カノアはキャンピングカーオーゼットが製作する、スズキキャリイトラックをベース車にした軽キャブコン。ベース車はマツダスクラムトラック(キャリイのOEM)でも製作できる。
同社は東京都あきる野市に拠点を置くビルダーで、「ラミータ」に代表されるハイエースベースのバンコンをラインアップしている。カノアは同社初の軽キャンパーながら、完成度の高いキャブコンとして登場した。
(記事中の価格は全て税込です)
コンセプト
まず大きなポイントは、カノアは軽トラックベースながら、普通車8ナンバー登録ということ。シェルはキャブ部より幅が広くなっている。軽キャンパーなのになぜわざわざ普通車登録なのか、という疑問もあると思うが、これは居住性の向上が大きな目的。
もちろん税額は上がるが、余裕のある居住性は魅力だ。それならタウンエースベースのライトキャブコンにすればよいのではという意見があるかもしれないが、それはそれで更に高価になる。
更に、クローズドなシェル(=断熱性や防音性が高い)を軽キャブコンにもとめると、普通車8ナンバー登録車しかない。軽8ナンバー登録のキャブコンはほとんど全てポップアップルーフ仕様だ。
ということでカノアはクローズドなシェルで広い室内を持つのが特徴。更に軽キャンパーでは今までなかった間接照明のお洒落なインテリアと、エアコン+リチウムイオンバッテリーを搭載できるのが新しい。
大人2名と子供2名が就寝できるが、前向きシートは運転席と助手席のみなので、長期旅やロングドライブなら二人での使用がお勧めだ。
エクステリア
カノアのエクステリア
ベース車はスズキキャリイトラック、もしくはマツダスクラムトラック。これにFRP製のシェルを架装する。先にも書いたように、シェル幅はキャブ幅よりも広く、従って普通車8ナンバー登録となる。
シェルは完全な密閉型で断熱性、防音性に優れる。またバンクもあり、子供用ベッドとして使用できる。
両サイドと後部には大きなアクリル2重窓が標準装備されており、断熱性を確保しつつ明るい室内を実現している。この窓ユニットには網戸とシェードも組み込まれており、簡単に網戸やシェードモードにできる。(動画参照)
ベース車はKCグレードと特装車グレードを選択できる。特装車グレードは後輪に1枚増しリーフが追加されている。
また、4WD/5MTを選択できる。きびきび走りたいユーザーはMT車を選択するのも良いだろう。
インテリア
間接照明がお洒落なインテリア
普通車8ナンバーだけあって、内部は広い。また、間接照明を使った室内のコーディネーションは高級感もある。
黒地に赤い線が入ったシートはお洒落で、白系の家具とうまくマッチし、モダンリビング的な雰囲気も醸し出している。
リクライニングする専用シート
なお、運転席、助手席のシートはオリジナルのひじ掛け付きリクライニングシートを採用しており、これも同じカラーリングで統一されている。軽トラックの純正シートはかなり貧弱なものなので、カノアのシートは非常に有意義なものだ
レイアウト
レイアウトは横座りロングシートとギャレーコンソールの組み合わせ。ギャレーコンソールにテーブルをセットする形でダイネットが形成される。
横座りロングシートとギャレーコンソール
バンク部は子供用ベッドとして使用できるので、小さい子供を持つファミリーでも車中泊できる。前向き乗車できるシートが後部に無いので、二人旅に適したレイアウトだ。
ダイネット
ロングシートのダイネット
ロングシートに並んで腰かけるスタイルのダイネットで、ギャレーコンソールに固定された1本足のテーブルがセットできる。テーブルは大きく、2人程度の食器なら十分に置くことができる。
ただしこのままでは足を伸ばして寛ぐことはできないため、寛ぐ場合はやはりベッド状態にするのが良いだろう。
ベッド
ダイネットを展開したベッド
ダイネットを展開すると2100x1200mmのベッドになる。1200mmは家庭用ベッドではセミダブルに相当し、大人2名が就寝できる。なお、身長方向は2100mmあるので長身のユーザーも窮屈感なく就寝できる。
ロングシートのためベッド展開は簡単で、シートバックで通路部を埋めるだけで良く、就寝前に労力を使う必要はない。ベッド展開してもギャレーや冷蔵庫は問題なく使える。
子供用のバンクベッド
もう一つのベッドはバンクベッドで、こちらは1600x850mmの大きさ。1800mmの長さが無いので子供用に位置付けられる。ベッドセッティングは特に必要なく、すぐに就寝できる。
カノアを二人旅で使う場合は、バンクベッド部は大きな収納になり、ふとん派のユーザーが昼間に寝具を収納しておくのに最適だ。
ギャレー
ギャレーセクション
ギャレーコンソールは車内左側後部に配置されている。ここにはシンクが埋め込まれているが、シンクは中皿程度なら十分洗える大きさだ。また調理面が広く、ポータブルカセットガスコンロを置いてもまだ余裕がある。
正面に大きな窓があるので、調理する場合でも手元が明るい。なおオーバーヘッド収納の下にLEDスポットライトが付いているので、夜でも明るいキッチンになっている。
ギャレーコンソールの下には各10Lの給排水タンクが収納されている。テーブルがあると出し入れがし難いのが難点だが、テーブルは簡単に着脱できるので、出し入れの際はテーブルを外すと良いだろう。
冷蔵庫/電子レンジ
46Lの横開き式冷蔵庫(OP)
冷蔵庫はオプションだが、ライトキャブコンクラスでも珍しい(軽キャブコンでは他にない)46L横開き式冷凍冷蔵庫を装備できる。もちろん冷蔵と冷凍/製氷が同時にできる本格的な冷蔵庫だ。また、電子レンジもオプションで用意されている。
1500Wインバーターは標準装備されているので、電子レンジを搭載するとバッテリーで使用することができる。これだけ揃っていれば、軽キャブコンと言えども十分長期旅にも対応できるだろう。
ユーティリティールーム
カノアには当然トイレルームは無く、ポータブルトイレを置くスペースもない。ここはカノアに限らず軽キャンパーの限界で、トイレに関しては車外のトイレを使用するしかない。
収納
3面に設置されたオーバーヘッド収納
カノアは収納に関しても極めて充実している。左右と後部3面に連なったオーバーヘッド収納は壮観で、かつ奥行きも深く、見せかけではない収納力を持つ。
ロングシート下後部の収納
また、ロングシート中央と後部の下も収納スペースになっており、大き目のバッグでも収納しておくことができる。マットが3分割されているので、開けるのに苦労しない。なお、シートは簡易ながら最後部にもあり、ここも収納スぺースになっている。
シート下収納には車外からもアクセスできる
そしてこれらのシート下収納には車外からもアクセスできる。キャンプ用具などを収納するには車外からの出し入れが便利だ。
エントランス横のシューズボックス
更にエントランス横にはシューズボックスも用意されている。これも十分な容量を持ったものだ。
空調
残念ながら今回の展示車には間に合わなかったそうだが、12Vのクーラーがオプションリストにも書かれており、現物は近いうちに見られるだろう。更にリチウムイオンバッテリーも選択できるので、実用的で強力な冷房システムが装備できる。
なおFFヒーターはオプションで装備できる。また、ベンチレーターはMAXFANが標準装備される。
テレビ/ナビ
カーナビとバックカメラシステムが標準装備されるのも特筆できる。またサイズは不明だが、リアテレビシステムがオプションで用意されている。ETC車載器はオプションで用意されている。
電装系
リチウムイオンバッテリー(OP)も選択できる電装系
100Ahのディープサイクルバッテリー1個が標準装備される。また走行充電はもちろん、外部100V電源入力と充電機能、1500Wインバーターも標準装備される。これらはほぼ必需品なので、ユーザーには嬉しい設定だ。
同社オリジナルのリチウムイオンバッテリー
そして更に同社オリジナルのリチウムイオンバッテリーがオプション設定されている。容量は100Ahと125Ahが選択できる。加えて150Wソーラーシステムがオプション設定されている。即ち電装系は完璧の備えだ。
価格(2021年4月現在:千円台切り上げ:税込)
2WD/3AT KCグレードで376万円~。4WD/3ATで390万円~となっている。装備しておきたいオプションは、FFヒーター(231,000円)、46L冷蔵庫(121,000円)が挙げられる。
また必要に応じて、ツインサブバッテリー(33,000円)、電子レンジ(27,500円)、150Wソーラーシステム(165,000円)、そして余裕があれば12Vクーラーシステム(660,000円)を付けておくと、オールシーズン快適に過ごせる。
他モデル
普通車8ナンバー登録の軽キャブコンは、MYSミスティックのレジストロ(352万円~)、オートショップアズマのラ・クーン(268万円~:2WD/5MT)とラ・クーンⅡ(313万円~:2WD/5MT)、stage21のリゾートデュオバンビーノオハナ(438万円~)、マックレーのディアラジュニア(436万円~)が挙げられる。(表記が無い場合は全て2WD/3AT)
このうち、ラ・クーンとラ・クーンⅡを除き、エアコンが装着できる。レジストロはスポットクーラー(オプション)で、ディアラジュニアとリゾートデュオバンビーノオハナには家庭用ウインドウクーラー+200Ahリチウムイオンバッテリーが標準装備されている。
まとめ
カノアは「白ナンバー軽キャブコン」のマーケットに参戦した最新のモデルで、洗練されたインテリアと充実した装備が特徴となっている。更に先進のモデルらしく、リチウムイオンバッテリーとエアコンも装備できる。
このカテゴリーは軽キャンパーなのに白ナンバーということで、税金面のメリットを期待するユーザーからは敬遠されていたが、その居住性の良さと取り回しの良さで、参入モデルが増えてきた。
タウンエースベースやNV200バネットベースのキャブコンは軽以上、ハイエース以下のちょうどよいサイズとされてきたが、この白ナンバー軽キャブコンのカテゴリーは、もう一段階選択肢を増やすと期待できる。
軽ベース車で大き目のシェルを背負っていることから動力性能の心配はあるかもしれないが、普通の道路なら全く問題ない。(マックレーディアラジュニアの走行動画はこちら)もちろんパワフルと言うわけではないので、もとよりゆっくり旅するユーザーには狙い目かもしれない。
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