集」もご参考いただきたい。
このうち、アンナModel Lに近いモデルは、リンエイプロダクトのコンパクトバカンチェスL MoMo(297万円~)、フロットモービルのシュピーレン(価格不明)、キャンパーアシストのペコラ(371万円~:2021年1月現在)、カトーモーターのメリル(373万円~)、stage21のリゾートデュオルクシオ(345万円~)が挙げられる。
このうちアンナModel Lとレイアウトが類似しているのはペコラ、メリル、コンパクトバカンチェスL MoMoだ。ペコラは冷蔵庫のみ、メリルとコンパクトバカンチェスL
MoMoは冷蔵庫と電子レンジが搭載できる。しかしいずれもギャレーは持たない。
まとめ
結局、ノーマルルーフのタウンエースベースのバンコンで、長期旅用にギャレー、冷蔵庫、電子レンジを持ち、更に日常用途用に2列目に前向きシートを持つモデルは存在しない。
従って、何かを割り切らねばならないのだが、冷蔵庫と電子レンジを取ったのがメリルとコンパクトバカンチェスL MoMo、冷蔵庫とギャレーを取ったのがアンナModel
L、ギャレー、冷蔵庫、電子レンジを取ったが前向きシートを捨てたのがリゾートデュオルクシオだ。
実際に購入を判断する場合は、これにインテリアやレイアウト、その他の装備、そして価格などの要素が絡んでくる。この中にあってアンナModel Lは、特別突出した特徴は無い。しかしもちろん目立つ欠点もない。
AtoZはキャブコンまで手掛けるビルダーで、その技術やノウハウはコンパクトなモデルにも還元されている。また一貫してインテリアを全面に打ち出している点も、インテリアを重視する顧客には大きなプラスポイントになる。これらがアンナModel
Lのアピールポイントと言える。
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