ACSエテルノオクタービアMはRVビックフットが製作する、日野リエッセIIあるいはトヨタコースターをベース車にするバスコンキャンピングカー。
同社はセミフルコンから、ハイエースベースのバンコンまで、多数のモデルをラインアップしている。
「ACS」が頭につくモデルは大容量のソーラーシステムにより、外部からの充電なしに電力を賄える自立型のキャンピングカーを想定している。
同社のバスコンのラインアップは非常に豊富で、ACSが付くモデルだけでも、ACSオアシスLL、ACSエテルノオクタービア、ACSエテルノオクタービアM、ACSプロローグがある。(現在ACSエテルノオクタービアは一時受注休止中)
なお、特徴的なのは、セミフルコンのACSオアシスSHを含め、ACSが付くモデルは、L字型ソファダイネットと後部ハイマウントダブルベッドの組み合わせで、ほぼ同じレイアウトを持つこと。(7mを超えるACSプロローグを除く)
通常は、同じベース車両に異なったレイアウトのラインアップにすることが多いが、同社のACSシリーズでは同じレイアウトが異なるベース車に展開されている。
また、後部ウインドウを窓埋めした「パネル仕様」と、ガラス窓がそのままの「窓ガラス仕様」があったり、トヨタコースター、日野リエッセIIの他に、日産シビリアンが選択できたりと選択肢は多様だ。
なお、今回取り上げた「ACSエテルノオクタービアM」の「M」は、「ACSエテルノオクタービア」の家具を無垢調材で製作したバージョンとしている。
(記事中の価格は全て税込です)
コンセプト
「ACSエテルノオクタービアM」は、フラグシップのセミフルコン「ACSオアシスSH」、ルーフを架装したバスコン「ACSオアシスLL」に次ぐポジションで、ボディ外側への架装が無いモデル。(後部窓埋めはされている)
同社のモデルはL字型ソファダイネットを持つレイアウトが多いが、ダイネットに単座のキャプテンシートも用意されており、3名が前向き乗車できる。二人旅がメインだが、3人まで対応できるようになっている。
エクステリア
ACSエテルノオクタービアのエクステリア
展示車は日野リエッセIIがベース車として使用されていたが、トヨタコースターも選択できる。(リエッセIIはトヨタからのOEMなので形状は同じ)グレードはLX標準ボディ。また、日産のシビリアンでも同じレイアウトで制作できる。(現在、新規注文受付は一時停止されている)
なおEX(ロングボディ)も選択でき、この場合は全長が標準ボディの6255mmに対して、6990mmとなる。
パネル仕様と窓ガラス仕様(現在新規注文受付は一時停止されている)が選択できるが、展示車はパネル仕様で、上の写真の通り、サイドウインドウ部分がパネル架装されている。
右側はアクリルウインドウがあるが、左側はギャレーの窓を除いて完全に窓埋めされている。これにより、格段に断熱効果が高まるとしている。
インテリア
白を基調にしたインテリア
車内に入るとまず目に入るのが、ACSシリーズ共通のホワイトを基調にしたインテリアカラー。お洒落で非日常のインテリアで、女性に人気があるという。
左が「ACSエテルノオクタービアM」、右が「ACSエテルノオクタービア」
なお、「ACSエテルノオクタービアM」は「ACSエテルノオクタービア」に比べ無垢材調の家具を採用したところが異なっている。上の写真右側の「ACSエテルノオクタービア」の扉は薄く高級感に欠けるが、写真左側の「ACSエテルノオクタービアM」ではこれが無垢調材の扉になっている。
レイアウト
前述の通り、ACS仕様のモデルでは一部を除き全てL字型ソファシートを採用しているが、「ACSエテルノオクタービアM」も例外ではない。
このレイアウトは基本的に二人旅向けのレイアウトと言えるが、もう一人増えても長距離乗車や就寝ができる。ダイネットソファにも3名が座れるので乗車定員は6名となっているが、ソファシートでの乗車は短距離と考えるべきだ。
ダイネット
L字型ソファのダイネット
ダイネットにはL字型のソファと単座キャプテンシートがテーブルを囲んで配置される。大きなソファはさながらリビングルームのようだ。また、単座シートもダイネットチェアとして使用できる。
ベッド
後部のダブルベッド
後部のベッドルームには横置きダブルベッドが配置される。ベッドサイズは1800x1500mmで、これは家庭用ではダブルベッドとクイーンベッドの中間の幅。規定上は車幅方向に大人3名が就寝できる。
ダイネットを展開したベッド
ダイネット展開ベッドは大きさのデータが無いが、大人1名が就寝できる。ソファからの展開なので、大きな労力は必要ないが、当然テーブルを片付ける必要はある。
ギャレー
ギャレーにはIHコンロが標準装備される
ギャレーはバンコンのACSリトルノオクタービアMと同等のもので、同価格の輸入車や一部の国産モデルと比べると見劣りがする。しかしACSシステムということでIHコンロが標準装備されており、ガスを使わないことで環境に配慮されている。
ただしコンロは1口で、広い調理スペースも無いので、あまり手の込んだ料理を作ることは想定されていないのかもしれない。
シンクの下には各20Lの給排水タンクが収納されているが、これもバンコン並みのタンクで温水設備は無い。また、ギャレーコンソールには電子レンジの下に収納スペースが用意されているが、カトラリーや食器を収納するスペースは無い。
冷蔵庫/電子レンジ
137L冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は特大で、137L横開き式2ドア(下は引き出し式)冷凍冷蔵庫が標準装備される。なお、同社のハイエースバンコン、ACSリトルノオクタービアMにも同様の冷蔵庫が標準装備されるが、これもACS仕様車の特徴だ。
電子レンジも標準装備される
家庭用100V仕様の電子レンジも標準装備される。1500Wのインバーターも標準装備されるので、外部電源が取れないところでもサブバッテリーで電子レンジを使える。
また、オーブン電子レンジへの変更も、オプションで可能。
多目的ルーム
ポータブルトイレはオプション
多目的ルームは右側中央に配置される。ポータブルトイレがオプション設定されているが、カセットトイレはオプションにない。ポータブルトイレは仕切り棚とセット販売されており、収納庫としても考えられている。
多目的ルームは防水処理は無く、温水シャワーのオプションは設定されていない。また、FFヒーターの吹き出し口も用意されていない。
収納
ダイネット上のオーバーヘッド収納
まずオーバーヘッド収納はダイネット上とベッドルーム3面に設置されており、大きな収納力を確保している。ただしこれらはオプション。これらのオーバーヘッド収納はほぼ必需装備なので是非標準装備にして欲しいところだ。
長いコートなども収納できるクローゼット
また、ベッドルームと多目的ルームの間にクローゼットが配置されており、長いコートなども収納できる。
後部ベッド下の外部収納
更に、後部ベッドの下は広大な外部収納で、後部のバゲッジドアからアクセスできる。室内からもアクセス可能で、ベッド下の扉か、ベッドマットを外してアクセスできる。
空調
家庭用エアコンがオプション設定されている
暖房はFFヒーターがオプションで設置できる。また冷房は家庭用エアコンが、これもオプションで設置できる。これらはオプションだが、今やほぼ必需品なので、特にバスコンのグレードでは標準装備でも良いのではないだろうか。
ベンチレーターはダイネット上とベッドルームの2か所に標準装備される。なおマックスファンへの変更がオプションで用意されている。
テレビ/ナビ
エントランス上にテレビが設置できる
テレビと地デジアンテナがオプション設定されている。ナビは指定のメモリーカーナビがオプションで用意されている。テレビはエントランス上部に取り付けられる。
電装系
ACSシステムは、大容量のソーラーシステムを使用することで、外部電源に頼らない自立システムを想定している。そのため、ACSエテルノオクタービアMには160Wのソーラーパネルを3枚標準装備し、もう1枚オプションで設置できる。即ち最大640Wのソーラーシステムを搭載できる。
またサブバッテリーには180AhのAGMバッテリーを2個標準装備する。即ち360Ahの容量なので、照明、冷蔵庫、電子レンジ、IHコンロ、FFヒーター程度の消費電力なら十分な容量だろう。
ただし、IHコンロ(1000W程度)を長時間使ったり、電子レンジを頻繁に使ったりすると容量不足になる可能性がある。単純計算ではIHコンロだけなら3時間程度連続使用できることになる。
もう一つのポイントは充電で、360Ahのバッテリーを最大640Wのソーラーシステムで充電すると、70%の効率で80%まで充電するのに8時間程度かかる。しかし効率よく充電できる日照時間はせいぜい数時間だし、いつも晴天とは限らない。
更にエアコンが追加されると、消費電力とソーラーによる充電電力のバランスは厳しくなる。仮にエアコンだけを使ったとすると、エアコンの消費電力(仮に平均500Wとする)とソーラーシステムの生成電力は同じくらいか、持ち出しになる。
エアコン以外の装備も使うと、やはり何日かに一度は外部電源のあるRVパークやオートキャンプ場に停泊する必要があるだろう。しかしその間隔を長くすることはできる。
サブバッテリーに関しては、ACSエテルノオクタービアMにはリチウムイオンバッテリーはオプション設定されていないが、大容量ソーラーシステムを生かすには、大電流で短時間に充電できるリチウムイオンバッテリーが適しているだろう。
リチウムイオンバッテリーはACSオアシスSHに標準装備、ACSオアシスLLにオプション設定されているので、ACSエテルノオクタービアMにも設置できると思われる。
また、IHコンロはやはり電力の消費が大きいので、調理を頻繁にするユーザーにはガスコンロの方が有用だろう。(ACSシリーズのオール電化コンセプトに反するが)
なお、インバーターは1500Wが標準装備されるが、エアコンを装備する場合は3000Wが付く。また外部電源入力と充電機能も標準装備される。
価格(2021年9月現在/オプションは4月現在:千円台切り上げ:税込)
LX標準ボディディーゼル2WDパネル仕様で1282万円~。EX(ロングボディ)では1466万円~。
付けておきたいオプションは、ルームエアコン+3000Wインバーター(352,000円)、ソーラーパネル追加(102,300円)、FFヒーター+コントローラー(318,835円)、オーバーヘッド収納(ダイネットとベッドルーム:300,300円)、カーナビ(275,000円)、ETC(27,500円)が挙げられる。
他モデル
バスコンを製作しているビルダーはそれほど多くなく、RVランドのランドホームコースター(1375万円~)、トイファクトリーのセブンシーズ(ロングボディ:2047万円~)、フィールドライフのシードMC(1043万円~)などがある。
ランドホームコースターは窓埋め、エアコン、FFヒーターが標準装備される。オーバーヘッド収納はもちろん標準装備だ。また温水シャワーはオプションで設置できる。セブンシーズはやはり温水シャワーまで付いたフル装備だがロングボディのみ。シードMCはエアコンやFFヒーターは標準装備だが温水シャワーまでは設定が無い。
まとめ
バスコンはキャブコンより上位カテゴリーで、全てのモデルが充実装備を持つかと言うとそうではない。かつてトイファクトリーにあったビッグバンのように、バンコンの延長的な位置付けのモデルもある。
ACSエテルノオクタービアMもそのようなコンセプトに見える。実際ハイエースバンコンのACSリトルノオクタービアMを大きくしただけのような印象を受ける。もちろんそれはそれでよいのだが、やはりバスコンならばFFヒーターやエアコン、そしてオーバーヘッド収納くらいは標準装備であって欲しい。
なお、エアコン、FFヒーター、オーバーヘッド収納を付けると約100万円追加になり、これらが標準装備されるランドホームコースターより高価になる。
この価格帯になると、上級キャブコンや輸入モデルも比較対象になってくる。バスコンの強みは、ベース車がマイクロバスで乗り心地が優れている点だが、シェルを架装しているわけではないのでどうしても停泊時の快適性はキャブコンに譲る。
マイクロバスの優位性を持ち、シェルの快適性を求めると、セミフルコンということになる。例えば同社のセミフルコンACSオアシスSHは1704万円~だ。理想を求めると、やはり高価になる。
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