ディアラジュニア ツーリングはマックレーが製作する、日産NT100クリッパートラックをベース車にした軽キャブコン。ディアラジュニア ツーリングは2021年秋発表で、従来モデルに代わる新モデルとなる。レカロシート、ウインドウクーラー、ソーラーシステムが全車標準装備となり、間接照明などのインテリアもグレードアップされている。
ディアラ ジュニア ツーリングには、スタンダード、リミテッド、スーパーリミテッドの3種のグレードが設定された。リミテッドとスーパーリミテッドにはリチウムイオンバッテリーを標準装備。
同社はキャンターベースの「バレンシア520」からこのディアラジュニアまで、大小のキャブコンを製作している。また日産NV200バネットをベース車にしたバンコン「ディアラ ボックス」や軽トラック用のトラックキャンパー「エルミタ」もラインアップに加えている。
今回取り上げたディアラ ジュニア ツーリングは以前製作していたボンゴトラックベースの「ディアラ」を軽キャンパーにシュリンクダウンしたレイアウトを持つ。ディアラはベース車の生産終了により現在は製作されていないが、そのエッセンスを継承している。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
コンセプト
日産NT100クリッパーをベース車にした軽キャブコン。軽トラックベースながら、シェルは軽8ナンバー規格を超えるため、登録は普通車8ナンバーとなる。
そのため税金は多少高くなるが、広い室内を確保でき、長期旅にも対応するよう、ギャレー、冷蔵庫、電子レンジを装備することができる。また、ウインドウエアコンを全車に標準装備する。
リミテッドとスーパーリミテッドにはリチウムイオンバッテリーを標準装備。更にスーパーリミテッドには三元系リチウムイオンバッテリーを採用している。
同社は「完全自立型」キャンピングカーをコンセプトにしており、外部電源が無くても電気を確保できるよう発電機を搭載できるようになっている。災害時などでは発電機が実用的なエネルギー源になる。
アピールポイント
・軽トラックベースながら広い室内を持つ普通車8ナンバー登録
・長期旅に対応するギャレー、冷蔵庫、電子レンジ搭載可能
・全グレードにウインドウエアコン標準装備
・全グレードにソーラーシステム標準装備
・全グレードにレカロシート標準装備
・上位グレードにはリチウムイオンバッテリーを標準装備
・最上位グレードにはより安全性の高い三元系リチウムイオンバッテリーを標準装備
・積んだまま運転できる発電機搭載可能
・間接照明を採用したインテリア
エクステリア
ディアラジュニア ツーリングのエクステリア
展示車のベース車は日産NT100クリッパー。これはスズキキャリイのOEM車で、基本的には同じ車だ。これにFRP一体型のシェルを架装している。なお、スズキキャリイやマツダスクラムトラックでも製作できる。
特徴は、シェルの幅がベース車の幅(1475mm)より広く(1760mm)、また全長もベース車(3395mm)より長く(3800mm)なっており、従って普通車8ナンバー登録となる。
ウインドウはアクリルではなくガラスの引き戸を採用。走行中にも開けることができ、換気ができるのがメリットだ。またエントランスドアには網戸の中間ドアが組み込まれている。
インテリア
インテリアカラーは自由に選択できる
展示車は鮮やかなオレンジ色のシートとオフホワイト系の家具の組み合わせで、明るく楽しい室内になっていた。家具の作りは特別高級感があるわけではないが、不満点は無い。
ツーリングでは間接照明を各所に使用しており、明るくムーディーな室内を演出している。なお、インテリアカラーは好みに応じて自由に選択できる。
レイアウト
シェルを拡張して普通車8ナンバー登録にしているメリットは、レイアウトの余裕となって表れている。
室内のほとんどはダイネットに充てられており、広い対座ダイネットが実現。また、ダイネットを展開したベッドには大人3名が就寝でき、更にバンクベッドで子供が就寝できる。最後部にギャレーが配置されている。
乗車定員は右側のベンチシートに2名とフロントシートに2名で計4名。前向き乗車はフロントシートの2名となるため、ロングドライブやクルマ旅では実質2名乗車となる。
シェルが拡張されているとはいえ、基本的には2名での使用が想定されるので、バンクベッドで就寝するケースは少ないかもしれない。バンク部は大容量の収納としても使える。
ダイネット
横座り対座スタイルのダイネット
ダイネットは横座り対座スタイルで、3~4名でテーブルを囲める。テーブルは大きく、車内での食事もゆったりとれる。
ベッド
3名が就寝できるベッド
ダイネットはシートバックをベッドマットとして移動するだけで広いベッドになる。大きさは1830x1610mm。このベッド幅は家庭用ではクイーンベッドの幅(1600mm)に相当し、キャンピングカーの規定では3名が就寝できる。
スライドして拡張できるバンクベッド
バンクベッドはオプションでスライドして拡張できるようになり、大きさは1780x1600mm、手前から100mm入ったところで幅は1400mmとされている。身長方向は1800mmにわずかに届かないので大人用としてカウントされないが、就寝することはできる。
このオプションを選択するかどうかは迷うところかもしれない。収納として割り切るなら、スライド拡張機能は無い方が使いやすいだろう。
もちろん二人旅で上下に分かれて就寝するという使い方もある。読書灯を付けておくと、就寝前にプライベートな時間を持つことができる。長期の二人旅ではプライベートな時間とスペースは重要だ。
ギャレー
実用的な広さのギャレー
最後部に配置されたギャレーコンソールは実用的な広さを与えられている。シンクは丸形で中皿程度なら洗うことができる。シャワーフォーセットは引き出して車外で使うことも可能だ。
コンロはポータブルカセットコンロをセットして使用する。このクラスのキャンピングカーで常設コンロを持つモデルは無いが、長期旅で毎日コンロを使用するユーザーはコンパクトなシンク一体型のコンロを選択する手もあるだろう。
なお、跳ね上げ式の調理台も用意されており、調理スペースを拡張することができる。広い調理スペースができ、手の込んだ料理も可能だ。
冷蔵庫/電子レンジ
15Lの上開き式ポータブル冷蔵庫
冷蔵庫は15Lの上開き式ポータブル冷蔵庫がスタンダードグレードではオプション、上位グレードでは標準装備される。設置スペースも用意されており、すっきり収納することができる。製氷も可能だが、冷蔵と製氷は同時にできない。
また家庭用100V仕様の電子レンジも同様に設置される。こちらも収納スペースが用意されている。なおインバーターはスタンダードグレードではオプションだが、上位グレードは1500Wが標準装備される。
多目的ルーム
ポータブルトイレを収納できるスペースが用意されている
ディアラ ジュニア ツーリングに多目的ルームは無いが、ポータブルトイレを収納できるスペースが用意されている。ポータブルトイレは引き出して使用することができる。
ただし、囲いも何も無いので、一人旅なら良いが、他に人がいる場合は難しい。あくまで緊急用として設定されている。なお、ベンチレーターはオプションなので、トイレを使う予定があれば装備しておきたい。
収納
下段ベッド下の収納
ディアラ ジュニアの収納は充実している。ポップアップルーフが付く軽8ナンバーキャブコンに比べ、普通車8ナンバー登録の軽キャブコンはクローズドなシェルを持つため、オーバーヘッド収納が装備できる。
ディアラ ジュニア ツーリングの場合、オーバーヘッド収納はダイネット上とギャレー上の2面に設置され、大きな収納力を持つ。
ベンチシート下の収納
ベンチシート下も収納になっており、ここも大きな収納スペースになる。また、ベッド状態にした場合は、ベッドの下が全て収納スペースとして使える。
車両後部の外部収納
更に、外部収納は車両後部からアクセスでき、給排水タンクも車外から直接出し入れできる。右隣の小さな扉はベンチシート下の収納用で、車外から釣り竿や折り畳んだテントなど長物を収納するのに便利だ。
後部左側のハンガーポール
後部左側にハンガーポールが用意されている。少々生活感が出るが、このような装備は大変便利なことは間違いない。
空調
FFヒーターの吹き出し口(下の黒い部分)
暖房はFFヒーターがオプションで用意されているが、吹き出し口はベッドの高さの上に取り付けられている。一般的にFFヒーターの吹き出し口は下の方に取り付けられているが、これではベッド状態にした場合下に熱気がこもってしまい、上に上がってこない。
ベッドより上に取り付けてあれば室内全体が温まり、ベッド下に置いた荷物が熱くなることは無い。これは三島ダイハツのクオッカなどでも考慮されているが、細かい点ながら重要なポイントだ。
全車にウインドウクーラーが標準装備される
冷房はディアラ ジュニア ツーリング全車にウインドウクーラーが標準装備される。このクーラーは外部電源かオプションの発電機で駆動することが想定されている。スタンダードグレードのディープサイクルバッテリーでも駆動できるが実用的な時間は期待できない。
リチウムイオンバッテリーの場合はもう少し長時間運転が期待できる。100Ahのリチウムイオンバッテリーなら2時間程度、200Ahなら4時間程度運転できる。
なお、ベンチレーターは先述のようにオプションとなっている。
テレビ/ナビ
19型のテレビがオプション設定されている
19型のテレビがオプション設定されており、左側中央に設置される。ナビは、希望のものが取り付けできる。
電装系
スタンダードグレードでは、105Ahのディープサイクルバッテリーが1個と走行充電が標準装備される。外部電源入力と充電機能も標準装備だ。更にスタンダードグレードには100Wの、上位2グレードには200Wのソーラーシステムが標準装備される。
また、リミテッドとスーパーリミテッドにはリチウムイオンバッテリーを標準装備する。リミテッドにはリン酸鉄系、スーパーリミテッドには三元系のリチウムイオンバッテリーとなる。
なお、スーパーリミテッドでは走行充電は30Aのチャージャーが標準装備されるので、比較的短時間での充電が可能。
インバーターはスタンダードグレードには1500Wのものがオプション設定されている。上位グレードには1500Wのインバーターが標準装備される。
1600Wの発電機がオプション設定されている
ディアラ ジュニアには1600Wの発電機がオプション設定されている。発電機は後部の外部収納に収納され、使用する場合は吸気と排気用の扉を開ける。従って走行時は使用できない。
発電機の給気(右側小窓)と排気(左の縦長)扉
燃料のガソリンは、ベース車のガソリンタンクから引いてくることもできる。この場合は停止のみ車内からできる。ただし、始動は車外で行う必要があり、いずれにしても吸排気の扉を開ける必要があるので車外に出る必要がある。雨の日は多少面倒だ。
リチウムイオンバッテリーと発電機を積んでおけば完璧だが、高価になりすぎると考える場合は、発電機を選択する手はある。これなら電気の心配はないしクーラーも心おきなく使うことができる。
ただし、発電機が使える環境は少なくなってきている。収納されているとはいえ、決して静かではない。走行中に発電機でリチウムイオンバッテリーを充電し、夜はバッテリーで賄えれば理想的なのだが。
価格(2021年11月現在:千円台切り上げ:税込)
最も安価なベーシックグレードのDX 5MTで340万円~。最も高価なスーパーリミテッドGX 4WD/3ATは 497万円~となっている。クーラーが標準装備されているので、やはりリチウムイオンバッテリーは装備しておきたい。
付けておきたいオプションは、スタンダードではインバーター+外部電源自動切り替え(165,000円)、FFヒーター(253,000円)が挙げられる。上位グレードは標準装備が充実しているので、特に追加の必需オプションは無い。
他モデル
普通車8ナンバーの軽キャブコンは、MYSミスティックのレジストロ(352万円~:ピクシストラックスタンダード 2WD/3AT) 、キャンピングカーオーゼットのカノア(381万円~:キャリイトラック/特装2WD/3AT)、オートショップアズマのラ・クーン(268万円~:ハイゼットトラック/2WD/5MT)/ラ・クーンⅡ(313万円~:同/2WD/5MT)、stage21のリゾートデュオ バンビーノ オハナ(438万円~:ハイゼットトラックエクストラ”SAⅢt”/2WD/4AT)がある。
このうちクーラーとリチウムイオンバッテリーを搭載できるのはカノア、リゾートデュオ バンビーノ オハナ、レジストロが挙げられる。特にカノアは冷蔵庫も横開きの本格派だ。
まとめ
ディアラジュニアはニューモデルとなり、クーラーの全車搭載やリチウムイオンバッテリーの選択肢ができたことにより、魅力的なモデルとなった。特に三元系リチウムイオンバッテリーの採用はリチウムイオンバッテリーの今後の方向性を示唆する先進的な試みだ。
また「完全自立型」キャンピングカーは同社のコンセプトで、発電機の搭載は、災害時に実用的に役に立つキャンピングカーを考えるなら納得できるものだ。同社は地味なビルダーだが、目の肥えたユーザーが多いのも理解できる。
あえて要望を書いておくと、長期旅を想定するなら横開き式冷蔵庫が装備できれば嬉しい。しかし、普通車8ナンバー登録と言っても、軽トラックベースであることには変わりは無いので、あまり贅沢を言っても仕方がない。
もう一クラス上のタウンエースベースのキャブコンが選択肢に加われば、選択肢に幅が出るだろう。同社が作るタウンエースのライトキャブコンと言うのも見てみたい気がする。
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