ACE-MはAtoZが製作する、トヨタ カムロードをベース車にするキャブコンキャンピングカー。
同社は埼玉県さいたま市を本拠にするビルダーで、カムロードベースのキャブコンからタウンエースベースのバンコン、キャブコン、そして軽キャブコンまでラインアップする総合ビルダー。
ACEシリーズは2024年に、スライドアウトを持つフラグシップのACE-Gを筆頭に、タウンエースベースのACE-S、軽キャブコンのACE-C/CBを発表。その後、日産NV200バネットベースのキャブコンACE-Fと、このACE-Mを発表した。
同社には従来からカムロードキャブコンのシリーズとしてアンソニーシリーズがあるが、こちらもラインアップに併存している。アンソニーシリーズは全長が5mを切るが4980mmで、ACE-Mはさらに小型化している。
また、ボンゴトラックの生産終了により、タウンエースベースのキャブコンとカムロードベースのキャブコンの間にできた価格ギャップを埋める役割も担っている。
アンソニーシリーズにはアンソニーライトという全長4630mmのモデルも存在したが、ACE-Mはアンソニーライトの後継モデルとしての位置付けでもある。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
トヨタカムロードをベース車にしたキャブコンキャンピングカー。全長が4650mmで、5mを大きく下回り、コンパクトで運転しやすい。
レイアウトは、対座ダイネットとリアの2段ベッドの組み合わせで、多目的ルームを省くことにより、短い全長を可能にしている。
横開き式冷蔵庫、電子レンジ、車載用セパレートクーラーを標準装備し、クルマ旅にも対応するが、リチウムイオンバッテリーのオプションは設定されていない。
アピールポイント
・短い全長で取り回しが楽
・横開き式冷蔵庫、電子レンジを標準装備
・車載用セパレートクーラーを標準装備
・カムロードキャブコンながら手頃な価格設定
ベース車とエクステリア

ACE-Mのエクステリア
ベース車はトヨタカムロード。ガソリン2WD、ディーゼル2WDと4WDが選択できる。トレッドはいずれも標準トレッドで、ガソリンは小径ダブルタイヤ、ディーゼルは同径ダブルタイヤとなっている。(アンソニーシリーズはガソリン2WDのみで、標準トレッド小径タイヤを採用)
このベース車にFRPパネル構造のジェルを架装している。全長は4650mmで、アンソニーの4980mmに比べ330mm短くなっており、リアオーバーハングが少ない分取り回しが良くなっている。
ただし、車幅は1940mmで、アンソニーの1910mmに比べ30mm広くなっている。
インテリア

ACE-Mのインテリア
AtoZは従来より、同社のモデルには明るい木目の家具を採用しているが、ACE-Mもその例に漏れず、一目で同社のモデルと分かる。シートはホワイト系を採用し、明るく、美しいインテリアになっている。
アンソニーシリーズなどでは、インテリアにテーマを設け選択肢があったが、ACEシリーズではそのような選択肢は無いようだ。
レイアウト
基本的には従来のアンソニーライトと同じで、前部に対座ダイネット、中央にギャレー、後部に横置き2段ベッドのレイアウトを採用。多目的ルームは省かれている。
アンソニーに代表されるように、カムロードキャブコンでは最も一般的なレイアウトで、そこから多目的ルームを省いたカタチとなる。
同社のカムロードキャブコンで特徴的なのは、2列目と3列目のシートが固定ではなく、マルチモードシートを採用していること。これによりダイネットシートのリクライニングが可能になっているが、その分、同じショートバージョンのナッツRVのジョリビーのような多目的ルームは省かれている。
ダイネット

4名対座のダイネット
ダイネットは2列目と3列目のシートで4名が対座できる。先にも書いたように、両シートはマルチモードシートでリクライニングが可能。一般的なキャブコンはシートが固定なので、このようなリクライニングはできない。
ただし、2列目シートは後ろ向き専用で、走行時に前向き乗車ができるというわけではない。デメリットとしては、ベッドへの展開が一般的な背もたれを移動する方法に比べ、多少面倒になる。
2列目の後ろ向きシートにも2名が乗車でき、乗車定員は運転席、助手席、そしてその間の補助シートを含め、計7名となっている。
ベッド
ベッドは、後部の横置き2段ベッド、バンクベッド、ダイネット展開ベッドの3か所があり、計大人4名+子供3名が就寝できる。

後部の2段ベッド
縦置き2段ベッドは、上段が1800x790mm、下段は1800x800mmの大きさ。家庭用シングルベッドの幅(1000mm)と比べると幅が狭いが、このクラスのキャンピングカーとしては広い方だ。(下の比較表参照)

バンクベッド
バンクベッドは固定式で、1800x1500mmの大きさ。車幅方向に就寝する。1500mmの幅は家庭用のレギュラーダブルベッドの幅(1400mm)より広い。

ダイネット展開ベッド
ダイネットを展開したベッドは1900x1260mmの大きさ。キャブコンでは900mm程度のダイネットベッドがほとんどである中、オプション無しで通路までベッドにでき、1260mmの幅を確保できるのは大きなアドバンテージだ。
ベッド展開はシートの座面を通路側にスライドさせ、背もたれで窓側のスペースを埋める。多少労力は必要だが、大人数で車中泊をすることができる。
ギャレー

ギャレーセクション
ギャレーキャビネットの天板にはシンクとフォーセットがセットされているが、コンロを置くスペースはほとんど無い。キャンピングカー要件の調理器具としては電子レンジが標準装備されているので、コンロも付属していない。調理には向かないギャレーだ。

各10Lの給排水タンク
各10Lの給排水タンクは、車外から直接出し入れできるので大変便利だ。

ギャレーキャビネットの引き出し
ギャレーキャビネットには引き出し収納が用意されている。カトラリーやちいさな食器などを収納しておくのに便利だ。
冷蔵庫/電子レンジ

49L横開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は49L横開き式が標準装備される。冷凍室もあるので、製氷や冷凍食品の保冷と、飲み物や食品の保冷が同時にできる。エントランスの横にあるので、車外から飲み物を取り出したり、スーパーで買った食品を冷蔵庫に入れる場合などは楽だ。

電子レンジも標準装備される
家庭用の100V仕様の電子レンジが標準装備される。1500W正弦波インバーターも標準装備されるので、外部電源が無いところでも電子レンジを使うことができる。
多目的ルーム
ACE-Mに多目的ルームは無いが、緊急用にポータブルトイレを積んでおくことは可能だ。後部の2段ベッドのベッドボードを取り外すと広いスペースができるので、トイレルームにすることもできるだろう。
収納

右側オーバーヘッド収納
オーバーヘッド収納がダイネット上部の右側と、エントランス上部に設置されている。高さがあまりないので非常に大きな収納力ということは無いが、食品や食器などを入れておくこともできるだろう。

シューズボックス
エントランス横にはシューズボックスのキャビネットが設置されている。

後部のベッド下収納
後部のベッドの下は大きな外部収納になっている。両側にバゲッジドアがあるので、車外から直接大きな荷物を積み込むことができる。更に、ベッドボードを取り外すと、背の高い荷物も積み込むことができる。
空調

最後部に設置されたクーラー
車載用のセパレートクーラーが標準装備される。設置位置は最後部で、前向きに冷風が吹き出すので、前部まで冷気が届きやすい。室外機はボディ左側後部の下に設置されている。
FFヒーターとマックスファンはオプションとなっている。
テレビ/ナビ

19インチモニター(OP)
19型のテレビモニターがオプションで用意されている。角度が変えられるテレビアームも別オプションで用意されている。またナビもオプションで用意されている。もちろん好みのナビを取り付けることは可能だ。
電装系
標準では、105Ahのディープサイクルバッテリーが2個、標準装備されるが、残念ながらリチウムイオンバッテリーのオプションは設定されていない。クーラーを使用する場合は標準のバッテリーだけでは心もとないので、ポータブル電源を接続する入力端子がオプションで用意されている
その他の電装系では、走行充電、外部100V電源入力とチャージャー、1500W正弦波インバーターが標準装備されている。 180Wソーラーシステムはオプションで設置できる。
価格(2025年5月現在:千円台切り上げ:税込)
ガソリン2WDは765万円~、ディーゼル2WDは886万円~、ディーゼル4WDは908万円~となっている。
付けておきたい必需オプションは、FFヒーター(ガソリン用:258,500、軽油用:282,700円)が挙げられる。ポータブル電源取り入れ口(55,000円)があればポータブル電源でクーラーを実用的に使える。(ナビ関連は除く)
マックスファン(93,500円)と180Wソーラーシステム(154,880円)もあると便利だ。
他モデル
全長を短くしたカムロードキャブコンは最近各社から発売されている。後部に2段ベッドを持つモデルを挙げると、まずナッツRVのアレッタ TypeW(4850mm:950万円~)とジョリビー TypeW(4,790mm:799万円~)がある。アレッタは上級モデルの位置付け。その他では、バンテックのトリアス480(4800mm:ディーゼル2WD 988万円~)、ダイレクトカーズのオステリア(4850mm:798万円~)などがある。
まとめ
ACE-Mはこのクラスのモデルでは最も全長が短く、また、価格的にも最も安価なのが分かる。多目的ルームやクローゼットは無いが、その分リクライニングができるダイネットが特徴だ。
短所はリチウムイオンバッテリーが選択できないことが挙げられる。クーラーが標準装備されているので、やはりリチウムイオンバッテリーを標準装備して欲しいところだ。ポータブル電源でサポートできるが、新たに購入する必要があり、電源取り入れ口もオプションとなっている。
見かけの価格を下げるという理由があるかもしれないが、結局必需装備は付けなければならない。
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