siesta(シェスタ)はカトーモーターが製作する、ハイエーススーパーロングをベース車にした、バンコンキャンピングカー。
同社は新潟県燕市に本拠を置くビルダーで、ハイエースをベース車にしたバンコンを中心にラインアップしている(一部キャブコンもある)。 特に断熱には定評があるほか、木材を使った温かみのあるインテリアは同社のモデルの特徴。
シェスタは、ジャパンキャンピングカーショー2025で発表されたニューモデルで、同社の以前のモデルであるウインディKと同じレイアウトを採用しているが、最新モデルだけあってインテリアはさらに洗練されたものになっている。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
ハイエーススーパーロングをベース車にするバンコンキャンピングカー。右サイドにエクステンションウインドウを架装しているのが外観上の特徴。インテリアは同社のモデルに共通する木材を使用し高級感がある。
リビングスタイルのダイネット、常設ダブルベッド、多目的ルームのレイアウト構成は他にほとんど例が無く、二人旅には理想的なレイアウトのひとつとなっている。
家庭用セパレートエアコンとリチウムイオンバッテリー、FFヒーターがオプションで選択でき、年間を通して快適な室内を約束する。同社の定評のある断熱処理は、冷暖房の効率を向上させる。
アピールポイント
・優れた断熱処理
・常設ベッドと多目的ルームがある二人旅に理想的なレイアウト
・リビングスタイルのダイネット
・更に洗練された木材の温かみのあるインテリア
・家庭用セパレートエアコンを装備可能(OP)
・最大400Ahのリチウムイオンバッテリーを搭載可能(OP)
ベース車とエクステリア

シエスタのエクステリア
ベース車はハイエーススーパーロングのキャンパー特装車が使用されるが、DX+GLP(GLパッケージ)、あるいはワゴンのグランドキャビンでも製作できる。DX+GLPはDXグレードに外観のみ見映えをよくしたパーツを施したものだが、内装はバンレベル。
外観の特徴は、右サイドにエクステンションウインドウを架装している点。後部の横置きダブルベッドを拡張するだけでなく、前部まで伸びているため、ダイネットの窓を出窓風にし、更にアクリル2重窓化することにより、断熱性を高めている。
インテリア

シェスタのインテリア
インテリアはシェスタと言うより、同社のモデル全体の大きな特徴だ。木材の美しさを全面に取り入れた室内だが、いわゆる山小屋風のインテリアではない。例えば天井には中央に木材を貼っているが、周囲は滑らかでカーブを持たせ、間接光が効果的に映えるようにしている。

シェスタの室内
なお、シェスタのインテリアは木材を生かしたものであることは従来のモデルと同じだが、従来のモデルはレトロ的な重厚感があったのに対し、シェスタでは洗練されたモダンなものになっている。コンセプトを継承しつつ進化している。
レイアウト
前部にリビングスタイルのダイネット、中央にギャレーと多目的ルーム、後部に常設の横置きダブルベッドの構成。実は、これと同じ構成のレイアウトは他にない。RVビックフットのACSリトルノオクタービアMは近いが多目的ルームは無く、ナッツRVのバーデンに代表されるレイアウトは、対座ダイネットだ。
希少だから良いというわけではないが、対座ダイネットに比べ動線が通り、広々感のある室内となり、二人旅ならかなり理想的なレイアウトと言える。
ダイネット

L字型のリビングダイネット
同社お得意の、「運転席、助手席のシートバックを前倒して作る後ろ向きシート」は限られた車内空間を有効に使うための優れた手段だ。他モデルには回転して後ろ向きになるシートもあるが、デュカトならまだしも、ハイエースのスペースではやりにくい。
その点、シートバックを前方に倒すだけの方法は、極めて簡単だ。この後ろ向きシートが有用になるのは、足を伸ばして寛ぐとき。ダイネットで寛ぐ方法を提案しているモデルは、あまり多くない。
その意味では、助手席の同乗者も足を伸ばして寛げるように、オットマンのようなものが欲しいところだ。なお、ベンチシートのメリットは、シート下が大きな収納スペースになること。荷物が多くなるクルマ旅に適しているもう一つの理由だ。
ベッド

後部のダブルベッド
後部の常設横置きダブルベッドは、1670x1380mmの大きさ。エクステンションウインドウを含めると1880mmとなり大人用のベッドとしてカウントされる。ただし、エクステンションウインドウは一部なので、長身のユーザーは多少窮屈かもしれない。実際に横になって確認することをお勧めする。

ダイネットを展開したベッド
ダイネットも展開すればベッドになる。ベッドサイズは1350x900mmなので小さな子供用だが、運転席の座面も加えると、1700mmまで延長できる。このレイアウトで子供が乗ることは少ないと思われるが、大人が寛ぐ空間として使用できるだろう。
ギャレー

広いギャレーセクション
左サイドに設置されたギャレーキャビネットは、広い調理スペースがあり、白い天板が美しい。シンクとフォーセットがビルトインされているが、コンロはポータブルコンロを必要に応じてセットする。

各20Lの給排水タンク
シンクの下には各20Lの給排水タンクが収納されている。タンクの出し入れは、エントランスまで運ぶ必要があるため、多少面倒だ。配管は多少長くなるが、ダーウィンQ3のように、最後部に給排水タンクを設置するという方法もある。
冷蔵庫/電子レンジ

49L横開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は49L横開き式が標準装備される。エントランスのすぐ横に設置されているため、車外からでも直接アクセスできる。
キャンプなどで使用することが多いユーザーはこちらの冷蔵庫の位置が適しているが、クルマ旅ユーザーでは、シンク・給排水タンクと冷蔵庫の位置は入れ替えた方が使いやすいだろう。

電子レンジも標準装備される
家庭用の100V仕様の電子レンジが標準装備される。設置場所は通常ベッドの下になっているので、少し使い難いかもしれない。先述のように給排水タンクを最後尾に置くと、ギャレーキャビネットに電子レンジを設置することができる。
多目的ルーム

トイレルームにもなる多目的ルーム
右サイド中央には多目的ルームが配置されている。ポータブルトイレやラップ式トイレを置いてトイレルームにすることもできる。温水シャワーのオプションは設定されていない。
トイレルームにする場合、できればベンチレーターとFFヒーターの吹き出し口も欲しいところではある。
収納

キャブ上部の収納棚
残念ながら扉付きのオーバーヘッド収納は設置されていない。高所にある収納は、食器や調理用具を清潔に収納しておくことができる。(床に近い収納は埃が付きやすい)運転席、助手席の上部にある収納棚は、寝具などを収納しておくのに便利だろう。

ベッド上の収納
ベッドルーム左サイドにも棚が設けられているが、大きなものは収納できない。就寝時に眼鏡、財布、スマートフォンを置いておくのに便利だ。スマートフォンを充電するためのUSB電源が望まれる。

シューズボックス
エントランス横にはシューズボックスが設置されている。二人分なら十分な大きさだ。

後部のラゲッジスペース
後部のベッド下は大きなラゲッジスペースになる。キャンプ用具などの大きな荷物を車外から直接積み込むことができる。さらに、ベッドボードを取り外すと、自転車等の大きな荷物も積み込むことができる。

ベッド下左側の収納
ベッド下には左右に扉付きの独立した収納があり、大きな収納力がある。左サイドの下側は収納になっている。

ベッド下右側の収納
右サイドにも収納が用意されている。

外部シャワー
右サイドのキャビネットには車外で使えるシャワーが設置されており、10Lの給水タンクが収納されている。アウトドアアクティビティの後シャワーを使ったり、ペットの足を洗ったりするのに便利だ。
空調

車載用セパレートクーラーを標準装備
ダイキンの薄型エアコン「リソラ」がオプションで設置できる。室内機は、ギャレーの上部に設置される。FFヒーターとマックスファンベンチレーターもオプションとなっている。
テレビ/ナビ
フリップダウンモニターがオプションで用意されている。19型などのテレビのオプション設定は無いが、必要に応じて取り付けられるだろう。ナビはパナソニック製の7型と10型がオプション設定されているが、好みのものを取り付けられるだろう。
電装系
標準では100AhのAGMバッテリーが1個装備される。走行充電と、外部100V電源入力とチャージャーは標準装備だが、1500W正弦波インバーター、180Wソーラーシステムはオプション。
リチウムイオンバッテリーがオプションで用意されており、200 、300 、400Ahのものを選択できる。家庭用エアコンを選択した場合は、リチウムイオンバッテリーを装備することをお勧めする。
価格(2025年2月現在:千円台切り上げ:税込)
ガソリンDX+GLP 2WDが698万円、特装が729万円、ディーゼルDX+GLP 2WDが747万円、特装が777万円(ナビ関連は除く)、ワゴン
グランドキャビン(ガソリンのみ)が784万円~となっている。4WDは各28万円高。
付けておきたい必需オプションは、1500W正弦波インバーター(176,000円)、FFヒーター(275,000円)が挙げられる。家庭用エアコン(638,000円)と少なくとも200Ahリチウムイオンバッテリー(440,000円~)、180Wソーラーシステム(203,500円)も是非付けておきたい。これらを装備すると、900万円以上になる。
他モデル
ハイエーススーパーロングをベース車にするバンコンで、シェスタと同じレイアウトを持つモデルは他にない。RVビックフットのACSリトルノオクタービアM(1135万円~)はリビングスタイルのダイネットと後部に常設横置きダブルベッドを持つが、多目的ルームは無い。
レクビィのプラスSL(831万円~)は、横座り対座の広いリビングスタイルのダイネットと広い多目的ルーム、広いベッドを持つが、常設ベッドではない。
唯一ホワイトトップのアジサシ(価格不明)が、常設ベッドは縦置きだが、これらの3要素を合わせ持つ。ただし、ギャレーは狭く、冷蔵庫は引き出し式で容量が小さく、電子レンジも用意されていないのが難点だ。即ち、シェスタはありそうで他になく、かつ二人旅に最適なレイアウトを持つ1台だ。
まとめ
上記のように、シェスタは二人旅に最適なモデルのひとつで、かなり完成度の高いモデルだ。ただし、たまに3名以上で長距離乗車することがある場合は、乗り心地や安全面(特に3点式シートベルト)を考慮して、前向きに3名以上が乗車できるレイアウトが良いだろう。
あえてシェスタの短所をあえて挙げておくと、後部ベッドの身長方向の長さがある。これはこのスタイルのベッドを持つ全てのバンコンモデルに言えることだが、長身のユーザーは実際に横になって確認すると良いだろう。
もう1点は、オーバーヘッド収納が少ない点。食器や食料品、調理用具などの収納は、シート下ではなく高い位置に収納したい。確かにベッド下にはキャビネットの収納スペースが設けられているが、アクセスしにくい。
しかし、木材の温かみのある同社のインテリアは多くのユーザーを満足させてきたし、更に現代的に洗練されたシェスタの室内は、新たなファンを獲得するだろう。気になる1台ではある。
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