セレンゲティ525はファンルーチェが製作する、ハイエースワイドミドルバンをベース車にしたキャブコンキャンピングカー。
同社はカムロードベースのイグアスやヨセミテと、ハイエースベースのウラルやセレンゲティ、パタゴニアといったキャブコンを専門に製作している。
セレンゲティは同社の看板的な存在で、ハイエースベースのキャブコンとしても常に上位の人気を誇るモデルとなっている。
セレンゲティには5mを切る「セレンゲティ」と、5m超の「セレンゲティ525」がある。レイアウトは同じだが、最後部の横置き2段ベッドの幅が異なっている。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
コンセプト
ハイエースをベース車にすることで、トラックのイメージが残るカムロードベースキャブコンとは一線を画し、スマートな外観を持つ。
対座ダイネット、2段ベッド、バンクベッド、ギャレー、多目的ルームの汎用的なレイアウトで、ファミリーにも二人旅にも対応できる。またセレンゲティ525では5m枠にとらわれない車長を生かし、十分な幅を持つ2段ベッドとしている。
更に、家庭用エアコンとリチウムイオンバッテリーの搭載を実現、夏でも快適なクルマ旅が可能となった。
アピールポイント
・ハイエースをベース車に使用したスマートなシルエット
・安全性を考慮した鋼製スペースフレームのシェル
・一般的なレイアウトでファミリーにも二人旅にも対応
・5m枠にとらわれない、広い幅を持つリアの2段ベッド
・家庭用エアコンとリチウムイオンバッテリーを搭載可能(オプション)
・温水シャワーも装備可能(オプション)
・5m未満の「セレンゲティ」も選択できる
・リアエントランスのパタゴニアもあり、レイアウトが選択できる
エクステリア

セレンゲティのエクステリア
ベース車はハイエースワイドミドルバンS-GLを使用。オートエアコンやセンターコンソールなどスーパーGLの装備が標準装備される。ただし、トヨタセーフティセンスや電動格納式ミラーはオプション。
シェルは同社独自の鋼製スペースフレームが内蔵されており、万一の事故でも最大限の安全性を保障している。またシェルは多層高断熱FRP製で、断熱性の高い室内を実現している。
インテリア

インテリアは様々な素材や色を選択できる
家具やシートは質感が高く、間接照明も用いられている、2021年モデルのインテリアカラーは上の写真の通りで、落ち着いた配色で高級感もある。
レイアウト

セレンゲティとセレンゲティ525のレイアウト
前部に対座ダイネット、最後部に横置き2段ベッド、中央にギャレーと多目的ルーム、キャブ上部にバンクベッドを持つ一般的なレイアウト。
セレンゲティ525では全長を5m超とすることにより、2段ベッドの幅を広くとっている。
ダイネットには横座りの単座シートも用意されており、乗車定員は運転席と助手席を含めて7名となっている。また、就寝人数は2段ベッドとバンクベッドに大人が計5名、ダイネット展開ベッドに子供が2名就寝できる。
ダイネット

4名対座と横座りの単座シートのダイネット
ダイネットは4名対座と横座りの単座シートで5名がテーブルを囲むことができる。
3列目の2人掛けシートには3点式シートベルトが備えられており、運転席、助手席を含め4名が前向き乗車できる。
テーブルは大きく、ファミリーでの食事でも十分な大きさ。また、ダイネットのウインドウは大きく眺望もよい。ウインドウは網戸とシェードが組み込まれたアクリルウインドウを採用している。
ベッド

最後部の2段ベッド
最後部の2段ベッドは最大で1920x900mm(一部850mm)の大きさ。これは家庭用ではシングルベッドの幅(970mm)に近い。なお、5mを切る車長のセレンゲティではこれが630mm(一部580mm)となる。

上下段ともウッドスプリングが採用されている
2段ベッドでは上下段ともウッドスプリングが採用されており、快適な寝心地を提供する。また上下段ともに読書灯が用意される。格段に収納キャビネットは用意されていないが、上段のみにポーチが設置されている。

バンクベッドは引き出してセットする
バンクベッドは引き出してセットするが、特に大きな労力は必要ない。寝具も置いておけるので、準常設ベッドのように使用できる。
大きさは1900x1900mmで、家庭用ではキングサイズ以上の幅に相当する。キャンピングカーの規定では大人が3名就寝できるが、2名の場合はゆったり就寝することができる。

ダイネットベッドは子供用
対座ダイネットはシートバックで中央を埋めると、ダイネットベッドになる。大きさは1760x950mmで、身長方向が1800mmに達していないため、子供用ベッドの位置付けとなっている。
ギャレー

広いギャレーセクション
ギャレーコンソールにはシンクとフォーセットが埋め込まれている。コンロはポータブルカセットコンロを使用するときにセットする必要がある。
なお、跳ね上げ式調理台が用意されており、これを使用すると調理スペースが延長される。
冷蔵庫/電子レンジ

65L横開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は65L横開き式冷蔵庫が標準装備される。電子レンジもオプション設定されており、上部のオーバーヘッド収納のひとつにビルトインできる。しかしこのクラスのキャブコンなら標準装備して欲しいところだ。
多目的ルーム

防水処理された多目的ルーム
セレンゲティには多目的ルームが用意されている。室内は防水処理され、排水口も設けられており、温水シャワーをオプションで装備できる。湯はラジエーターの熱交換を使用するヒートエクスチェンジャー方式で沸かす。
また、もちろんトイレを設置してトイレルームにすることは想定されており、天井にはベンチレーター(ファンは無い)が標準で設置されている。ポータブルトイレはもちろんだが、カセットトイレの設置も可能だ。
更に写真には無いが、オプションでFFヒーターの吹き出し口を設置することも可能。トイレ設置時は忘れず配管しておくと、トイレで寒い思いをすることは無い。
収納

内側に湾曲したオーバーヘッド収納
オーバーヘッド収納がダイネット上とギャレー上に備えられており、大きな収納スペースを確保している。オーバーヘッド収納の扉は内側に湾曲しており、圧迫感が無いように考慮されている。

大きな外部収納
もう一つの大きな収納は外部収納で、リアの扉を開けることで外部から大きな荷物を出し入れできる。ただし、同じ横置き2段ベッドを持つイグアスやヨセミテのように横から出し入れする縦長のドアは無く、ベッドボードを外して大きな収納庫にすることはできない。
空調

家庭用エアコンがオプション設定されている
暖房はFFヒーターが標準装備される。また冷房は家庭用エアコンがオプション設定されており、室内機はエントランスの上部に設置される。また室外機は車体右側後部に収納される。
ただしサブバッテリーで動作させる場合はオプションの1500Wのインバーターも装備する必要がある。リチウムイオンバッテリーもオプション設定されているので、エアコンを装備する場合はお勧めする。
テレビ/ナビ
19型の液晶TVとDVDデッキのセットがオプション設定されており、エントランス横のシューズボックスの上に設置できる。ナビも好みのものを指定して取り付けることができる。
電装系
サブバッテリーは115Ahのディープサイクルバッテリーが2個標準装備される。またCTEK昇圧システムをオプションで装備できる。
ただし、電子レンジを装備して頻繁に使用したり、家庭用エアコンを装備する場合は、リチウムイオンバッテリーを装備したい。リチウムイオンバッテリーはヨセミテ同様、90Ahを2個、即ち180Ahが装備できる。
また、2022モデルより245W薄型ソーラーパネルが標準装備される。
価格(2021年4月現在:千円台切り上げ:税込)
ガソリン2WD/6ATは830万円~。ちなみに5m未満の「セレンゲティ」の価格は806万円~なので、24万円高となる。2段ベッドの幅と価格差を天秤にかけることになるが、実際に横になってみてその違いを確認することをお勧めする。
FFヒーターや外部電源による充電機能などは標準装備されているので、必須で付けておきたいオプションはほとんど無い。
必要に応じて、電子レンジ、エアコン、リチウムイオンバッテリーが挙げられる。
他モデル
ハイエースワイドロングをベース車に使用したキャブコンは、セレンゲティの他はRVトラストのL-CH(750万円~)とファンルーチェのパタゴニア(830万円~)しかない。
スーパーロングまで広げると、RVビックフットのA.C.SプルミエM5.7(894万円~)、セキソーボディのトム タンデム(価格不明)、ダイレクトカーズのモビリティホーム(933万円~)が挙げられる。
このうちセレンゲティ525に最も近いコンセプトのモデルはトムタンデムとモビリティホームだ。前部に対座ダイネットと後部に2段ベッドを持ち、多目的ルームを装備する。エアコンはトムタンデムはオプション、モビリティホームはリチウムイオンバッテリーを含め標準装備となっている。
まとめ
セレンゲティ525は、「フルサイズのキャブコンが欲しいが、トラック臭さが残るカムロードベースのキャブコンは避けたい」というユーザー層の受け皿となる。
バンクを持つオーソドックスなスタイルだが、ハイエースベースのためそれなりにスタイリッシュだ。そしてバンクベッドを持つため、ファミリー使用時でもダイネットを展開してベッドにする必要性は少ない。
セレンゲティおよびセレンゲティ525は、エアコンの搭載が可能になったのが多少遅かったためこれが弱点になっていたが、リチウムイオンバッテリーを含め搭載できるようになり、冷房に関しては今や優位点になった。
カセットトイレや温水シャワーまで装備できるので、装備面に関してもほぼ完璧になったといえる。
あえて希望点を挙げると、2口程度の常設コンロの選択肢と2段ベッド部の収納がある。
常設コンロが敬遠されるのは、ポータブルカセットコンロほど火力が強くなく、高地では更に火力が弱くなるという理由がある。しかし、それでもいちいちセットするのが面倒というユーザーに対しては、選択肢があれば嬉しい。
また、2段ベッドのメリットのひとつが、ベッドボードを取り外すと自転車等を積み込める大きな収納になる、という点。バンテックのコルドバンクスなどが打ち出している機能だ。セレンゲティではスペースフレームなどがあり、構造的に難しいのかもしれないが、将来装備されることを期待したい。
最後に、セレンゲティに電子レンジやカセットトイレや温水シャワーやリチウムイオンバッテリーが装備できることをご存じなかった読者の方もおられるのではないだろうか。セレンゲティは大きく進化しているが、このような素晴らしい装備がウェブサイトに書かれていないのはもったいない気がする。
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