ACSリトルノオクタービア MはRVビックフットが製作する、ハイエーススーパーロングをベース車にした、バンコンキャンピングカー。
同社は埼玉県春日部市に本拠を置くビルダーで、マイクロバスをベース車にしたセミフルコンから、ハイエースベースのバンコンまで、幅広くラインアップしている。
ACSリトルノオクタービア Mは、同社が展開するACSコンセプトに沿って企画されたモデルのひとつで、ACS(AC System)の名称の通り、装備に100Vの家電品を使用している。
(記事中の価格は全て税込です。最新価格は各ビルダーにお問い合わせください。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
ハイエーススーパーロングをベース車にする、バンコンキャンピングカー。同社のモデルに共通する、ホワイトで統一されたインテリアが特徴。レイアウトは前部にリビングスタイルのダイネット、後部に横置きダブルベッドの構成だが、多目的ルームは持たない。
ACSはAC Systemの意味で、冷蔵庫やIHコンロなどの装備を100Vの家庭用としている。大容量のソーラーシステムを標準装備することにより、豊富な電力を確保するというコンセプトに基づいている。
エアコンももちろん家庭用セパレートエアコンをオプションで装備できるが、家庭用の一体型ポータブルクーラーを選択することもできる。リチウムイオンバッテリーの採用はなく、高性能のイナダバッテリーを採用している。
アピールポイント
・ホワイトで統一された美しいインテリア
・リビングスタイルのダイネット
・大容量の家庭用2ドア冷蔵庫
・IHコンロを標準装備
・家庭用エアコンをオプション設定
・大型のクローゼットを標準装備
・洗練されたエアコン室外機の収納
ベース車とエクステリア
ACSリトルノオクタービアMのエクステリア
ベース車はハイエーススーパーロング特装車。ガソリン2WD、4WD、ディーゼル4WDが選択できる。ボディ外側への架装はなく、外観はデカールを除き、普通のハイエースと変わらない。
ルーフにはソーラーパネルが2枚搭載されているが、ルーフレール(標準装備)を目隠しとして使っており、違和感はない。
インテリア
ACSリトルノオクタービアMのインテリア
ACSリトルノオクタービアMの特徴は、やはりインテリアにあるだろう。オフホワイトの家具とホワイトレザーのシートで、非日常的なモダンリビングのような空間を楽しめる。
照明もダウンライトと、ギャレー部に施された間接照明で、夜のインテリアを演出している。特に女性に人気のインテリアだ。
レイアウト
前部にリビングスタイルのダイネット、後部にハイマウントダブルベッドの組み合わせ。ギャレーはダイネットの対面に置かれている。縦置きベンチシートなので前後の動線が確保され、車内を移動しやすい。
乗車定員は4名だが、前向きシートは運転席と助手席のみのため、二人旅仕様のレイアウトと言える。横座りのラウンジシートには2名乗車できるが、長距離には向かないだろう。
ダイネット
リビングスタイルのダイネット
リビングソファスタイルのダイネットシートで、対座スタイルのダイネットとは異なり、ダイネット(食事をする場所)と言うよりは、リビングルームのような空間だ。曲線を施したシートやテーブルも、同社のデザインらしくお洒落だ。
ベッド
後部の横置きダブルベッド
後部のベッドは1800x1400mmの大きさ。1400mmの幅は家庭用のレギュラーダブルベッドの幅に相当する。1800mmを確保しているが、エクステンションウインドウを架装していないので、長身のユーザーは足がつかえるかもしれない。実際に横になってみて、確認することをお勧めする。
3名が就寝できるダイネットベッド
オプションの延長ベッドマットが用意されており、これをクローゼットの前にセットすると車長方向に1800mmが取れる。長身のユーザーはこれでゆったり就寝できるが、残されたスペースは長さが1400mmしかないので、子供用となる。
ギャレー
ギャレーセクション
ギャレーキャビネットはダイネットソファの対面にあるが、ダイネットテーブルがあるので、キッチンの前に立って調理をしたり洗い物をしたりするのは難しそうだ。
ギャレーキャビネットの天板にはにはシンクとIHコンロがビルトインされている。ACSのコンセプトに沿って、100Vでの電化が図られている。火を使わないキッチンになっており、安全面にも配慮されている。
なお、オプションのモニターテレビを設置する場合は、このIHコンロの場所に設置されるので、IHコンロは装備できない。この場合は、ポータブルタイプのIHコンロかポータブルガスコンロをダイネットテーブルで使用することになる。
シンクの下には各20Lの給排水タンクが収納されている。レイアウト上仕方の無いことではあるが、給排水タンクの出し入れは、テーブルを取り外さないとやりにくい。20Lなのでそれなりに重量があり、タンクの出し入れは多少面倒かもしtれない。
冷蔵庫/電子レンジ
家庭用2ドア冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫はACSのコンセプトに沿って、家庭用の100V仕様の2ドア冷蔵庫が標準装備される。バンコンでは他に類を見ない大きさで、キャブコンでも輸入モデルを除き、これだけ大きな冷蔵庫を搭載している例は少ない。
二人旅でこれだけ大きな冷蔵庫が必要かはユーザーの使用スタイルにもよるが、もっと小さな冷蔵庫でも良いというユーザーには49Lの冷蔵庫に変更するオプションが用意されている。この場合は天板が調理スペースとして使えるようだ。
電子レンジも標準装備される
家庭用の100V仕様の電子レンジは、単機能の電子レンジとオーブン電子レンジを選択できるため、オプションとなっている。いずれもギャレーキャビネットにすっきりと収納される。
多目的ルーム
ACSリトルノオクタービアMには多目的ルームは設置されていないが、大きなクローゼットは設置されている。トイレルームの要不要については意見が分かれるところだが、必要と感じているユーザーには対応できない。トイレルーム付きのレイアウトも見てみたいところだ。
収納
収納は、ギャレー上部とベッドルームのオーバーヘッド収納、大型クローゼット、後部ベッド下の収納スペースがある。
ダイネット上部のオーバーヘッド収納
ギャレー上部のオーバーヘッド収納は2連の扉付き収納で、落下防止用のバーも設置されている。
ベッドルームの収納
ベッドルームの上部にもオーバーヘッド収納が設置されている。家庭用セパレートクーラーを取り付けると、一部がクーラーに置き換えられる。
クローゼット
クーラーを設置しない場合は、床面まである縦長のクローゼットが設置されるが、クーラーを設置する場合は、上のようなクローゼットになる。もちろんそれでもクローゼットがあると、かさばるコートやジャケットを皺をつけずに収納できるので重宝する。
後部ベッド下の収納スペース
後部ベッド下は大きな収納スペースになっている。キャンプ用具などの大きな荷物でも、リアゲートを開けて車外から直接積み込むことができる。ただし、左側は電装系、右側はエアコンの室外機のため、両側に独立した収納スペースは用意されていない。
空調
家庭用セパレートクーラー(OP)
家庭用のセパレートクーラーがオプションで設置できる。家庭用のポータブルクーラーもオプションで用意されており、この場合はクローゼットのスペースに設置される。夏場の炎天下で十分な冷気を得るにはやはりセパレートエアコンの方が適しているだろう。
エアコンの室外機
家庭用セパレートエアコンを設置した場合の室外機は、上の写真のように設置される。多くのモデルは床下に設置するが、やはり泥水や塩害が心配だ。また、ACSリトルノオクタービアMと同じ位置に設置しているモデルもあるが、これほどセンス良く設置している例は無い。
FFヒーターはオプション。ベンチレーターは標準装備されるが、スモークタイプのマックスファンはアップグレードオプションとなっている。
テレビ/ナビ
19型程度のテレビモニターがオプションで設置できる。これは、先述のようにIHコンロの変えて設置される。この他に13.3型のフリップダウンモニターもオプションで用意されている。
ナビは同社指定のナビがオプションで用意されているが、好みのナビも取り付けることができるだろう。
電装系
標準では、100Ahの高性能イナダバッテリーが2個(=200Ah)、走行充電、外部100V電源入力とチャージャー、1500W正弦波インバーター、そして400W相当のソーラーシステムが標準装備される。
エアコン装着時は、サブバッテリーがさらに2個追加されるため、計400Ahとなる。これだけの容量があれば安心感は強いが、高性能バッテリーと言ってもディープサイクルバッテリーには変わりないので、リチウムイオンバッテリーほど大電力や経年劣化に強いわけではない。
特にACSリトルノオクタービアMでは大型冷蔵庫やIHコンロ、電子レンジ、そしてエアコンと大電力の家電品が多いため、やはり400Wh程度のリチウムイオンバッテリーが理想的だろう。オプションでの選択肢が望まれる。
価格(2025年1月現在:千円台切り上げ:税込)
ガソリン2WDは1121万円~、4WDが1174万円~、ディーゼル4WDが1237万円~となっている。付けておきたい必需オプションは、FFヒーター(267,300円)と、クルマ旅をするなら電子レンジ(55,000円)が挙げられる(ナビ関連は除く)。
家庭用セパレートクーラーセット(749,760円)かポータブルクーラー(価格不明)は、高価だが設置しておきたい。今や夏場のクルマ旅や車中泊はクーラー無しでは危険だし、ペットがいる場合はマストだ。(価格は2024年5月現在)
他モデル
ハイエーススーパーロングをベース車にし、リビングスタイルのダイネットと後部にダブルベッドを持つモデルは、ホワイトトップのAJISASHI(アジサシ:688万円~)と、カトーモーターのDD(928万円~)が挙げられる。(いずれもキャンパー特装 ガソリン2WD)
いずれもACSリトルノオクタービアMと全く同じスタイルやコンセプトではないが、二人旅用のモデルだ。両モデルともトイレルームを設置しているのがACSリトルノオクタービアMと異なる点だ。
アジサシは優雅なラウンジソファタイプのダイネットと縦置きダブルベッドのレイアウトだが、ギャレーが狭い点とベッド幅が狭い点が弱点、DDはハイルーフやサイドパネルの架装でヘビーデューティーに見えるが、価格的にはあまり変わらない。
まとめ
ACSリトルノオクタービアMは、ホワイトで統一されたインテリアがやはり目を引く点だろう。クルマ旅に必要な全ての装備を搭載できるのも、クルマ旅に使うユーザーには重要なポイントだ。
ほとんど不満点が無いモデルだが、あえて挙げるとすれば、ギャレーに立って調理し難い点、エクステンションウインドウが無い点、リチウムイオンバッテリーのオプション設定が無い点が挙げられる。
クルマ旅で調理したいユーザーには少し使い難いギャレーかもしれない。後部ベッドに関しては、横置きベッドの場合、エクステンションウインドウが無いと窮屈感を感じる可能性が高くなる。
また、先にも書いたように、キャンピングカーの電化が進むにつれ、サブバッテリーも大容量化、大電力化が求められている。やはりリチウムイオンバッテリーは十分に安全性を確保したうえでの対応が望まれる。
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