ACSプルミエM5.7はRVビックフットが製作する、ハイエーススーパーロングをベース車に使用したキャブコンキャンピングカー。
同社はセミフルコン「ACSオアシスSH」、バスコン「ACSオアシスLL」からハイエースバンコン「ACSリトルノオクタービアM」や「スイングN4.7」まで、幅広くラインアップしている総合ビルダー。
また、「スゥイングW4.7」や「ACSエールーム」のような、ハイエースにハイルーフを架装したバンコンも同社の特徴的なモデルとなっている。
頭につく「ACS」はAC Systemの意味で、大出力のソーラーシステムと大容量のサブバッテリーで自立型のキャンピングカーを実現しようというもの。また電気製品はAC100Vでオール電化にするという意味もある。
ACSプルミエM5.7は同社で唯一のハイエースベースのキャブコンで、ACSシリーズの中ではセミフルコンやバスコンとバンコンの間を埋めるポジショニングとなっている。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
ハイエーススーパーロングをベース車にしたキャブコンキャンピングカー。5700mmの車長を生かした余裕ある室内スペースを持つ。
L型ソファとハイマウントダブルベッドの組み合わせで、二人旅に適した同社おなじみの優雅なレイアウトを持つが、単座シートも設置されており、3名でのドライブや就寝も可能(乗車定員は6名)。白で統一されたインテリアで非日常な空間を作っている。
電装系は、ACSシリーズ全体のコンセプトに準じて大容量のソーラーシステムを持ち、IHコンロをはじめ、冷蔵庫も100V仕様の大型家庭用冷蔵庫を標準装備し、オール電化を謳っている。
アピールポイント
・5.7mの余裕のある室内
・二人旅に適したレイアウト
・横座り単座シートもあり、3名でのドライブと就寝も可能(乗車定員は6名)
・優雅なラウンジソファダイネット
・白で統一された美しいインテリア
・大容量ソーラーシステム
・大型2ドア冷蔵庫標準装備
エクステリア
ACSプルミエM5.7のエクステリア
ベース車はハイエーススーパーロング。これをボディカットし、FRPシェルを架装している。
車長は5700mmで、5mを超えるキャブコンの中でも長い方だ。カムロードキャブコンでは多くが5200~5300mmに収まっている。これは、カムロードのホイールベースが2545mmに対し、ハイエーススーパーロングのそれが3110mmと長いことも起因している。
インテリア
白でコーディネートされたインテリア
ACSシリーズの特徴のひとつはインテリアカラーが白でコーディネートされていること。子供が乗ることが前提のファミリー用レイアウトでは汚れやすい白は不安だが、二人旅で使うなら安心だ。
家具は無垢調材を使用しており、また、シートも厚みがあり高級感があるクッションを使用している。なお運転席、助手席も同一カラーの生地張替えでコーディネートできる。
間接照明とダウンライトの照明
また、間接照明とダウンライトで構成する凝ったルーフデザインと照明も夜の室内を美しく演出する。もちろん調光も可能だ。
レイアウト
前部にダイネット、その横にギャレー、右側中央に多目的ルーム、最後部にハイマウントダブルベッドを配置する。ダイネットは前向き乗車できないので、二人旅に適したレイアウトと言える。
ただし、同社のサイトでは「ご家族で楽しむには最適なモデルです」とあるように、ソファに3名、横置きの単座シートに1名が乗車することは可能で、運転席、助手席と合わせて計6名が乗車できる。また、後部ベッドに2名、ダイネット展開ベッドに1名が就寝できるので、3名での車中泊が可能だ。
全体的に5.7mの余裕ある車長を生かして、面積をとるハイマウントダブルベッドでも余裕のあるレイアウトを実現している。なお、バンクベッドやルーフベッドは無いが、これも二人旅なら問題はないだろう。
ダイネット
L字型ソファのダイネット
L字型のソファと横置き単座シートの組み合わせのダイネットで、4名がテーブルを囲める。同社のモデルはこのスタイルのダイネットが多く採用されており、二人旅をメインに使用するユーザーには外せない選択肢だ。
ベッド
後部のハイマウントダブルベッド
最後部に配置された横置きハイマウントダブルベッドは1850x1300mmの大きさ。1300mmは家庭用ではセミダブルとダブルベッドの中間の幅で、2名が就寝できる。
ベッドスプリングの類は特に謳ってないが、比較的厚めのベッドマットが採用されている。なお、ベッド横に施されたデザインウォールが、インテリアデザインへのこだわりを見せている。
1名が就寝できるダイネットベッド
また、ダイネットを展開すると1名分のベッドができる。サイズは不明だが、大人が1名就寝できる。ベッドのセッティングは、シートバックを移動するだけなので比較的簡単にできる。
ギャレー
IHコンロとシンクがビルトインされたギャレー
ギャレーは左側のエントランス横に配置され、上面にはIHコンロとシンクがビルトインされている。また跳ね上げ式の調理台も用意されているので、調理面にも余裕がある。
跳ね上げ式の調理台
IHコンロはACSシリーズのコンセプトであるオール電化を目指して採用されたものと思われる。しかし、現実的には標準装備の105Ahのディープサイクルバッテリー2個ではIHコンロは負荷が大きい。
確かにIHコンロはガスを使わず安全ではあるが、常設のカセットガスコンロの方が利便性は高いと思われる。調理をするユーザーなら、2口コンロも欲しいところだ。
各20Lの給排水タンクが収納されている
シンクの下には各20Lの給排水タンクが収納されている。少し奥まったところにあるので、車外から直接出し入れすることはできない。20Lなので重量もそれなりにある。電子レンジと給排水タンクの位置を入れ替えることはできないのだろうか。
なお、電子レンジの下に収納があり、調理用品などを収納しておける。カトラリーなどの収納のために、できればギャレーキャビネットに引き出し収納が欲しいところだ。
冷蔵庫/電子レンジ
137Lの2ドア大型冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は実に137Lの2ドア大型冷蔵庫が標準装備される。この冷蔵庫もACSシステムのコンセプト通り100Vで駆動する家庭用のものだ。これだけの容量があれば、二人旅なら十分すぎる。
ただしもう少し小型で、その代わりクローゼットや収納を付けた方が良かったのではないだろうか。もちろん冷蔵庫は容量が大きい方がよいが、二人旅ではオーバースペックのような気がする。
電子レンジは家庭用の100V仕様のものが標準装備され、ギャレーキャビネットに収納されている。ちょっとした温めものや冷凍食品の調理に重宝する。1500Wインバーターも標準装備されるので、外部電源のないところでも電子レンジを使うことができる。
多目的ルーム
ポータブルトイレ(OP)を置いてトイレルームにすることもできる
多目的ルームはベッドとダイネットの間に配置される。写真のようにオプションのポータブルトイレを置いてトイレルームにすることもできる。また棚も用意されており、収納としても使える。
カセットトイレのオプションは記載が無いが、できないことは無いだろう。多目的ルーム内は防水処理や排水口は設けられておらず、温水シャワーのオプションも設定されていない。また、FFヒーターの吹き出し口が用意されていないのは残念なところだ。
このクラスのカムロードキャブコンは多くが温水シャワーのオプション設定があるので、同等の設備が期待される。ただし積載重量に勝るカムロードキャブコンとは同等とはいかない可能性もある。
収納
ダイネット上のオーバーヘッド収納
ACSプルミエM5.7は5mを超えるフルサイズキャブコンだけあって、収納は充実している。まず、オーバーヘッド収納はダイネット上、フロントシート上、エントランス上にお設置されており、またベッドルームには3面に設置されている。
ベッドのステップも収納になっている
ベッドのステップも収納になっており、容量は大きくないが、無駄なスペースを作らず、収納にしているのは便利だ。収納は多いほど良い。
後部ベッド下の大きな収納
最後に、後部ベッド下は大きな収納スペースになっている。シェルの後部に扉があり、車外からキャンプ用品など大きな荷物を直接積み込むことができる。また、車内からのアクセスも可能だ。
空調
家庭用エアコンがオプションで用意される
暖房はFFヒーターがオプション設定されており、冷房は家庭用セパレートエアコンがこれもオプションで用意される。室内機はギャレー上部に設置される。また室外機は車体左側後部下側に設置されている。
家庭用エアコンは3000W正弦波インバーター、高性能(AGM)180Ahサブバッテリー2個、35A充電器がセットオプションになっている。サブバッテリーが元気なうちは、10時間程度運転できるだろう。
エアコンのセット価格は60万円と比較的安価に抑えられている。これは高性能バッテリーではあるがAGMバッテリーで、リチウムイオンバッテリーほど高価ではないためと思われる。
テレビ/ナビ
テレビがオプションで設置できる
画面サイズは記載が無いが、上の写真のようなテレビがオプションで設置できる。アンテナなども取り付け可能だ。
ナビは同社指定のナビがオプション設定されているが、好みのナビの取り付けも可能だろう。
電装系
標準では105Ahのディープサイクルバッテリーが2個装備される。また走行充電と外部100V電源入力、および外部電源からの充電機能も標準装備される。インバーターは1500W正弦波のもの標準装備される。
ソーラーシステムは、180Wのソーラーパネルが3枚(=540W)標準装備される。更にオプションを加えると、最大828Wにもなるソーラーシステムを装備できる。
家庭用エアコンを設置する場合は、サブバッテリーが高性能化されるので、追加のソーラーパネルを付ける価値はあるだろう。
リチウムイオンバッテリーはオプション設定されていないが、ACSオアシスSHには標準装備されているので、ACSプルミエ5.7Mにも装備できるかもしれない。大電流で充電できるリチウムイオンバッテリーはやはり理想的だ。ただし、もちろん価格はアップする。
価格(2022年4月現在:千円台切り上げ:税込)
特装車ガソリン2WD/6ATで985万円~、4WDで1014万円~となっている(2022年9月現在)。カムロードベースの5m超キャブコンはカムロードのモデルチェンジがあり1000~1200万円~に値上がりしているので、今までカムロードベースよりも高価だったハイエースベースの同車は同程度の価格になった。
付けておきたい必需オプションは、FFヒーター(198,000円)、ヒーター用コントローラー(33,000円)が挙げられる。またこのクラスのキャブコンならエアコン(600,000円:サブバッテリー、インバーターセット価格)は必須オプションに入るだろう。(ナビ関連は除く)
他モデル
5m超のハイエースベースキャブコンは、カムロードベースのキャブコンに比べ極めてモデル数は少ない。具体的には、ファンルーチェのセレンゲティ525(913万円~)とパタゴニア(1006万円~)、セキソーボディのトムバロン(1006万円~)とトムタンデム(865万円~)、ダイレクトカーズのモビリティホーム(998万円~)のみだ。(2022年9月現在)
ただしこれらはいずれも対座ダイネットと前向きシートを持ち、ファミリー用途も少なからず想定している。それに対しACSプルミエM5.7は、どちらかと言うと二人旅に適したレイアウトと言える。
まとめ
ACSプルミエM5.7は、お洒落で優雅な二人旅を楽しみたいユーザーに向いているモデルだ。従ってインテリアが重視される要素のひとつで、このモデルはそれを見事に満たしている。
ただ、疑問点もある。まず大出力ソーラーシステムを搭載するなら、やはりリチウムイオンバッテリーが最適だろう。高価ではあるがこのクラスなら標準装備でもおかしくはない。
また、IHコンロは大電力を消費するが、オール電化のためにそこまでする必要があるかも疑問だ。2口ガスコンロの方が電気の心配なく便利に使える。
さらに、大型冷蔵庫は二人旅には大きすぎるので、小型の冷蔵庫の選択肢も欲しいところだ。空いたスペースは収納に利用できる。
家庭用エアコンに関しては、リチウムイオンバッテリー、大出力ソーラーシステムを標準装備にしたパッケージングの方が、このクラスのキャブコンとしては分かりやすい気がする。
同社は、キャンピングカーの電気に関して最も早くから取り組んできたビルダーのひとつで、これは今なおACSシステムに生かされている。同社独自のインテリアセンスと相まって、独自のポジションを確保している。
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