ACSリトルノオクタービアMはRVビックフットが製作する、ハイエーススーパーロングをベース車に使用したバンコンキャンピングカー。
同社はACSシリーズを展開しているが、「ACS」はAC Systemの意味。大容量のソーラーパネルで発電し、サブバッテリーに蓄え、AC100Vで家電品を駆動する。発電機などを使わず、「エコな」電気で賄うという考え方を採用している。
コンセプト
ACSリトルノオクタービアMもACSのコンセプトを採用し、大型冷蔵庫やIHコンロを標準装備する。電子レンジや家庭用エアコンもオプションで装備でき、充実した装備が可能。
ダイネットは優雅なラウンジソファスタイルで二人旅を想定し、ホワイトで統一されたインテリアのお洒落なバン・コンバージョンになっている。
エクステリア
ACSリトルノオクタービアMの外観
ボディ外部に架装は無く、外観は通常のハイエースと変わらない。ルーフにはソーラーパネルが2枚搭載されているが、これもルーフレールの間にうまく装着されており、違和感はない。
インテリア
白で統一されたお洒落なインテリア
ACSシリーズはホワイト系のインテリアで、セミフルコンのACSオアシスSHを筆頭に、ACSリトルノオクタービアMも同じトーンでまとめられている。
家具とソファはトータルコーディネートされたインテリアでお洒落感がある。奥様がインテリアを気に入って購入するというケースが多いようだ。
レイアウト
前部にダイネット、後部にハイマウントダブルベッドの組み合わせ。ギャレーはダイネットの対面に置かれている。ラウンジシートなので前後の動線が確保され、車内を移動しやすい。
乗車定員は4名だが、前向きシートは運転席と助手席のみのため、二人旅仕様のレイアウトと言える。横座りのラウンジシートには2名着座できるが、長距離には向かない。
ダイネット
ラウンジソファのダイネット
ACSリトルノオクタービアMの特徴のひとつが、このラウンジソファダイネット。マルチモードシートを採用せず、二人旅専用のレイアウトとしている。
このダイネットは、展開してベッドにすることはできないが、あえてそのような機能を切り捨てたため、すっきりとした美しいダイネットに仕上がっている。
ベッド
ツインベッド
最後部に1800x1400mmのハイマウントダブルベッドが設置されている。1400mmの幅は家庭用ベッドのレギュラーダブルベッドの幅に相当する。エクステンションウインドウは架装していないので、就寝方向(身長方向)は車長方向になる。
1800mmなので、長身のユーザーは多少窮屈感があるかもしれない。そのため、オプションで延長ベッドマットが用意されている。ただし、このマット使用時はクローゼットを開けることはできない。
ギャレー
丸形シンクが設置されたギャレー
ダイネットの対面にはギャレーコンソールが置かれており、ここにはシンクとIHコンロがビルトインされている。IHコンロは100Vで動作するもので、火を使わないキッチンになっており、安全面に配慮されている。
シンクの下には各20Lの給排水タンクが収納されている。レイアウト上仕方の無いことではあるが、給排水タンクの出し入れは、テーブルを取り外さないとやりにくい。
冷蔵庫/電子レンジ
137L2ドア冷蔵庫が標準装備される
100V仕様の、家庭用137Lの2ドア冷凍冷蔵庫が標準装備される。バンコンでは他に類を見ない大きさで、キャブコンでも輸入モデルを除き、これだけ大きな冷蔵庫を搭載している例は少ない。
なお、電子レンジはオプションで設置できる。
ユーティリティールーム
ACSリトルノオクタービアMには、ユーティリティールームは用意されていない。ベッドルームにエクステンションウインドウを架装し、横向き就寝にすればユーティリティールームを設置できたかもしれない。
ユーティリティールームは不要というユーザーも少なくないが、二人旅の場合は年配ユーザーが多く、夜もトイレに立つ場合がある。特に奥様にとっては問題で、その意味ではトイレルームがあっても良かったかもしれない。
収納
ベッドルームのオーバーヘッド収納
オーバーヘッド収納がギャレー上とベッドルーム上に設置されている。また、縦長のクローゼットがベッドとギャレーの間に設置されており、長いコートなども収納しておける。
更に、後部ハイマウントベッド下は大きな外部収納になっており、ほとんどの旅行用荷物はここに収まってしまう。リアハッチを開けるとアクセスできるが、車内からもアクセスするためのドアが用意されている。
空調
家庭用エアコンがオプションで設置できる
暖房はFFヒーターがオプション設定されている。冷房は家庭用セパレートエアコンがオプションで設置できる。またベンチレーターは標準装備される。エアコンの室内機はベッドルームのオーバーヘッド収納の位置に設置される。
セパレートエアコンの室外機は、クローゼットの下部と一部給排水タンク収納部を使って設置する。従ってクローゼットは上半分のみになる。また排気はボディの側板に穴をあけて確保しているが、これは同社のWAC4.7なども同じ手法を採用している。
テレビ/ナビ
フリップダウンモニターをオプションで取り付けることができる。位置は運転席、助手席のすぐ後ろのルーフなので、ダイネットのソファに座って観ると常に横向きに観る必要がある。
最近ではタブレットやスマートフォンでテレビが観られるので、それらを利用する方がどこでも、自由な姿勢で観られる。例えばこのアプリなら自宅で録画した番組も旅行中に観ることができる。
電装系
ACSリトルノオクタービアMのコンセプトは電装系にある。160W x2=320Wの大容量ソーラーパネルで発電し、これを105Ahのサブバッテリー2個で充電し、冷蔵庫、IHコンロ、電子レンジ、そしてエアコンを100Vで動作するため1500Wインバーターも標準装備される。
ただし、これらの家電品の電力を賄うには105Ah x2個のディープサイクルバッテリーでは貧弱すぎる。エアコンを装備すると、サブバッテリーは4個に変更とされ、インバーターは3,000Wに変更されるが、スペース的、重量的にあまり良策とは言えない。
このコンセプトを実用的に完成させるには、やはり少なくとも200Ah程度のリチウムイオンバッテリーが必要だろう。それでもIHコンロ、電子レンジ、エアコンはかなり負担になる。
オプションでリチウムイオンバッテリーは用意されていないようだが、特にエアコンを設置する場合はリチウムイオンバッテリーにできないか問い合わせると良いだろう。
価格(税別)
特装車ガソリン2WD/6ATで549万円~(税別)。エアコンを装備すると、サブバッテリーとインバーターも含めて49万円が追加費用として必要になる。
必要なオプションは、FFヒーター(180,000円)。調理するなら、電子レンジも欲しいところだ。
他モデル
ハイエーススーパーロングのバンコンモデルは多数あるが、比較対象になるモデルは恐らく「お洒落な」インテリアが重視される二人旅仕様だろう。かつエアコンを装備できるモデルとなると、レクビィのシャングリラおよびプラスSL Superior A/C仕様、日産ピーズフィールドクラフトのG-LIBが挙げられる。
シャングリラは温水シャワーが使えるのが特徴。プラスSLは上品でシンプルなレイアウトが売りだ。G-LIBはNV350ワイドスーパーロングを使用したモデルで、8kWhリチウムイオンサブバッテリーシステムを標準装備した、それこそオール家電モデルだ。
まとめ
ACSは太陽光を利用してクリーンな環境のキャンピングカーを目指した、目標の高いシステムだ。大容量のソーラーシステムがあれば、晴天でさえあれば自然にサブバッテリーが充電され、電気の心配はいらない。
しかし事はそう簡単ではない。大型冷蔵庫、IHコンロ、エアコン、電子レンジは大きな電力が必要だし、何時も晴天とは限らない。また鉛バッテリーは年々劣化するので、大電流で使えば2も経てば劣化が進む。即ち、いずれにしても外部電力に頼る必要がある。
現在では優れたリチウムイオンバッテリーがあり、これを標準仕様にする方が現実的だろう。特に消費電力の大きいIHコンロ、電子レンジ、エアコンなどはリチウムイオンバッテリーが有利だ。
もちろん、コストがアップする。しかし、4本の鉛バッテリーを2~3年ごとに交換する手間とコスト、それに経年変化でエアコンの効きが悪くなった時のストレスを考えると、リチウムイオンバッテリーの方がはるかに有用だ。
なお、冷蔵庫が大きいと便利ではあるが、二人旅なら90L程度でも十分な容量だろう。小さくした分、消費電力は下がり、そのスペースは収納にできる。
ACSリトルノオクタービアMは優雅な二人旅に最適なレイアウトだし、お洒落なインテリアも見逃せない。どの程度カスタムオーダーができるか分からないが、上記のような変更ができることを期待したい。
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