アレン ハイ(Alen H)とアレン ロー(Alen L)はAtoZが製作する、マツダボンゴトラック、あるいはトヨタタウンエーストラックをべース車にしたライトキャブコン。
アレンは従来、アレンType1(記事はこちら)とアレンType2がラインアップされていたが、2021年にアレンHとアレンLの2種類の新型が発表された。今回はアレンシリーズとして2モデルを一度に紹介する。
(記事中の価格は全て税込です)
コンセプト
マツダボンゴトラック、あるいはトヨタタウンエーストラックをベース車にしたライトキャブコンで、取り回しが良く、運転しやすいのが特徴。アレンLは従来のアレンType1を踏襲し、乗車6名、就寝2名+子供3名だが、アレンHはバンクベッドを持つことにより乗車6名、就寝4名+子供2名とし、より多くの就寝人数に対応した。
エクステリア
左がアレンL、右がアレンH
ベース車はマツダボンゴトラック。オプションでトヨタタウンエーストラックベースに変更できる。ボンゴもタウンエースもダイハツグランマックスのOEMバージョンなので、クルマとしては同じものだ。
アレンHとアレンLのエクステリアの違いは全高で、アレンLが2590mmに対してアレンHは2600mmとなっている。なお全長も異なり、アレンLが4560mmに対し、アレンHは4620mmと、アレンHが6cm長くなっている。
どちらも衝突回避支援システム「スマートアシスト」が標準装備される。
手前がアレンH、奥がアレンL
即ち、名前こそHとLだが、全高はほとんど変わらない。ただし、アレンHのバンク部はアレンLに比べわずかに膨らんでおり、この差により、アレンHではバンクベッドで大人が就寝できるようになった。ボディサイズの差は小さいが、ターゲットユーザーは大きく変わる。
インテリア
新型アレンのインテリア「Mirai(ミライ)」
アレンHとアレンLとも展示車のインテリアは、白系の壁と濃い茶系のシート地。家具も濃い木目模様になっている。従来は同社のモデルは全て白木調の家具だったが、最近のモデルでは独自のインテリア色が採用されている。
新型アレンのインテリア「Kiseki(キセキ)」
アルファやアンナではインテリアデザイナーのコーディネートによる2種類のインテリアテーマが選択できるようになっており、アレンでも同様に選択肢が用意されている。展示車のテーマは「Mirai(ミライ)」というネーミングがされており、もう一つはエメラルドグリーンがベースカラーとなる「Kiseki(キセキ)」。
レイアウト
アレンHもアレンLも基本的には同じレイアウトで、エントランスは中央、前部に対座ダイネットとギャレー、後部に横置き常設2段ベッドを配置する。またバンクベッドを持ち、多目的ルームは持たない。
このレイアウトの特徴は、後部に常設2段ベッドを持っていること。ただし、車幅は1750mmしか取れないので、大人用ベッドとしてはカウントされない。そのため大人は、アレンHではバンクベッドとダイネットベッド、アレンLではダイネットベッドで就寝することになる。
もう一つの特徴は、4名が3点シートベルトで前向き乗車できること。(アレンLは2列目シートが前向きにできれば6名が前向き乗車できる。)これらのことから考え、子供がいるファミリー向けのレイアウトと言える。
ダイネット
アレンHのダイネット
アレンHとアレンLで異なる点は、アレンLが2列目にマルチモードシートを持ち、3列目は固定シートであるのに対し、アレンHの展示車では2列目も3列目も固定シートである点。(ただし、同社のサイトではアレンHの3列目シートがマルチモードシートになっている。)
また、窓の大きさにも差がある。アレンHではバンクベッドを展開すると2列目シートの上まで来るため、ダイネットウインドウは3列目のところにしかない。即ち、小さなウインドウになってしまっている。
アレンLのダイネット
しかしアレンLではバンクベッドはほとんど延長されないため、ダイネットウインドウは大きく、2列目のシートからも景色が楽しめる。これはアレンHの残念な点だ。
ベッド
後部の子供用常設2段ベッド
後部に配置された常設横置き2段ベッドのサイズは上下段とも1750x790mm。即ち、大人が就寝できる規定のサイズ(1800mm)に達していない。従って、ここは子供用のベッドとなる。もちろん大人が就寝しても問題は無い。
アレンHのバンクベッド
大きく異なるのはバンクベッドで、アレンHのバンクベッドのサイズは2000x1600mm(手前は1540mm)。家庭用ベッドではクイーンサイズの幅に相当する。アレンLは大人が就寝できる長さは無い。
アレンHのバンクベッド
アレンHは跳ね上げてあるベッドエンドが二つ折りになっており、広げるとエントランス後方までベッドが広がる。
アレンLのバンクベッド
一方、アレンLはベッドエンドを広げても、エントランスまで達しない。アレンLのバンクベッドは子供用か、あるいは収納スペースとして使用できる。
ダイネット展開ベッド
ダイネットを展開すると、ここもベッドとして使用できる。大きさは1850x1280mm。家庭用ではセミダブルベッドの幅に相当し、大人2名が就寝できる。
ギャレー
ギャレーセクション
ギャレーは左側中央に設置されている。天板にはシンクが埋め込まれ、シャワーフォーセットが設置される。シンクに蓋をすると天板と面一になり、カウンターテーブルとして使える。
シンクの下には各10Lの給排水タンクが収納されている。エントランスから遠いため、給排水タンクを直接車外から出し入れすることは難しいが、10Lなのでそれほど重くはなく、大きな問題ではないだろう。
引き出し式調理台
ギャレーコンソールには引き出し式調理台が設置されており、料理するユーザーには大変便利だ。給排水タンクがエントランスから近くなるようにシンクを右側に持ってくると、この引き出し式調理台が設置できなくなるので、給排水タンクがエントランスから多少遠くなってもこちらの方がメリットが大きい。
車外で使えるシャワーフォーセット
なお、シャワーフォーセットは窓から引き出して車外で使うことができる。
冷蔵庫/電子レンジ
49L横開き式冷凍冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は49L横開き式冷凍冷蔵庫が標準装備される。エントランスの横にあるので、車外からすぐに飲み物や食材を取り出すことができる。
電子レンジも標準装備される
また、電子レンジもギャレー上に標準装備される。ただし、このままでは外部100V電源があるところでしか使えない。サブバッテリーでも使えるようにするには、オプションのインバーターを装備する必要がある。
多目的ルーム
アレンには多目的ルームは用意されていないが、緊急の場合を考え、ポータブルトイレをベッド下の収納に積んでおくことはできる。
もちろん個室ではないのでユーザーの判断になるが、子供が急にトイレに行きたいと言い出した時は役に立つ。
収納
アレンLのダイネット上オーバーヘッド収納
アレンHとアレンLではダイネット上のオーバーヘッド収納が異なっている。アレンLでは3連のオーバーヘッド収納が設置されている。
アレンHのダイネット上オーバーヘッド収納
アレンHではバンクベッドが伸長され、その部分にはオーバーヘッド収納が設置できないため、2連になっている。ただしいずれも奥行きがあり、十分な収納力を持つ。
ベッド上部右側のオーバーヘッド収納
オーバーヘッド収納はベッド上部両側にも設けられており、ここにも小物を入れておくことができる。
シューズボックス
ギャレーコンソールの収納についてはギャレーの項目で説明したが、その他の収納としてエントランスの横にシューズボックスがある。
外部収納用のバゲッジドア
また、外部収納用のバゲッジドアは左右両側に用意されている。下段ベッド下に収納スペースがあるが、ベッドボードを取り除くと、高さのある大きな収納になる。大きさにもよるが、サーフボードや自転車と言った大きな荷物も積むことができる。
空調
車載用セパレートクーラーがオプション設定されている
暖房はFFヒーターがオプション設定されている。また2021年モデルで初めて車載用セパレートクーラーがオプションながら搭載できるようになった。これはホワイトハウスのクールスターを製作しているオズ・エンジニアリングと言う会社のもので、基本的にはクールスターと同じもの。
クーラーの室外機
室外機はリアに取り付けられる。(取り付けた場合、車長は変わる)かなり目立つことにはなるが、外部収納の一部を潰さなくても良いというメリットがある。
ベンチレーターも標準装備されるが、MAXファンへの変更はオプションとなっている。
テレビ/ナビ
テレビやモニターについての記述は無いが、オプションで装備できると思われる。またナビについても、任意のものが装着できるだろう。
電装系
105Ahのディープサイクルサブバッテリーが1個と、CTEKによる強化走行充電が標準装備される。また外部電源入力が標準装備されるが、これによるサブバッテリーの充電機能はオプションとなる。
サブバッテリーは右側のサイドスカート部に設置されている
サブバッテリーは右側のサイドスカート部に設置されており、オプションでもう1個追加することができる。
クーラーは12Vで動作するのでインバーターは必要ない。しかし電子レンジをサブバッテリーで使うこともあるので、1500Wクラスのインバーターはいずれにしても装備しておくことをお勧めする。
リチウムイオンバッテリーの搭載の可否は不明だが、同社はアンソニーLEで専用のリチウムイオンバッテリーをオプション設定している。アレンにも搭載できることを期待したい。
価格(2021年4月現在:千円台切り上げ:税込)
アレンHは2WD/4ATで479万円~、アレンLは473万円~。なお、従来のアレンType1とアレンType2もサイトに載っていて、これらは446万円~となっている。
付けておきたいオプションは、1500Wインバーター(8,800円)、外部電源によるサブバッテリーの充電機能(52,800円)、FFヒーター(価格不明)が挙げられる。
また予算に余裕があれば是非付けておきたい装備は、セパレートクーラー(396,000円)、追加サブバッテリー(価格不明)、ソーラーシステム(容量、価格不明)が挙げられる。
他モデル
ボンゴトラックあるいはタウンエーストラックをベース車にするキャブコン(ポップアップルーフ仕様を除く)は、セキソーボディのトム23(価格不明)、かーいんてりあ高橋のネオ・ユーロ(490万円~)、オートショップアズマのフィール(449万円~:5MT)、MYSミスティックのレジストロ・アウル(488万円~)がある。
実はタウンエースベース(マツダボンゴベースを含め)のキャブコンでは、センターエントランスのモデルはアレンしかない。上記他モデルは全てリアエントランスのレイアウトを採用している。もちろんどちらが良いかはユーザーの使い方によるが、上記モデルではレジストロアウルを除き全て多目的ルームを持っている。
上記のうちフロントシート以外に前向き乗車できるのは、トム23とレジストロアウル対座仕様の2モデル。どちらもクーラーやエアコンを搭載できる。なお、「ライトキャブコン特集~9モデルを徹底比較」も参照いただきたい。
まとめ
アレンのユニークな点はやはりレイアウトにある。上記他モデルは全てリアエントランスで、広いダイネット(ベッド)とバンクベッドの構成だが、アレンのみセンターエントランスで後部常設2段ベッドを持つ。
これはアレンが明確に子供がいるファミリーをターゲットにしているからで、車幅の制限があるがあえて「子供用」常設2段ベッドを設置している。そして前向きシートを用意し、ファミリーでのロングドライブを可能にしている。
シチュエーションを考えると分かりやすい。子供が先に寝てしまえば、2段ベッドで寝かせればよい。大人はダイネットで寛ぎ、アレンHならその後に広いバンクベッドで就寝できるし、ダイネットも片付ける必要はない。
例えば、ファミリー向けにはトム23も考えられるが、子供が先に寝てしまった場合、バンクベッドを引き出すとダイネットは結構圧迫感がある。逆にトム23は広いダイネットとダイネットベッドが特長で多目的ルームもあり、二人旅にも適している。
なお、アレンHとアレンLは全高はほとんど変わらず、レイアウトもほとんど同じ、価格もほとんど変わらないが、アレンHにはバンクベッドがある。アレンLの存在理由が今一つ弱いような気がする。
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