トム タンデムは、セキソーボディが製作する、ハイエーススーパーロングをベース車にしたフルサイズキャブコン。同社はハイエースをベース車にしたキャブコンを多数ラインアップしているが、トム
タンデムは、フラグシップのトム バロンとともに全長5mを超えるフルサイズキャブコンの位置付け。
トム バロンが豪華な室内を持つ二人旅向けのモデルに対し、トム タンデムは実用的なインテリアのファミリー向けモデルだ。一見するとトム バロンとトム
タンデムは同じサイズに見えるが、全長はトムバロンが5970mmに対してトムタンデムが5600mm、全幅は同2180mmに対して1980mmと、トムタンデムは一回りコンパクトなボディを持つ。
(記事中の価格は全て税込です)
コンセプト
トラック臭さが薄いハイエースをベース車にすることにより、ステータス感を持つとともに、軽量アルムシェルを採用することにより、動力性能でも優位性を持っている。
レイアウトはファミリー向けに特化しており、キャブコンには珍しく、2列目にマルチモードシートを採用、5名が前向き乗車できるようにしている。
エクステリア
トム タンデムのエクステリア
ベース車はハイエーススーパーロングを使用。キャンパー特装かDXグレードを選択でき、DXにはもちろんGLパッケージも選択できる。(キャンパー特装にはトヨタセーフティセンスは付かない)
シェルはアルミパネル製で軽量化を図っているのが同社キャブコンの特徴。ベース車がハイエースであることも相まって、動力性能に貢献している。
ボディサイズは5,600x1,980x2,670mmで、大きいながらも車幅は2mを切っている。
インテリア
堅実的なインテリア
インテリアはトム バロンのような煌びやかさはないものの、写真の展示車では堅実的なインテリアとなっている。シート地や家具色が選択できるのかは不明だが、不満のないクオリティのインテリアだ。
レイアウト
計5名が前向き乗車できる
2列目に3名掛けのマルチモードシートを配置し、前向きにすると計5名が前向き乗車できる。多くのキャブコンはスペースの点から2列目シートは後ろ向き固定にしているが、トム
タンデムはミニバンのようにドライブできるので疲れないし安全だ。
また後部ベッドは2段ベッドだが、下段は2名が就寝でき、上段は1名就寝できる。さらにダイネットを展開すると2名が就寝できるベッドになるので、計5名が就寝できる。即ち、5名のファミリーが無理なく移動でき、就寝できるレイアウトだ。
ダイネット
5名が対座できるダイネット
ダイネットは2列目の3名掛けシートと3列目の2名掛けシートを向かい合わせることにより5名が対座できる。実際には大人5名だと窮屈だが、 多くの場合小さな子供と大人の組み合わせと思われるので、問題は無いだろう。
2列目シートは前向き乗車できるが、右側の1名のみ3点式シートベルトが用意されており、中央と左側の乗員は2点式ベルトになる。また3列目シートは両名とも3点式だ。
ベッド
最後部の横置き2段ベッド
最後部には横置き2段ベッドが設置されている。下段は2名が就寝できるのが特徴。また上段は1名就寝で、使わないときは跳ね上げておくことができる。
ダイネットベッドでは2名が就寝できる
ダイネットを展開すると1800x1360mmの大きさのベッドになり、2名が就寝できる。車内が広いのでバンコンほどではないが、マルチモードシートのベッド展開はやはり面倒だ。
バンク部は小型の収納スペースになっている
なお、外観から想像できるようにバンクベッドは無く、その部分は収納スペースになっている。
ギャレー
ギャレーにはシンクと冷蔵庫が標準装備される
ギャレーは左側中央に配置され、シンクとシャワーフォーセットが上面に埋め込まれている。シャワーフォーセットは引き延ばして車外で使用できる。また、シンクの下には各20Lの給排水タンクが収納されている。エントランスの横なので車外から直接出し入れできる。
なお、ギャレーコンソールにコンロは常設されていない。また8ナンバー登録のための調理用具は電子レンジになっているので、ガスコンロは用意されていない。しかし長期旅ならコンロで調理したり湯を沸かしたい場合もあるので、このクラスのキャブコンなら常設コンロが欲しいところだ。
冷蔵庫/電子レンジ
電子レンジも標準装備される
冷蔵庫は65L横開き式が標準装備される。また電子レンジも標準装備され、ギャレー上部にビルトインされる。なお、1500Wインバーターも標準装備されるので、外部電源が無いところでもバッテリーで電子レンジを使うことができる。
多目的ルーム
多目的ルーム
多目的ルームは右側中央に用意されている。トイレを置くとトイレルームとして使用できる。ただしカセットトイレはオプション設定が無く、設置できるかは不明。また外部からアクセスするドアが無く、ポータブルトイレの処理も面倒ではある。
上の写真から分かるように、FFヒーターの吹き出し口は無く、防水処理もされていない。更にトイレルーム専用のベンチレーターも無い。
多目的ルームのオーバーヘッド収納
なお、多目的ルームには専用のオーバーヘッド収納が用意されており、トイレットペーパーなどを収納しておくのに便利だ。
収納
ダイネット上のオーバーヘッド収納
オーバーヘッド収納がダイネットの上とギャレーの上に備えられている。ダイネット上のオーバーヘッド収納は、エアコンの室内機を設置する場合は容量が減少する。
後部ベッド下の大きな外部収納
後部ベッド下は大きな外部収納庫になっており、キャンプ用具などを収納できる。この展示車では後部の扉のみ付いているが、同社のサイトのモデルでは左サイドにも扉が設けられている。
なお、ベッド下収納へは車内からもアクセスできる。
空調
家庭用エアコンがオプション設定されている
暖房はFFヒーターがオプション設置されている。また冷房は家庭用エアコンがオプションで装着できる。設置場所はダイネットの上になる。なお、ベンチレーターはダイネット上部に標準装備される。
テレビ/ナビ
特に記述はされていないが、ナビは希望のメーカーのものが取りつけ可能だろう。またテレビも希望に応じて対応できると思われる。
電装系
電装系
105Ahのディープサイクルバッテリー1個と走行充電機能が標準装備される。また、1500Wのインバーターも標準装備される。外部電源入力と、それによるサブバッテリーの充電機能はオプション。
サブバッテリーの増設もオプションで用意されている。また160Wのソーラーシステムもオプションで設置できる。電装系は比較的オーソドックスにまとめられている。
なお、オプションのエアコンを装着する場合は、ディープサイクルバッテリーの増設を行うことをお勧めするが、105Ahが2本でもエアコンを運転できる時間はあまり長くない。外気温などにもよるが、日中ならエアコンだけ運転しても3時間程度と考えられる。
同社はリチウムイオンバッテリーをオプション設定していないが、炎天下の日中もエアコンを長時間使う可能性があれば、やはりリチウムイオンバッテリーが望ましい。リチウムイオンバッテリーを中心にした急速充電システムや大容量ソーラーシステムが期待される。
価格(2021年4月現在:千円台切り上げ:税込)
DXグレード2WD/6ATで792万円~。なお同社はサイトで価格を表示していないため、最新の価格は同社にお問い合わせいただきたい。(この価格は2021年4月時点のもの)
付けておきたいオプションは、外部電源入力と充電機能(30,800円)、FFヒーター(価格不明)が挙げられる。
また予算があればお勧めしたいオプションは家庭用エアコン(220,000円)、160Wソーラーシステム(価格不明)、キーレス連動エントランスドア(55,000円)がある。
他モデル
ハイエーススーパーロングをベース車にするキャブコンは、RVビックフットのACSプルミエM5.7(894万円~)、カトーモーターのディースクエア(1188万円~)、ダイレクトカーズのモビリティホーム(933万円~)がある。
またハイエースワイドミドルをベース車にしたキャブコンで5mを超えるモデルはファンルーチェのパタゴニアとセレンゲティ525、RVトラストのTR500 C-LHがある。
これらのうち、最もトムタンデムにコンセプトが近いのはモビリティホームだ。これも2列目シートに3人掛けマルチモードシートを配置し、7名全員が前向き乗車でき、6名が就寝できる。また家庭用エアコンと2400Whリチウムイオンバッテリーが標準装備されるのはモビリティホームの優位点だ。価格はもちろんトム
タンデムより高価だ。
まとめ
トム タンデムはファミリーで使えるハイエースベースのフルサイズキャブコンで、このカテゴリーは他モデルを含めモデル数は少ない。特に全員が前向き乗車できるのは上記のように2モデルしか存在しない。
また、アルミ製シェルを纏った軽快なスタイリングと、このカテゴリーにしては比較的小ぶりなボディもトムタンデムの魅力だ。さらに価格も上記のモデルと比べて安価なのも嬉しい。
このようにトムタンデムはファミリー向けのハイエースキャブコンとしてお勧めできるモデルで、もちろん二人旅でも使用できる。家庭用エアコンも搭載できるようになったので、従来の弱点は解消され有力な選択肢になった。
弱点があるとすると、それは電装系だ。リチウムイオンバッテリーのオプション設定は最も欲しいところだが、それに伴い、昇圧型走行充電、大容量ソーラーシステムも必要となる。もちろん価格は高くなるが、選択肢があることがメリットになる。
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