グラーニーはキャンパー鹿児島が製作する、ハイエーススーパーロングをベース車にしたバン・コンバージョン キャンピングカー。
同社はその名の通り鹿児島県鹿児島市を本拠にするビルダーで、ハイエースベースのバンコンを中心にラインアップしている。なお、2024年にはBecamをベース車にした5m未満のキャブコンを発表、新たなカテゴリーに進出した。
なお、同社の会社名は双日モビリティ株式会社で、「キャンパー鹿児島」はキャンピングカーを扱う部門名のような位置付けとなっている。
ハイエーススーパーロングベースのバンコンでは、同社の代表的なレムシリーズがあるが、グラーニーは同社初のスーパーロングベースの二人旅仕様のモデルとなる。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
ハイエーススーパーロングをベース車にしたバンコンキャンピングカー。前部にギャレー、後部に横座り対座シートのダイネット構成で、二人旅に適したレイアウトとなっている。
後部に多目的ルームやカーゴスペースを持たず、後部全体をダイネットに使っているため、広々とした室内が特徴。ギャレーキャビネットのデザインも印象に残る。
家庭用エアコンが標準装備され、古くから大容量のリチウムイオンバッテリーを採用している同社らしく、300Ahのリチウムイオンバッテリーも標準装備となっている。
アピールポイント
・広々とした室内の二人旅仕様
・家庭用エアコンを標準装備
・300Ahのリチウムイオンバッテリーを標準装備
ベース車とエクステリア
グラーニーのエクステリア
ベース車はハイエーススーパーロングのキャンパー特装車。ボディ外側への架装は特に無いので、見た目は普通のハイエースと変わらない。
ガソリン2WD/4WD、ディーゼルの2WD/4WDが選択できる。
インテリア
グラーニーのインテリア
無垢材を使った家具は高級感があり、特にギャレーキャビネットのデザインは印象的。照明はシーリングボードに埋め込まれたダウンライトがメインとなっている。
レイアウト
前部にギャレー、後部は最後部まで横座りのベンチシートになっている。特にギャレー部が広く取られており、エントランスから見た室内は広々感がある。ギャレーにこれだけのスペースを割いたレイアウトは珍しい。
レクビィのプラスSLは後部に多目的ルームを持ち、RVランドのリノ プレミアムは最後部にラゲッジスペースを割いているが、グラーニーでは前部のギャレーが広い分、最後部までダイネットになっている。
運転席、助手席以外に前向き乗車できるシートは無いため、二人旅に適したレイアウトと言える。ただし、ダイネット部に横座りで4名が乗車できるので、乗車人数は6名となっている。
ダイネット
横座り対座のダイネット
ダイネットはコの字型で、5~6名が座れる。しかしダイネットの中心にテーブルが無いのは不思議な点だ。テーブルは上の写真のようにダイネットの一角に設置されている。ベッド状態にした場合、書斎コーナーのように使うには便利そうではある。
このテーブルはギャレー部にも設置できるようになっている(ギャレーの項の写真参照)が、なぜギャレーにテーブルが必要なのかも不明だ。食事はやはりダイネットに座って優雅に食べたり呑んだりしたいものだ。
ベッド
ベッドモード
左側の背もたれを中央に移動するだけで、1850x1460mmのベッドになる。1460mmの幅は、家庭用ではレギュラーダブルベッドの幅以上で、2名ならゆったり就寝することができる。
ギャレー
ギャレーセクション
L字型の広々としたスペースが特徴的なギャレーで、段違いのギャレーキャビネットで構成されている。前述のようにダイネットテーブルが上の写真の位置にセットできるようになっている。
低い方のキャビネットに腰かけて食事をするというアイデアもあるようだが、ダイネットがあるのに固い板のキャビネットに座って食事する理由が不明だ。この位置にテーブルがあると、調理するのにも邪魔になる。
丸形のシンクとフォーセット
ギャレーキャビネットには丸形のシンクとフォーセットが設置されている。調理面は非常に広く取られており、カセットコンロを置いてもまだ十分に調理スペースが残されている。
シンク下の給排水タンク
シンクの下には給排水タンクが収納されている(容量は不明)。車外から直接出し入れできないが、エントランスの向かいなので、出し入れはそれほど大変ではないだろう。
大きな引き出し収納
背の高い方のギャレーキャビネットには、上下段に深い引き出し収納が用意されており、食器や調理用具の収納に便利だ。
エントランス横の収納
低い方のギャレーキャビネットのエントランス側も収納になっている。ここは位置的にシューズボックスとしても使用できるだろう。
冷蔵庫/電子レンジ
40L上開き式冷蔵庫はオプション
冷蔵庫は40L上開き式がオプションで用意されている。設置されている位置がキャビネットのコーナーなので、この位置に横開き式は設置できないが、やはりクルマ旅を想定したモデルなら冷凍と冷蔵が同時にできる横開き式が望ましい。
また、冷蔵庫はクルマ旅にはほぼ必需装備なので、標準装備にして欲しいところだ。
電子レンジは標準装備される
家庭用の100V仕様の電子レンジが標準装備される。クルマ旅ではちょっとした温めものや冷凍食品の調理に重宝する。1500Wインバーターも標準装備されるので、外部電源のないところでも電子レンジを使うことができる。
多目的ルーム
グラーニーに多目的ルームは設置されていない。スーパーロングなので多目的ルームを設置できないことは無いのだが、グラーニーでは広々感を優先された格好だ。トイレルームの有無については賛否が分かれるところだが、特に女性が車中泊する場合は望まれる設備だ。
収納
棚収納が設置される
グラーニーには扉付きのオーバーヘッド収納は無く、写真のような棚収納になっている。乗せたものが落ちにくいように縁が付いているが、やはり走行時に落下しないように扉付きが理想的だ。
ベンチシート下の収納
その代わり(になるか分からないが)両側のベンチシートの下は、一部の電装系の収納スペースを除き広い収納スペースになっている。
ダイネット右側の収納
ダイネットの右サイドには独立した収納が設けられており、これには扉が付いている。扉は開けた状態でホールドできるので出し入れしやすい。
空調
家庭用セパレートエアコンを標準装備
冷房は家庭用セパレートエアコンが標準装備される。暖房はFFヒーターをオプションで設置できる。家庭用エアコンは暖房もできるのでFFヒーターは不要と考えられるかもしれないが、電気を大量に消費するエアコンよりも遥かにコスト効率が良いFFヒーターをお勧めする。
なお、マックスファンベンチレーターもオプション設定されている。取り付けると全高が高くなるので、注意が必要だ。
テレビ/ナビ
19型のテレビがオプションで設置できる
19型のテレビがオプションで用意されている。設置場所は上の写真のようにギャレーキャビネットの端になるが、フレキシブルアームでダイネットからも観ることができる。。
ナビはアルパイン製などがオプションで用意されているが、好みのものを付けることももちろん可能だ。
電装系
標準で300Ahのリチウムイオンバッテリーを装備する。その他の電装系では、CTEK+SmartPass走行充電、外部電源入力とチャージャー、1500W正弦波インバーターを標準装備。176Wソーラーシステムはオプションで設置できる。
同社は大容量リチウムイオンバッテリーを早くからキャンピングカーに取り入れた先進的なビルダーで、グラーニーにもその精神が受け継がれている。300Ahの容量なら、家庭用エアコンを実用的に運転することができる。
価格(2024年5月現在:千円台切り上げ:税込)
ガソリン2WDは846万円~、4WDは877万円~、ディーゼル2WDは894万円~、4WDは925万円~となっている。(ナビ関連は除く)
付けておきたい必需オプションは、FFヒーター(268,500円)、冷蔵庫(120,000円)、マックスファン(91,000円:車高が高くなるので注意)が挙げられる。予算に余裕があれば、ソーラーシステムも付けておきたい。
他モデル
ハイエーススーパーロングをベース車にした二人旅仕様のバンコンは多数存在するが、レクビィのプラスSL(809万円~)と、RVランドのリノ プレミアム(538万円~)あたりが近いレイアウトを持つ。(いずれもガソリン2WD)
プラスSLは最後部に多目的ルームを持つのが特徴。女性が車中泊するなら、やはりトイレルームがあると安心だ。雨中や夜間、寒い中を車外に出てトイレに行くのは実に億劫だ。トイレに行かないように水分をとらないというのは本末転倒だ。
リノ プレミアムは優雅なU字型のソファダイネットが目を引く。最後部にラゲッジスペースが用意されているが、カーテンを付けて簡易トイレルームにすることもできるだろう。
価格面ではリノ プレミアムが安価だ。オプションが多いが、家庭用エアコンやサブバッテリー増設、インバーターを追加しても最も安価だろう。ただし、リチウムイオンバッテリーが選択できないのは残念な点ではある。
プラスSLはグラーニーより安価なうえ、横開き式冷蔵庫、2000Wインバーター、250Wソーラーシステム、19型テレビが標準装備なので、お得感が大きい。更に多目的ルームがあるのは強みだろう。
その他、RVビックフットのACSリトルノオクタービアM(800万円~)、カトーモーターのエースリーパー(603万円~)、同イルデルフィーノ(716万円~)、ドリーム・エーティーのウォーク タイプC(524万円~)、ホワイトトップのアジサシ(価格不明)あたりも参考いただきたい。
まとめ
グラーニーは広い室内でストレスを最小限に抑えて二人でクルマ旅ができるモデルだ。エアコンやリチウムイオンバッテリーが装備され、快適性も問題ない。
懸案点を挙げておくと、やはり多目的ルームが欲しいユーザーには選択対象外となる。また、クルマ旅には横開き式冷蔵庫が欲しい。同様にL字型キッチンを持つリノ
プレミアムを見ると分かる通り、コーナーの使い方は確かに難しいが。。
もう1点はテーブル。ダイネットのシートに座って食事ができるというのは基本的な機能なので、ダイネットテーブルは是非用意して欲しい。オーバーヘッド収納もできれば扉着くが望ましいのだが。
しかし、とにかく広い室内が欲しいというユーザーには魅力的なモデルかもしれない。
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