ダヴィンチ ルッソ 6.0は、トイファクトリーが製作する、フィアットデュカトをベース車にしたバン・コンバージョンキャンピングカー。
同社は阜県可児市を本拠にし、各地に直営店を持つビルダーで、「バーデン」に代表されるハイエースベースのバンコンを中心にラインアップするバンコン専門ビルダー。
同社は日本に正式輸入が始まったフィアットの正規ディーラーでもあり、2023年からはデュカトをベース車にしたバンコンモデルを5モデル発売。その中でもダヴィンチは最も欧州モデルに近いイメージのモデルの位置付けとなっている。
ダヴィンチには全長5410mmのダヴィンチ5.4と、全長5995mmのダヴィンチ6.0があるが、今回取り上げたダヴィンチ ルッソ 6.0はダヴィンチ6.0のインテリアカラーバリエーションとなっている。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
フィアットデュカトL3H2をベース車にするバンコンキャンピングカー。既存のダヴィンチ6.0のインテリアカラーバリエーションかつ同社のデュカトモデルのフラグシップグレードとなる。
ダヴィンチ6.0とレイアウトは変わらないが、ダイネットシートやベッドマットにダイヤモンドキルティングの柄を持つコニャックブラウンの本革を採用。上級グレード感を出している。
更に家具や床の配色も専用色もオリジナルモデルとは差異化している。
レイアウトはダヴィンチ6.0と全く同じで、対座ダイネット、ギャレー、サニタリールーム、ハイマウントダブルベッドの構成。温水シャワー、エアコン、リチウムイオンバッテリーまで装備できる豪華な二人旅用バンコンとなっている。
アピールポイント
・デュカトL3H2を使用し、高い天井高(1880mm)と余裕ある室内空間を確保
・Russo専用のエクステリアデザイン
・本革シートなど高いグレード感のRusso専用インテリア
・温水シャワーまで標準装備の快適性
・エアコンとリチウムイオンバッテリーを装備可能(OP)
・ポップアップルーフを架装可能(OP)
ベース車とエクステリア
ダヴィンチ ルッソ 6.0のエクステリア
ベース車は日本に正規輸入されるフィアット デュカト L3H2。輸入されるデュカトの最も小さいサイズは全長5410mmのL2H2だが、それより長い全長のL3H2。全長は5995mmと6mに近い。右ハンドルのみで、左ハンドルは選べない。エントランスはもちろん左側。
エンジンは2184ccの直列4気筒マルチジェットディーゼルインタクーラー付きターボで、ミッションは9速AT。輸入されるベース車は全て最上位の180psバージョンとなっている。なお、デュカトには4WDは無く、2WDのみとなっている。いわゆる自動ブレーキの類は標準装備され、もちろん助手席エアバッグも標準装備される。
架装前のデュカトは後部にウインドウが無いため、モデルによってさまざまな位置に様々な大きさの窓が開けられる。ボディ外側への大きな架装は無いが、窓は全てアクリル2重窓を標準装備する。
インテリア
ダヴィンチ ルッソ 6.0の本革シート
ダヴィンチ ルッソ 6.0の最も大きな特徴はインテリアだ。 以下がオリジナルのダヴィンチ6.0から変更された点。
・ダイヤモンドキルティング柄のコニャックブラウン本革シート
・マーブルブラック長のテーブルとキッチン天面
・マリンボード調のウッドフロア
・ホワイトとストーン調のブラック仕上げの家具
・イタリア製リアルウッドとメタルバーのオーバーヘッド収納扉
・ストーン調ブラックパネルを施した冷蔵庫
・ホワイトとコニャックブラウンのレザー地のベッド
・ダイヤモンド柄を施したエクステリアデザイン
レイアウト
レイアウトはダヴィンチ6.0と全く同じで、前部に対座ダイネット、中央にギャレーとサニタリールーム、後部に横置きハイマウントダブルベッドの構成。ダブルベッドを採用しながら対座ダイネットとサニタリールームを置けるのは全長の長いL3H2ボディを採用したことと、回転する運転席、助手席のおかげでもある。
ちなみに、L2H2ボディを使用するダヴィンチ5.4では、最後部には前方にスペースを取らない横置き2段ベッドが採用されている。
ダイネット
運転席、助手席が回転するダイネット
デュカトの標準機能として付いている、運転席、助手席の回転機構を採用したダイネットで、4名が対座できる。多くの欧州モデルもこのスタイルのダイネットを採用している。
テーブルは2重になっており、下の板を回転するとテーブルの面積が広くなる。テーブルはブラックマーブル調のデザインで高級感がある。
ベッド
後部ベッド
後部の常設横置きハイマウントダブルベッドの大きさは、1,950x1,270mm。幅方向は一部広くなっていて、最大値は1,560mm。1270mmは、家庭用セミダブルベッドの幅(1200mm)よりも広い。
ルーフベッド
オリジナルのダヴィンチ同様、ダヴィンチ ルッソ 6.0にもオプションでポップアップルーフが架装できる。ルーフを上げた状態でベッドボードを敷き詰めると、2000x1200mmのベッドになる。1200mmの幅は、家庭用ではセミダブルベッドの幅に相当する。
ポップアップルーフがあると計4名が就寝できる。また、2名で使用する場合でも分かれて就寝すればそれぞれゆったり就寝できる。ただし、ルーフベッドは風雨に弱く、常にルーフベッドが使える保証はない。
その意味では、アドリアのツイン PLUS 600 SPB FAMILYやサンリビングのV60SP Family、ローラーチームのリビングストーン5、サンライトのクリフ601のように、後部が2段ダブルベッドのオプションがあっても良いかもしれない。これならポップアップルーフが無くてもファミリーに対応できる。
ギャレー
ギャレーセクション
ギャレーキャビネットには常設2口コンロとシンク、シャワーフォーセットが設置されている。この状態では調理スペースが狭いが、跳ね上げ式の調理台が用意されているので、込み入った料理も可能だ。
ギャレーキャビネットの下の引出し収納(写真はダヴィンチ6.0)
ギャレーキャビネットには3段の大きな引き出し収納が用意されている。大きな容量なので、多くの食器や調理用具を収納しておける。
冷蔵庫/電子レンジ
70L両開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は70L両開き式が標準装備されている。両開き式なので、ダイネット側からでもベッド側からでもアクセスできる。
電子レンジはオプション
家庭用の100V仕様の電子レンジがオプションで設置できる。冷蔵庫の上部にすっきりとビルトインされる。電子レンジはクルマ旅にはほぼ必需装備なので、特にこのクラスのモデルには標準装備されるべきだろう。
サニタリールーム
洗練されたインテリアのサニタリールーム
洗練されたインテリアのサニタリールームで、トイレ、温水シャワー、専用手洗い、鏡、収納が用意されている。温水は標準装備のヒーターを兼ねたボイラーで給湯される。給水タンクは100L、排水タンクは75Lとなっている。
トイレは 「クレサナ」という ウォーターレストイレを標準装備。ラップポンと同様のラップ式トイレだが、デザインが洗練されている。サニタリールームには収納が複数個所用意されている。
収納
収納は非常に充実しており、先述のギャレーの収納の他、オーバーヘッド収納、後部ベッド下の収納などが用意されている。
ダイネット両側にオーバーヘッド収納が設置される
まず、オーバーヘッド収納はダイネット左側上部に設置されている。扉はルッソ専用デザインでメタルラインが施された高級感のあるもの。容量も大きい。
ベッドルームのオーバーヘッド収納
ベッドルームには両側にオーバーヘッド収納が設置されている。
ベッド下左側の収納
ベッドの下は大きな収納スペースだが、両側には独立した収納が設けられている。特に左側の収納にはスライド式の扉が採用されており、外側に荷物があっても扉が開けられる。同社のバーデンにも使われている親切なアイデアだ。
ベッド下の大きな収納スペース
後部のベッドはハイマウントダブルベッドなので、ベッドの下は大きな収納スペースになっている。リアゲートを開けると車外から直接大きな荷物を積み込むことができる。小型の自転車のような大きなものも積むことができる。
ベッドへのステップも収納になっている
後部のベッドは多少高い位置にあるので、ベッドへ上がるためのステップが設置されているが、この中が収納になっている。2列目シートの下にも小物収納が用意されており、このようなデッドスペースも無駄にせず収納として活用されている。
なお、エントランス横にシューズボックスが用意されていないのは残念なところ。デュカトベースの多くの輸入モデルには生活習慣の違いからかシューズボックスが無いが、ダヴィンチはこの点は輸入モデルに倣ってしまったようだ。
空調
車載用ルーフクーラーを設置できる(Op)
冷房は上の写真のようなルーフエアコンか家庭用エアコンが選択できる。(そのためオプションになっている。)このルーフエアコンはドメティック社のもので、冷暖房が可能。
ルーフに取り付けるので収納スペースを犠牲にすることはなく、また一体型でコンパクトなので室外機を設置する必要もない。一方効率的には家庭用エアコンの方が優れていると思われる。外部電源を使う場合が多ければ、ルーフエアコンがお勧めだ。
なお、暖房はこのルーフエアコンや家庭用エアコンでも可能だが、ボイラーにもヒーター機能があるので、そちらの方が効率が良いだろう。
テレビ/ナビ
19型のテレビが設置できる(OP)
19型のテレビモニターが上の写真の位置に設置できる。運転席、助手席を後ろ向きにして視聴するのに適した位置となっている。なお、ナビは標準装備されている。
電装系
標準では、100Ahのディープサイクルバッテリーを2個搭載している。オプションで150Ahのリチウムイオンバッテリーも選択できるが、最高峰に位置付けられるモデルなのでリチウムイオンバッテリーが標準装備でも良かったように思われる。なお、リチウムイオンバッテリーはもう1個オプションで追加できる。
その他の電装系では、走行充電、外部100V電源入力とチャージャー、1500W正弦波インバーターも標準装備される。ソーラーシステムはオプションリストに無いが、装備は可能だろう。
価格(2024年5月現在:千円台切り上げ:税込)
デュカトは2WDのみで、価格は1507万円~となっている。付けておきたい必需オプションは、クルマ旅で使用するなら(ほとんどがそうだと思われるが)、家庭用エアコン(506,000円)かルーフエアコン(418,000円)、リチウムイオンバッテリー(39,6000円)、マックスファンベンチレーター(153,700円)、電子レンジ(46,000円)が挙げられる。
他モデル
正規輸入のデュカトをベース車にする国産バンコンは多数あるが、ダヴィンチ6.0やダヴィンチ ルッソ 6.0の比較対象としては欧州車の方が適している。国産モデルだとナッツRVのゼニア TypeLがあるが、ギャレーやサニタリールーム(ゼニアは多目的ルーム)を見るとダヴィンチとはグレードが異なる。
デュカトベースの輸入バンコンモデルでL3H2を使用しているモデルは、アドリアのツイン スプリーム600 SPB GB、サンリビングの V60SP、サンライトのクリフ600シリーズ、ローラーチームのリビングストーン5などがある。
このうち、V60SPとリビングストーン5は後部が2段ベッドになっており、各段に2名が就寝できる。即ち、ポップアップルーフが無くてもファミリーに対応できる。クリフもクリフ601で、ツインも600SPB
Familyで同様に2段ベッドになっている
ツイン600SPB GBは輸入モデルながら左側にエントランスを持ち、日本での使い勝手も比較的良い。おそらくツイン600 SPB GBがダヴィンチ
ルッソ 6.0の好敵手となるだろう。
まとめ
ダヴィンチは正式輸入されたデュカトをベース車にしたモデルのうち、最も欧州モデルに近いレイアウトやグレード感を持つモデルだ。そしてダヴィンチ
ルッソはそのグレード感を更に高めたモデルの位置付けとなる。
従って、欧州製デュカトベースバンコンが気になっていたが、海外製のため二の足を踏んでいたユーザーには見過ごせないモデルだ。ただ、オリジナルのダヴィンチはインテリアがシックなイメージで、もう少し明るいインテリアを好むユーザーにはアピールしなかったかもしれない。
ダヴィンチ ルッソは、ホワイト系の家具も取り入れた明るいイメージになったが、加えて高級感もアップした。欧州車の高級感とは違ったアプローチで、欧州製デュカトキャンパーバンに一石を投じる強力な日本製モデルだ。
最高級クラスのモデルなのでかなり完成度は高いが、あえて疑問点を上げておくと、欧州車の欠点をそのまま受け継いでいること。例えば、リチウムイオンバッテリーが標準装備でない点、シューズボックスが無い点、電子レンジやテレビが標準装備ではない点など。
欧州モデルは日本のインフラを考慮して作れないが、日本製ならそれが可能だ。日本で企画製作するモデルなので、日本のキャンピングカー事情に最適なアプローチが望まれる。
ダヴィンチの記事ではアドリアのツイン Supreme 600 SPG GBとの比較を中心にレポートしているので、そちらも参考にしていただきたい。また、正規輸入のデュカトベースの日本製バンコンの特集はこちらの記事を参照いただきたい。
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