プラス(Place)SLはレクビィが製作する、ハイエーススーパーロングをベース車に使用したバンコンキャンピングカー。
同社は主にハイエースベースのバンコンを製作する、バンコン専門ビルダー。フラグシップの「シャングリラ」やプレミアムクラスの「カントリークラブ」、あるいはRBL(RECVEE BLUE LINE)クラスの「ホビクルオーバーランダーⅣ」など多岐にわたるラインアップを展開している。
プラスシリーズは同社の中核をなすスタンダードクラスで、スーパーロングから標準ボディハイルーフまでが揃う。高級感を保ちながら、比較的安価な価格設定のシリーズとなっている。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
ハイエーススーパーロングの広い室内を、横座り対座ベンチシートのダイネットを中心にしたレイアウトで、広々感のある室内としている。最後部には独立したトイレルームを持ち、前部には広いギャレーがあり、二人旅に最適なレイアウトおよび装備となっている。
標準装備の充実度により、「標準仕様」、「Superior仕様」、「 Superior+A/C仕様」が選択でき、Superior仕様にはFFヒーター、電子レンジ、インバーター、ソーラーシステム、テレビ等が標準装備される。
またSuperior+A/C仕様にはSuperior仕様の装備に加え、家庭用セパレートエアコンとリチウムイオンバッテリーなどが標準装備される。
アピールポイント
・広々感のある横座り対座ベンチシートダイネット
・高級感のある「網代(あじろ)仕立て」の家具
・最後部の広い多目的ルーム(ポータブルトイレ標準装備)
・前部の広いギャレー
・豊富な収納
・エアコンを装備可能(Superior+A/C仕様)
ベース車とエクステリア
プラスSLのエクステリア
ベース車はハイエーススーパーロング特装車。ボディ外側への架装は無く、見た目は通常のハイエースと変わらない。
ガソリンとディーゼルが選択でき、どちらも2WDと4WDが選択できる。運転席+助手席エアバッグやTSSP(Toyota Safety Sense P)も標準装備される。
インテリア
「網代仕立て」の家具のインテリア
プラスシリーズ共通の「網代仕立て」の家具が標準装備され、エスニックなトーンと高級感を醸し出している。家具やシートの作りは同社の上級モデルの流れを汲み、洗練された仕上げになっている。
照明はラインLEDによる間接光と、オーバーヘッド収納キャビネット下のスポットライトを使用しており、夜の室内もムードのあるものにしている。ギャレー上の照明付きガラストレーもお洒落だ。
レイアウト
前部にダイネット、中央に横座り対座ベンチシート、最後部に多目的ルームを配置する。プラスDDのように常設ベッドは無いが、室内を見渡せる広々感が特徴。長期にわたるクルマ旅でも閉塞感が少ない。
前向きシートは運転席と助手席のみなので長距離で乗車する場合は2名が適しているが、ベンチシートにも片側3名が座れるので、計8名が乗車できることになる。3点式シートベルトは運転席と助手席の2名分。
また、ダイネットを展開するベッドでは、キャンピングカー要件上大人3名が就寝できるスペースが確保されている。
ダイネット
横座り対座ダイネット
両側に2脚のベンチシートがあり、それぞれ3名程度が着座できる。大勢で談笑したり食事したりできるが、2名の場合は広々と使うことができ、長旅でも疲れが少ない。また、それぞれのシートで足を伸ばして寛ぐこともできる。
テーブルは左側ベンチシートの前に設置することもできる
テーブルは対座したベンチシートの中央に設置することができるが、左側ベンチシートの前に設置することもできる。これによりベッドモードでも2名が対座できるダイネットができる。就寝前のちょっとしたカクテルタイムが楽しめる。
ベッド
テーブルを残したベッドモード
ダイネットを展開すると、1830×1730mm(最大)のベッドになる。1730mmは家庭用ではクイーンサイズの幅(1600mm)とキングサイズの幅(1800mm)の中間の広さ。キャンピングカーの規定(500mm/名)では3名就寝できるが、2名の場合は十分な大きさのベッドになる。
ベッド展開は独特で、シートをスライドする方式。大きな力がいらず、就寝前の作業を短時間で済ますことができる。(ベッド展開の動画はこちら)また、上の写真のようにテーブルを残してちゃぶ台スタイルで寛ぐこともできる。
ギャレー
ギャレーセクション
ギャレーキャビネットはエントランスの対面にあり、立ち位置に障害物が無いので、ダイネットへの動線がスムースに確保されている。上面には丸形シンクとフォーセットがビルトインされており、広い調理面も確保されている。
コンロはポータブルカセットコンロを使用する度にセットする必要があるが、コンロを置いた場合でも多少調理面は残されている。
ギャレーキャビネットの収納
下には各10Lの給排水タンクが収納されている。また向かって左側には引き出し式のボトルラックも用意されている。なお、上の写真では電子レンジが収納されているが、電子レンジが無い場合はここも網代仕立ての扉が付く収納となる。
冷蔵庫/電子レンジ
49L横開き式冷蔵庫が全車に標準装備される
冷蔵庫は49L横開き式が、全仕様に標準装備される。独立した冷凍スペースが付いているので、冷凍食品の保存や製氷が冷蔵と同時にできる。
電子レンジをSuperior仕様に標準装備
家庭用の100V仕様の電子レンジがSuperior仕様に標準装備される。ちょっとした温めものや冷凍食品の調理に重宝する。Superior仕様には1500Wインバーターも標準装備されるので、外部電源のないところでも電子レンジを使うことができる。
多目的ルーム
最後部の多目的ルーム
最後部に広い多目的ルームが配置されている。ポータブルトイレが全仕様標準装備というのも、二人旅でのトイレの必要性に関する同社の考え方の表れだろう。雨の日や寒い夜に遠くのトイレに行くのは、特に女性にとっては大きな問題だ。
日本は何処に行っても公衆トイレがあるので車内にトイレルームは必要ないという考えもあるが、現実ではやはりトイレがあるありがたみは大きい。こういった配慮が同社が老舗と呼ばれる所以だろう。
収納
右側のオーバーヘッド収納
プラスSLの収納は豊富に用意されている。まず左側上部には後部まで連なるオーバーヘッド収納が設置されている。また右側上部にもオーバーヘッド収納が用意されている。それぞれは奥行きがあり、大きな収容力を確保している。
左側ベンチシート下の収納
次に、左側ベンチシート下が大きな収納になっている。特筆できるのは、シートを持ち上げた状態でホールドできること。多くの場合、重いシートを片手で支えて、もう片方の手で荷物を取り出す必要があるが、プラスSLでは非常に楽に荷物が出し入れできる。
キャブ上部の収納
さらに、キャブ上部に大きな収納がある。これはハイエースのエアコンユニットを移設してできたスペースで、レクビィのモデル独特のものだ。バンクベッドにも見えるがそこまでの大きさは無く、収納としている。
エントランス左側のシューズボックス
エントランス左側にはシューズボックスも用意されている。このキャビネットはギャレー手前までつながっており、ここも収納として使える。
空調
家庭用セパレートエアコンをSuperior+A/C仕様に標準装備
暖房はFFヒーターがSuperior仕様に標準装備され、冷房は家庭用セパレートエアコンがSuperior+A/C仕様に標準装備にされる。Superior+A/C仕様では200Ah相当のリチウムイオンバッテリーも標準装備される。即ち、エアコンはリチウムイオンバッテリーで動作させることを基本としている。
エアコンは大電力を必要とするため、ディープサイクルバッテリーでは最初は良くても経年劣化で十分冷えなくなる。価格は高くなるが、リチウムイオンバッテリーを必須としているところも、結局はユーザーメリットにつながる。
なおマックスファンが全車に標準装備される。
テレビ/ナビ
Superior仕様に標準装備される19型テレビ
19型のテレビモニターがSuperior仕様に標準装備される。ギャレー横にフレキシブルアームで設置されており、ダイネットからも見やすい位置になっている。
電装系
標準仕様には115Ahのディープサイクルバッテリーが1個、Superior仕様には2個標準装備される。先述のようにSuperior+A/C仕様には200Ah相当のリチウムイオンバッテリーが標準装備される。
走行充電はそれぞれのサブバッテリーに対応したものが標準装備され、全てにCTEK昇圧システムが標準装備される。また外部100V電源入力と、それによるサブバッテリーの充電機能も標準装備される。
インバーターは1500W正弦波のものが標準仕様ではオプション、Superior仕様では標準装備になる。インバーターがあればサブバッテリーで100V家電が使える。
ソーラーシステムは薄型の236Wのものが標準仕様ではオプション、Superior仕様では標準装備になる。
価格(2022年12月現在:千円台切り上げ:税込)
標準仕様のガソリン2WD/6ATで570万円~。Superior仕様は2WD/6ATで651万円~、4WDで681万円~となっている。Superior+A/C仕様は2WDが766万円~、4WDが797万円~となっている。なお、ディーゼルはそれぞれ482,900円高になる。
Superior仕様を選択しておけば、エアコンを除き必要な装備は全て付いている。しかし、やはりこのクラスのモデルならエアコンは付けておきたい。Superior仕様より115万円高くなるが、投資して価値がある設備だ。
他モデル
ハイエーススーパーロングで同じレイアウトを持つモデルは他にも多く存在するように思えるが、実は他には存在しない。そこで二人旅仕様(前向きシートが運転席と助手席のみ)で多目的ルームを持つモデルを抽出すると、
RVビックフットのACSリトルノオクタービアM(665万円~:特装)
カトーモーターのウインディーK(627万円~:特装)
甲和オートサービスのオールインリミテッドIII(655万円~:特装)
ホワイトトップのアジサシ(532万円~:特装)
リンエイプロダクトのスーパーロングバカンチェスふたりのくるま旅プライベート2(594:DX)
などのモデルがリストアップされる。プラスSLを除き、他は全て2段ベッドかハイマウントダブルベッドを持つ。即ち、常設ベッドを持っているが、常設ベッドの高さがあるため、プラスSLのような広々感のある室内ではない。
なお、アジサシは常設ローマウントダブルベッドなので広々感があり、多目的ルームも装備している。二人旅に理想的なレイアウトだが、冷蔵庫が引き出し式なのが唯一残念なところ。
また、広い対座ベンチシートダイネットを持つ二人旅仕様のモデルなら、
RVランドのリノプレミアム(583万円~:特装)
カトーモーターのエースリーパー(603万円~:特装)
カトーモーターのイルデルフィ-ノ(716万円~:特装)
ドリーム・エーティーのウォーク タイプC(477万円~:特装)
フジカーズジャパンのFOCSシエスタ(548万円~:特装)
リンエイプロダクトのスーパーロングバカンチェスふたりのくるま旅ダイネット(577:DX)
が挙げられる。これらは広々感のあるダイネットを持つが、多目的ルームは持たない。
まとめ
上記のように、広いダイネットを持ちながら多目的ルームも持つ二人旅に適したスーパーロングのレイアウトは、プラスSLのみだ。確かにプラスSLは常設ベッドは持たないが、それをカバーするため簡単にベッドセットができるようスライド式になっている。
ふとん派の場合は、常設ベッドが無いとダイネットモード時にふとんを置いておく場所に困るが、プラスSLの場合はキャブ上部の収納が使える。冬場の厚手のふとんを収納しておくのは厳しいかもしれないが、毛布や薄手のふとんなら収まるだろう。
長旅では圧迫感のある室内では徐々に疲れがたまってくる。広々とした室内は、そのような疲れを最小限に抑えてくれる。また、車中泊でのトイレルームは特に女性には必需装備と言える。この二つの条件を両立できるのがプラスSLの特徴だ。
なお参考までに、プラスDD(675万円~:Superior仕様2WD)という選択もある。このレイアウトは縦置き2段ベッドを持つが、上段ベッドを下すとベンチシートになる。また、左側の2名対座ダイネットもベンチシートになる。即ち、プラスSLと似たレイアウトが可能だ。更にプラスSLと同じ多目的ルームもある。
即ち、プラスSLと同じ特徴を持ちながら、更に常設ベッド、2列目の前向きシートという特徴も併せ持っている。多少高価になるが、比較検討の価値は十分にあると思う。
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