ネオユーロスライドアウトはかーいんてりあ高橋が製作する、トヨタタウンエーストラックをベース車にしたコンパクトキャブコン。
同社はハイエースバンコンのリラックスワゴンシリーズを中心に多くのモデルをラインアップしているが、キャブコンは「ネオユーロ」が唯一のモデル。2020年に、これにスライドアウト機構を搭載した「ネオユーロスライドアウト」が追加された。
(記事中の価格は全て税込です)
コンセプト
ネオユーロはもともとコンパクトを前面に出したキャブコンで、シェルもベース車の車幅と同じで運転に気を使うことが無い。
しかし、車幅と同じシェルはやはり室内も狭く感じてしまうことがあった。スライドアウト機能を持たせることにより室内を拡張し、30mmのスライドアウトながら広い室内を実現している。
コンパクトなボディと広い室内を両立させた、二人旅仕様車。
エクステリア

ネオユーロスライドアウトのエクステリア
ベース車はトヨタタウンエーストラック。これにアルミ製のシェルを架装している。キャブコンながら4,490x1720mmの全長x全幅とコンパクトで、5mの一般的な駐車枠に問題なく駐車できる。(もちろん高さは注意する必要がある)
アルミ製のシェルを採用している理由は軽量化。ネオユーロのコンセプトの一つがこの軽量化で、これにより必ずしも強力とは言えないベース車のエンジン性能をカバーしている。
ネオユーロスライドアウトの特徴はもちろんスライドアウト機構で、これは内側から手動で押し出す。特に大きな労力はいらないので一人でも可能だ。スライドアウトで注意すべきは隣の状況だ。300mm飛び出すので、2mの駐車枠からはみ出すことになる。
もう一つの懸案点は風雨の侵入は大丈夫なのかという点。スライドアウトは可動部分があり、ユーザーとしては隙間ができることが心配だ。どのような仕組みで風雨を遮断するのかの説明があれば安心なのだが。
インテリア

ホワイト系に濃紺のシート地のインテリア
展示車のインテリアはホワイト系に濃紺のシート地がアクセントのすっきりしたイメージ。ただし同社はワンオフ(オーダーメード)も手掛ける極めて自由度の高いビルダーなので、自分好みのインテリアにすることができる。
家具やシートの作り付けは特別高級感があるわけではないが不満点は無く、一般的な水準の作りとなっている。
レイアウト
リアエントランスのレイアウトはネオユーロから変わっていない。リアエントランスの特長は、前部に広いダイネットが展開できること。ネオユーロもそれに違わず、横座り式の広い対座ダイネットを持っている。
ネオユーロスライドアウトでもその基本レイアウトは変わらず、ダイネットはやはり横座りの対座だが、スライドアウトによりその幅は広くなっている。
後部にギャレーと多目的ルームが設置されており、コンパクトながらもダイネット、ギャレー、多目的ルームが揃っている。ただしベッドは、ネオユーロで設置されていたバンクベッドは無くなり、バンク部は収納スペースになった。
多目的ルームのエントランスも変更されており、ネオユーロではシートの上からドアが開き、ルーム内は段差が大きかったが、スライドアウトではドアは床面から開くようになっている。
更に最も大きく変化したのは前部で、左右に大きな収納家具が設置され、左側下部には待望の横開き式冷蔵庫がビルトインされた。
なお乗車定員は5名だが、前向きシートは運転席、助手席の2名のみ、また就寝定員も2名なので基本的に二人旅仕様のレイアウトと言える。
ダイネット

スライドアウトした横座り対座ダイネット
横座り対座のダイネットで、スライドアウトすると両側に十分な奥行きとなる。スライドアウトしなくても座れるが、もちろん奥行きは狭い。しかし、左側のシートは常に奥行きが十分なので、二人旅なら並んで座ればスライドアウトしなくても問題は無い。
ベッド

バンクベッドは収納スペースとして使える
ネオユーロから大きく異なるのが就寝人数で、ネオユーロは4名だったが、スライドアウトは2名となった。その原因はバンクベッドが無くなったことで、従ってベッドはダイネットを展開するダイネットベッドのみとなった。
バンクは子供なら就寝できるかもしれないが、二人旅仕様なので子供が就寝できてもあまり意味は無い。むしろ大きな収納スペースとして使用できる。もっと収納スペースとして割り切って、板敷にしたり扉を付けた方が実用的かもしれない。

スライドアウトで広くなったダイネットベッド
ダイネットベッドはネオユーロでは1600mmの幅があったが、スライドアウトではこれが拡張される。具体的な数値は公表されていないが、スライドアウト時1800mm近くになると思われるので、長身でなければ車幅方向に就寝することも可能だ。
キャンピングカーでは停泊する場所により傾きが変わるため、頭が上になるように様々な方向で就寝できるベッドは、実は結構重宝する。
ギャレー

前面が広く取られたギャレーセクション
リアエントランスの定石通り、ギャレーは最後部に位置する。コンロは埋め込まれた常設コンロではないが、ポータブルカセットコンロを置くスペースは用意されている。リアエントランスのシンクはコンパクトなものが多いが、ネオユーロ/スライドアウトのシンクは実用的な大きさの丸形シンクがビルトインされている。
下には各19Lの給排水タンクが収納されている。これらはリア車外からも出し入れすることができ、実に便利だ。ギャレー上にも収納が用意されており、食器やカトラリーを収納しておくことができる。
冷蔵庫/電子レンジ

49L横開き式冷蔵庫がビルトインできる
長期旅ユーザーにとって歓迎したいのは、オプションながら49L横開き式冷凍冷蔵庫がビルトインできるようになったこと。ネオユーロでは30Lの引き出し式冷蔵庫(OP)だったので容量的に不十分で、製氷と冷蔵が同時にできなかった。
電子レンジはオプション設定されているが、取り付け位置は決まっていない。スライドアウトでは前部に収納スペースも設置されているので、問題なく設置できるだろう。もちろん電装系の強化は必要になる。
いずれにしても、これで長期旅にも対応でき、ネオユーロの魅力が一層深まったといえる。
多目的ルーム

ポータブルトイレを置いてトイレルームにすることもできる
リアエントランスで常設ベッドを持たないとはいえ、ネオユーロのコンパクトな室内にしっかり多目的ルームが設置されているのには感心する。スライドアウトではドアが床面から開くようになり、出入りも楽になった。
ポータブルトイレを置いてトイレルームにすることもでき、これも長期旅ユーザーや女性には嬉しい装備だ。おそらくラップポンを置くこともできると思われるが、そのあたりの情報も明記されることを望みたい。
多目的ルームは車外からも直接アクセスでき、トイレの処理や荷物の出し入れに便利だ。
収納

前部両側の大きな収納家具
ネオユーロから進化したものに収納がある。スライドアウトでは新たに前部両側に大きな収納家具が設置された。収納力は大きく、自由に内部を仕切って衣類や食品などを収納することができる。

スライドアウト下部の収納スペース
また、スライドアウトの下部にも収納スペースが用意されている。ここもそれなりの容量があり、貴重で実用的な収納スペースだ。
何度も言うようだが、このコンパクトな車体にこれだけの収納が用意されていることに感心する。カスタマイズの自由度は高いので、収納に関してもユーザー好みに変更できるだろう。
なお、ネオユーロ/スライドアウトにはオーバーヘッド収納は用意されていない。これは重心を低くするためで、あえて設置していないとのこと。しかし設置するスペースはあるので、希望により設置することは可能だろう。もちろん重いものを乗せないよう注意する必要はある。
空調
暖房はFFヒーターがオプション設定されている。残念ながら冷房のソリューションは提案されていない。確かにこのサイズで本格的なエアコンを設置するのは厳しいかもしれないが、最近ではNV200バネットクラスのバンコンにもセパレートエアコンが搭載されている。今後の進化に期待したい。
また同社のリラックスワゴンインフィニティLCSには、小型の一体型クーラーが設置された。このようなソリューションでも良いのでネオユーロにも欲しいところだ。
なおベンチレーター(MAXFAN)はオプション設置されている。
テレビ/ナビ
サイズは不明だがテレビがオプション設置されている。アンテナの設置もオプションで可能だ。またナビは各種取り付けが可能。
電装系
サブバッテリーは容量が表記されていないが、おそらく100Ahクラスのディープサイクルバッテリーが1個と走行充電が標準装備される。また、サブバッテリーは1500Wインバーターとセットで1個追加できる。
外部100V電源入力と充電機能はオプション。またソーラーシステムもオプションで用意されているが容量は不明。
リチウムイオンバッテリーに関しては記載が無いが、ディープサイクルバッテリーと同じ大きさのものなら、ディープサイクルバッテリーに代えて搭載することができるだろう。ただし、大容量家電は電子レンジ程度なので、リチウムイオンバッテリーに高額の投資をする必要性は低い。
価格(2021年4月現在:千円台切り上げ:税込)
ネオユーロスライドアウトは2WD/4ATで537万円~、4WD/4ATで563万円~。スライドアウトなしのネオユーロがそれぞれ473万円~、499万円~なので、スライドアウトは64万円高だ。
付けておいた方が良いオプションは、FFヒーター(242,000円)、外部電源入力と充電機能(63,800円)、インバーター(ツインバッテリー化と込みで181,500円)、ベンチレーター(107,800円)、49L冷蔵庫(107,800円)が挙げられる。
また必要に応じて、電子レンジ(1500Wインバーター込み27,500円)、ソーラーシステム(173,800円)等がある。
他モデル
タウンエースをベース車にしたキャブコンは、ポップアップルーフスタイルとクローズドルーフスタイルに分けられる。このうちネオユーロスライドアウトと同じクローズドルーフタイプは、MYSミスティックのレジストロアウル(488万円~)、AtoZのアレン(446万円~)、オートショップアズマのフィール(494万円~:5MT)、セキソーボディのトム23(現在の価格不明:462万円2018年)がある。
更にトイレルームにもなる多目的ルームを持つモデルは、フィールとトム23が挙げられる。フィールはやはりリアエントランスの本格的なキャブコンスタイルで、ウインドウエアコンがオプション設置されているのが特徴。トム23は2列目シートが前向きにセットでき、全員が前向き乗車できるのが特徴だ。エアコンも選択できるようになった。
まとめ
ネオユーロスライドアウトは、今までに国産モデルではほとんど存在しなかったスライドアウト機構により、コンパクトキャブコンながら広い室内を獲得し、他車に差を付けた。
ただ、そのために価格が高くなってしまったことは見落とせない。スライドアウトのためにどの程度のユーザーが64万円を払えるかがポイントとなる。そのコストはむしろエアコンとリチウムイオンバッテリーにかけたいと考えるユーザーもいるだろう。
どの点にプライオリティーを置くかはもちろんユーザーの考えによるが、夏の暑さを何とかしたいと考えるユーザーは多いと思われる。ネオユーロはコンパクトで軽量ボディの優れたキャブコンだが、エアコンのソリューションが望まれる。
関連記事