ACE-Sは、AtoZが製作する、マツダ ボンゴトラックをベース車にしたキャブ・コンバージョン キャンピングカー。
同社は、埼玉県さいたま市に本拠を置くビルダーで、カムロードベースのキャブコンから、タウンエースクラスのコンパクトバンコン、そして軽キャブコンまでラインアップしている。
2024年2月のジャパンキャンピングカーショーでは、同社の新しいラインアップとなる「ACE」シリーズを発表。スライドアウトを持つカムロードベースのACE-G、マツダスクラムトラックをベース車にするACE-C/CBとともに、マツダボンゴトラックベースのACE-Sを発表した。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
マツダボンゴトラックをベース車にするライトキャブコン。同社の従来からあるアレンHと同じレイアウトを採用しているが、シェルを拡張し、後部の横置き2段ベッドで大人が就寝できるようになった。
コンパクトキャブコンながら、大人6名が乗車でき、大人6名が就寝できる、タウンエースベースのキャブコンでは他に例を見ないレイアウトを採用している。
アピールポイント
・コンパクトなキャブコンながら大人6名が乗車でき、就寝できる
・後部横置き2段ベッドの効率の良いレイアウトを採用
・車載用セパレートクーラーを設置可能(OP)
ベース車とエクステリア

ACE-Sのエクステリア
ベース車はトヨタタウンエーストラックの姉妹車である、マツダボンゴトラック。グレードは上位のDXなので、標準で同色バンパーなどが装備される。
これにFRPパネルのシェルを架装している。一見従来のアレンHと同じに見えるが、シェルのサイズが拡張されており、アレンHに比べACE-Sは全長が20mm長く、全幅が50mm広く、全高が140mm高い。
エントランスはセンターで、アレンシリーズのように、車高が多少低いアレンLや、リアエントランスのアレンH LEのようなバリエーションは、現在のところ発表されていない。
インテリア

ACE-Sのインテリア
インテリアカラーは上の写真のように落ち着いた配色ながら高級感を感じるもの。アレンHには「ミライ」と「キセキ」と名付けられた2種類のテーマカラーが選択できたが、ACE-Sに選択肢は用意されていない
レイアウト
前部に対座ダイネット、中央にギャレー、後部に横置き2段ベッドの構成。このレイアウトは、カムロードベースのキャブコンでは最も一般的で効率の良いものだが、ライトキャブコンでは身長方向(車幅方向)で1800mmを確保するのが難しかった。
そのため多くのタウンエースベースのキャブコンはリアエントランスなど、他のレイアウトを採用している。従来唯一横置き2段ベッドを採用していたアレンHも2段ベッドはは子供用となっていた。
ACE-Sではシェルを拡張。車幅を1930mmにして横置き2段ベッドの長さを1800mmとしている。
ダイネット

4名が対座できるダイネット
ACE-Sのダイネットには4名が対座できる。2列目にはマルチモードシートが使用されているが、前向き乗車ができるわけではない。3列目は固定のシートとなっている。
運転席、助手席と合わせて6名が乗車可能で、3列目シートの2名とフロントシートの2名の計4名が前向き乗車でき、3点式シートベルトを着用できる。
ダイネットの窓はあまり大きくないが、これはバンクベッドが2列目シートの上まで来るため。これはアレンHでも同様となっている。
ベッド
ACE-Sのベッドは、後部横置き2段ベッド、バンクベッド、ダイネットベッドの3か所があり、計6名が就寝できる。

後部2段ベッド
ACE-Sの最も大きなアピールポイントがこの後部横置き2段ベッドで、身長方向(車幅方向)に1800mmが確保できたため、大人用のベッドとしてカウントできるようになった。
ただし、1800mm以下の身長のユーザーでも、ベッドサイズとしては1800mmでも窮屈な場合があるので、実際に横になって確かめてみることをお勧めする。
ベッドサイズは両段とも1800x720mm。なお、アレンHの同ベッドサイズは1750x790mmとされているので、ベッド幅はACE-Sの方が70mm狭いことになる。これはちょっと残念なところだ。

バンクベッド
バンクベッドのサイズは2000x1620mm。家庭用ではクイーンサイズベッドの幅(1600mm)以上に相当する。サイズ的には3名が就寝できるが、定員は2名としている。
アレンHでは長さ(奥行き)は同じだが、幅は1600mmだったので20mm広くなっている。
ACE-Sのバンクベッドにはサンルーフが標準装備されているのが特徴。足元になるので星を見ながら就寝と言うわけにはいかないかもしれないが、換気には有用だ。

ダイネットベッド
3つ目はダイネットを展開してできるダイネットベッドで、ベッドサイズは1850x1220mm。ベッド幅は家庭用のセミダブルベッド(1200mm)以上に相当する。ここでも2名が就寝できる。
アレンHでは1850x1280mmだったので、ここでもACE-Sの方が60mm狭くなっている。
ギャレー

ギャレーセクション
ギャレーキャビネットにはシンクとシャワーフォーセットがセットされており、シャワーフォーセットは引き伸ばして車外で使用できる。コンロはカセットコンロをセットして使用する。

シンクの下の給排水タンクと収納
ギャレーキャビネットの下には各10Lの給排水タンクが収納されている。車外から直接出し入れできないが、10Lなのでそれほど苦労はないだろう。給排水タンクの上部には収納スペースが設けられているのは嬉しい。

ギャレー上部の収納
ギャレー上部にはオーバーヘッド収納が用意されており、食器や調理用具を収納しておくのに便利だ。
冷蔵庫/電子レンジ

49L横開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は49L横開き式が標準装備されている。冷凍室もあるので、製氷・冷凍と冷蔵が同時にできる。

電子レンジも標準装備
家庭用の100V仕様の電子レンジが、アレンHではオプションだったが、ACE-Sでは標準装備となった。ただしインバーターはオプションなので、このままでは外部100V電源が取れるところでしか使用できない。
サブバッテリーでも使用できるようにするためには、オプションの1500W正弦波インバーターを装備する必要がある。
多目的ルーム
ACE-Sには多目的ルームは設置されていない。参考までに、タウンエースベースのキャブコンで多目的ルームが設置されているモデルは、JP STARのトレジャー1とオートショップアズマのフィールがある。どちらもリアエントランスのレイアウトとなっている。
収納

ダイネット両側にオーバーヘッド収納が設置される
まず、オーバーヘッド収納は、ダイネット上部とエントランス上部に設置されている。後部のエアコンの両側にも小さな収納が用意されている。

ベッド下の収納
次に、後部下段ベッド下は大きな収納スペースになっている。左右両側に縦長の大きなバゲッジドアがあり、ベッドボードを取り外すと大きな荷物を積み込むことができる。

外部収納
車体右側後部には防水処理された外部収納が設置されており、濡れたものや汚れ物を収納しておくことができる。

シューズボックス
エントランスの横にはシューズボックスも用意されている。
空調

車載用セパレートクーラー(OP)
暖房はFFヒーターが標準装備され、冷房は車載用セパレートクーラーがオプションで設置できる。室内機は最後部にフロントに向かって設置されるので、室内前部までストレートに冷気が行き渡る。
クーラーが設置される場合は、105Ahのディープサイクルバッテリーが2個になるが、十分な電源とは言えない。できればリチウムイオンバッテリーを設置したいところだが、オプション設定はされていない。

クーラーの室外機
クーラーの室外機は車体左側後部に設置される。アレンHでは、リアパネルの外側に取り付けられていたので、全長が長くなり、また見た目も良くなかった。ACE-Sでは、すっきりと収納されている。
暖房はFFヒーターがオプションで用意されている。また、マックスファンベンチレーターもオプションとなっている。
テレビ/ナビ
19インチのテレビが、取り付けアームとともにオプションで用意されている。ナビもオプションで用意されているが、好みのものを取り付けることができるだろう。
電装系
標準では105Ahのディープサイクルバッテリーが1個、走行充電、外部100V電源入力が搭載されている。外部電源による充電機能(チャージャー)、300W/1500W正弦波インバーター、180Wソーラーシステムはオプションとなっている。
価格(2024年3月現在:千円台切り上げ:税込)
DXグレード 2WD/4ATで572万円~、4WD/4ATで598万円~となっている。付けておきたい必需オプションは、外部電源による充電機能(58,080円)、1500W正弦波インバーター(181,500円)、FFヒーター(242,000円)が挙げられる。(ナビ関連は除く)
予算に余裕があれば、180Wソーラーパネル(154,880円)、電子レンジ(21,780円)、クーラーセット(396,000円)も付けておきたい。特にクーラーは高額だが、今や必需装備と言っても良いくらいだ。
他モデル
タウンエースベースのキャブコンは比較的多数発売されているが、センターエントランスで対座ダイネットを持ち、後部に横置き2段ベッドを持つモデルは、ACE-SとアレンH以外ほとんど無い。
多くは、リアエントランスを採用し、二人旅を想定したモデルが多いが、その中でもファミリーに対応したモデルをピックアップすると、オートショップアズマのフィール対座モデル、セキソーボディのトム23/S、ムーンスターエキスポートのトレジャー1などがある。
まとめ
アレンHはもともと後部に横置き2段ベッドの効率のようレイアウトで、大人4名+子供2名のファミリーに適したレイアウトを持つモデルだった。小さな子供連れのファミリーなら、あまり問題はなかったのではないだろうか。
しかし、カムロードキャブコンで最も一般的なレイアウトをライトキャブコンでも実現できれば、カムロードキャブコンでは大きすぎたり価格が高すぎたりというユーザーにはソリューションとなりえる。
ACE-Sはそのあたりの需要を見込んでいるのかもしれないが、ライトキャブコンを大人6名で使用するのはやはり無理がある。ACE-Sはより広いアレンHを求めるファミリーユーザー向けと考えるのがよいだろう。
ちなみに、アレンHは561万円~、ACE-Sは572万円で11万円高となっている。
関連記事